遺族年金は、家族が亡くなったときに、遺された配偶者や子どもの生活を支える公的年金です。ただし、誰でももらえるわけではなく、亡くなった人が加入していた年金や、遺族の年齢・子どもの有無によって、受け取れる年金の種類も金額も期間も変わります。
この記事では、遺族年金をもらえる人、金額(2026年度)、いつまでもらえるか、自分の年金との関係、請求の手続きまでを、社会保険労務士がわかりやすく解説します。
- 遺族年金には、国民年金から出る「遺族基礎年金」と、厚生年金から出る「遺族厚生年金」がある。会社員・公務員が亡くなった場合は両方を受け取れることがある。
- 遺族基礎年金は「子のある配偶者」か「子」だけが対象。子のいない配偶者は、遺族厚生年金のみが対象になる。
- 2026年度の遺族基礎年金は、子1人で年109万1,100円、子2人で年133万4,900円。遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3。
- 子のない30歳未満の妻は5年間のみ、30歳以上の妻は原則として一生涯受け取れる(2028年4月から見直しあり)。
- 請求しないと受け取れない。期限は原則として死亡日の翌日から5年。遺族年金は非課税。

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする戦略コンサルティングファーム出身の社会保険労務士。建設・製造・飲食・小売・人材派遣・SES・IT・医療・介護・医薬品・不動産・投資ファンドなど多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298
遺族年金とは
遺族年金は、国民年金または厚生年金に加入している人(加入していた人)が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族が受け取れる公的年金です。亡くなった人の加入状況によって、次のどちらか、または両方が支給されます。
| 種類 | 亡くなった人 | 受け取れる遺族 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 遺族基礎年金(国民年金) | 自営業・会社員・公務員・専業主婦(夫)など、国民年金の加入者全員 | 子のある配偶者、または子 | 定額(子の人数で加算) |
| 遺族厚生年金(厚生年金) | 会社員・公務員など、厚生年金の加入者・加入していた人 | 配偶者、子、父母、孫、祖父母のうち優先順位が最も高い人 | 亡くなった人の報酬比例部分の4分の3 |
会社員・公務員の夫が亡くなり、18歳年度末までの子がいる妻であれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れます。公務員の共済年金は2015年10月に厚生年金に一元化されたため、公務員が亡くなった場合も遺族厚生年金の対象です。
このほか、国民年金の第1号被保険者(自営業など)が亡くなり遺族年金を受け取れない場合に、「寡婦年金」や「死亡一時金」が出ることがあります(後述)。仕事中や通勤中の事故で亡くなった場合は、労災保険の遺族補償年金(遺族年金)の対象にもなります。
遺族年金をもらえる人

