従業員が退職した際に必要になるのが「雇用保険被保険者資格喪失届」です。退職後すぐに手続きを進める必要がありますが、「退職日と喪失日は同じ日付でいいの?」「自己都合のコードはどれ?」「離職票が必要かどうかは何を基準に判断すればいい?」といった疑問が出てきがちです。
この記事では、社会保険労務士が、各項目の書き方を記入例とともに解説します。離職理由コードを巡るトラブルを防ぐ方法や、本人署名の取り方、提出期限を過ぎてしまった場合の対応、電子申請の手順まで社労士が解説していますのでぜひ最後まで読んでください。
- 雇用保険被保険者資格喪失届の各項目の正しい書き方と記入例
- 「退職日」と「喪失日」の日付の関係と、最多の記入ミスを防ぐポイント
- 自己都合・会社都合・退職勧奨の喪失原因コードの正しい判定方法
- 離職証明書の本人署名が取れない場合の対処法と付記文言
- 提出期限(退職翌日から10日以内)を過ぎた場合の対応手順と電子申請の手順

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloop代表
社会保険労務士として、建設・介護・医療・IT業界など累計100社以上の労務顧問を担当。 労務DD・就業規則作成・人事評価制度構築・給与計算/社会保険手続きなどの実務に精通し、高難易度な労務DD案件も多数対応。
現在は全国対応で、大手からスタートアップまで幅広く支援しています。
登録番号:13250298
雇用保険被保険者資格喪失届とは
どんな時に提出が必要か
雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険の被保険者であった従業員が資格を失った際に、ハローワークへ届け出るための書類です。
提出が必要になる主なケースは次のとおりです。
- 従業員が退職した時(自己都合・会社都合・定年・契約期間満了など)
- 役員へ昇格し、労働者としての雇用関係が終了する時
- 所定労働時間が短縮されて雇用保険の加入要件(週20時間以上)を下回った時
- 在籍出向で出向先が雇用保険に加入させる場合
- 従業員が死亡した時
提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。提出期限は資格喪失日(退職日の翌日)から10日以内で、正当な理由なく手続きを怠った場合は雇用保険法第83条に基づき、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
資格喪失届だけでは離職票は発行されない
資格喪失届と離職票は別の手続きです。この点を誤解している担当者が多いため、最初に整理しておきます。
| 書類名 | 役割 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号) | 被保険者が資格を失った事実をハローワークに届け出る書類 |
| 雇用保険被保険者離職証明書 | 退職者が失業給付を受けるために必要な書類(離職票の元になる) |
退職者が失業給付を申請する可能性がある場合は、資格喪失届と離職証明書をセットで同時に提出します。離職票が不要な場合(定年退職後にすぐ再就職が決まっている場合など)は、資格喪失届だけで構いません。
社労士 野澤惇この記事では資格喪失届の書き方を中心に解説します。
「退職日」と「喪失日」の関係
「喪失日」は退職日の「翌日」
資格喪失届で最も多い記入ミスが、退職日と喪失日を同じ日付で書いてしまうことです。
雇用保険の資格は退職日まで継続していて、退職日の翌日に喪失します。つまり喪失日は、退職日の1日後になります。
日付の対応関係を表で確認しておきましょう。
| 事象 | ④離職年月日(退職日) | 喪失年月日(ハローワーク処理) |
|---|---|---|
| 3月31日に退職 | 3月31日 | 4月1日 |
| 12月31日に退職 | 12月31日 | 翌年1月1日 |
| 死亡(4月5日) | 4月5日(死亡日) | 4月6日 |
| 役員就任(4月1日付) | 3月31日(就任前日) | 4月1日 |
年をまたぐケースや役員就任の場合も、考え方は同じです。「退職した日の翌日が喪失日」と覚えておけば迷いません。
「離職年月日」欄と喪失年月日の区別
届出の様式における④欄「離職年月日」には、退職日(最後に被保険者であった日)を記入します。
喪失年月日(退職日の翌日)は、ハローワーク側で「④欄の翌日」として処理されます。届出書に喪失年月日を別途記入する欄はないため、④欄に退職日を書けばそれで完結します。
また、提出期限の起算日は「資格喪失日(退職日の翌日)」から10日以内です。例えば3月31日退職の場合、喪失日は4月1日となり、4月10日が提出期限です。
【雇用保険被保険者資格喪失届】各項目の書き方


