IPOの労務監査とは、上場審査で問題となる労務リスクを事前に洗い出し、審査までに是正しきるための調査です。法律上の義務はありませんが、未払い残業代などが申請期に発覚すると上場そのものが止まるため、実務では避けて通れません。
この記事では、上場審査で実際に何が見られるのか、簿外債務になりやすい論点はどこか、N-3期からどう動くべきかを、IPO支援を行う社労士が解説します。
- IPOの労務監査とは何か、会計監査とどう違うのか
- 上場審査で確認される労務のチェック項目(組織・人員体制を含む)
- 簿外債務になりやすい、見落とされがちな労務リスク
- N-3期〜N-1期のスケジュールと、監査報告書に書かれること
- 費用相場の考え方と、依頼する社労士の選び方

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloop代表
社会保険労務士として、建設・介護・医療・IT業界など累計100社以上の労務顧問を担当。 労務DD・就業規則作成・人事評価制度構築・給与計算/社会保険手続きなどの実務に精通し、高難易度な労務DD案件も多数対応。
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IPOの労務監査とは
IPOの労務監査は、上場審査というゴールから逆算して労務リスクを洗い出し、期限内に是正しきることを目的とした調査です。
上場審査で労務リスクを事前に洗い出す調査
上場企業には、投資家保護の観点から、法令を遵守した適正な労務管理が求められます。
そこで、労働時間の管理、割増賃金の支払い、社会保険の加入といった実態が、法令に沿って運用されているかを点検します。問題が見つかれば、審査までに是正しておくことが目的です。
なお、実務上の定義としては「上場を目指す企業の人事・労務に係る事項について、独立した第三者の監査人が依頼者と合意した調査を行い、それを評価して報告すること」と整理されます。
ポイントは「独立した第三者」と「合意した調査範囲」の2つです。
会計監査のような「保証」は与えない業務監査

ここは誤解が生じやすいところですが、労務監査は会計監査と同じ意味での「保証業務」ではありません。
会計監査は、公認会計士が十分かつ適切な監査証拠を入手し、財務諸表に重要な虚偽表示がないことについて合理的保証を与えるものです。
一方、労務監査で同じ水準の保証を与えようとすると、たとえばタイムカードの正確性を検証するために、監査人が始業前に出社して全従業員の出勤時刻を現認し、退社時刻まで在社して突合する、といった作業が必要になってしまいます。
現実的でないため、労務監査では職業的懐疑心を持ちつつも、会社から提供される書類等を原則として真実である監査証拠とみなします。つまり、日常業務が労働法令に従って適切に実施されているか、人事労務管理上の問題がないかを確認する「業務監査」であり、その旨は監査報告書にも明記されます。
社会保険労務士 野澤惇この違いを理解しておくと、監査に何をどこまで求められるのかが明確になります。
法的義務はないが、放置すると上場延期・中止になる
労務監査そのものに、法律上の実施義務はありません。しかし実務上は不可欠です。
上場審査では証券会社より労務コンプライアンスが実質的に問われます。とくに未払い残業代のような問題が申請期(N期)に発覚すると、金額の確定や精算に時間がかかり、上場スケジュール全体が後ろ倒しになります。
重大な場合には、上場そのものが見送られることもあります。
通常の労務監査とIPOの労務監査の違い
一般的な労務監査と、IPOの労務監査は、目的も深さも異なります。
| 比較項目 | 一般的な労務監査 | IPOの労務監査 |
|---|---|---|
| 目的 | 平時の労務リスクを点検し、経営改善につなげること | 上場審査というゴールに向け、リスクを洗い出し、期限内に是正しきること |
| 求められる視点 | 現状の把握と健全な運用の維持 | 審査基準を見据えた、より厳密で網羅的な視点 |
| 監査人の立場 | 顧問社労士が兼ねることもある | 独立性が重視され、第三者性が問われる |
| 報告の形式 | 改善提案が中心 | 監査意見を明記した報告書として取締役会へ提出 |
上場審査で確認される労務のチェック項目
チェック項目は、就業規則や賃金台帳といった書類だけではありません。
上場審査で提出を求められる資料から逆算すると、点検すべき範囲が見えてきます。
上場審査の資料から逆算した監査項目
実務上、上場審査で提出を要請される資料をもとに、労務監査の項目は次のように整理されます。
- 組織図、および直近1年間で部署等の責任者が退職した場合の職位・退職理由・業務上の影響と対応状況
- 勤怠管理方法、および未申告の時間外労働の発生防止のための取組み
- 時間外・休日労働に係る労使協定の締結状況(特別条項を含む)
- みなし労働時間制に係る労使協定の締結状況(協定の内容を含む)
- 直近1年間および申請事業年度における部署ごとの各月の平均時間外労働時間の推移
- 長時間労働の防止のための取組み
- 賃金未払いの発生状況・その後の顛末と、賃金不払残業の発生を防ぐための取組状況
- 労働基準法上の管理監督者の状況
- 労働災害の発生状況および安全衛生に係る取組み
- 直近3年間における企業グループの労働基準監督署からの調査の状況
- 直近3年間における懲戒処分の状況