家族構成別の早見表
| 亡くなった人 | 遺族 | 受け取れる年金 |
|---|---|---|
| 自営業など(国民年金のみ) | 子のある配偶者 | 遺族基礎年金 |
| 自営業など(国民年金のみ) | 子のない妻 | 遺族年金はなし(寡婦年金または死亡一時金の対象になることがある) |
| 自営業など(国民年金のみ) | 子のない夫 | 遺族年金はなし(死亡一時金の対象になることがある) |
| 会社員・公務員 | 子のある妻 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
| 会社員・公務員 | 子のある夫 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金(遺族厚生年金は55歳以上の夫のみ。55歳未満なら子が受け取る) |
| 会社員・公務員 | 子のない妻 | 遺族厚生年金(30歳未満は5年間のみ。40〜65歳は中高齢寡婦加算あり) |
| 会社員・公務員 | 子のない夫 | 遺族厚生年金(死亡時55歳以上の場合のみ、60歳から) |
| 会社員・公務員 | 配偶者がおらず、子だけ | 子が遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
ここでの「子」は、18歳になった年度の3月31日までの子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある子で、結婚していない子です。亡くなった当時おなかにいた子も、生まれた後に対象になります。
「生計を維持されていた」の要件
遺族年金を受け取れるのは、亡くなった人に生計を維持されていた遺族です。原則として、次の2つをどちらも満たす必要があります。
- 生計を同じくしていた:同居している。別居でも、仕送りをしていた、健康保険の扶養に入っていたなどの事情がある
- 収入の要件:遺族の前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満
働いていても、この収入の要件を満たしていれば遺族年金は受け取れます。婚姻届を出していない内縁(事実婚)の配偶者も、事実上の夫婦関係と生計維持が認められれば対象になります。
亡くなった人の要件(保険料の納付)
亡くなった人にも要件があります。現役世代が亡くなった場合は、保険料の納付状況が問われます。
| 年金 | 亡くなった人の要件(いずれか) |
|---|---|
| 遺族基礎年金 | ・国民年金の被保険者である間に死亡 ・国民年金の被保険者だった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所があった人が死亡 ・老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡 |
| 遺族厚生年金 | ・厚生年金の被保険者である間に死亡 ・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気・けがで、初診日から5年以内に死亡 ・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けている人が死亡 ・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡 |
被保険者である間などに亡くなった場合は、保険料を納めた期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が2036年(令和18年)3月末日までで、亡くなった人が65歳未満であれば、死亡月の前々月までの直近1年間に未納がなければ要件を満たします。老齢年金の受給資格を満たした人が亡くなった場合は、加入期間などを合わせて25年以上あることが必要です。
遺族厚生年金の優先順位
遺族厚生年金は、対象になる遺族のうち、優先順位が最も高い人だけが受け取ります。
| 順位 | 遺族 | 条件 |
|---|---|---|
| 1 | 子のある配偶者 | 夫は死亡時55歳以上(55歳未満なら子が受け取る) |
| 2 | 子 | 18歳年度末まで、または20歳未満で障害等級1・2級 |
| 3 | 子のない配偶者 | 30歳未満の妻は5年間のみ。夫は死亡時55歳以上で、60歳から |
| 4 | 父母 | 死亡時55歳以上で、60歳から |
| 5 | 孫 | 18歳年度末まで、または20歳未満で障害等級1・2級 |
| 6 | 祖父母 | 死亡時55歳以上で、60歳から |
遺族年金はいくらもらえる
遺族基礎年金の金額(2026年度)

遺族基礎年金は定額で、子の人数に応じて加算されます。2026年4月分からの金額は次のとおりです。
| 家族構成(配偶者が受け取る場合) | 年額 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 配偶者と子1人 | 1,091,100円 | 約9万900円 |
| 配偶者と子2人 | 1,334,900円 | 約11万1,200円 |
| 配偶者と子3人 | 1,416,200円 | 約11万8,000円 |
基本額847,300円(昭和31年4月1日以前生まれの配偶者は844,900円)に、子の加算額(1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円)を加えた金額です。子が受け取る場合は、847,300円に2人目以降の子の加算額を足した金額を、子の人数で分けます。
遺族厚生年金の金額

遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は、厚生年金に加入していた期間の給与(平均標準報酬額)と加入月数で決まります。
- 報酬比例部分:2003年3月以前の期間は「平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数」、2003年4月以降の期間は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」の合計
- 遺族厚生年金:報酬比例部分×4分の3
- 300月のみなし:在職中の死亡などの場合、加入期間が300月(25年)未満でも300月として計算する
たとえば、2003年4月以降の平均標準報酬額が30万円で、加入期間が300月とみなされる場合、報酬比例部分は30万円×5.481/1000×300月=493,290円で、遺族厚生年金はその4分の3の約37万円(年額)になります。夫の年金額別・年齢別の目安は、遺族年金はいくらもらえる?早見表と計算方法で詳しく解説しています。

