「労働時間は1分単位で計算しないといけないと聞いたが、いつからそうなったのか」「うちは昔から15分単位で残業をつけているが、違法なのか」「勤怠システムの丸め設定はどうすればよいのか」。こうした相談は、2024年に厚生労働省が注意喚起を行って以降、特に増えています。
結論からいえば、労働時間を1分単位で把握して賃金を支払うのは、法改正で始まったルールではなく、労働基準法の原則として以前から求められているものです。1日の残業の15分未満・30分未満を切り捨てる運用は、原則として違法です。一方で、1か月の残業時間の合計を30分単位で処理するなど、例外的に認められている端数処理もあります。
この記事では、1分単位の原則がいつから・なぜ求められているのか、認められる端数処理と違法になる丸めの一覧、遅刻・早退の控除のルール、切り捨てていた場合の未払い額を試算するツール、是正の進め方まで、社会保険労務士が解説します。
- 労働時間を1分単位で把握するのは、労働基準法の「賃金全額払いの原則」と割増賃金の規定から導かれる原則。特定の時期に法改正で始まったルールではない。
- 2024年9月、厚生労働省が「15分未満の残業を切り捨てる勤怠システムの設定」や「30分単位でしか残業申請を認めない運用」を違反例として示したリーフレットを公表し、改めて注目された。
- 1日の残業の15分・30分未満を切り捨てるのは原則違法。切り上げは問題ない。就業規則に定めても、本人が同意しても、切り捨ては認められない。
- 例外として、1か月の時間外・休日・深夜労働それぞれの合計の1時間未満の端数を、30分未満切り捨て・30分以上切り上げとすることは認められている。
- 切り捨てていた場合、3年分の未払い残業代を請求されるおそれがある。システム設定・残業申請のルール・就業規則を見直し、過去分の扱いを決める。

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298
労働時間の1分単位はいつから?
法改正ではなく、労働基準法の原則
「労働時間は1分単位」というルールは、ある年の法改正で新しく始まったものではありません。労働基準法24条は、賃金を全額支払うこと(賃金全額払いの原則)を、37条は時間外・休日・深夜の労働に割増賃金を支払うことを定めています。実際に働いた時間を切り捨てれば、その分の賃金が支払われないことになるため、労働時間は1分単位で把握しなければならないと解釈されてきました。
法律の条文に「1分単位」と書かれているわけではありませんが、この考え方は労働基準法の施行当初から変わっていません。また、2017年に厚生労働省が定めた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも、会社は始業・終業時刻を確認・記録し、労働時間を適正に把握する責務があるとされています。
2024年9月の厚生労働省リーフレットで注目された
「いつから」と検索されることが多いのは、2024年9月に厚生労働省と都道府県労働局・労働基準監督署が、リーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」を公表したことがきっかけです。リーフレットでは、次のような運用が労働基準法違反の具体例として挙げられています。
- 勤怠管理システムの端数処理機能で、1日の時間外労働のうち15分に満たない時間を一律に切り捨てている
- 残業申請を30分単位で行うよう指示し、30分に満たない時間外労働を残業として認めていない
- 始業前の制服への着替え・清掃・朝礼を義務づけているのに、労働時間として扱っていない
これをきっかけに「1分単位が義務化された」と受け止められることがありますが、実際には以前からのルールを改めて周知したものです。つまり、2024年より前に行っていた切り捨ても、さかのぼって未払いの対象になり得ます。
就業規則や本人の同意があっても認められない
就業規則に「残業は15分単位で計算し、15分未満は切り捨てる」と定めていても、労働基準法に反する部分は無効になります(労働基準法13条)。従業員が同意していても同じです。労働基準法は、当事者の合意で下回ることのできない最低基準を定めた法律だからです。
なぜ切り捨ては違法になるのか
切り捨ては違法、切り上げは問題なし
問題になるのは、実際の労働時間より少なく計算する「切り捨て」です。従業員に有利になる「切り上げ」は、本来より多く賃金を支払うことになるため問題ありません。