違反がないことだけでなく、再発を防ぐ仕組みが機能しているかが問われます。
労働時間(勤怠管理)・割増賃金
最も重点的に見られるのが、労働時間の管理と割増賃金の支払いです。
厚生労働省の労働基準監督年報によると、労働基準監督官の定期監督等で確認された労働基準法違反のうち、件数の第1位は労働時間、第2位は割増賃金でした。
勤怠管理や36協定に関連する内容が、違反全体のおよそ6割を占めます。急成長フェーズの企業では勤怠管理の仕組みが追いつかず、ここに問題が潜んでいることが多くあります。
参考:令和6年労働基準監督年報
未払い残業代・労働時間管理
労働時間が客観的に記録・管理されているか、そのうえで残業代が正しく支払われているかが確認されます。
自己申告のみで実態と乖離している、固定残業代が正しく運用されていない、といった状態は問題になります。
そもそも労働時間とは、判例上「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。実務では、次の5つの拘束を使用者から受けているかどうかで判定します。
- 一定の場所的な拘束下にあること
- 一定の時間的な拘束下にあること
- 一定の態度ないし行動上の拘束下にあること
- 一定の業務の内容ないし遂行方法上の拘束下にあること
- 一定の労務指揮権に基づく支配ないし監督的な拘束下にあること



事業場外みなし労働時間制や裁量労働制を採用している企業では、この5要素に照らして「本当に労働時間を算定しがたいのか」が問われます。チャットツールでの即時のやり取りが常態化していれば、みなしの適用自体が否定される可能性があります。
36協定の締結・届出(事業所単位の漏れ)
時間外・休日労働をさせるには、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。
見落とされやすいのが事業場単位の漏れです。本社では整備されていても、支店や店舗で漏れているケースがあります。届出のない事業場での時間外労働は違法となるため、全拠点での整備状況が確認されます。
あわせて、協定の届出が有効期間の開始前になされているか、残業時間が協定の範囲内に収まっているかも点検されます。
雇用契約・社会保険
従業員との契約関係と、社会保険の適用状況も点検の対象です。
労働条件通知書・就業規則の整備
雇用時に労働条件を書面で明示しているか、就業規則が適切に作成・届出・周知されているかが確認されます。常時10人以上の従業員がいる事業場には、就業規則の作成・届出義務があります。内容が最新の法令に対応しているか、実態と一致しているかも点検されます。
社会保険・労働保険の加入状況
加入要件を満たす従業員が、社会保険・労働保険に適切に加入しているかが確認されます。とくにパート・アルバイトの加入漏れは、遡及リスクにつながるため要注意です。
健康・職場環境
従業員の健康と職場環境の整備状況も、審査で見られる重要なポイントです。
一定規模の事業場では、衛生管理者や産業医の選任、衛生委員会の設置が必要です。長時間労働者に対する医師の面接指導の実施体制など、健康確保の仕組みが機能しているかも点検されます。
また、パワーハラスメント防止のための相談窓口の設置や社内規程の整備は法律上の義務です。年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員について、年5日の取得義務が守られているかも確認されます。
見落とされがちな「組織・人員体制」の視点
労務担当者が意外に見落とすのが、組織体制そのものが審査対象になるという点です。


