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固定残業代(みなし残業代)とは?有効要件・計算方法・無効になるケースを社労士・弁護士が解説

「残業代の計算が毎月大変なので、固定残業代にしたい」「求人で月給を高く見せたいので、みなし残業を入れている」。固定残業代(みなし残業代)は、多くの中小企業で使われている賃金の決め方です。

しかし、固定残業代は最高裁判所が有効と認める要件がはっきりしており、書き方や運用を誤ると無効になります。無効になると、固定残業代は残業代を払ったことにならないうえ、残業代の計算の基礎にまで含まれ、過去3年分の未払い残業代を請求される事態になります。

2026年10月の最低賃金の改定で、知らないうちに違反になっている会社も少なくありません。

この記事では、固定残業代の仕組み、有効と認められる要件と最高裁判例、無効になるケースと未払い額の試算、計算方法と最低賃金の確認、導入・運用・廃止の注意点まで、社会保険労務士・弁護士が解説します。

この記事のサマリ
  • 固定残業代は、一定時間分の残業代をあらかじめ定額で支払う仕組み。設定した時間を超えた分は、別に残業代を支払う必要がある。
  • 有効と認められるには、通常の賃金と残業代の部分が区別できること(明確区分性)と、時間外労働の対価として支払われていること(対価性)の2つが必要。
  • 無効になると、固定残業代は支払済みと認められず、残業代の計算の基礎にも含まれる。月給30万円・30時間分の例では、1人あたり3年で約255万円の未払いになる。
  • 最低賃金は固定残業代を除いた額で判定する。東京都では月給25万円に30時間分を組み込むと、2026年10月からの最低賃金1,280円を下回る。
  • 今の給与を分解して固定残業代を作る導入方法は、不利益変更にあたり、最高裁で否定されたケースもある。
監修者
中内康裕_プロフィール写真

【中内 康裕 | 弁護士】
法律事務所 sui/株式会社altruloopホールディングス
会社法務・知的財産・訴訟対応を中心に、スタートアップから事業者まで幅広く支援。アンダーソン・毛利・友常法律事務所、三村小松法律事務所を経て、特許庁商標課にて法務調査員(任期付公務員)を歴任。現在は文化服装学院 非常勤講師・知的財産管理技能検定 試験委員を務め、商標・ファッションロー分野の第一線で活動。『年報知的財産法』ほか共編著・寄稿多数。
第一東京弁護士会 所属 | 登録番号:58036

監修者
野澤惇_プロフィール写真

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

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目次

固定残業代(みなし残業代)とは

固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず、一定時間分の残業代を毎月定額で支払う仕組みです。「みなし残業代」「定額残業代」とも呼ばれます。たとえば「固定残業手当 5万8,000円(30時間分)」のように定めます。

固定残業代を払っていても、設定した時間を超えて残業した分は、別に残業代を支払わなければなりません。「固定残業代を払えば、それ以上の残業代は不要」という制度ではない点が、最も誤解の多いところです。

手当型と組込型

型給与の表示例特徴
手当型基本給 25万円
固定残業手当 5万8,000円(30時間分)
基本給と残業代が別の項目なので区分がはっきりしている。トラブルになりにくい
組込型基本給 30万8,000円
(うち固定残業代 5万8,000円・30時間分を含む)
基本給の中に残業代を含める。内訳の金額と時間を明示しないと無効になりやすい

どちらも適法になり得ますが、これから導入するなら手当型が安全です。組込型は「基本給に残業代込み」とだけ書いて内訳を示していないケースが多く、無効と判断される典型例になっています。

みなし労働時間制(裁量労働制など)との違い

名前が似ている「みなし労働時間制」は、まったく別の制度です。

項目固定残業代みなし労働時間制
何を「みなす」か残業代の金額(賃金の払い方)労働時間そのもの
対象職種を問わず導入できる事業場外労働、専門業務型・企画業務型裁量労働制に限られる
手続き就業規則・雇用契約への定め裁量労働制は労使協定や労使委員会の決議と届出が必要
実際の労働時間の管理必要(超過分を精算するため)みなし時間で計算する(健康管理のための時間把握は必要)

