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偽装請負とは?判断基準・業務委託/SESのチェックリスト・罰則を社労士・弁護士が解説

「SESで客先に常駐させているが、現場で直接指示を受けている」「業務委託のフリーランスに、社員と同じように勤怠報告をさせている」「準委任契約なら問題ないと聞いた」。業務委託や客先常駐が広がるなかで、偽装請負に当たらないか不安を感じる会社が増えています。

偽装請負は、契約書の名前ではなく、現場の実態で判断されます。請負や準委任(業務委託)の契約でも、発注者が作業者に直接指揮命令をしている場合は、労働者派遣に該当する可能性があります。契約の名称だけでなく、受注者による労務管理や業務遂行の独立性など、現場の実態を踏まえて判断されます。

さらに、M&Aや上場準備の労務デューデリジェンス(労務DD)でも、必ず確認される論点です。

この記事では、偽装請負の判断基準、発注者・受注者それぞれのチェックリスト、個人事業主との業務委託で問題になる「労働者性」、罰則と発注者のリスク、見つかったときの是正方法まで、社会保険労務士・弁護士が解説します。

この記事のサマリ
  • 偽装請負とは、契約は請負や業務委託なのに、実態は発注者が作業者に直接指揮命令している状態。労働者派遣法などの規制を逃れることになるため違法になる。
  • 判断基準は厚生労働省の「37号告示」。受注者が自ら労務管理をしているか、業務を独立して処理しているかを、契約の名前ではなく実態で判断する。
  • 準委任(SES)やアジャイル開発にも同じ基準が当てはまる。発注者が作業者に直接、作業の割り当てや時間の指示をすると偽装請負になる。
  • 個人事業主との業務委託は、偽装請負ではなく「労働者性」の問題になる。実態が雇用なら、労働基準法や社会保険の適用を受ける。
  • 罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金など。発注者には、作業者に直接雇用を申し込んだとみなされるリスクもある。
監修者
野澤惇_プロフィール写真

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

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監修者
中内康裕_プロフィール写真

【中内 康裕 | 弁護士】
法律事務所 sui/株式会社altruloopホールディングス
会社法務・知的財産・訴訟対応を中心に、スタートアップから事業者まで幅広く支援。アンダーソン・毛利・友常法律事務所、三村小松法律事務所を経て、特許庁商標課にて法務調査員(任期付公務員)を歴任。現在は文化服装学院 非常勤講師・知的財産管理技能検定 試験委員を務め、商標・ファッションロー分野の第一線で活動。『年報知的財産法』ほか共編著・寄稿多数。
第一東京弁護士会 所属 | 登録番号:58036

目次

偽装請負とは

偽装請負とは、契約の形式は請負や業務委託(準委任)なのに、実態は発注者が受注者の労働者に直接指揮命令をしている状態のことです。実態が労働者派遣であるにもかかわらず、派遣法の手続きや規制を受けずに労働者を働かせているため、違法になります。

請負・準委任(業務委託)・労働者派遣の違い

契約の種類目的作業者への指揮命令必要な許可
請負仕事の完成(成果物)受注者が行う不要
準委任(業務委託・SES)業務の処理(作業の遂行)受注者が行う不要
労働者派遣労働力の提供派遣先(発注者)が行う派遣元に労働者派遣事業の許可が必要

違いの核心は、誰が作業者に指示を出すかです。請負と準委任では、作業者への指示は受注者が行います。発注者が作業者に直接指示を出せるのは、許可を受けた派遣元と派遣契約を結んだ場合だけです。

なぜ違法になるのか

  • 派遣法の規制を逃れる:派遣には許可、派遣できない業務(建設・警備など)、受入期間の制限、派遣先の責任など多くのルールがあるが、偽装請負ではこれらが守られない
  • 中間搾取になる:実態が労働者供給に当たると、職業安定法・労働基準法が禁じる中間搾取になる
  • 責任の所在が曖昧になる:労働時間の管理や安全衛生の責任を誰が負うのかが分からず、長時間労働や労災のときに作業者が保護されない