| 処理 | 計上する終業時刻 | 扱い |
|---|---|---|
| 1分単位 | 18時13分(13分の残業) | 原則どおり |
| 15分単位の切り捨て | 18時00分(残業0分) | 違法(13分が未払い) |
| 15分単位の切り上げ | 18時15分(15分の残業) | 問題なし(従業員に有利) |
厚生労働省のリーフレットでも、1日の労働時間について一定時間に満たない時間を切り上げたうえで、その分の賃金を支払うことは問題ないとされています。
認められる端数処理の一覧(早見表)
事務処理を簡単にするため、行政通達(昭和63年3月14日基発150号)で、次の端数処理は「常に労働者の不利になるものではない」として、労働基準法違反として扱わないとされています。時間の端数処理と、金額の端数処理は別のルールなので、分けて確認します。

| 区分 | 対象 | 認められる処理 |
|---|---|---|
| 時間 | 1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働の、それぞれの合計時間の1時間未満の端数 | 30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる |
| 単価・割増賃金 | 1時間あたりの賃金額・割増賃金額の円未満の端数 | 50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる |
| 1か月の時間外・休日・深夜の、それぞれの割増賃金の総額の円未満の端数 | 50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる | |
| 支払額 | 1か月の賃金支払額の100円未満の端数 | 50円未満を切り捨て、50円以上を100円に切り上げる |
| 1か月の賃金支払額の1,000円未満の端数 | 翌月の賃金支払日に繰り越して支払う |
例:1か月の時間外労働の合計が10時間20分なら10時間、10時間40分なら11時間として計算できます。
やりがちな勘違い
- 1日単位の30分丸め:認められているのは、1か月分を合計した後の端数処理だけ。「その日の残業が30分未満なら0分」とする処理は対象外
- 切り捨てだけを行う:30分未満の切り捨てと、30分以上の切り上げはセット。切り捨てだけを採用する運用は認められない
- 通常の労働時間の丸め:対象は割増賃金の対象となる時間外・休日・深夜の時間だけ。法定時間内の労働時間を丸めることはできない
- 就業規則に定めていない:月単位の端数処理を行うなら、賃金規程に定めておく
違法になる丸め・運用の具体例

| 運用 | 扱い |
|---|---|
| 勤怠システムで、1日の残業の15分未満を切り捨てる | 違法(厚生労働省のリーフレットの違反例) |
| 残業申請を15分・30分単位でしか受け付けない | 違法(厚生労働省のリーフレットの違反例) |
| 始業前の着替え・朝礼・清掃を労働時間に入れない | 違法(厚生労働省のリーフレットの違反例) |
| 5分の遅刻を15分として賃金を控除する | 原則違法(減給の制裁に当たり得る) |
| 法定時間内の労働時間を1日・1か月単位で丸める | 違法 |
| 1か月の時間外労働の合計を30分単位で四捨五入する | 適法(通達で認められた処理) |
| 退勤時刻を15分単位で切り上げる | 適法(従業員に有利) |
残業申請を15分・30分単位でしか認めない
勤怠システムでは1分単位で記録していても、残業申請の入力単位を30分にしている、または「30分未満の残業は申請しないように」と指示していると、実質的に切り捨てているのと同じです。申請しなかった時間でも、会社が残業を知りながら止めていなければ労働時間になります。申請の単位は1分にし、短い残業も申請できるようにします。
遅刻・早退の控除と「減給の制裁」の上限
遅刻・早退で働かなかった時間の賃金を、1分単位で控除すること(ノーワーク・ノーペイ)は問題ありません。しかし、5分の遅刻を15分や30分として控除すると、実際に働かなかった時間を超える部分は、ペナルティとしての「減給の制裁」になります。
減給の制裁は、就業規則に定めたうえで、1回の額が平均賃金の1日分の半額以内、総額が1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1以内でなければなりません(労働基準法91条)。「遅刻3回で欠勤1日分を控除する」といった運用も、実際の遅刻時間を超える部分は減給の制裁に当たるため、この上限と就業規則の定めが必要です。
打刻時刻と労働時間の違い
労働時間は「指揮命令下にある時間」
1分単位で把握すべき「労働時間」とは、会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。打刻した時刻とは必ずしも一致しません。最高裁も、会社から義務づけられた作業服の着替えなどを事業所内で行う時間は、労働時間に当たると判断しています(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日判決)。
- 労働時間に当たるもの:義務づけられた制服への着替え、始業前の朝礼・清掃・準備、指示があればすぐ対応する待機(手待ち時間)、参加が義務の研修
- 通常は労働時間に当たらないもの:早く出社して自席で私用をしている時間、終業後に私的に残っている時間
早出・居残りのルール化
打刻と実際の労働のずれを、丸めで調整するのは誤りです。業務を始める直前・終えた直後に打刻するルールを決め、始業前の準備を指示するなら、その時間を労働時間として扱うことが基本です。始業前の早い出社が常態化している職場では、入館記録やPCのログと打刻時刻のずれを定期的に確認します。
切り捨てていた場合のリスク
未払い額の試算ツール
1日数分の切り捨てでも、人数・日数・年数を掛け合わせると大きな金額になります。自社の条件を入れて、未払いの目安を確認できます。
切り捨てによる未払い残業代の試算ツール
1日あたりに切り捨てている時間などを入力すると、未払いになっている残業代の目安を計算します。
| 1か月あたり | |
|---|---|
| 1年あたり | |
| 3年分(賃金請求権の時効) | |
| 切り捨てている時間(全員・3年分) |
※ 計算式:切り捨て時間(分)÷60 × 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 出勤日数 × 人数。円未満は四捨五入しています。
※ 退職者の遅延損害金(年14.6%)や、裁判で命じられることがある付加金は含みません。実際の未払い額は、勤怠記録をもとに一人ずつ計算する必要があります。

