労務相談とは、従業員の雇用に関して生じた問題やその予防について、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談することをいいます。相談できる内容は労働時間や賃金、ハラスメント、解雇まで幅広く、内容によって適切な相談先が変わります。
本記事では労務相談で相談できる内容から費用相場、相談先の選び方まで社労士、弁護士が解説します。
- 労務相談で相談できる内容と、トラブル発生時の動き方
- 相談先ごとの「対応できること」と「できないこと」
- 社労士・弁護士とスポット・顧問契約する場合の費用相場
- 相談前に準備する資料・情報と、信頼できる相談先の選び方

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloop代表
社会保険労務士として、建設・介護・医療・IT業界など累計100社以上の労務顧問を担当。 労務DD・就業規則作成・人事評価制度構築・給与計算/社会保険手続きなどの実務に精通し、高難易度な労務DD案件も多数対応。
現在は全国対応で、大手からスタートアップまで幅広く支援しています。
登録番号:13250298

【中内 康裕 | 弁護士】
法律事務所 sui/株式会社altruloopホールディングス
会社法務・知的財産・訴訟対応を中心に、スタートアップから事業者まで幅広く支援。アンダーソン・毛利・友常法律事務所、三村小松法律事務所を経て、特許庁商標課にて法務調査員(任期付公務員)を歴任。現在は文化服装学院 非常勤講師・知的財産管理技能検定 試験委員を務め、商標・ファッションロー分野の第一線で活動。『年報知的財産法』ほか共編著・寄稿多数。
第一東京弁護士会 所属 | 登録番号:58036
労務相談とは
労務相談とは、会社で従業員を雇用することで発生する労働・社会保険上の問題について、専門家に相談し、適切な対応方法を検討することです。
労務相談の定義と対象範囲
労務相談の対象は、従業員の入社から退職までに生じるあらゆる事項で、労働契約の締結、労働時間や休日の管理、給与計算、社会保険・労働保険の手続き、安全衛生、休職や復職の対応、就業規則の整備などが含まれます。
これらはいずれも労働基準法をはじめとする労働関係法令の規制を受けるため、自社の判断だけで進めると法令違反やトラブルにつながる場面が少なくありません。
労務相談は、発生した問題への対応と、問題が起きない仕組みづくりの両方を含みます。
社会保険労務士 野澤惇法改正の情報やトラブルをきっかけに相談し、そのまま就業規則や運用の見直しへ進むパターンが多いです。
労務相談と法律相談の違い
労務相談と法律相談は「紛争になっているかどうか」ではなく、対応の目的と手段が異なります。
労務相談は、制度設計や運用の助言、行政手続きを通じて問題の発生を防ぎ、初期段階で収束させることを目的とします。法律相談は、権利義務の争いについて法的主張を組み立て、交渉や裁判で解決を図るものです。
「未払い残業代を請求された」という同じ事案でも、賃金規程と勤怠記録を精査して支払額を算定し、再発しない運用に改めるのが労務相談の領域になります。請求の当否を争い、代理人として交渉や訴訟に臨むのが法律相談の領域です。



altruloopホールディングスでは、弁護士と社労士が連携して相談対応しています。
企業が相談する場合と従業員が相談する場合
同じ「労務相談」という言葉でも、企業側と従業員側では利用できる窓口が異なります。
企業側は社会保険労務士や弁護士との顧問契約・スポット契約による相談が中心で、従業員側は労働基準監督署への申告、総合労働相談コーナー、労働組合、労働者側の弁護士が主な選択肢です。
立場別の相談先
| 相談する立場 | 主な相談先 | 費用 |
|---|---|---|
| 企業(経営者・人事総務) | 社会保険労務士、弁護士 | 30,000円~ |
| 従業員 | 労働基準監督署、総合労働相談コーナー、労働組合、弁護士 | 行政窓口は無料 弁護士:30,000円~ |
| 求職者・内定者 | 総合労働相談コーナー、ハローワーク | 無料 |