会社にとってのメリット・デメリット

メリットは、毎月の人件費の見通しが立てやすいこと、残業が少ない従業員にも一定額を払うことで効率よく働く動機づけになること、求人で月給の総額を示せることです。

一方で、残業がない月も固定残業代を払う必要があること、超過分の精算を怠ると未払いになること、そして要件を満たさないと無効になり、かえって大きな未払いを抱えるリスクがあることがデメリットです。

固定残業代が有効と認められる2つの要件

固定残業代について、労働基準法に直接の定めはありません。有効かどうかは、最高裁判所の判例で示された基準で判断されます。

要件①:明確区分性(通常の賃金と残業代の部分が判別できること)

給与のうち、どこまでが通常の労働時間の賃金で、どこからが残業代なのかを判別できることが必要です。判別できなければ、法律どおりの残業代が払われているかを確認できないためです。雇用契約書や賃金規程に、固定残業代の金額と、それが何時間分の残業代なのかを明記します。

要件②:対価性(時間外労働の対価として支払われていること)

その手当が、実質的に時間外労働の対価として支払われていることが必要です。契約書の記載、会社からの説明、実際の残業時間との乖離などから判断されます。名目上は「固定残業手当」でも、実際の残業時間とかけ離れていたり、通常の賃金を置き換えるために使われていたりすると、対価性が否定されます。

判例の流れ

判例事案の概要判断のポイント
高知県観光事件(最高裁平成6年6月13日判決)タクシー運転手の歩合給に、残業代が含まれていると会社が主張通常の賃金と残業代の部分を判別できず、残業代の支払いと認めなかった
テックジャパン事件(最高裁平成24年3月8日判決)月給制で、月180時間を超えた分だけ残業代を払う約定180時間以内の時間外労働の残業代が、月給のどこに含まれるか判別できないとした
医療法人康心会事件(最高裁平成29年7月7日判決)年俸1,700万円の医師について、残業代は年俸に含むと合意高額の年俸でも、残業代の部分を判別できなければ支払いと認めないとした
日本ケミカル事件(最高裁平成30年7月19日判決)薬剤師に「業務手当」を時間外手当として支給契約書の記載、説明の内容、実際の残業時間との乖離から、時間外労働の対価と認めて有効とした
国際自動車事件(最高裁令和2年3月30日判決)歩合給の計算で、残業代に相当する額を差し引く仕組み残業代の名目で、実質的に通常の賃金を置き換えているとして、対価性を否定した
熊本総合運輸事件(最高裁令和5年3月10日判決)賃金の総額を変えずに、残業代と「調整手当」の内訳を組み替えた新しい賃金体系通常の賃金を残業代に振り替えたものとして、新体系で払われた割増賃金の支払いを認めなかった

2017年までの判例は「区別できるか」が中心でしたが、2018年の日本ケミカル事件以降は「本当に残業の対価として払っているか」という実質面が重視されています。

契約書の書き方だけ整えても、運用の実態が伴わなければ無効になるという流れです。

超過分を毎月精算していることも前提になる

固定残業代で想定した時間を超えて残業した月は、その超過分を追加で支払う必要があります。超過分を一度も払ったことがない、あるいは残業時間を記録していないといった運用は、対価性を否定される大きな要因になります。

固定残業代が無効になるケース

基本給との区分がない

「基本給30万円(残業代を含む)」のように、金額や時間数を示さずに「残業代込み」とだけ書いているケースです。明確区分性を満たさず、無効になる典型例です。雇用契約書だけでなく、給与明細の表示も区分しておく必要があります。

時間設定が長すぎる

36協定の原則の上限は月45時間です。これを大きく超える時間を固定残業代に設定すると、長時間労働を前提にした制度とみなされ、無効と判断されるおそれがあります。基本給に月80時間分の残業代を含める定めについて、公序良俗に反し無効とした裁判例もあります(イクヌーザ事件・東京高裁平成30年10月4日判決)。