東京証券取引所の上場審査等に関するガイドラインでは、「経営活動の安定かつ継続的な遂行及び適切な内部管理体制の維持のために必要な人員が確保されている状況にあると認められること」が審査項目とされています。ここから、次の3点が労務監査でも確認されます。
兼務
兼務には「横の兼務」と「縦の兼務」があります。営業部長と経理部長のように、指示命令系統が異なる部門の役職を兼ねるのが横の兼務です。部門間の相互牽制が働かなくなるため、原則として認められず、解消が必要と考えられています。
一方、経理部長と経理課長のような同一部門内の縦の兼務は、1階層であれば認められることが多いものの、複数階層にわたる場合は単なる人員不足と判断されかねません。代表取締役社長が特定部門の組織長を兼任し、牽制が効いていないケースも問題視されます。
出向者の受入れ
出向者を受け入れている場合は、受入理由が自社の自主的な判断によるものか、重要ポストを出向者が占めていないかが確認されます。出向が終了した際に組織が脆弱にならないよう、後任の採用・育成に着手しているかという代替性の観点も見られます。
離職率と退職理由
離職者数と離職率を確認し、厚生労働省の雇用動向調査などの統計と比較します。自己都合退職であっても、特定の部門や年齢層に偏りがないか、重要ポストや優秀な人材ほど辞めていないか、背景にハラスメントや処遇への不満がないかまで踏み込みます。退職願の提出日と退職日が隣接している場合は、急な退職に至った要因も確認の対象です。
簿外債務になりやすい労務リスク
IPOの労務監査でとくに重要なのが、貸借対照表に表れない「簿外債務」としての労務リスクです。
未払い残業代
最大の簿外債務になりやすい項目です。
勤怠管理や残業代計算に不備があると、過去に遡って多額の未払い賃金が発生します。賃金請求権の消滅時効は当分の間3年とされており、対象人数や期間によっては数千万円規模の負担となる可能性もあります。
パート・アルバイトの社会保険未加入
加入要件を満たしているのに未加入だった場合、遡って保険料を納める必要が生じることがあります。
会社負担分と本人負担分の双方が発生し、対象者が多ければ大きな金額になります。人手を多く抱える業種ほど注意が必要です。
業務委託・フリーランスの偽装請負
急成長企業に特有の論点です。
契約上は業務委託でも、実態が指揮命令下での労働と評価されれば、労働者とみなされることがあります。
その場合、残業代の支払いや社会保険の加入が遡って必要となります。契約書の形式ではなく、働き方の実態で判断される点に注意してください。
代休・振替休日の混同
振替休日は事前に休日を入れ替える扱いで、割増賃金は発生しません。一方、代休は休日労働をさせた後に別の日を休ませるもので、休日労働分の割増賃金は別途必要です。この2つを混同して運用すると、法定休日労働の割増賃金が未払いになります。
IPO労務監査のスケジュールと進め方
労務監査は、いつ着手するかで打てる手が変わります。理想は、直前々期に入る前と直前期の2回です。
N-3期〜N-1期の動き方


IPO準備における「N期」とは、上場予定時期から逆算して、
- N期:現在の期(上場予定時期)
- N-1期:上場予定時期の1期前
- N-2期:上場予定時期の2期前
- N+1期:上場予定時期の1期後
というように表現します。
上場準備には少なくとも3年を要するため、逆算すると、直前々期(N-2期)に入る前に1回目の労務監査を実施しておくのが理想です。
社内体制の整備期間である直前々々期(N-3期)に問題を洗い出し、是正に着手します。そのうえで、社内体制の運用期間にあたる直前期(N-1期)にもう一度実施し、是正が運用に定着しているかを確認します。
2回実施が推奨される理由は、1回目の監査後に労働法制の改正が入る可能性があるためです。
最新の法令に沿った就業規則・内部運用にアップデートしておく必要があります。是正には、就業規則の改定や勤怠運用の変更、未払い分の精算などで数ヶ月から1年以上かかることもあるため、前倒しの着手が肝心です。
労務監査の流れ