基本的に士業(社労士・弁護士)は企業からの依頼を受けているため、企業に対して対応しますが、会社の希望に応じて従業員用の窓口を設置するケースもあります。
良くある労務相談の内容と初動対応
ここでは社労士・弁護士として活動する中で、よくある労務相談の内容と、問題が起きたときに最初に取るべき対応について解説します。
採用・雇用契約・労働条件に関する相談
労働条件の明示不足は、入社後のトラブルの起点になりやすい論点です。
労働基準法第15条により、使用者は労働契約の締結時に労働条件を明示しなければなりません。2024年4月からは明示事項が追加され、就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の場合は更新上限の有無と内容、無期転換申込機会などの明示が必要になりました。求人票を交付しただけでは明示義務を果たしたことにならない点に注意が必要です。
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
- 該当従業員の労働条件通知書または雇用契約書の交付有無を確認する
- 交付済みの場合、明示事項が現行法令の要件を満たしているか照合する
- 実際の労働条件と書面の内容に食い違いがないか突き合わせる(ヒアリング)



口頭での説明のみで書面がなければ、争いになった際に会社側の立証が困難になります。必ず従業員の雇用時は労働条件通知書(雇用契約書)を締結するようにしましょう


労働時間・残業・休日に関する相談
長時間労働は、未払い賃金と健康障害の二つのリスクに直結します。
時間外労働をさせるには労働基準法第36条に基づく36協定の締結・届出が必要であり、上限は原則として月45時間・年360時間です。
特別条項を設けた場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内などの上限を超えることはできません。また、労働安全衛生法第66条の8の3により、事業者には労働時間を客観的な方法で把握する義務があります。
(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
労働安全衛生法 第六十六条の八の三
事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
- 36協定の届出状況と、協定した上限時間を確認する
- 直近数か月の実労働時間を集計し、上限超過の有無を洗い出す
- 自己申告制で管理している場合、実態とのずれがないか点検する


賃金・未払い残業代に関する相談
固定残業代を採用している企業からの相談が多い領域です。
固定残業代の制度自体は違法ではありません。
ただし、通常の賃金部分と割増賃金部分が判別できること、対応する時間数が明確であること、超過分を別途支払うことが要件となります。この要件を満たさない場合、固定残業代を含む賃金全体を基礎に割増賃金を再計算されるおそれがあります。
なお賃金請求権の消滅時効は、当分の間3年とされています(労働基準法第143条第3項)。
- 就業規則・賃金規程に固定残業代の定義と時間数が明記されているか確認する
- 給与明細で基本給と固定残業代が区分表示されているか確認する
- 対象期間の実残業時間から不足額を試算する


ハラスメントに関する相談
労働施策総合推進法により、2022年4月1日からは中小企業にもパワーハラスメント防止措置が義務づけられました。
相談窓口の設置、事実関係の迅速かつ正確な確認、行為者・被害者への適正な措置、再発防止措置が求められます。
対応を怠った場合、行為者だけでなく会社が損害賠償責任を問われる可能性があります。
- 相談者の意向(求める対応、匿名希望の有無)を確認し、記録に残す
- 被害の継続を防ぐため、必要に応じて席や指揮命令系統を暫定的に分離する
- 相談者・行為者・第三者の順で事実確認を行い、聴取記録を作成する



避けたいのは、事実確認の前に行為者へ「注意」をしてしまうことです。相談者が特定され、二次被害につながる危険があります。




休職・復職・メンタル不調に関する相談
休職制度は法律上の義務ではなく、就業規則の定めが判断の基準になります。
そのため、休職の要件、期間、給与の取扱い、復職の判断方法、期間満了時の効果を規程に明記しておく必要があります。
定めが曖昧なまま運用すると、復職可否をめぐって争いになりやすい領域です。なお、健康保険の傷病手当金は、2022年1月1日以降、同一の傷病について通算1年6か月まで受給できます。
- 就業規則の休職条項を確認し、勤続年数に応じた休職期間を特定する
- 主治医の診断書を取得し、就業可否と必要な配慮の内容を確認する
- 休職期間中の連絡方法と頻度を、本人と合意のうえ決めておく


退職・解雇・雇止めに関する相談
解雇は、労務相談のなかでも最も慎重な判断を要するテーマです。
労働契約法第16条は、解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。加えて労働基準法第20条により、原則として30日前の予告または解雇予告手当の支払いが必要です。有期契約の雇止めについても、反復更新の実態などによっては解雇と同様の規制が及びます。
労働契約法(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働基準法(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
- 解雇を検討する事由について、指導・改善機会の付与を記録で確認する
- 就業規則の解雇事由に該当するかを条文ベースで照合する
- 退職勧奨や配置転換など、解雇以外の選択肢を検討する
避けたいのは、即時解雇の意思表示です。撤回は容易でなく、無効とされた場合には解雇期間中の賃金支払いを求められることがあります。


