ハラスメント相談窓口の設置は、パワハラ防止法によってすべての企業に義務づけられています。
ただし、形だけ作っても意味はなく、正しく設置し運用することが大切です。
この記事では、ハラスメント相談窓口の設置義務や相談を受けた後の対応フローまでを社労士が解説します。
- ハラスメント相談窓口の設置は義務なのか、その法的根拠
- 相談窓口を設置しない場合のリスク
- 相談窓口の設置方法(社内・社外、相談員の選び方)
- 相談を受けてから解決までの対応フローと、調査・報告書の進め方
- 形だけで終わらせない、実効性のある窓口にするポイント

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloop代表
社会保険労務士として、建設・介護・医療・IT業界など累計100社以上の労務顧問を担当。 労務DD・就業規則作成・人事評価制度構築・給与計算/社会保険手続きなどの実務に精通し、高難易度な労務DD案件も多数対応。
現在は全国対応で、大手からスタートアップまで幅広く支援しています。
登録番号:13250298

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ハラスメント相談窓口の設置は義務?
相談窓口の設置は全企業の義務
ハラスメントの相談窓口を設置することは、すべての企業に課された義務です。
いわゆるパワハラ防止法(労働施策総合推進法)により、企業にはハラスメントを防止するための措置が義務づけられており、相談窓口の設置はその中核をなすものです。
当初は大企業のみが対象でしたが、2022年4月からは中小企業にも全面的に義務化されました。従業員数の少ない会社であっても、例外ではありません。
義務の根拠となる法律
この義務は、複数の法律に基づいています。
パワーハラスメントについては労働施策総合推進法、セクシュアルハラスメントについては男女雇用機会均等法、妊娠・出産等に関するハラスメントについては男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が、それぞれ事業主の防止措置義務を定めています。

そして、具体的に何をすべきかは、厚生労働省が定める指針に示されています。相談窓口の設置は、この指針が求める措置の一つです。
相談窓口を設置しないとどうなる?
窓口の未設置に対して、ただちに罰金などが科されるわけではありません。
しかし、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名を公表される可能性があります。
さらに重要なのは、実際にハラスメントが起きたとき、防止措置を怠っていた企業は、安全配慮義務違反などとして損害賠償責任を問われるリスクが高まる点です。窓口がないこと自体が、企業にとって大きな不利になります。
ハラスメント相談窓口の設置方法
相談窓口の設置には、大きく分けて社内に置く方法と社外に委託する方法があります。
社内に設置する方法

一つ目は、社内に窓口を置く方法です。
人事部や総務部、あるいは専任の担当者を相談窓口とするのが一般的です。
自社の事情をよく理解しているため、状況を把握しやすく、迅速に対応できるのがメリットです。一方で、「社内の人には相談しにくい」「担当者と行為者が近い立場だと中立性が保てるか不安」といった声が出やすいのがデメリットです。
社会保険労務士 野澤惇基本的には人事・労務部が相談窓口を担うことが多いです。
社外に設置する方法(外部委託)


二つ目は、外部の専門家や機関に委託する方法です。
社労士や弁護士、専門の相談機関に窓口を委託します。第三者が対応するため中立性が高く、専門的な対応が期待でき、従業員も相談しやすくなるのが利点です。費用がかかる点はデメリットですが、社内窓口と社外窓口を併設し、相談者が選べるようにすると、より相談しやすい体制になります。


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ハラスメントの相談窓口は労務の専門家である社会保険労務士に依頼することが多いです。
相談員の選び方と必要な体制
窓口を社内に置く場合、誰を相談員にするかが重要です。
相談員に求められる要件
相談員には、中立・公正な立場で対応でき、相談者のプライバシーを守れることが求められます。
特定の部署に偏らないよう配慮し、できれば複数名を、また男女両方を配置することが望ましいとされています。相談内容によっては同性の担当者のほうが話しやすいこともあるためです。



プライバシーの観点から相談員を外部に委託する会社様が増えています。
相談員の教育・研修
相談員を置くだけでなく、その教育も欠かせません。
相談対応の基本、話をさえぎらず聴く姿勢、そして相談したことでかえって傷つけてしまう二次被害の防止など、相談員には一定の知識とスキルが必要です。研修を通じて、適切に対応できる体制を整えましょう。



窓口を作ったら、次は相談を受けた後にどう動くか。対応の流れを確認しましょう。
ハラスメントの相談を受けてから解決までの対応の流れ
窓口は、設置して終わりではありません。相談があったときに正しく動けるよう、対応の流れを整えておく必要があります。
ハラスメント対応フローの全体像