IPOにおける労務監査は、おおむね次の流れで進みます。
労働者名簿や賃金台帳が適法に調製され、労働時間管理が適正になされているかを確認します。そもそも監査を受けられる体制かを判断する工程です
何をどのように調査・評価し、いつまでに報告するかを取り決めます
監査業務の範囲、実施時期などの基本方針を被監査会社と協議して決めます
資料の確認に加え、担当者や従業員へのヒアリングで制度と運用実態の乖離を確認します
監査証拠に基づく監査意見を形成し、監査報告書にまとめます
事前調査を省略していきなり本監査に入ると、そもそも証拠となる帳簿が揃っておらず監査が成立しない、という事態になりかねません。





なお、全国社会保険労務士会連合会の社労士診断認証制度で「経営労務診断適合企業」の認証を受けている場合は、この工程を省略することも可能です。
書類の確認だけでなく、ヒアリングを通じて「規程と実態のズレ」を見つけることが、監査の肝になります。
監査報告書に書かれること
監査結果は、労務監査報告書としてまとめられ、必要に応じて報告会で取締役等へ説明されます。
報告書には、監査の目的、監査対象期間、監査手法、監査対象事業場、監査実施者、監査項目、そして監査意見を記載します。宛先は取締役会とするのが一般的です。監査意見は、十分かつ適切な監査証拠が入手できなかった場合には「限定付に適正」あるいは「意見不表明」と明記されます。
監査期間は会社の規模にもよりますが、通常2〜3ヶ月を要します。この期間を内部通報制度の設置・強化期間と位置づけ、監査人が窓口になる運用も有効です。労務監査だけで不正のすべてを見抜くことは難しく、通報経路を併走させることで調査精度が高まります。
なお、報告書には個人情報を含む機微情報が記載されるため、部数を絞る、報告会で配付した資料は回収するといった漏洩対策もあわせて検討してください。
着手が遅れた場合の考え方
着手が遅れた場合でも、打つ手はあります。
まずは現状を早急に把握し、影響の大きいリスクから優先的に是正しましょう。すべてを完璧にするより、致命的な問題から順に潰していくアプローチが現実的です。



一方で、労務に関する問題は過去数年分の対応が遵守が必要になるため必ず早めに動くようにしましょう。
費用相場とIPO労務監査を依頼する社労士の選び方
費用は監査の範囲と是正支援の有無で大きく変わります。
費用相場の考え方
労務監査の費用は、従業員数、事業場数、監査項目の範囲、是正支援まで含めるかによって変動します。
見積りを比較する際は、金額の多寡だけでなく、次の点が明示されているかを確認してください。
- 監査対象とする事業場と期間(全社か一部抽出か)
- 監査項目の範囲(どの項目をどこまで深掘りするか)
- ヒアリングの対象と回数
- 報告書の提出と報告会の実施が含まれるか
- 是正支援が別料金か、含まれるか
とくに大規模な企業では、すべての記録・資料を精査することは時間的にも費用的にも困難です。一部を抽出して監査を実施する場合は、その抽出方法まで契約書に明記されているかを確認しておくと、後の認識齟齬を防げます。



基本的には労務DDで75万円~150万円、是正支援まで伴走して行う場合は、月100万円~150万円が相場になります。
顧問社労士に労務監査を依頼してよいか
意外に見落とされがちですが、顧問社労士が顧問先の労務監査を実施することは推奨されません。
監査人には「公正不偏」(依頼者にも利用者にも偏らない精神的独立性)と「外観的独立性」(依頼者と身分的・経済的に独立していること)の双方が求められます。継続的に報酬を受けている顧問社労士が監査を行うと、「監査に手心を加えた」と疑われかねず、監査結果に対する信頼が揺らぎます。
たしかに、会社の状況を理解している顧問社労士のほうが効率的に監査できるという考え方もあります。しかし、IPOの労務監査は主幹事証券会社や株主など多くの利害関係者に影響を及ぼすため、独立性を優先すべきです。
実務的には、日常の労務顧問と、第三者としての労務監査を別の事務所に分ける体制が安全です。顧問社労士がいる場合は、監査は別の社労士に依頼し、是正の実行は顧問社労士が担う、という役割分担も選択肢になります。
社労士を選ぶ3つのポイント
労務の実態を専門的に監査する役割は、社会保険労務士が担うのが一般的です。依頼先を選ぶ際は、次の3点を確認するとよいでしょう。
- 1. IPO・上場支援の実績があるか
-
一般的な労務相談とIPOの労務監査は別物です。上場審査で何が見られるかを理解し、審査基準を見据えた対応ができるかが重要になります。
- 2. 是正まで伴走できるか
-
監査はリスクを洗い出して終わりではありません。規程の改定や運用の見直し、未払い分の精算まで、実行段階で伴走してくれるかどうかが上場までたどり着けるかを左右します。報告書を出すだけの監査では不十分です。
- 3. 費用体系が明確か
-
何にいくらかかるのか、追加費用がどのような場合に発生するのかが明確に示されるかを、依頼前に確認しておくと安心です。
詳しい社労士の選び方について知りたい方は下記記事を参考にしてください。