就業規則・待遇差に関する相談
就業規則は、労務トラブルが起きたときに会社の判断根拠となる文書です。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています(労働基準法第89条)。また労働契約法第9条により、労働者と合意することなく就業規則を変更して労働条件を不利益に変更することは、原則としてできません。パートタイム・有期雇用労働者との不合理な待遇差も、パートタイム・有期雇用労働法により禁止されています。
労働基準法(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
労働契約法(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
- 就業規則の最終改定日と、その後の法改正への対応状況を確認する
- 実際の運用と規程の内容が乖離していないか点検する
- 雇用区分ごとの待遇差について、その理由を説明できるか整理する
避けたいのは、規程を作成しただけで周知していない状態です。周知されていない就業規則は、効力を否定される可能性があります。




相談件数の傾向




厚生労働省が毎年公表している「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が長年にわたって最も多い項目となっています。次いで「自己都合退職」「解雇」「労働条件の引下げ」などが上位を占める傾向です。
労務相談の相談先と対応できること・できないこと
ここでは主な相談先と対応範囲を整理します。
社会保険労務士



社会保険労務士は、人事労務と社会保険の手続きを担う国家資格者です。
社会保険・労働保険の書類作成と提出代行、就業規則および各種規程の作成・変更、給与計算、労務管理に関するコンサルティング、助成金の申請支援などを行います。社会保険・労働保険の手続き代行は社会保険労務士の独占業務であり、資格を持たない者が業として行うことはできません。
一方で、裁判の代理人になることはできません。訴訟や労働審判に発展した場合は、弁護士への引き継ぎが必要になります。
特定社会保険労務士ができること
特定社会保険労務士は、紛争解決手続代理業務を行える社会保険労務士です。
一定の研修と試験を経て付記を受けた社会保険労務士は、都道府県労働局のあっせんや社会保険労務士会紛争解決センターの調停・あっせんなどで代理人となれます。ただし、取り扱える紛争の目的価額には上限があり、裁判手続の代理は対象外です。依頼を検討する際は、その事務所に特定社会保険労務士が在籍しているか事前に確認してください。
弁護士



弁護士とは、法律に関する専門家で、主に法律問題の解決や紛争対応、代理業務を行う国家資格者です。
相手方との交渉、労働審判、訴訟の代理を行えるほか、損害賠償請求への対応や懲戒処分の適法性判断など、争いを前提とした場面で力を発揮します。ただし、社会保険・労働保険の日常的な手続き代行や給与計算は通常の業務範囲に含まれません。予防的な労務管理まで含めるなら、社会保険労務士との併用が現実的です。
労働基準監督署・総合労働相談コーナー
労働基準監督署は労働関係法令の遵守を監督する行政機関で、法令解釈の確認や手続きの相談に応じており、企業側からの問い合わせも受け付けています。総合労働相談コーナーは都道府県労働局や労働基準監督署内などに設置され、法令違反に至らない事案も含め幅広い労働問題を扱い、助言・指導やあっせんの申出も受け付けています。
企業側から労基署に相談するときの注意点
労働基準監督署は、個別紛争を解決する機関ではありません。
目的は違法状態の是正であるため、会社と従業員の金銭的な着地点を調整する役割は担いません。また、相談内容から法令違反が疑われれば是正指導につながる可能性があります。法令解釈の確認であれば有用な窓口ですが、自社の運用に違反の可能性がある事案では、先に専門家へ整理を依頼するほうが安全です。
社会保険労務士会・弁護士会の相談センター
各都道府県の社会保険労務士会・弁護士会が設ける相談窓口です。
無料または低額で対応している場合が多く、初めて専門家に相談する際の入口として使えます。中立的立場からの一般的な助言が中心で、継続的な対応や手続きの代行は対象外です。実施日時や相談方法は会ごとに異なるため、各会のウェブサイトで確認してください。
商工会議所・よろず支援拠点
いずれも中小企業・小規模事業者向けの無料相談窓口です。
商工会議所は会員向けに専門家相談を実施している場合があり、よろず支援拠点は国が全国に設置する経営相談窓口として、経営課題の一環で労務の相談にも応じています。
※ただし専門家が常駐しているとは限らず、対応は一般的な助言にとどまるため、個別事案の詳細な検討には向きません。
産業保健総合支援センター
労働者の健康管理に特化した無料の支援機関です。
各都道府県に設置され、メンタルヘルス対策、産業医の選任、健康診断後の措置、両立支援などを相談できます。
※休職・復職の体制を整えたい場合に有効ですが、労働条件や賃金など健康管理以外の労務問題は対象外です。
相談先の対応範囲比較表
| 相談先 | 手続き代行 | 規程作成 | 紛争の代理 | 裁判の代理 | 費用 |
|---|---|---|---|---|---|
| 社会保険労務士 | ○ | ○ | △(特定社労士のみ) | × | 1時間10,000円~ |
| 弁護士 | × | ○ | ○ | ○ | 1時間30,000円~ |
| 労働基準監督署 | × | × | × | × | 無料 |
| 総合労働相談コーナー | × | × | △(あっせん) | × | 無料 |
| 社労士会・弁護士会 | × | × | × | × | 無料〜低額 |
| 商工会議所・よろず支援拠点 | × | × | × | × | 無料 |
社労士と弁護士の使い分け
判断の目安は、「相手方と争う段階にあるか」です。
未然防止、制度整備、手続き、社内での解決を目指す段階なら社会保険労務士が適しています。弁護士や労働組合が介入した、労働審判や訴訟を申し立てられたという段階では弁護士が必要です。顧問社会保険労務士を置き、紛争化した際に弁護士へ引き継ぐ体制があれば、段階に応じた対応ができます。



