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人事評価制度とは?目的・仕組み・評価手法と法律上の注意点を社労士が解説

人事評価制度とは、社員の業績・能力・行動を一定の基準で評価し、その結果を昇給・賞与・昇格・配置・育成に反映する仕組みです。等級制度・評価制度・報酬制度の3つを連動させて、はじめて「評価が処遇につながる」制度として機能します。

この記事では、人事評価制度の目的、3つの仕組み、評価の対象、代表的な評価手法の比較、人事考課との違い、メリット・デメリット、就業規則・不利益変更・不公正な評価の違法性・パートや有期社員の待遇差の説明といった法律上の注意点まで、社会保険労務士が解説します。

この記事のサマリ
  • 人事評価制度は、社員を一定の基準で評価し、昇給・賞与・昇格・配置・育成に反映する仕組み。等級・評価・報酬の3つで構成される。
  • 評価の対象は、業績(成果)・能力・情意(仕事への姿勢)の3つが基本。
  • 評価手法には、MBO・OKR・コンピテンシー評価・360度評価・バリュー評価・ノーレイティングがあり、目的と組織に合わせて組み合わせる。
  • 評価は会社の裁量だが、無制限ではない。評価で賃金が決まるなら就業規則に定め、評価の理由を説明できるようにしておく。理由を説明できない降給が無効とされた裁判例もある。
  • パート・有期社員から求められたときは、正社員との待遇差の内容と理由を説明する義務がある。評価の仕組みは、その説明の根拠になる。
監修者
野澤惇_プロフィール写真

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

→プロフィールを見る

目次

人事評価制度とは

人事評価制度は、社員が一定の期間にあげた成果や、仕事で発揮した能力・行動を、あらかじめ決めた基準に照らして評価し、その結果を人事管理に活用する仕組みです。評価の結果は、給与や賞与、昇格・昇進といった処遇の決定だけでなく、配置や育成計画、目標の設定にも使われます。

国家公務員の人事評価は、国家公務員法で「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」と定められています(国家公務員法第18条の2)。民間企業の人事評価制度も、考え方は同じです。

人事評価と人事考課の違い

人事評価と人事考課は、多くの会社で同じ意味で使われています。区別する場合は、人事評価を「育成や配置も含めて社員を評価すること全般」、人事考課を「給与・賞与・昇進などの処遇を決めるための査定」と整理するのが一般的です。言葉の違いより、評価の結果を何に使うのかを社内で決めておくことが大切です。

人事評価制度が必要になる会社

社員が少ないうちは、社長が全員の働きぶりを直接見て処遇を決められます。管理職が増え、社長が一人ひとりの仕事を見られなくなると、評価する人によって基準がぶれ、昇給の理由を説明できなくなります。「なぜこの給与なのか」を社員に説明できなくなった時点が、人事評価制度を整えるタイミングです。大企業では、事業や職種の多様化、グループ会社の制度統一、ジョブ型への移行などをきっかけに見直すケースが多くなっています。

人事評価制度の目的

目的内容
処遇の決定昇給・賞与・昇格を、根拠をもって決める。社員に理由を説明できるようにする
人材育成求める役割と行動を示し、評価とフィードバックで成長を促す
配置の最適化社員の強み・弱みを把握し、配置や登用の判断に使う
方針の浸透経営方針や行動指針を評価項目に入れ、日々の行動に落とし込む

目的によって、評価で重く見る項目や、評価の結果を処遇に反映する強さが変わります。制度を作る前に、どの目的を優先するかを決めます。

人事評価制度を構成する3つの仕組み

仕組み役割主な内容
等級制度社員に期待する役割・能力の段階を決める等級の数と定義、昇格・降格の基準
評価制度一定期間の成果や行動を、基準に照らして判定する評価項目・評価基準・評価の段階・評価者・評価期間
報酬制度等級と評価の結果を給与・賞与に反映する賃金表、評価ごとの昇給額、賞与の係数

評価の結果が等級と報酬につながっていないと、「評価が良くても給与が変わらない」という不満につながります。

等級制度の3つの種類

種類等級を決める基準特徴
職能資格制度職務を遂行する能力経験とともに等級が上がりやすく、異動させやすい。年功的になりやすい
職務等級制度(ジョブ型)担当する職務の内容と価値職務と報酬の関係が明確。職務の定義と見直しに手間がかかる
役割等級制度担う役割と責任の大きさ職能と職務の中間。職務を細かく定義しにくい会社でも運用しやすい