中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算
夫が亡くなった妻には、遺族厚生年金に次の加算がつくことがあります。
| 加算 | 対象 | 金額(2026年度) |
|---|---|---|
| 中高齢寡婦加算 | 夫の死亡時に40歳以上65歳未満で子のない妻、または子が18歳年度末を迎えて遺族基礎年金がなくなった時点で40歳以上65歳未満の妻。40歳から65歳になるまで加算 | 年635,500円 |
| 経過的寡婦加算 | 昭和31年4月1日以前生まれの妻。65歳以降、中高齢寡婦加算に代わって加算 | 生年月日に応じて年21,147円〜633,700円 |
夫が老齢厚生年金の受給資格を満たして亡くなった場合は、夫の厚生年金の加入期間が原則20年以上あるときに限って加算されます。妻を亡くした夫には、これらの加算はありません。
遺族年金はいつまでもらえる
| 受け取る人 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
|---|---|---|
| 子のある妻 | 子が18歳年度末を迎えるまで | 一生涯(再婚などで終了) |
| 子のない妻(夫の死亡時30歳以上) | なし | 一生涯 |
| 子のない妻(夫の死亡時30歳未満) | なし | 5年間 |
| 子のある夫 | 子が18歳年度末を迎えるまで | 55歳以上なら60歳から一生涯(遺族基礎年金を受けている間は60歳前でも受給) |
| 子のない夫 | なし | 妻の死亡時55歳以上なら60歳から一生涯 |
| 子 | 18歳年度末まで(障害等級1・2級は20歳まで) | 同左 |
次のような場合は、受け取る権利がなくなります。
- 受給者の死亡
- 結婚:再婚した場合(届出をしていない事実婚を含む)
- 養子縁組:直系血族・直系姻族以外の人の養子になった場合
- 子の年齢:子が18歳年度末を迎えた場合(障害等級1・2級の子は20歳)
- 離縁:亡くなった人との親族関係が離縁によって終了した場合
なお、2028年4月から、子のない配偶者の遺族厚生年金の期間などが見直されます(後述)。
遺族年金と自分の年金は両方もらえる?

65歳以上で、遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金の両方を受け取る権利がある場合は、まず自分の老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金はその分が差し引かれて差額だけが支給されます。自分の老齢基礎年金は、遺族厚生年金とあわせて受け取れます。
配偶者の死亡による遺族厚生年金の額は、次のうち高い方です。
- A:亡くなった配偶者の報酬比例部分の4分の3
- B:亡くなった配偶者の報酬比例部分の2分の1+自分の老齢厚生年金の2分の1
たとえば、亡くなった夫の報酬比例部分が年120万円、妻自身の老齢厚生年金が年40万円の場合、Aは90万円、Bは60万円+20万円=80万円なので、遺族厚生年金の額は90万円です。このうち妻自身の老齢厚生年金40万円が先に支給され、遺族厚生年金として差額の50万円が支給されます。妻の老齢基礎年金は別に受け取れます。
65歳未満で、遺族年金と自分の老齢年金・障害年金の両方を受け取る権利がある場合は、原則としてどちらか一方を選ぶことになります。
遺族年金がもらえないときの給付(寡婦年金・死亡一時金)
自営業など国民年金の第1号被保険者が亡くなり、遺族基礎年金を受け取れる遺族がいない場合は、次の給付を受けられることがあります。両方の要件を満たす場合は、どちらか一方を選びます。
| 給付 | 主な要件 | 金額 |
|---|---|---|
| 寡婦年金 | 第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けずに死亡。夫に生計を維持され、婚姻期間が10年以上の妻が、60歳から65歳になるまで受け取る | 夫の第1号被保険者期間で計算した老齢基礎年金の4分の3 |
| 死亡一時金 | 第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けずに死亡。生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順)が受け取る | 納付月数に応じて12万円〜32万円(1回のみ) |
2028年4月からの遺族年金の見直し
2025年6月に成立した年金制度改正法により、2028年4月から遺族年金が見直されます。主な変更点は次のとおりです。
- 子のない配偶者の遺族厚生年金:60歳未満で配偶者を亡くした子のない人は、男女とも原則5年間の有期給付になる。女性は対象年齢を20年かけて段階的に引き上げ、2028年度末時点で40歳以上の女性は対象外
- 有期給付の増額と継続給付:5年間は現行の約1.3倍に増額され、5年後も収入が少ないなどの場合は継続給付を受けられる
- 男性の受給:子のない夫も、60歳未満で妻を亡くした場合に5年間の遺族厚生年金を受け取れるようになる
- 中高齢寡婦加算:新たに発生する加算は、25年かけて段階的に縮小
- 子の遺族基礎年金:親が再婚したり、年収の高い親と暮らしていたりしても、子が遺族基礎年金を受け取れるようになる
すでに遺族厚生年金を受け取っている人や、子がいる間の給付は、この見直しの影響を受けません。「遺族年金が廃止される」「全員が5年で打ち切りになる」というのは誤りです。対象者と金額の詳しい変化は、遺族年金の改正(2028年4月)で解説しています。