altruloopホールディングスでは、法律の悩みに関して一気通貫で対応しているため、どちらに相談すればよいか分からない方はaltruloopへ相談ください。
労務相談の費用相場
費用は契約形態によって大きく異なります。
スポット相談の費用相場
スポット相談とは、必要なときだけ依頼する形態です。
時間制の相談は、社労士が1時間あたり1万円前後、弁護士は1時間あたり3万円前後を目安とする事務所が多いです。
個別業務では、就業規則の新規作成が15万〜30万円程度、変更が3万〜10万円程度、社会保険の手続き代行が1件あたり1万〜3万円程度といった水準が一般的です。
単発の課題が明確であればスポットのほうが費用を抑えられますが、定期的な依頼が発生する場合は、顧問の方がお得になります。
顧問契約の費用相場と業務範囲
継続的に相談・手続きを依頼する形態です。
従業員数に応じた月額設定が一般的で、10名程度の企業で月5万円~10万円前後、30名程度で月10万〜20万円前後が目安です。日常的な労務相談、社会保険・労働保険の手続き、法改正情報の提供までを標準とする例が多く、給与計算は別料金とするケースが少なくありません。契約前に、相談回数の上限、対応時間、給与計算や助成金申請の扱いを確認してください。



金額は依頼する業務に応じて大きく変動するため、顧問を検討中の方は1度相談することをおすすめします。
労務相談の費用が変動する4つの要因
- 従業員数・事業所数 — 手続き件数に直結するため、最も影響が大きい要因です
- 業務範囲 — 相談のみか、手続き代行や給与計算まで含むかで大きく変わります
- 入退社の頻度 — 人の出入りが多い業種では、同じ人数規模でも工数が増えます
- システム連携の可否 — 勤怠・給与システムを共有できるかどうかで、データ授受の工数が変動します
見積りを比較する際は、金額だけでなく前提となる業務範囲をそろえて比較することが重要です。
トラブル発生時のコストとの比較
労務に関しては、問題になると過去に遡ってコストが発生するため、社労士や弁護士に顧問をお願いすることをおすすめしています。
例えば、未払い残業代は最大3年分を遡って請求される可能性があり、対象者が複数に及べば金額は大きく膨らみます。労働審判や訴訟に至れば弁護士費用と社内工数が別途発生し、解決までに数か月を要することも珍しくありません。顧問料の年額とこうした事後対応の想定額を並べると、判断がしやすくなります。
労務相談の進め方と相談先の選び方
相談前に準備する資料チェックリスト
相談内容にもよりますが、相談前に下記資料・情報を準備することでスムーズに回答が行なえます。
- 就業規則、賃金規程、育児・介護休業規程などの社内規程
- 対象となる従業員の労働条件通知書または雇用契約書
- 直近3〜6か月分の勤怠記録と給与明細
- 36協定その他の労使協定の写し
- トラブルの経緯を時系列でまとめたメモ
- 該当するやり取りの記録(メール、チャット、面談記録など)
経緯をまとめる際は、事実と主観を分けてください。
「いつ、誰が、何をしたか」を先に整理すると、状況を正確に把握することができます。
相談から解決までの流れ
一般的には、次の4ステップで進みます。
資料をもとに事実関係を整理し、法的な論点を特定します
取り得る選択肢と、それぞれのリスク・費用・所要期間を比較します
書類の作成、従業員との面談、行政手続きなどを実施します
規程の改定や運用ルールの整備を行い、同種の問題を予防します
事後対応で終わらせず、4の段階まで進めることが、労務相談の費用対効果を高めるポイントです。