偽装請負の4つの典型パターン

パターン状態
代表型発注者が作業者に直接、業務の指示や勤怠の管理をしている。最も多いパターン
形式だけ責任者型現場に受注者の責任者はいるが、発注者の指示をそのまま作業者に伝えているだけ
使用者不明型A社が受けた業務をB社に再委託し、B社の作業者がA社や発注者の指示で働いていて、誰が雇い主か分からない
一人請負型個人事業主として業務委託契約を結んでいるが、実態は発注者の指示で働く労働者

偽装請負が起きる背景

偽装請負には、大きく分けて2つの起き方があります。

  • 意図せず起きるケース:契約は正しく結んだものの、現場の担当者が派遣と業務委託の違いを知らず、常駐者に自社の社員と同じように指示を出してしまう。長く常駐が続くほど、指示の流れが崩れやすい
  • 規制を逃れるために黙認しているケース:派遣の許可、受入期間の制限、派遣先としての責任を避けるため、実態は派遣と分かっていながら請負や業務委託の形をとる

契約書を整えただけで安心し、現場の運用を確認していないことが、意図しない偽装請負の最大の原因です。

偽装請負の判断基準(37号告示)

請負や業務委託が偽装請負に当たるかどうかは、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号。いわゆる37号告示)で判断します。

受注者が請負として事業を独立して行っているかどうかは、次の2つの要件を中心に判断されます。これらの要件を満たしているかを、契約内容だけでなく実際の業務運用に照らして確認する必要があります。

基準①:労務管理を受注者が自ら行っているか

確認する事項受注者が自ら行う必要があること
業務の遂行に関する指示業務の進め方の指示、業務の評価
労働時間に関する指示始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇の管理、残業・休日労働の指示
企業秩序の維持に関する指示服務規律の指示、作業者の配置の決定・変更

基準②:業務を受注者が独立して処理しているか

  • 業務に必要な資金を、すべて自らの責任で調達し、支払っている
  • 業務について、法律上の事業主としての責任をすべて負っている
  • 単に労働力を提供するのではなく、自ら用意した機械・設備・材料で業務を処理しているか、自らの企画や専門的な技術・経験に基づいて業務を処理している

なお、これらの基準を形式的に満たしていても、法律の規制を逃れるために故意に偽装したもので、実態が労働者派遣であれば、派遣事業として扱われます。

契約の名前ではなく実態で判断される

よくある誤解が、「準委任契約なら、成果物の完成責任がないので偽装請負にはならない」という考え方です。37号告示は請負という言葉を使っていますが、準委任や業務委託など、労働者派遣以外の契約にも同じ基準が適用されます。厚生労働省も、アジャイル型開発で準委任契約を結ぶ場合について、契約の違いで基準の適用は変わらないと示しています。

発注者が「してよいこと」と「してはいけないこと」

発注者が受注者や作業者と一切関わってはいけない、というわけではありません。仕事の内容や品質について発注者として要望を伝えることと、作業者の働き方を指示することは別です。

してよいこと(発注者としての注文・確認)してはいけないこと(作業者への指揮命令)
仕様書や要件を示す作業の手順・順序・やり方を作業者に指示する
成果物を検収し、不備があれば受注者の責任者に修正を求める作業の途中で作業者に直接やり直しや進め方の変更を指示する
品質や納期についての要望を、受注者の責任者に伝える作業者に始業・終業の時刻や残業を指示する
仕様の確認や進捗報告の打ち合わせに参加する作業者の休暇を承認する、休まないよう求める
安全や衛生、施設の利用ルールについて注意を促す作業者を指名する、交代を求める、配置を決める
作業者の問題行動について、受注者の責任者に改善を申し入れる作業者を直接呼び出して注意・叱責する

