従業員代表(過半数代表/労働者代表)の正しい選び方とは?なれる人・選出方法・無効になるケースを社労士が解説

本記事では、36協定や就業規則の場面で必要になる「従業員代表(過半数代表者)」の正しい選び方を、なれる人・なれない人の要件、具体的な選出方法、無効になってしまうケース、実務の進め方までを社労士がわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 従業員代表・労働者代表・過半数代表者の関係と、選出が必要な場面
  • 従業員代表になれる人・なれない人(3つの要件)
  • 従業員代表の正しい選び方(選出方法と母数の数え方)
  • 選び方を間違えて労使協定が無効になるNGパターン
  • 選出の実務手順(5ステップ)と会社が負う義務
この記事の著者
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【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloop代表
社会保険労務士として、建設・介護・医療・IT業界など累計100社以上の労務顧問を担当。 労務DD・就業規則作成・人事評価制度構築・給与計算/社会保険手続きなどの実務に精通し、高難易度な労務DD案件も多数対応。
現在は全国対応で、大手からスタートアップまで幅広く支援しています。
登録番号:13250298

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目次

従業員代表(労働者代表・過半数代表者)とは?

3つの呼び方は同じ意味

まず、従業員代表・労働者代表・過半数代表者は、いずれも同じものを指す呼び方です。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
労働基準法36条 時間外及び休日の労働

法令上の正式な表現は「労働者の過半数を代表する者」で、労働基準法第36条などに登場します。

実務では「従業員代表」「労働者代表」「過半数代表者」が混在して使われますが、意味は同じと考えて大丈夫です。

社会保険労務士 野澤惇

本記事では従業員代表で統一して記載しています。

従業員代表を選出する必要がある場面

従業員代表が必要になるのは、会社が従業員側と何らかの取り決めをする場面です。代表的なのは次のケースです。

  • 36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結するとき
  • 就業規則を作成・変更し、意見を聴くとき(労働基準法90条)
  • 変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制などの労使協定を結ぶとき
  • 賃金控除に関する協定(社宅費の天引きなど)を結ぶとき

いずれの場面でも、従業員側の代表として協定に署名したり、意見書を提出したりする相手方が従業員代表です。

社会保険労務士 野澤惇

36協定は多くの会社が毎年締結・届出するため、代表選出が最も頻繁に必要になる場面といえます。

過半数労働組合がある場合は選出不要

一点、例外があります。
事業場に従業員の過半数で組織する労働組合(過半数組合)がある場合は、その組合が協定の相手方になります。

この場合、従業員代表を別に選ぶ必要はありません。

社会保険労務士 野澤惇

日本の中小企業の多くは労働組合を持たないのが実情です。そのため実務では、従業員代表を選出しなければならない会社が大半を占めます。

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従業員代表になれる人・なれない人【3つの要件】

従業員代表になれる3つの要件

従業員代表になれるかどうかは、厚生労働省が示す次の3つの確認事項で判断します。

  1. 事業場の全従業員の過半数を代表していること
  2. その選出にあたり、すべての労働者が参加できる民主的な手続きがとられていること
  3. 労働基準法上の管理監督者に該当しないこと

この3つをすべて満たして初めて、有効な従業員代表となります。逆に、どれか一つでも欠けると、選出は無効になり得ます。

管理監督者は「代表になれない」が「母数には入る」

管理監督者は従業員代表になれませんが、過半数を数えるときの母数(分母)には含めます。

管理監督者とは、部長・課長といった役職名で決まるものではありません。

経営者と一体的な立場で労務管理の権限を持ち、待遇面でも相応の処遇を受けている実態のある人を指します。この管理監督者は、代表に選ぶことができません(被選挙権なし)。

一方で、代表を選ぶ投票などには加わることができ、過半数の分母にも数えます。「管理監督者を除いた人数の過半数」で選んでしまうと、母数がずれて無効になる恐れがあるため注意しましょう。