等級制度の詳細は等級制度とは、賃金表の作り方は賃金テーブルの作り方で解説しています。

何を評価するか(業績・能力・情意)

評価の対象内容評価項目の例
業績(成果)一定期間にあげた成果売上、生産数、目標の達成度、品質
能力(行動)仕事で発揮した知識・技能、成果につながる行動企画力、改善、部下育成、顧客対応
情意(姿勢)仕事への姿勢・意欲規律性、協調性、責任感、積極性

等級が上がるほど業績の比重を大きく、下の等級ほど能力(行動)と情意の比重を大きくするのが一般的です。職種別の評価項目と評価基準の例は人事評価シートのテンプレートと評価項目の例で紹介しています。

代表的な人事評価の手法

スクロールできます
手法内容向いている会社注意点
MBO(目標管理制度)期初に目標を決め、達成度で評価する成果を数字で示しやすい職種が多い会社評価を気にして低い目標を立てやすい
OKR(目標と主要な成果)挑戦的な目標と成果指標を全社で共有し、短い周期で見直す変化の速い事業、挑戦を促したい会社達成度をそのまま報酬に結びつけない運用が前提
コンピテンシー評価成果を出す人の行動特性を基準に評価する求める行動を具体的に示して育成したい会社行動基準を作るのに手間がかかる
360度評価(多面評価)上司に加え、同僚・部下などが評価する管理職の育成、評価の偏りを減らしたい会社人間関係の影響を受けやすい。処遇とは切り離すことが多い
バリュー評価行動指針(バリュー)に沿った行動を評価する理念・文化を浸透させたい会社行動指針を具体的な行動に落とし込む必要がある
ノーレイティングランク付けをせず、頻繁な対話とフィードバックで運用する管理職の対話力が高く、評価の手間を減らしたい会社報酬の決め方を別に設計する必要がある

一つの手法だけで運用する会社は少なく、業績はMBO、行動はコンピテンシー評価やバリュー評価、というように組み合わせるのが一般的です。

人事評価制度のメリット・デメリット

区分内容
メリット処遇の理由を説明でき、不公平感が減る/求める行動が明確になり、育成が進む/配置や登用の判断材料がそろう/上司と部下の対話の機会が増える
デメリット評価者と人事の負担が増える/基準があいまいだと評価がばらつき、不満が増える/評価項目にない仕事が軽視されやすい/運用が止まると形だけの制度になる

デメリットの多くは、評価基準のあいまいさと運用の負担から生まれます。評価項目を絞る、行動で書いた基準を作る、評価者研修を行う、年1回見直す、といった対策で抑えられます。

人事評価制度と法律

人事評価は、会社に広い裁量が認められている分野です。ただし、その裁量は無制限ではなく、評価で賃金が決まる以上、労働法のルールがかかわります。制度を作るときも運用するときも押さえておきたい点です。

評価で賃金が決まるなら、就業規則に定める

賃金の決定・計算の方法と昇給に関する事項は、就業規則に必ず記載する事項です(労働基準法第89条)。評価の結果で昇給額や賞与が変わる制度にするなら、その仕組みを賃金規程や人事評価規程に定め、常時10人以上の事業場は労働基準監督署に届け出ます。評価による降給を行う場合も、規程にあらかじめ根拠と基準を定めておく必要があります。

制度の変更と不利益変更

新しい制度で賃金が下がる社員が出たり、降給の仕組みを新たに設けたりすることは、就業規則の不利益変更にあたる可能性があります。原則として労働者との合意が必要で、合意がない場合は、変更の必要性・不利益の程度・代わりの措置・話し合いの状況などから変更が合理的で、周知されていることが必要です(労働契約法第9条・第10条)。移行時は調整給などで今の給与を守る設計が現実的です。詳しくは就業規則の不利益変更で解説しています。

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評価は会社の裁量だが、恣意的な評価は違法になりうる

裁判所は、人事考課を会社の裁量(人事権)に属するものと捉えつつ、不当な評価は裁量権の濫用として扱ってきました。まず、性別による差別、育児休業などを理由とする不利益な取扱い、労働組合員であることを理由とする不利益な取扱いなど、法律が禁止する理由で評価を下げることは違法です。