上限の考え方は36協定の特別条項とはで解説しています。

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超過分を払っていない・残業時間を記録していない

固定残業代で想定した時間を超える残業があるのに、追加の残業代を払っていないケースです。超過分の未払いそのものが違法なうえ、制度全体の有効性も否定されやすくなります。

契約書・説明・実態が食い違っている

契約書では「30時間分」としているのに、実際の残業は毎月80時間を超えている、あるいはほとんど残業がないのに高額の固定残業代を払っているといったケースです。実態とかけ離れていると、対価性が否定されることがあります。

今の給与を分解して固定残業代を作った

月給の総額を変えずに、基本給を下げて差額を固定残業代に振り替える方法です。熊本総合運輸事件の後、この方法は特にリスクが高くなっています。後述する不利益変更の問題もあわせて生じます。

無効になると未払い額はいくらになるか

「支払済み」と認められず、残業代の計算の基礎にも入る

固定残業代が無効になると、会社は次の2つの負担を同時に負います。

  • 支払済みと認められない:固定残業代として払ってきた額は、残業代を払ったことにならない
  • 計算の基礎が上がる:固定残業代は通常の賃金の一部とみなされ、1時間あたりの賃金が高くなる

つまり、払ってきたはずの残業代がゼロ扱いになったうえで、より高い単価で残業代を計算し直すことになります。

試算:月給30万8,000円・固定残業代30時間分の場合

次の条件で、毎月30時間の残業をしている従業員1人について試算します。

  • 基本給 25万円、固定残業手当 5万8,000円(30時間分)
  • 年間休日120日、1日の所定労働時間8時間(月平均所定労働時間は約163.3時間)
項目固定残業代が有効な場合固定残業代が無効な場合
1時間あたりの賃金25万円 ÷ 163.3時間 = 約1,531円30万8,000円 ÷ 163.3時間 = 約1,886円
30時間分の残業代約1,531円 × 1.25 × 30時間 = 約5万7,400円(固定残業手当の範囲内)約1,886円 × 1.25 × 30時間 = 約7万700円
支払済みと認められる額5万8,000円0円
毎月の未払い額0円約7万700円
3年分の未払い額0円約255万円

同じ条件の従業員が10人いれば、未払い額は約2,550万円になります。残業代の請求権の時効は当分の間3年とされているため、最大3年分をさかのぼって請求されます。

付加金・遅延損害金のリスク

裁判になると、未払い額に加えて、同じ額までの付加金の支払いを命じられることがあります(労働基準法114条)。さらに遅延損害金も加わり、退職した従業員の未払い賃金には年14.6%の利率がかかります(賃金の支払の確保等に関する法律6条)。

1人の退職者からの請求をきっかけに、在職中の従業員にも同じ問題が広がることが、固定残業代の無効の最も大きなリスクです。

固定残業代の計算方法

1時間あたりの賃金の出し方

固定残業代の額は、次の式で計算します。

固定残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率(1.25以上)× 固定残業時間

1時間あたりの賃金は、月給制なら「割増賃金の基礎となる賃金 ÷ 月平均所定労働時間」で求めます。月平均所定労働時間は「(365日 - 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月」です。

割増賃金の基礎となる賃金からは、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除くことができます。ただし、家族手当や住宅手当でも、扶養家族の人数や家賃に関係なく一律に支給している場合は除けません。

手当型の計算例

基本給25万円、年間休日120日、1日8時間、固定残業時間30時間の場合は次のとおりです。

  • 月平均所定労働時間:(365日 - 120日)× 8時間 ÷ 12か月 = 約163.3時間
  • 1時間あたりの賃金:25万円 ÷ 163.3時間 = 約1,531円
  • 固定残業代:約1,531円 × 1.25 × 30時間 = 約5万7,400円

端数を切り上げて「固定残業手当 5万8,000円(30時間分)」と定めれば、法律どおりの額を下回りません。

組込型の計算例(総額から逆算する)