パート・アルバイト・契約社員も従業員代表の対象になる

雇用形態による制限はありません。正社員だけでなく、契約社員・パートタイマー・アルバイト・嘱託社員も、選出に参加でき、従業員代表にもなれます。

母数を数えるときも同じで、その事業場で働くすべての労働者が基準です。休職中の人や育児・介護休業中の人も、在籍していれば母数に含めます。

社会保険労務士 野澤惇

派遣社員は派遣元の従業員として扱うため、派遣先の母数には入れません。「正社員だけで数える」という点には十分ご注意ください。

従業員代表の正しい選び方(選出方法)

民主的な手続きで選ぶ

選び方は、過半数の支持が客観的に確認できる民主的な手続きで選ぶことです。

代表的な方法は次のとおりです。

  • 投票(無記名投票・信任投票など)
  • 挙手
  • 従業員同士の話し合い
  • 持ち回り決議(回覧して賛否を確認する方法)

いずれの方法でも、「その人を過半数が支持した」と後から示せることが重要になります。

少人数の職場なら話し合いや挙手、人数が多い職場や事業場が分かれる場合は、投票や持ち回り決議が現実的でしょう。

「選出の目的」を明示することが必須

同じくらい大切なのが、何のために代表を選ぶのかを明らかにして選出することです。

労働基準法施行規則第6条の2は、「協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法」により選ばれ、かつ使用者の意向に基づいて選ばれた者でないことを求めています。

つまり「36協定を結ぶ代表を選びます」と目的を示したうえで選ぶ必要があります。目的を告げずに何となく決まった人や、会社の意向で決めた人は、有効な代表とは認められません。

労働基準法施行規則第6条の2 抜粋
一 法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
二 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。

母数(過半数の分母)の数え方と事業場単位の原則

過半数を判定する母数は、その事業場に在籍する全労働者です。そして選出は「事業場単位」で行うのが原則になります。

本社・支店・工場などが場所的に分かれていれば、それぞれで代表を選出します。同じ場所でも、業態が大きく異なる部門は別の事業場とみなされることがあります。逆に、著しく小規模な出張所などは、直近上位の事業場とまとめて一つの事業場として扱う場合もあるでしょう。

派遣・出向・休職者・管理監督者の扱い

対象者過半数の母数代表になれるか
パート・アルバイト・契約社員含めるなれる
休職者・育児介護休業者含めるなれる(実態に応じて判断)
管理監督者含めるなれない
派遣社員派遣元で算入(派遣先では含めない)派遣元で判断

行政解釈でも、労働時間規制のない管理監督者や、休職者・出向者を含め、在籍するすべての人を過半数の算定に入れるべきとされています。

母数を狭く見積もると、過半数の判定を誤りやすくなります。個別の在籍状況で判断が分かれる場合は、確認したうえで数えることをおすすめします。

社会保険労務士 野澤惇

この手続きを外すと、選出そのものが無効になってしまうため注意しましょう。

労使協定が無効になるパターン

よくある従業員代表の選出が無効パターン

現場でよく見られる、無効になりやすい選び方を挙げます。

  • 会社(社長・人事)が「この人にお願いしたい」と一方的に指名する
  • 親睦会の代表や幹事が、そのまま自動的に従業員代表を兼ねる
  • 「何の代表を選ぶのか」目的を示さずに決める
  • 管理監督者を代表に選んでしまう
  • 意見を募り、「返信がなければ賛成とみなす」形で押し切る

これらはいずれも、「過半数の自主的な支持」という要件を満たしません。

とくに、親睦会の代表者が自動的に従業員代表を兼ねる運用については、過去の最高裁判例(トーコロ事件)でも適法な選出とはいえず、締結された36協定は無効と判断されています。