そのうえで、次のような評価が違法・無効とされた裁判例があります。

裁判例問題とされた点
マナック事件(広島高裁 平成13年5月23日判決)就業規則で定めた評定期間の外の出来事を、昇格や賞与の査定に反映した
コナミデジタルエンタテインメント事件育児休業の期間を含む年度の成果報酬を、機械的にゼロと査定した
住友生命保険事件所定の評価要素ではない「既婚かどうか」によって、女性社員を一律に低く評価した
Xグループ事件(東京地裁 令和7年2月17日判決)月給に反映される評価を引き下げて降給したが、上司が面談で引き下げの理由を説明できず、降給が無効とされた

共通するのは、規程で決めた評価の期間・要素・手順から外れた評価や、理由を説明できない評価は、裁量の範囲を超えると判断されやすいことです。評価基準を明文化し、評価の根拠となる事実を期中から記録し、面談で理由を伝えることが、社員の納得だけでなく法的なリスクへの備えにもなります。

パート・有期社員の評価と待遇差の説明義務

パートタイム・有期雇用労働法では、正社員と短時間・有期雇用の社員との間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。会社は、短時間・有期雇用の社員から求められたときは、正社員との待遇差の内容と理由を説明しなければなりません(同法第14条第2項)。

同一労働同一賃金ガイドラインでは、基本給を能力や成果に応じて支給する場合、同じ能力・成果であれば同じ支給をすることが求められています。パート・有期社員を評価の対象から外していると、待遇差の理由を説明する根拠がなくなります。雇用形態ごとに、評価の仕組みと処遇への反映のしかたを整理しておくことが必要です。

人事評価制度の導入・見直しの流れ

段階内容
①目的と現状の把握制度で解決したい課題を決め、賃金と人員の構成を把握する
②等級・評価・報酬の設計等級の定義、評価項目と基準、評価と昇給・賞与の関係を決める
③移行シミュレーション全員を新制度に当てはめ、人件費と給与の増減を確認する
④規程化と手続き人事評価規程・賃金規程を作り、意見聴取・届出・周知を行う
⑤運用と見直し評価者研修と試行評価を経て本格運用し、毎年見直す

各段階の進め方、会社の規模別の作り方、昇給額を予算から逆算する昇給シミュレーターは人事評価制度の作り方、外部に依頼する場合の依頼先と費用は人事評価制度コンサルのおすすめ15社で解説しています。

よくある質問

人事評価制度とは、簡単に言うと何ですか?

社員の成果や行動を決めた基準で評価し、その結果を給与・賞与・昇格・育成に反映する仕組みです。等級・評価・報酬の3つで構成されます。

人事評価制度は法律で義務づけられていますか?

民間企業に人事評価制度を設ける法律上の義務はありません。ただし、評価の結果で賃金を決めるなら、その仕組みは就業規則の記載事項(賃金の決定・計算の方法、昇給)にあたるため、規程に定める必要があります。

評価の結果を社員に開示する必要はありますか?

開示を義務づける法律はありませんが、評価の理由を説明できないまま降給した事案で、降給が無効とされた裁判例があります。評価の結果と理由を面談で伝える運用にしておくことをおすすめします。

相対評価と絶対評価はどちらがよいですか?

絶対評価は基準に照らして一人ひとりを評価し、相対評価は社員同士を比べて分布を決めます。育成と納得感を重視するなら絶対評価、人件費の総額を管理しやすくしたいなら相対評価が向いています。評価は絶対評価で行い、賞与の配分だけ相対的に調整する会社もあります。

人事評価制度はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

年1回、評価の分布や社員アンケートをもとに見直すのが目安です。事業の変化、組織の拡大、法改正のときにも見直します。

まとめ

本記事のまとめ
  • 人事評価制度は、社員を一定の基準で評価し、処遇と育成に反映する仕組み。等級・評価・報酬の3つで構成される。
  • 評価の対象は業績・能力・情意。評価手法は目的に合わせて組み合わせる。
  • 評価で賃金が決まるなら、就業規則(賃金規程・人事評価規程)に定め、変更時は不利益変更に注意する。
  • 規程から外れた評価や理由を説明できない評価は、違法・無効とされるおそれがある。評価の根拠を記録し、面談で伝える。
  • パート・有期社員の待遇差は、求めがあれば内容と理由を説明する義務がある。評価の仕組みはその根拠になる。

社労士事務所altruloopでは、社会保険労務士が、等級・評価・賃金の設計から、賃金規程・人事評価規程への反映、労使の手続き、評価者研修、運用の定着まで一貫して支援しています。初めての制度づくりから、大企業・グループ会社の制度の見直しまで対応しています。人事評価制度のご相談はこちら

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【野澤 惇|社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

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