月給の総額を先に決めて、その中に固定残業代を含める場合は、総額から逆算します。

基本給部分 = 月給総額 ÷(1 + 固定残業時間 × 1.25 ÷ 月平均所定労働時間)

月給25万円に30時間分を含める場合は、25万円 ÷(1 + 30 × 1.25 ÷ 163.3)= 約20万3,300円が基本給部分、残りの約4万6,700円が固定残業代になります。

最低賃金を割り込んでいないかの確認

最低賃金を満たしているかは、固定残業代を除いた額で判定します。時間外労働に対する賃金は、最低賃金の計算に含めないためです。

上の組込型の例を東京都で確認すると、基本給部分 約20万3,300円 ÷ 163.3時間 = 約1,245円です。

※東京都の最低賃金は2026年10月1日から1,280円に引き上げられたため、月給25万円でも最低賃金を下回ります。

2026年度の最低賃金は全国加重平均で1,177円となり、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効します。毎年の改定のたびに、固定残業代を除いた額で確認することが欠かせません。

固定残業時間は何時間に設定すべきか

固定残業時間は、36協定の原則の上限である月45時間以内に収めます。45時間を超える設定は、特別条項の臨時的な運用を毎月前提にしていることになり、無効のリスクも高まります。

実務では、過去6か月〜1年の実際の残業時間の平均をもとに、20〜30時間程度で設定する会社が多く見られます。実態より大幅に長い時間を設定すると、対価性の点でも説明が難しくなります。

導入するときの手続き

就業規則・賃金規程の記載例

(固定残業手当)
第〇条 固定残業手当は、時間外労働に対する割増賃金として、個別の雇用契約で定める時間数に相当する額を支給する。
2 固定残業手当の額は、第〇条に定める割増賃金の計算方法により、前項の時間数に相当する時間外労働の割増賃金として算定した額以上とする。
3 実際の時間外労働に対する割増賃金の額が固定残業手当の額を超えた場合は、その差額を当該賃金計算期間の賃金支払日に支給する。
4 固定残業手当は時間外労働の対価とし、休日労働および深夜労働に対する割増賃金は別途支給する。

賃金規程の全体の作り方は賃金規程のサンプル・ひな形で解説しています。

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雇用契約書・労働条件通知書の記載例

雇用契約書には、次の3点を必ず記載します。

  • 固定残業代を除いた基本給の額
  • 固定残業代の額と、それが何時間分の時間外労働に当たるか
  • 固定残業時間を超えた時間外労働、休日労働、深夜労働には追加で割増賃金を支払うこと

記載例:「基本給 25万円/固定残業手当 5万8,000円(時間外労働30時間分。30時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対しては、別途割増賃金を支給する)」

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求人票での明示

求人で固定残業代を採用している場合は、職業安定法に基づく指針により、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代の時間数と金額などの計算方法、固定残業時間を超える時間外労働などに追加の割増賃金を支払う旨を明示する必要があります。

既存の従業員に導入する場合は不利益変更になる

今の給与の総額を変えずに、基本給の一部を固定残業代に振り替えると、残業代の計算の基礎が下がり、従業員にとって不利益な変更になります。従業員一人ひとりの自由な意思に基づく同意か、就業規則の変更の合理性が必要で、熊本総合運輸事件のように、振り替えた部分が残業代の支払いと認められないリスクもあります。

既存の従業員に導入するなら、今の給与に固定残業代を上乗せする形が原則です。総額を変えずに導入せざるを得ない場合は、事前に専門家に相談したうえで進める必要があります。不利益変更の進め方は就業規則の不利益変更を安全に行う手順で解説しています。