たとえば、1日10分の切り捨て、従業員20名、月20日出勤、1時間あたり1,800円、割増25%の場合、1か月で約15万円、3年分で約540万円になります。
3年分の未払い、付加金、是正勧告
賃金の請求権の時効は当分の間3年のため、切り捨てていた分は最大3年分さかのぼって請求されるおそれがあります。退職者には年14.6%の遅延損害金がかかり、裁判になれば未払い額と同額までの付加金を命じられることもあります。労働基準監督署の調査で見つかれば、是正勧告を受け、一定期間さかのぼった支払いを指導されます。時効の数え方や請求されたときの対応は未払い残業代の時効は3年?で解説しています。

裁判例
医療機関が残業の15分未満を切り捨てて計算していた事案で、裁判所は、労働時間は1分単位で把握すべきで、一定単位未満を切り捨てて実労働時間より少なく集計することは認められないとして、未払い残業代の支払いを命じています(名古屋地裁平成31年2月14日判決)。
是正の進め方

①勤怠システムの設定と、残業申請のルールを見直す
- 打刻時刻・休憩時刻・集計時間の丸め設定を確認し、切り捨てになっている設定を解除する
- 残業申請の入力単位を1分にする。「30分未満は申請不要」などの指示を撤回する
- 遅刻・早退の控除が、実際の不就労時間を超えていないか確認する
- 月単位の端数処理を使う場合は、30分未満切り捨て・30分以上切り上げのセットになっているか確認する
②就業規則・賃金規程の端数処理条項を改定する
(割増賃金の計算における端数処理)
第〇条 割増賃金の計算の基礎となる労働時間は、1分単位で計算する。
2 前項の規定にかかわらず、1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げる。
3 1時間あたりの賃金額及び割増賃金額、並びに1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げる。
「15分未満切り捨て」などの旧規定が残っていると、それ自体が是正勧告の対象になります。改定後の規程は従業員に周知し、常時10人以上の事業場は労働基準監督署に届け出ます。
③過去分をどうするかを決める
過去に切り捨てていた分は、本来支払うべきだった賃金です。勤怠記録から切り捨てた時間を算出し、時効の範囲内で精算するかどうかを、金額・対象者・請求のリスクを踏まえて決めます。精算すること自体が未払いを認めることになるため、方針は専門家と相談してから決めるのが安全です。後から支払う場合の社会保険料や税金の扱いも、未払い残業代の記事で解説しています。
④従業員に説明する
設定を変更する理由(1分単位が法律上の原則であること)、変更日、残業申請の新しいルールを、書面や説明会で伝えます。過去分を精算する場合は、計算方法と支払時期もあわせて説明します。
勤怠システムの15分切り捨て設定を見直したケース(小売業・従業員約40名)
勤怠システムの初期設定のまま、退勤時刻を15分単位で切り捨てていた会社から相談を受けました。打刻データを確認すると、1人1日平均6分前後が切り捨てられていました。設定を1分単位に変更し、賃金規程の端数処理条項を月単位の処理に改定したうえで、弁護士と相談して過去2年分を自主的に精算しています。あわせて、退勤直前に打刻するルールと残業の事前申請を徹底し、1分単位に切り替えた後も残業時間が増えないよう運用を整えました。
1分単位にすると残業が増えて見える場合の対応
切り捨てをやめると、その分だけ残業時間は増えます。残業時間を減らすには、次のように運用を見直します。
- 打刻のタイミングを決める:業務を終えたらすぐに打刻し、私的な居残りと区別する
- 残業の事前申請・承認:必要な残業を上司が判断する仕組みにする。ただし、申請しにくい雰囲気は隠れ残業を生むため、申請された時間は必ず支払う
- 固定残業代の検討:一定時間分の残業代をあらかじめ支払う方法もある。ただし、要件を満たさないと無効になり、かえって未払いが膨らむ → 固定残業代(みなし残業代)とは