再発防止は金額に入っていないことがほとんどですので、必ず契約前に業務範囲は擦り合わせておきましょう。
労務相談でよくある失敗3つ
いずれも、相談の効果を下げることになるため注意しましょう。
- 不利な事実を伝えない:専門家には守秘義務があります。事実を伏せたまま得た助言は、前提が崩れた時点で使えなくなります
- 相談のタイミングが遅い:解雇の通知後や、相手方に弁護士がついた後では、選べる手段が大きく狭まります
- 相談内容が漠然としている:「何を、いつまでに、どうしたいか」を伝えないと、抽象的な一般論の回答にとどまります
信頼できる相談先を選ぶ4つの基準
料金以外に、次の4点を確認してください。
- 自社の課題領域の実績
- 対応の速度と手段
- 社内体制
- 他士業との連携
労務相談に関するよくある質問
労務相談は無料でできますか?
士業に相談する場合は最初からお金がかかる場合が多いです。
無料で相談できるところも一部ありますが、基本的には一般的な見解のみのため、明確な悩みがある場合は最初から士業に相談するようにしましょう。
社労士と弁護士、どちらに相談すべきですか?
争いになる前は社会保険労務士、争いになった後は弁護士という形が分かりやすいです。
制度整備、手続き、社内での早期解決を目指す段階では社会保険労務士が適しています。労働審判や訴訟を申し立てられた、相手方に代理人がついた段階では弁護士が必要です。
顧問契約をしていなくても相談できますか?
可能です。
多くの事務所がスポット相談に対応しており、時間制の相談のほか、就業規則の作成や特定の手続きだけを依頼する形も選べます。単発の課題であれば、スポットのほうが費用を抑えられる場合もあります。
労基署に相談すると自社が調査されますか?
相談した事実だけで自動的に調査が入るわけではありません。
ただし、相談内容から法令違反が疑われる場合には、是正指導につながる可能性があります。すでに違反の可能性がある事案では、まず社労士や弁護士に状況を整理してもらったうえで対応方針を決めるほうが安全です。
従業員から労働審判を申し立てられそうな場合はどこに相談しますか?
弁護士に相談してください。
労働審判は第1回期日までの準備期間が短く、初回で主張と証拠を出し切る必要があります。社会保険労務士は裁判手続の代理人になれないため、顧問がいる場合は事実関係の整理を任せつつ、並行して弁護士に依頼するのが現実的です。
労務相談はオンラインでも対応してもらえますか?
多くの事務所がオンラインに対応しています。
オンライン面談やチャットツールでの相談を標準とする事務所も増え、資料の授受はクラウドストレージを使う形が一般的です。緊急時の連絡手段は契約前に確認しておくとよいでしょう。
相談内容が外部に漏れることはありませんか?
社会保険労務士・弁護士にはいずれも法律上の守秘義務が課されています。
社会保険労務士法は、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らすことを禁じており、違反には罰則があります。従業員の個人情報を預ける以上、事務所のセキュリティ体制もあわせて確認してください。
従業員数が数名の会社でも労務相談はできますか?
規模を問わず相談できます。
従業員数が少ない企業ほど労務の担当者を置きにくく、法改正への対応が後回しになりがちです。就業規則の作成義務が生じる10名の手前で体制を整えておくと、その後が円滑になります。
まとめ
- 労務相談とは、従業員の雇用に伴って生じる労働・社会保険上の問題について専門家に相談すること
- 相談内容は、労働条件、労働時間、賃金、ハラスメント、休職・復職、退職・解雇、就業規則などに分類
- 費用の目安は、スポット相談が社労士が1時間1万円前後、弁護士が1時間3万円前後
労務トラブルは、発生してからの選択肢が時間の経過とともに狭まっていきます。判断に迷った段階で早めに相談することが、結果として費用と労力を抑える最も確実な方法です。