IPO労務監査に関するよくある質問
IPOに労務監査は必須ですか?
法律上の義務ではありませんが、実務上は不可欠です。上場審査では労務コンプライアンスが実質的に問われ、未払い残業代などの問題が申請期に発覚すると、上場の延期や中止に直結します。
労務監査はいつ始めればよいですか?
直前々期(N-2期)に入る前、つまりN-3期の着手が理想です。是正には就業規則の改定や勤怠運用の変更、未払い分の精算などで数ヶ月から1年以上かかることがあります。直前期に問題が残ると、スケジュール全体が後ろ倒しになります。
N-1期の今からでも間に合いますか?
着手が遅れるほど選択肢は狭まりますが、諦める必要はありません。まず何がどれだけ問題かを早急に把握し、優先度の高いリスクから是正するのが現実的です。間に合うかは、潜むリスクの規模と是正のスピード次第です。
未払い残業代はどれくらいありますか?
企業により大きく異なります。労働時間の管理方法や固定残業代の運用、対象人数によって金額は変動し、数百万円規模で収まることもあれば、全社的な運用に問題があれば数千万円以上に膨らむこともあります。まずは実態把握による試算が出発点です。
顧問社労士に労務監査を頼んではいけないのですか?
法律上禁止されているわけではありませんが、推奨されません。継続的に報酬を受けている立場では外観的独立性を担保できず、監査結果の信頼性が問われます。顧問と監査は分け、是正の実行を顧問社労士が担う形が現実的です。
業務委託やフリーランスが多いのですが、問題になりますか?
なる可能性があります。契約が業務委託でも、実態が指揮命令下の労働と評価されれば、労働者として扱われ、残業代や社会保険の遡及リスクが生じます。急成長企業で起こりやすい論点です。
TOKYO PRO Marketへの上場でも労務監査は必要ですか?
一般市場と同じ深度の調査までは求められないのが通例です。T
OKYO PRO Marketでは、東証から認証を受けたJ-Adviserが上場の指導から審査、上場後のモニタリングまでを行うため、そのJ-Adviserの審査項目を通過するための調査を実施することになります。ただし審査で用いるチェック表はJ-Adviser各社で共有されているわけではないため、担当J-Adviserの項目を確認する必要があります。
労務監査は社労士以外に依頼できますか?
労務の実態を専門的に監査する役割は、社会保険労務士が担うのが一般的です。
労働時間や割増賃金の判定には労働基準法の解釈が不可欠なため、IPO支援の実績がある社労士を選ぶと、審査を見据えた実務的な対応が期待できます。
まとめ
- IPOの労務監査は、上場審査で問題になる労務リスクを事前に洗い出す調査であり、会計監査のような保証を与える業務ではない
- 法的義務はないが、未払い残業代などが発覚すると上場の延期・中止に直結する
- 上場審査では書類だけでなく、兼務・出向・離職率といった組織と人員の体制も見られる
- 未払い残業代・社会保険未加入・偽装請負・代休の運用は簿外債務になりやすい
- 直前々期に入る前と直前期の2回実施が理想で、是正には数ヶ月〜1年以上かかることもある
- 監査人には独立性が求められるため、顧問社労士による自社顧問先の監査は推奨されない
何から手をつけるべきか判断に迷う場合は、早めにIPO支援の実績がある社労士へご相談ください。