遺族年金の手続き
遺族年金は、請求しないと受け取れません。請求できるのは、原則として死亡日の翌日から5年以内です。
請求先
| 請求する年金 | 請求先 |
|---|---|
| 遺族基礎年金のみ | 住所地の市区町村役場(亡くなった日が国民年金の第3号被保険者期間中の場合は、年金事務所または街角の年金相談センター) |
| 遺族厚生年金(遺族基礎年金とあわせて請求する場合を含む) | 年金事務所または街角の年金相談センター |
主な必要書類
- 年金請求書:年金事務所・市区町村役場で受け取るか、日本年金機構のホームページから入手する
- 基礎年金番号がわかるもの:亡くなった人と請求する人の基礎年金番号通知書や年金手帳
- 戸籍謄本:亡くなった人との続柄と、死亡の事実が確認できるもの
- 世帯全員の住民票の写し・亡くなった人の住民票の除票:マイナンバーを記入すれば省略できる場合がある
- 請求する人の収入が確認できる書類:所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など
- 死亡診断書(死体検案書)のコピー
- 受取口座の通帳など
子の在学証明書、事実婚を証明する書類、障害の状態を確認する診断書など、状況によって追加の書類が必要になります。請求の前に、ねんきんダイヤルや年金事務所で確認しておくと手続きが一度で済みます。
請求から受け取りまで
請求後、日本年金機構から「年金証書・年金決定通知書」が届き、その後、偶数月(2・4・6・8・10・12月)の15日に前2か月分が振り込まれます。年金を受けていた人が亡くなった場合は、亡くなった月の分までの「未支給年金」を遺族が請求できるため、遺族年金とあわせて手続きします。
遺族年金に税金はかかる?
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)は、所得税も住民税もかからない非課税の収入です。相続税の対象にもなりません。遺族年金だけを受け取っている場合は、確定申告も不要です。
ただし、自分の老齢年金や給与などは課税されるため、それらについては確定申告や年末調整が必要になることがあります。その際、遺族年金の金額を記入する必要はありません。また、遺族年金は非課税のため、税金の扶養控除の判定では収入に含めません。
よくある質問
働いていても遺族年金はもらえますか?
もらえます。遺族の前年の収入が850万円未満(所得655万5,000円未満)であれば、働いていても受け取れます。遺族年金を受け取り始めた後に収入が増えても、それだけで支給が止まることはありません。
子どもがいない専業主婦でも遺族年金はもらえますか?
夫が会社員・公務員だった場合は、遺族厚生年金を受け取れます(夫の死亡時に30歳未満の場合は5年間のみ)。40歳以上65歳未満なら中高齢寡婦加算もつきます。夫が自営業など国民年金のみだった場合は遺族年金はなく、寡婦年金または死亡一時金の対象になることがあります。
再婚したら遺族年金はどうなりますか?
配偶者が再婚すると、遺族基礎年金・遺族厚生年金とも受け取る権利がなくなります。届出をしていない事実婚も同じです。
夫が70歳以上で亡くなった場合も遺族年金はもらえますか?
もらえます。夫が老齢厚生年金の受給資格(加入期間などが25年以上)を満たしていれば、何歳で亡くなっても、生計を維持されていた妻は遺族厚生年金を受け取れます。金額は夫の報酬比例部分の4分の3が基本で、妻自身の老齢厚生年金がある場合は差額の支給になります。
遺族年金はいつから振り込まれますか?
受給は亡くなった日の翌月分から始まります。請求から年金証書が届くまでに通常数か月かかり、その後の偶数月の15日に、さかのぼった分を含めて振り込まれます。
まとめ
- 遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、亡くなった人の加入状況と遺族の家族構成で、受け取れる年金が決まる。
- 遺族基礎年金は子のある配偶者か子が対象で、2026年度は子1人で年109万1,100円。遺族厚生年金は亡くなった人の報酬比例部分の4分の3。
- 子のない妻は30歳未満なら5年間、30歳以上なら一生涯。夫は55歳以上の場合のみで60歳から。2028年4月からは見直しがある。
- 65歳以上は、自分の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金は差額の支給になる。
- 請求の期限は原則5年。遺族年金は非課税で、確定申告は不要。