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毎月の給与計算での運用

超過分の精算

毎月の勤怠を締めたら、実際の時間外労働の時間を固定残業時間と比べ、超えた分を追加で支払います。固定残業代を導入していても、労働時間の把握と記録は省略できません。

深夜・休日労働は別に支払う

固定残業代を時間外労働の対価として定めている場合、深夜労働(22時〜5時)の割増と、法定休日の労働の割増は別に支払います。固定残業代に深夜・休日分も含める場合は、それぞれの時間数と金額を区分して定める必要があり、計算が複雑になるため、時間外労働だけに限定する方が運用しやすくなります。

欠勤・遅刻・早退・有給休暇のときの扱い

  • 欠勤・遅刻・早退:固定残業代を減額するかどうかは、賃金規程の定めによる。減額しないと定める会社が多い
  • 有給休暇:有給休暇を取得した月も、固定残業代は減額せずに支払うのが一般的
  • 月の途中の入社・退職:日割り計算の対象にするかどうかを賃金規程で決めておく

給与明細への表示

給与明細では、固定残業代と、超過分として追加で支払った残業代を別の項目で表示します。毎月の明細で区分が見えることが、明確区分性と対価性を裏付ける記録にもなります。給与計算のミスを防ぐ方法は給与計算ミスを徹底防止で解説しています。

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固定残業代を見直す・廃止するとき

働き方の見直しで残業が減った場合、固定残業時間を減らしたり、固定残業代そのものを廃止したりすることがあります。このとき、固定残業代を減らして給与の総額が下がる場合は、不利益変更になります。

  • 減らした固定残業代の一部を基本給に組み入れ、総額の減少を抑える
  • 一定期間、差額を「調整手当」として支給し、段階的に減らす経過措置を設ける
  • 従業員への説明会を開き、個別に同意書を取得する

逆に、固定残業代を廃止して実際の残業時間どおりに払う形に切り替えると、残業が少ない従業員は手取りが減る一方、会社は無効のリスクを解消できます。どちらを選ぶかは、実際の残業時間の分布を見て判断します。

よくある質問

残業がゼロの月も、固定残業代は全額払う必要がありますか?

必要です。固定残業代は、実際の残業時間にかかわらず定額を支払う約束なので、残業がなかった月も減額できません。残業が少ない月に減額する運用をしていると、固定残業代ではなく実際の残業代の一部と見られ、制度の説明が成り立たなくなります。

管理監督者に固定残業代は必要ですか?

労働基準法上の管理監督者には、時間外労働と休日労働の割増賃金の規定が適用されないため、固定残業代は不要です。ただし深夜労働の割増は必要です。肩書きが管理職でも実態が管理監督者に当たらなければ、残業代を払う必要があり、固定残業代の有効性も問題になります。

固定残業代は賞与や退職金の計算に含めますか?

賞与や退職金の計算の基礎に何を含めるかは、会社の規程で決めます。「基本給 × 〇か月」と定めていれば、手当型の固定残業代は含まれません。組込型の場合は、基本給に固定残業代が含まれてしまうため、規程で「固定残業代を除いた額」と明記しておく必要があります。

固定残業代は社会保険料の計算に含まれますか?

含まれます。固定残業代は毎月支払われる労働の対償なので、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額の計算に含めます。固定残業代を新設したり金額を変えたりして固定的賃金が変わった場合は、月額変更届の対象になることがあります。

まとめ

本記事のまとめ
  • 固定残業代は、一定時間分の残業代を定額で払う仕組み。超過分は別に払う必要がある。
  • 有効と認められるには、明確区分性と対価性の2つが必要。2018年以降の判例は、運用の実態を重視している。
  • 無効になると、支払済みと認められず、計算の基礎も上がる。1人で3年分数百万円の未払いになり得る。
  • 最低賃金は固定残業代を除いた額で判定する。毎年の改定のたびに確認する。
  • 既存の従業員への導入や見直し・廃止は、不利益変更の手順を踏んで進める。

社労士事務所altruloopでは、今の固定残業代の定めと給与計算の運用を確認し、無効のリスクと未払い額の試算、賃金規程・雇用契約書の見直しまで対応しています。紛争になった場合の対応は、グループの弁護士と連携して進めます。

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監修者

【野澤 惇|社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

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