厚生労働省の疑義応答集でも、発注者が受注者の責任者を通じて要望を伝える場合や、新しい設備の使い方を説明する場合など、直ちに偽装請負とはならない例が示されています。判断に迷う場面は、「その連絡は受注者の責任者に向けたものか、作業者個人の働き方に向けたものか」で考えると整理しやすくなります。

業務委託・SES・客先常駐のチェックリスト

37号告示の基準を、現場で確認しやすい項目に置き換えました。当てはまる項目にチェックを入れると、該当する数を確認できます。1つでも当てはまる場合は、偽装請負と判断されるおそれがあります。

発注者側(業務委託先・常駐者を受け入れている会社)

偽装請負チェックリスト(発注者側)

当てはまる項目にチェックを入れてください。

受注者側(SES・BPO企業)

偽装請負チェックリスト(受注者側:SES・BPO企業)

当てはまる項目にチェックを入れてください。

判断に迷いやすい場面

チャットツールで発注者と作業者が直接やり取りする

チャットツールに発注者と作業者が同じグループで参加していること自体は、直ちに偽装請負ではありません。問題になるのは、発注者が作業者に直接、作業の割り当て・優先順位・期限を指示している場合です。仕様の確認や情報の共有にとどめ、作業の指示は受注者の責任者を通す運用にします。誰がどのような指示を出しているかは、チャットの履歴にそのまま残るため、調査やDDでも確認されやすいところです。

アジャイル開発・スクラムで発注者と開発者が日常的に協議する

厚生労働省は、アジャイル型開発について、発注者側と受注者側の開発関係者が対等な関係で協働し、受注者側の開発者が自律的に判断して開発を進めている実態があれば、偽装請負とは判断されないとしています。一方で、発注者側の担当者が受注者側の開発者に直接、作業の割り当てや開始・終了の時刻、作業の進め方を指示していれば、偽装請負に当たります。スクラムのミーティングに参加すること自体ではなく、そこで誰が誰に指示を出しているかが問われます。

テレワーク・リモートでの常駐

作業者が自宅で働いていても、発注者が始業・終業時刻や休憩時間、残業の可否などを実質的に管理・指示している場合は、労働時間に関する指揮命令を行っていると判断される可能性があります。単なる作業状況の共有や施設管理上の連絡とは区別して考える必要があります。

発注者の社員と同じ席・同じルールで働く

発注者の事務所で作業すること自体は認められますが、発注者の社員と区別なく座席を割り当て、同じ朝礼や勤怠ルールに従わせている場合は、発注者の組織に組み込まれていると見られやすくなります。作業場所を分ける、受注者の責任者がいる単位でまとまって作業するといった運用が望まれます。

客先のチャットに直接作業指示が来ていたケース(SES企業)

顧問先のSES企業で、常駐しているエンジニアが客先のチャットで作業の割り当てや期限を直接受け、客先の勤怠システムで出退勤を報告していることが分かりました。客先と協議し、作業の依頼は自社のリーダーを通すルールに変更し、勤怠は自社のシステムで管理する運用に切り替えました。あわせて、契約書に業務の範囲と責任者を明記しています。

個人事業主との業務委託は「労働者性」で判断する

偽装請負と労働者性の違い

項目偽装請負労働者性の問題
関係する当事者発注者・受注者(会社)・作業者の3者会社と個人の2者
問題になること実態が労働者派遣(または労働者供給)ではないか実態が雇用(労働者)ではないか
主な根拠労働者派遣法、職業安定法、37号告示労働基準法、労働契約法
認められた場合の影響派遣法違反の罰則、労働契約申込みみなし制度残業代・有給休暇・社会保険・労災の適用、解雇の制限