対応の基本的な流れは、次のとおりです。
相談の受付から始まり、事実確認のための調査、事実認定と判断、必要な措置(行為者への対応・相談者へのケア)、そして再発防止、という順に進みます。この一連の流れをあらかじめ決めておくことで、いざというときに慌てず、公正に対応できます。
相談を受け付ける
最初のステップは、相談の受付です。
相談者のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な取り扱いをしないことを徹底します。これは指針でも明確に求められている点です。相談内容は、後の調査に備えて正確に記録しておきましょう。
事実関係を調査する
相談を受けたら、事実関係を確認する調査を行います。
当事者・第三者へのヒアリング
調査では、相談者と行為者とされる人、そして必要に応じて周囲の第三者から、公平に話を聴きます。
一方の言い分だけで判断せず、双方の主張と客観的な事実を突き合わせて確認します。この際、中立の立場を保つことが何より重要です。
調査で注意すべきこと
調査の進め方を誤ると、企業がかえって責任を問われることがあります。
予断を持って進めない、関係者のプライバシーに配慮する、相談者や協力者への報復を防ぐ、といった点に注意が必要です。調査そのものが不適切だと、二次被害を生んだり、後の紛争で企業の対応が問われたりしかねません。
報告書にまとめ、措置を決める
調査が終わったら、結果を整理して対応を決めます。
調査で確認した事実を報告書にまとめ、ハラスメントに該当するかどうかを判断します。そのうえで、行為者への注意・懲戒・配置転換といった措置や、相談者へのケアなど、必要な対応を決定します。報告書は、判断の根拠を示す記録としても重要です。
再発防止策を講じる
個別の対応が済んだら、再発を防ぐ取り組みを行います。
研修の実施、規程の見直し、方針の周知などを通じて、同じことが繰り返されないようにします。ハラスメント対策は一度きりの対応ではなく、継続して取り組むべきものです。
ハラスメント相談窓口の設置・運用のポイント
窓口を「作った」だけでは、ハラスメント相談窓口の義務を実質的に果たしたとは言えません。
「相談窓口はあるが機能していない」を防ぐ
もっとも避けたいのが、ハラスメント相談窓口が形骸化することです。
窓口を設置しても、その存在が従業員に知られていなかったり、相談員が適切に対応できなかったりすれば、意味がありません。窓口の連絡先や利用方法を従業員に周知し、安心して相談できる環境をつくることが不可欠です。
就業規則・ハラスメント防止規程を整備する
窓口の設置とあわせて、社内ルールの整備も必要です。
就業規則やハラスメント防止規程に、会社としての方針、禁止する行為、相談を受けた際の対応手順などを明文化します。
ルールが明確になっていることで、窓口の運用も一貫したものになります。


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設置・運用を外部(社労士)に相談するメリット
こうした一連の整備を確実に進めるには、社会保険労務士への相談が有効です。
社労士に依頼すれば、義務を満たす窓口の設計から、就業規則・防止規程の整備、相談員の研修、外部窓口の受託、実際にハラスメントが起きた際の対応支援まで、幅広く任せられます。
厚生労働省の指針に沿った体制を、専門家とともに整えられるのは大きな安心につながります。



社労士に依頼をすることで従業員への安心にも繋がります。
ハラスメント相談窓口の設置に関するよくある質問
小さな会社でもハラスメント相談窓口の設置は義務ですか?
義務です。
2022年4月から、中小企業を含むすべての企業に、相談窓口の設置を含むハラスメント防止措置が義務づけられています。従業員数にかかわらず対応が必要です。
ハラスメント相談窓口は社内と社外、どちらに設置すべきですか?
どちらでもよく、併用も有効です。
社内窓口は迅速に対応でき、社外窓口は中立性が高く相談しやすいという特徴があります。両方を設けて相談者が選べるようにすると、より利用しやすい体制になります。
相談員は誰が担当すればよいですか?
中立・公正に対応でき、プライバシーを守れる人が適任です。
人事担当者などが担うことが多いですが、特定の立場に偏らないよう配慮し、できれば複数名・男女両方を配置します。適切に対応できるよう研修も行いましょう。
ハラスメントの相談を受けたら必ず調査しないといけませんか?
事実確認は基本的に必要です。
相談内容に応じて、当事者や関係者へのヒアリングなど、事実関係の確認を行います。ただし、相談者の意向やプライバシーに配慮しながら、適切な範囲で進めることが大切です。
ハラスメント相談窓口を設置しないと罰則はありますか?
ただちに罰金などが科されるわけではありません。
ただし、行政の助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わなければ企業名が公表される可能性があります。また、ハラスメント発生時に企業責任を問われるリスクも高まります。
まとめ
ハラスメント相談窓口の設置は、パワハラ防止法によりすべての企業に義務づけられており、中小企業も対象です。
根拠となる法律や厚生労働省の指針に沿って、社内・社外・併用のいずれかで窓口を設け、中立な相談員を配置することが求められます。さらに、相談受付から調査・報告書・措置・再発防止までの対応フローを整え、形だけで終わらせないことが重要です。
- ハラスメント相談窓口の設置は、パワハラ防止法により全企業の義務(中小企業も対象)
- 根拠は労働施策総合推進法などの法律と、厚生労働省の指針
- 設置は社内・社外・併用があり、中立でプライバシーを守れる相談員の配置が重要
- 相談受付→調査→報告書→措置→再発防止という対応フローを整える
- 形だけで終わらせないため、規程整備・周知・専門家の活用がポイント
設置や運用に不安があれば、社労士に相談し、専門家とともに実効性のある体制を整えることをおすすめします。