出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)記入例」
⑩欄「個人番号(マイナンバー)」の書き方


退職者の12桁のマイナンバーを記入します。
記入前に、本人確認と番号確認の両方を行います。マイナンバーカードがあれば1枚で両方の確認が可能です。カードがない場合は、通知カードや住民票などで番号確認を行い、運転免許証などで本人確認を行います。
マイナンバーが記載された書類を郵送する場合は、情報漏えいを防ぐために特定記録郵便または簡易書留を使用してください。
退職者がマイナンバーの提供を拒否した場合は、強要することはできません。「本人事由によりマイナンバー届出不可」と届出書の余白に付記して提出する対応をとります。
①欄「被保険者番号」の書き方


雇用保険被保険者証に記載されている10桁の番号を転記します。
会社で被保険者証を保管している場合はそのまま確認できますが、被保険者証を従業員本人に渡している場合は本人に番号を確認するか、管轄のハローワークに照会して番号を確かめてください。
②欄「事業所番号」の書き方


会社に付与された11桁の雇用保険事業所番号を記入します。不明な場合は、雇用保険料の納付書や雇用保険適用事業所台帳に記載されているため、そちらで確認してください。
「氏名・生年月日」および④欄「離職年月日」の書き方




氏名は住民票に記載された正式な氏名を使用します。婚姻などによる氏名変更があった場合は変更後の氏名を記入してください。
生年月日は元号区分のコードと年月日をセットで記入します。雇用保険の元号コードは、昭和が「3」、平成が「4」、令和が「5」です。例えば昭和50年4月1日生まれの場合は「3-500401」と記入します。
④欄「離職年月日」には退職日(最後に被保険者であった日)を記入します。前のH2で解説したとおり、喪失日(翌日)ではなく退職日を記入する点に注意してください。
⑤欄「喪失原因」の書き方


喪失原因は次の3つのコードから選択します。
| コード | 区分 | 主に該当するケース |
|---|---|---|
| 1 | 離職以外の理由 | 死亡・在籍出向(出向先が雇用保険に加入させる)・船員保険の加入 |
| 2 | 3以外の離職 | 自己都合退職・定年退職・役員就任・契約期間満了・懲戒解雇(重責解雇) |
| 3 | 事業主都合の離職 | 会社都合による解雇・退職勧奨・希望退職者の募集 |
最も多い記入ミスは、退職勧奨をコード2(自己都合)で記入してしまうことです。退職勧奨はコード3(事業主都合)が正しい選択です。
コード3を選択すると退職者は「特定受給資格者」として扱われ、失業給付の給付制限がなくなり、受給日数も有利になります。コードを誤って記入すると退職者が不利益を受けるリスクがあるため、実態に即した正確な判断が必要です。
なお、契約期間満了による退職は原則としてコード2ですが、雇い止めが労働者の意思に反する場合はコード3になることもあります。
⑥欄「離職票交付希望」の書き方


次の2つのうちどちらかを記入します。
| 記入値 | 意味 | 選択するケース |
|---|---|---|
| 1 | 交付希望あり | 退職者が失業給付を受ける可能性がある場合(ほとんどの退職) |
| 2 | 交付希望なし | 定年退職後すぐに再就職が決まっている・65歳以上の退職者など |
退職者本人に必ず確認してから記入してください。後から「やっぱり離職票が必要だった」となると再申請が必要になり、失業給付の申請時期が遅れる原因になります。判断に迷う場合は「1(必要)」で申請しておくのが実務上の安全策です。
離職票が不要な場合でも、資格喪失届の提出義務はあります。
⑦欄「1週間の所定労働時間」の書き方