個人事業主(フリーランス)と直接業務委託契約を結んでいる場合は、3者間の偽装請負ではなく、その個人が労働基準法上の「労働者」に当たるかどうかが問題になります。労働者と判断されると、さかのぼって残業代や社会保険料を負担しなければならず、実態として労働者と判断された場合は、労働契約法や労働基準法などの労働関係法令が適用されます。

そのため、契約終了の有効性についても、解雇規制などを踏まえた判断が必要になります。

労働者性の判断基準

労働者に当たるかは、仕事の依頼を断れるか、業務の進め方に指揮監督があるか、時間や場所が拘束されているか、他の人に代わってもらえるか、報酬が働いた時間に対する対価になっているか、といった要素を総合して判断します。機材を自分で負担しているか、報酬が高額か、他社の仕事もしているか(専属性)も考慮されます。

労働者性チェックリスト(個人事業主との業務委託)

当てはまる項目にチェックを入れてください。

再委託先のフリーランスの労働者性を点検したケース(BPO企業)

オンライン秘書サービスを運営する会社から、再委託しているフリーランスの働き方が雇用と判断されないか相談を受けました。シフトでの稼働時間の指定、時給での報酬計算、業務マニュアルどおりの作業指示が重なっていたため、成果単位の報酬への見直し、稼働時間を本人が選べる仕組み、指示の範囲の整理を行い、社内のチェックリストを作成して定期的に点検する体制にしました。

フリーランス新法との関係

2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、業務委託で働くフリーランスとの取引を適正にするための法律です。契約条件の明示、報酬の支払期日、ハラスメント対策などを発注者に義務づけています。ただし、実態が労働者であれば、フリーランス新法ではなく労働基準法などの労働法が適用されます。フリーランス新法を守っていることが、労働者性を否定する理由にはなりません。

偽装請負の罰則とリスク

罰則

違反の内容根拠罰則主な対象
許可を受けずに労働者派遣事業を行った労働者派遣法5条1項、59条2号1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金受注者
労働者供給事業を行った、または供給を受けた職業安定法44条、64条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金受注者・発注者
他人の就業に介入して利益を得た(中間搾取)労働基準法6条、118条1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金受注者

労働者派遣法と職業安定法には両罰規定があり、違反した担当者だけでなく会社にも罰金が科されます。

行政措置の流れ

偽装請負が見つかった場合、刑事罰の前に、都道府県労働局による行政措置が行われるのが一般的です。

段階内容
指導・助言労働局が受注者・発注者に対して是正を求める
改善命令指導に従わない場合などに、改善を命じる
勧告無許可の事業者から労働者派遣を受けている発注者に対し、是正を勧告する
企業名の公表勧告に従わない場合、会社名が公表される

企業名が公表されると、取引先や求職者からの信用に大きく影響します。上場準備中の会社であれば、審査にも影響しかねません。

発注者のリスク:労働契約申込みみなし制度

発注者にとって最も大きなリスクが、2015年10月に始まった労働契約申込みみなし制度です。発注者が、労働者派遣法などの規制を逃れる目的で、請負などの名目で契約を結び、実態として作業者に指揮命令をしていた場合、その作業者に対して、受注者と同じ労働条件で直接雇用を申し込んだものとみなされます。作業者がこの申込みを承諾すれば、発注者との間に雇用契約が成立します。

発注者が偽装請負に当たることを知らず、知らなかったことに過失もなかった場合は適用されません。ただし、長期間にわたって直接指示を出していた場合などには、規制を逃れる目的があったと判断されることがあります。実際に、この制度によって発注者との直接雇用の成立を認めた裁判例も出ています(後述の東リ事件)。

弁護士 中内 康裕

偽装請負の相談では、受注者側の罰則ばかりが気にされがちですが、発注者にとって重いのは労働契約申込みみなし制度です。常駐者から直接雇用を求められると、人件費や組織の設計そのものに影響します。長く続いている常駐ほど、契約書と現場の実態がずれていないかを早めに確認すべきです。