よくある質問
労働時間の1分単位は、いつから義務になったのですか?
法改正で特定の時期から義務になったものではなく、労働基準法の賃金全額払いの原則などから、以前から求められているルールです。2024年9月に厚生労働省がリーフレットで違反例を示したことで、改めて注目されました。
5分単位や15分単位で切り上げるのは問題ありませんか?
問題ありません。実際の労働時間より多く計算する切り上げは、従業員に有利なためです。問題になるのは、実際より少なく計算する切り捨てです。
パート・アルバイト(時給制)も1分単位ですか?
はい。雇用形態や給与の形にかかわらず、労働時間は1分単位で把握し、その分の賃金を支払う必要があります。時給制の場合、切り捨てた時間はそのまま未払いになります。
管理監督者も1分単位で把握する必要がありますか?
管理監督者には時間外・休日の割増賃金の規定は適用されませんが、深夜労働の割増賃金は必要です。また、健康管理のため、労働時間の状況を把握する義務もあります。深夜の時間は1分単位で把握して支払います。詳しくは管理監督者とはで解説しています。

「15分前に出社するように」と指示した場合、その時間は労働時間ですか?
出社後に準備・朝礼・着替えなどの業務を義務づけているなら、労働時間に当たり、賃金の支払いが必要です。単に早めの到着を求めるだけで、業務を指示していない場合でも、遅れた場合に不利益に扱うなど事実上強制していれば、労働時間と判断されるおそれがあります。
給与計算ソフトの端数設定はどうすればよいですか?
日ごとの労働時間は1分単位で集計する設定にします。端数処理を使う場合は、1か月の時間外・休日・深夜それぞれの合計に対して、30分未満切り捨て・30分以上切り上げを行う設定に限定します。単価や割増賃金の円未満は、50銭を境に四捨五入する設定にします。
まとめ
- 労働時間を1分単位で把握するのは、労働基準法の原則。法改正で始まったものではなく、2024年9月の厚生労働省のリーフレットで改めて注目された。
- 1日の残業の15分・30分未満の切り捨て、30分単位でしか残業申請を認めない運用、始業前の準備を労働時間にしない運用は違法。切り上げは問題ない。
- 認められる端数処理は、1か月の時間外・休日・深夜の合計時間の30分単位の処理と、単価・割増賃金・支払額の金額の端数処理に限られる。
- 遅刻・早退の控除は実際の不就労時間まで。超える部分は減給の制裁の上限と就業規則の定めが必要。
- 切り捨てていた場合は、システム設定・申請ルール・賃金規程を見直し、過去分の扱いを専門家と決める。
社労士事務所altruloopでは、勤怠システムの設定と賃金規程の点検、端数処理条項の改定、切り捨てていた場合の未払い額の試算と精算の進め方、給与計算の代行まで対応しています。