就業規則や雇用契約書で定めた1週間の所定労働時間を記入します。残業時間は含めません。
例えば週40時間の場合は「4000」のように、時間と分を連続する4桁の数字で記入します。パートタイム労働者で所定労働時間が短縮された場合は、実際の所定労働時間を記入してください。
離職理由の確認と本人の署名


出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者離職証明書(様式第5号)記入例」
離職証明書の離職理由欄と本人署名の関係
資格喪失届の⑧欄は3つのコードで記入しますが、実際の離職理由の詳細は「雇用保険被保険者離職証明書(離職票の元になる書類)」の離職理由欄に記入します。
この離職証明書の離職理由欄については、事業主が記入した後で退職者本人が内容を確認し、署名または押印することが求められています。
本人署名はハローワークが離職理由を判定する際の重要な根拠となります。「異議なし」の確認として機能するため、退職前にできる限り取得しておくことが大切です。
退職者の署名をもらう実務手順
退職者の署名を取得する流れは次のとおりです。
この場合、ハローワークが事実確認を行い最終的な離職理由を判定する。
退職者とどうしても連絡が取れない場合は、「退職者と連絡が取れないため署名等を求めることができない」旨を離職証明書に付記してそのままハローワークへ提出します。ハローワーク側で事実確認を行います。
「退職勧奨vs自己都合」のコードを巡るトラブル防止
退職理由をめぐる最も多いトラブルが、会社がコード2(自己都合)で記入したところ、退職者が「退職勧奨だった」と主張するケースです。
このトラブルを防ぐための実務対策をまとめます。
まず、退職勧奨を行う場合は必ず書面を残すことです。退職勧奨通知書や面談記録を作成し、保管しておきましょう。
また、退職届に「一身上の都合により」と記載させたとしても、実態が退職勧奨であればコード3が正しい選択です。退職届の文言でコードが決まるわけではなく、あくまでも実態で判断します。
離職証明書の離職理由欄に実態に即したコードを記入し、退職者の署名をもらっておくことが、後の争いを防ぐ最も有効な対策となります。
提出期限と期限超過時の対応
提出期限——退職日の翌日(喪失日)から10日以内
提出期限は、資格喪失日(退職日の翌日)から起算して10日以内です。
例として確認すると、3月31日退職の場合は喪失日が4月1日となるため、提出期限は4月11日になります。10日目が土日・祝日の場合は翌営業日が期限になります。
手続きを怠った場合の罰則は、雇用保険法第83条に基づき6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
期限を過ぎた場合の対処
期限を過ぎてしまっても、届出は受理されます。気づいた時点でできるだけ早く対応してください。
ただし、提出が遅れると退職者への影響が連鎖的に発生します。離職票の交付が遅れれば失業給付の申請手続きが進まず、次の就職先での雇用保険資格取得手続きにも支障が生じます。元の従業員に状況を説明した上で、速やかに手続きを進めることが必要です。
遅延提出の際にハローワークから求められることがある書類は次のとおりです。ハローワークによって対応が異なるため、持参前に電話で確認するのが確実です。
- 遅延理由書(様式は自由形式。遅れた理由・対象者の氏名・退職年月日を記入する)
- 雇用契約書のコピー・退職届のコピー
- 賃金台帳・出勤簿(退職前後の状況を証明するもの)
電子申請(e-Gov)での提出手順
電子申請の前提条件と準備
e-Govで電子申請を行うには、GビズIDプライムアカウントが必要です。取得まで数日〜2週間程度かかるため、余裕を持って事前に申請しておきましょう。
なお、資本金1億円を超える法人については2020年4月から電子申請が義務化されています。
e-Govでの申請手順
プルダウンメニューが表示され、当該手続きを選択し、検索ボタンを押下する。
※「状況から探す」のカテゴリーからは、当該手続きは表示されないので、注意する。




