偽装請負の摘発・裁判の事例

発注者との直接雇用が認められた裁判例(東リ事件)

建材メーカーの工場で、業務委託先の会社に雇用された作業者が、発注者から具体的な作業手順を指示されるなど偽装請負の状態で働いていた事案です。大阪高裁は、労働契約申込みみなし制度を適用し、作業者と発注者との間に直接の雇用契約が成立していると認めました(大阪高裁令和3年11月4日判決)。この制度で直接雇用の成立を認めた初めての裁判例とされ、最高裁が上告を受け付けなかったことで確定しています(最高裁令和4年6月7日決定)。偽装請負の状態が長く続いていたことから、規制を逃れる目的があったと推認された点が、発注者にとって重要なポイントです。

無許可派遣での刑事告発

厚生労働省は、許可を受けずに労働者派遣事業を行った疑いで、事業者と代表者を警察に刑事告発した事例を公表しています。請負や業務委託の名目で労働者を送り込み、実態として他社の指揮命令のもとで働かせていたことが、無許可の派遣事業と判断されたものです。

派遣先が気付かずに受け入れていた事例

滋賀労働局は、無許可の派遣業者を相次いで刑事告発したことを受けて、管内の事業所に自主点検を求める緊急対策を行いました。告発した事案では、いずれも受け入れ側の会社が、相手が無許可の業者だと気付かないまま労働者を受け入れていました。発注者側も、取引先の許可の有無や契約の実態を自ら確認しておく必要があることを示す事例です。

偽装請負が見つかったときの是正方法

偽装請負の状態が見つかった場合、是正の方法は大きく3つです。

選択肢内容向いている場面注意点
①請負・準委任として運用を正す指示は受注者の責任者を通し、勤怠も受注者が管理する業務の範囲を切り出せ、受注者に責任者を置ける契約書の見直しと、現場への周知・定期的な点検が必要
②労働者派遣契約に切り替える許可のある派遣元と派遣契約を結び、発注者が直接指示する発注者の指示のもとで柔軟に働いてもらう必要がある派遣元の許可、受入期間の制限、派遣先としての責任が生じる
③直接雇用する作業者を発注者が自社で雇う業務が自社の中核で、長期的に必要本人の同意、受注者との調整、自社の労働条件・社会保険の手続きが必要

どの方法を選んでも、過去の期間について未払いの残業代や社会保険の問題がないかも確認が必要です。特に一人請負型で労働者と判断される場合は、さかのぼっての精算を検討します。

偽装請負を防ぐための契約書と運用のポイント

契約書に明記する事項

項目書き方のポイント
業務の範囲・成果物処理する業務や完成させる成果物を具体的に書く。「〇〇に関する業務一式」のような曖昧な書き方を避ける
受注者の責任者現場で作業者に指示を出す受注者側の責任者を明記する
指揮命令作業者への業務の指示、労働時間・休暇の管理は受注者が行い、発注者は作業者に直接指示しないことを書く
作業場所・機材発注者の事務所や機材を使う場合は、使用の範囲と条件(有償の貸与など)を定める
再委託再委託の可否と、再委託する場合の発注者への通知・承諾の手続きを定める

運用のポイント

  • 窓口の一本化:発注者からの依頼や要望は、受注者の責任者が受ける。チャットのグループも、指示は責任者経由になる構成にする
  • 責任者の配置:常駐が複数名になる現場には、受注者の責任者を置く。責任者が不在になる時間の対応も決めておく
  • 定期的な点検:半年から1年に1回、本記事のチェックリストで発注者・受注者の双方が運用を確認する
  • 現場の管理職への研修:常駐者を受け入れる部署の管理職に、「してよいこと」と「してはいけないこと」を周知する

偽装請負の相談先・通報先

相談先相談できること
都道府県労働局(需給調整事業の担当部署)偽装請負・無許可派遣に当たるかの相談、申告。行政としての指導を行う窓口
労働基準監督署労働時間・賃金・労災など、労働基準法に関わる問題の相談・申告
社会保険労務士・弁護士契約書と運用の点検、是正の進め方、労働者性の判断、紛争への対応