トーコロ事件 参考
卒業記念アルバムの製造等を業とする株式会社Yと期間の定めのない雇用契約を締結し、電気写植機のオペレーターとして住所録作成業務に従事し、Yの役員、従業員らで構成される親睦会A会に入会していたXが、業務の繁忙期に残業時間を延長するよう要請されたが、眼精疲労を理由にこれに応じず、また人事考課の自己評価欄に記入しなかったため協調性がないとして、年末賞与につき三万円のマイナス査定がなされ、さらに、一部を除くYの全従業員に対して、Yでは不法な残業が行われている等を内容とする手紙を送り、他方で、Yからの残業延長要請を眼精疲労を理由に断っていたため、業務命令として残業命令を告げられるに至ったが(A会代表がYとの間で時間外協定を締結している)、これについても診断書提出とともに拒否したため、YはXに対し自己都合退職するよう勧告し、Xがこれを拒否すると、就業規則上の諭旨退職・懲戒解雇事由等を定める規定に該当するとして解雇通告されたことから、XがYに対し、〔1〕右解雇無効を主張して、雇用契約上の権利を有する地位の確認及び賃金支払を請求するとともに、〔2〕右解雇は不法行為又は債務不履行に該当するとして慰謝料の支払を請求したケースの上告審で、一審および原審と同様、最高裁は、〔1〕について、A会代表者は「労働組合」の代表者とも「労働者の過半数を代表する者」とも認められず、A会代表者とYが締結した本件三六協定は無効であるから、その余の点について判断するまでもなく、同協定を前提とするYの残業命令は有効でなく、Xはこれに従う義務はない、原判決に所論の違法はないとして、右業務命令違反を理由とする解雇は無効であるとしていた原審の判断を相当として、Yの上告を棄却した事例。

従業員代表が無効になった場合

従業員代表の選び方が無効になった場合、その代表が締結した36協定などの労使協定も無効になります。

36協定が無効であれば、その事業場の時間外労働・休日労働はすべて法律違反となり、割増賃金の遡及払いや、労働基準監督署からの是正勧告といったリスクに直結します。

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従業員代表の選び方・実務の進め方【5ステップ】

選出の5ステップ

選出の流れ
  1. 全体の人数(母数)を確定する(事業場の全在籍者を数え、過半数のラインを把握する)
  2. 選出の目的を全員に周知する(「36協定を結ぶ代表を選ぶ」などを明示する)
  3. 立候補・推薦を募る
  4. 投票・挙手・持ち回り決議などで、過半数の信任を確認する
  5. 選出結果を記録し、保存する

この順序で進めれば、「目的の明示」「民主的手続」「過半数の確認」という要件を自然に満たせます。

近年は、社内チャットやアンケートフォームといったオンラインの方法で選出する会社も増えました。

手段が電子的でも、目的の明示と過半数の信任という要件を満たせば有効です。ただし「誰が賛成したか」を記録として残せる仕組みにしておくと安心です。

選出記録として残すべきものと従業員代表選出内規

選出したら、あとから有効性を証明できるよう記録を残します。

残すべき主な項目は、選出の目的・方法・実施日・過半数を満たした事実・選ばれた人の氏名です。

参考:従業員代表の立候補募集のアナウンス

社会保険労務士 野澤惇

選出の目的、方法、期日等を記載

参考:従業員代表の信任投票のアナウンス

参考:従業員代表の選出記録の保存

社会保険労務士 野澤惇

従業員代表が正式な流れで選出されたことを記録しておきます。

従業員代表選出内規の作成

毎回ゼロから手続きを組むのは負担が大きいため、あらかじめ「従業員代表選出内規」を整えておくのがおすすめです。

ルール化しておけば、担当者が代わっても安定して適正な選出ができます。

内規に入れる項目
  • 選出の対象となる事業場と、母数に含める労働者の範囲
  • 選出の目的(36協定・就業規則の意見聴取など)
  • 選出方法(投票・挙手・持ち回り決議など)と過半数の確認方法
  • 任期と、選び直しのタイミング
  • 選出記録の様式と保存方法

従業員代表の任期・使い回しの考え方

従業員代表の任期は、法律で定められていません。会社ごとにルールを決めても差し支えありません。

ただし、原則は「協定の目的ごとに選出する」ことです。実務上は、年に一度まとめて選ぶ運用も可能ですが、「毎年同じ人が、何の手続きもなく代表を続けている」状態は形骸化とみなされ、無効を問われるリスクがあります。定期的に、目的を示したうえで選び直すのが安全です。