「内容を確認」ボタンを押下し、エラーが無いことを確認の上、申請ボタンを押下する。


給与計算ソフト・労務システムとの連携
SmartHR・マネーフォワードクラウド・freee人事労務などの労務管理システムを使用している場合は、そのシステムから直接電子申請が可能です。
システムに登録された従業員データと連携して資格喪失届や離職証明書を自動作成できるため、入力の手間が大幅に減ります。複数名の退職手続きを同時に処理する場合にも特に効率的です。
使用しているシステムがe-Govとの連携に対応しているかどうか、事前に確認しておきましょう。
電子申請時の注意点
電子申請を行う際に気をつけておきたいポイントをまとめます。
- 離職証明書も同一手続きで電子申請できます。資格喪失届だけ電子申請して離職証明書は別途窓口に持参するという二度手間を避け、まとめて申請するのが効率的です。
- マイナンバーを含むデータを送信するため、使用するパソコンやネットワークのセキュリティ設定を事前に確認してください。
- 到達確認番号は必ず保存しておきましょう。申請の証拠となる重要な情報です。
- 申請後に喪失原因コードなどの誤りに気づいた場合は、e-Gov上での取り消しが原則できないため、管轄のハローワークへ電話で連絡し、訂正方法の指示を受けてください。
よくある質問
- 「退職日」と「喪失日」のどちらを届出に書けばいいですか?
-
届出の④欄「離職年月日」には退職日(最後に被保険者であった日)を記入します。喪失日(退職日の翌日)はハローワーク側で処理されるため、届出書に別途記入する必要はありません。提出期限の起算日は「喪失日(退職日の翌日)」から10日以内です。
- 退職勧奨のコードは「2」ですか「3」ですか?
-
退職勧奨はコード3(事業主都合の離職)を選択します。コード3を選ぶと退職者は特定受給資格者として、失業給付の給付制限なし・給付日数も長くなる扱いを受けられます。コード2(自己都合)と誤って記入すると退職者が不利益を受けるため、実態に即した正確なコード選択が重要です。
- 離職票が必要かどうかを退職者に確認する前に提出してしまいました。後から変更できますか?
-
後からハローワークへ離職証明書を追加提出することはできますが、手続きに時間がかかり失業給付の申請時期が遅れる影響があります。退職前に必ず本人に確認することを習慣づけてください。
- 退職者と連絡が取れず離職証明書に署名をもらえません。どうすればいいですか?
-
「退職者と連絡が取れないため署名等を求めることができない」旨を離職証明書に付記して提出してください。ハローワーク側で事実確認が行われ、離職理由が判定されます。退職前の面談記録や退職届など証拠書類を保管しておくと、後から退職者に異議申し立てをされた場合にも対応しやすくなります。
- 提出期限の10日を過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
-
できるだけ早く管轄のハローワークへ連絡し、速やかに提出してください。期限超過でも届出は受理されます。ただし提出が遅れると退職者の失業給付申請が遅れ、次の就職先での手続きにも影響します。まず元従業員に状況を説明し、遅延理由書の要否をハローワークに確認してから提出するのが確実です。
- 電子申請で提出した後に喪失原因コードを誤って記入したことに気づきました。どう対処すればいいですか?
-
管轄のハローワークへ電話で連絡し、訂正方法の指示を受けてください。e-Gov上での提出後の取り消しは原則できないため、ハローワークの指示に従って訂正の手続きを進めることになります。


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まとめ
雇用保険の資格喪失手続きは、退職した従業員のその後の生活や失業給付の受給に直結する重要な業務です。会社と退職者双方のトラブルを防ぎ円滑に送り出すためにも、実態に即した正確な内容での迅速な申請を心がけましょう。
- ④欄には「退職日」を記入し、喪失日(翌日)から10日以内に提出する
- 退職勧奨は、不利益を防ぐため「コード3(事業主都合)」で記入する
- 本人署名が取れない場合は、理由を付記してそのまま提出する
- 期限超過でも受理されるため、遅れた場合も速やかに提出する
- e-Govや労務システムによる電子申請で、手続きを大幅に効率化できる
退職手続きや離職理由の判断にお悩みなら、ぜひ当事務所へご相談ください。
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