作業者が労働局に申告すると、調査をきっかけに偽装請負が明らかになることがあります。会社としては、申告される前に自ら点検し、是正しておくことが最も負担の小さい対応です。

M&A・IPOの労務DDで偽装請負が指摘される理由

偽装請負は、M&Aや上場準備の労務DDで必ず確認される項目の一つです。DDでは、業務委託契約書の一覧と、常駐者・業務委託者の名簿、現場での指示や勤怠の運用を照らし合わせ、契約と実態がずれていないかを確認します。

  • M&A:偽装請負が見つかると、労働契約申込みみなし制度による直接雇用のリスクや、過去の未払い賃金・社会保険料が簿外債務として評価され、買収価格の調整や表明保証の対象になる
  • IPO:上場審査では法令違反の状態がないことが求められ、業務委託や常駐の多い会社は、運用の是正を求められる

労務DDの進め方と調査項目は労務DD(デューデリジェンス)とは、M&Aでの人事面の調査は人事DD(人事デューデリジェンス)とは、上場準備での確認事項はIPOの労務監査で解説しています。

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よくある質問

偽装請負は、発注者と受注者のどちらが罰せられますか?

両方が対象になり得ます。受注者は無許可の労働者派遣事業(労働者派遣法)や労働者供給(職業安定法)、発注者は労働者供給を受けたこと(職業安定法)が罰則の対象です。発注者には、行政の勧告や企業名の公表、労働契約申込みみなし制度による直接雇用のリスクもあります。

業務委託先の作業者に、直接メールで依頼してもよいですか?

仕様の確認や情報の共有であれば問題ありません。作業の割り当て、優先順位、期限、作業時間といった指示は、受注者の責任者を通して伝える必要があります。メールやチャットでのやり取りは記録に残るため、誰が誰に何を指示しているかが後から確認されます。

SESで客先に常駐させること自体は違法ですか?

違法ではありません。準委任契約で受注者が自ら作業者に指示を出し、勤怠を管理していれば、客先に常駐していても問題ありません。客先の担当者が作業者に直接指示を出す運用になっていると、偽装請負に当たります。

契約書を請負契約にしておけば問題ないですか?

契約書の名前だけでは判断されません。37号告示に照らして、現場で誰が指示を出し、誰が勤怠を管理しているかという実態で判断されます。契約書と現場の運用を一致させることが必要です。

偽装請負に当たるか不安な場合は、どこに相談すればよいですか?

行政の窓口は、各都道府県労働局の需給調整事業の担当部署です。契約書と運用の見直し、労務DDでの確認、是正の進め方は、社会保険労務士や弁護士に相談できます。

まとめ

本記事のまとめ
  • 偽装請負は、請負・業務委託の契約なのに、発注者が作業者に直接指揮命令している状態。契約の名前ではなく実態で判断される。
  • 判断基準は37号告示。受注者が自ら労務管理をし、業務を独立して処理していることが必要。準委任やアジャイル開発にも同じ基準が当てはまる。
  • 個人事業主との業務委託は労働者性の問題。実態が雇用なら労働法と社会保険が適用される。
  • 罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金など。発注者には労働契約申込みみなし制度のリスクがある。
  • 見つかったら、運用の是正・派遣への切り替え・直接雇用から選び、過去の未払いの有無も確認する。M&A・IPOの労務DDでも必ず確認される。

社労士事務所altruloopでは、業務委託契約と現場の運用の点検、偽装請負や労働者性のリスクの洗い出し、是正の進め方の整理から、M&A・IPOに向けた労務DDまで対応し、契約書の見直しや紛争の対応はグループの弁護士と連携して進めます。

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監修者

【野澤 惇|社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

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