社会保険労務士 野澤惇

従業員代表の任期は2年と設定している企業が多いです。

従業員代表を選ぶ際に会社が負う義務

不利益取扱いの禁止 | 配慮義務

会社は、従業員代表に対して2つの義務を負います。

1つは不利益取扱いの禁止です。代表であること、代表になろうとしたこと、代表として正当な行為をしたことを理由に、解雇・降格・減給などの不利益な扱いをしてはなりません。

もう1つは配慮義務で、代表が協定締結などの事務を円滑に進められるよう、会社は必要な配慮をする必要があります。

社会保険労務士 野澤惇

これらは平成31年の改正で、施行規則に明確化されたものです。

選び方に不安があれば社労士に相談

従業員代表の選び方は、母数の判定や管理監督者の線引き、事業場の区切りなど、実務では判断に迷う場面が少なくありません。

自社の選出手続きが有効かどうかの点検、選出内規の整備、そして36協定など労使協定の締結まで、専門的な確認が求められます。

「今のやり方で本当に大丈夫か」を確かめたい場合は、社会保険労務士に相談すると確実です。過去にさかのぼって協定が無効になっていないかの点検も含め、自社の実態に即して整えられます。

従業員代表の選び方に関するよくある質問

従業員代表・労働者代表・過半数代表者は何が違いますか?

呼び方が違うだけで、意味は同じです。いずれも「労働者の過半数を代表する者」を指す通称で、

法令上の正式表現は最後の表現にあたります。実務では、どの呼び方も同じ意味で使われています。

管理職(部長・課長)は従業員代表になれますか?

労働基準法上の管理監督者に該当する場合はなれません。ただし、役職名ではなく実態で判断します。部長・課長でも、経営者と一体的な権限や待遇がなく、労働時間管理の対象になっているのであれば、代表になれる場合があります。

パートやアルバイトも従業員代表になれますか?

なれます。雇用形態による制限はなく、契約社員・パート・アルバイトも選出に参加でき、代表にもなれます。過半数を数えるときも、これらの人を母数に含めます。

従業員が少なく、なりたい人がいない場合はどうすればよいですか?

人数が少なくても、選出手続き自体は必要です。話し合いや挙手で、過半数が支持する人を決めます。立候補者がいなければ、推薦や互選で候補を立て、目的を示したうえで信任を得る形が現実的でしょう。

一度選んだ従業員代表は、毎年使い回してよいですか?

任期の定めはありませんが、手続きなしの自動継続は避けるべきです。目的を示して定期的に選び直すのが原則になります。同じ人が続くこと自体は問題ありませんが、その都度、過半数の信任を確認しておくと安全です。

従業員代表の選び方を間違えるとどうなりますか?

選出が無効になると、その代表が結んだ労使協定も無効になります。

36協定が無効なら残業が違法となり、割増賃金の遡及や是正勧告のリスクが生じます。手続き違反そのものへの罰則はありませんが、影響は会社全体に及びます。

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まとめ

この記事のまとめ
  • 従業員代表・労働者代表・過半数代表者は同じ意味で、過半数組合がなければ選出が必要
  • 正しい選び方は、目的を明示し、投票・挙手など民主的な手続きで過半数の支持を得ること
  • 管理監督者は代表になれないが、過半数を数える母数には含める
  • 会社の一方的指名や親睦会代表の自動就任は無効で、労使協定・36協定まで無効になる
  • 選び方に不安があれば、母数判定や内規整備を含めて社労士に依頼するのが確実

従業員代表の選出について、お困りの会社様はぜひ1度社労士事務所altruloopへご相談ください。

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監修者

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloop代表
社会保険労務士として、建設・介護・医療・IT業界など累計100社以上の労務顧問を担当。 労務DD・就業規則作成・人事評価制度構築・給与計算/社会保険手続きなどの実務に精通し、高難易度な労務DD案件も多数対応。
現在は東京都八王子・渋谷を拠点に、全国対応で大手企業からスタートアップまで幅広く支援しています。
登録番号:13250298

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