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賃金テーブル(給与テーブル)の作り方|6つの種類と金額の決め方、移行の手順を社労士が解説【作成ツール付き】

賃金テーブル(給与テーブル)とは、等級と号俸などの区分ごとに基本給の金額を一覧にした表です。「どの等級の、どの段階の社員に、いくら払うか」と「評価によってどれだけ上がるか」を決めておくことで、昇給・昇格・中途採用の給与を同じ基準で決められます。

この記事では、賃金テーブルの種類、作り方の6ステップ、金額の決め方(世間相場・最低賃金・支払能力)、移行と調整給、賃金規程への記載、社員への開示、パート・有期社員との関係まで、社会保険労務士が解説します。等級・ピッチ・号数を入れるだけで号俸表と移行シミュレーションができる、賃金テーブル作成ツール(Excel)もダウンロードできます。

この記事のサマリ
  • 賃金テーブルは、等級と号俸ごとの基本給を一覧にした表。等級・号俸・ピッチ(1号あたりの昇給額)・レンジ(上限と下限)で構成される。
  • 種類は、号俸表・段階号俸表・昇給表・複数賃率表・ゾーン型・範囲型(レンジ型)。評価で昇給に差をつけるなら段階号俸表が基本。
  • 作り方は、①今の賃金の把握、②等級と給与項目の整理、③等級ごとの上限・下限、④ピッチと号数、⑤評価と昇給号数、⑥移行シミュレーションの6ステップ。
  • 下限は最低賃金を、上限は人件費の負担と昇格までの年数をもとに決める。最低賃金は毎年改定されるため、下位等級は毎年確認する。
  • 移行で給与を下げると不利益変更になる。今の給与を守る格付けと調整給で移行し、賃金規程に定める。
監修者
野澤惇_プロフィール写真

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

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目次

賃金テーブル(給与テーブル)とは

賃金テーブルは、「賃金表」「給与テーブル」とも呼ばれ、意味は同じです。賃金テーブルがあると、昇給や昇格の金額を担当者の判断ではなく、表にもとづいて決められます。中途採用の社員も、任せる役割を等級に当てはめれば、既存の社員とのバランスをとった金額を提示できます。

賃金テーブルの用語

用語意味
等級(グレード)役割・能力・職務のレベルによる区分。等級ごとに金額の範囲が決まる
号俸同じ等級の中の細かい段階。1号、2号…と上がるごとに金額が上がる
ピッチ1号あたりの昇給額
初号・上限(レンジ)等級の最初の号俸の金額(下限)と、最後の号俸の金額(上限)。その幅をレンジという
昇給号数評価ランクごとに、1年で上がる号俸の数

東京都産業労働局の調査(中小企業の賃金・退職金事情・令和6年版)では、都内の中小企業のうち賃金表がある企業は42.0%で、賃金規程はあるが賃金表がない企業が19.3%、賃金規程がない企業が36.9%でした。

賃金テーブルの種類

種類仕組み向いている会社
号俸表(単純号俸表)毎年1号ずつ昇給する経験の積み上げを重視する会社。評価で差がつかない
段階号俸表評価ランクごとに昇給する号数を変える(例:Sは4号、Bは2号)評価を昇給に反映したい会社。もっとも使われる形
昇給表号俸ではなく、評価ごとの昇給額を決めて今の基本給に足す今の給与を生かしたまま評価を反映したい会社
複数賃率表同じ号俸に評価ごとの複数の金額を設け、毎年の評価で金額を決め直す(洗い替え)直近の評価を強く反映したい会社
ゾーン型等級の中を金額帯で分け、上の金額帯ほど昇給号数を小さくする同じ等級にとどまる社員の昇給を抑え、昇格を促したい会社
範囲型(レンジ型)号俸を置かず、等級ごとの上限・下限だけを決める職務等級(ジョブ型)や、金額を柔軟に決めたい会社

等級間のつなぎ方(重複型・接続型・開差型)

つなぎ方上の等級の下限と、下の等級の上限の関係特徴
重複型上の等級の下限が、下の等級の上限より低い昇格しても給与が大きく変わらない人が出る。年功的な運用になりやすい
接続型上の等級の下限と、下の等級の上限が同じ等級と金額の関係が分かりやすい
開差型上の等級の下限が、下の等級の上限より高い昇格すると給与がはっきり上がる。昇格の重みが大きい

昇格したときに給与がどれだけ上がるべきかを先に決めると、つなぎ方が決まります。等級の考え方は等級制度とはで解説しています。

賃金テーブルの作り方6ステップ

ステップやること
①今の賃金を把握する全社員の基本給を、年齢・勤続・役職と並べてグラフにする
②等級と給与項目を整理する等級の数と定義を決め、テーブルで決める項目(基本給・役職手当)と、テーブルの外に置く手当を分ける
③等級ごとの上限・下限を決める世間相場、最低賃金、今の賃金の分布、人件費の負担から決める
④ピッチと号数を決める標準的な評価で、昇格までに何年かかるかから逆算する
⑤評価と昇給号数を結びつける評価ランクごとの昇給号数と、昇格したときの格付けのルールを決める
⑥移行シミュレーションをする全社員を新しいテーブルに当てはめ、給与の増減と人件費を確認する

ステップ① 今の賃金を把握する

全社員の基本給を、年齢または勤続年数を横軸、基本給を縦軸にしたグラフ(プロット図)にします。役職ごとに色を分けると、同じ役割なのに給与の差が大きい、若手の給与が詰まっている、といった今のゆがみが見えます。新しいテーブルで直したい点を、ここで決めます。

ステップ② 等級と給与項目を整理する

等級の数と、各等級に期待する役割を決めます。あわせて、賃金テーブルで決める項目と、テーブルの外に置く項目を分けます。基本給と役職手当はテーブルに入れ、通勤手当や家族手当のように本人の事情で金額が決まる手当は外に置くと整理しやすくなります。名前は違っても実質的に基本給の一部になっている手当(調整手当・職務手当など)は、この機会に基本給にまとめられないか検討します。

ステップ③ 等級ごとの上限・下限を決める

  • 世間相場:厚生労働省の賃金構造基本統計調査で、業種・規模・年齢・役職ごとの水準を確認する
  • 最低賃金:1等級の下限が、最低賃金を月給に換算した金額を下回らないようにする(下の「最低賃金と賃金テーブル」を参照)
  • 今の賃金の分布:多くの社員が、自分の等級の範囲に収まるか
  • 人件費の負担:上限まで昇給した場合に、会社が負担できる金額か

上の等級ほど、下限の差と範囲の幅を大きくするのが一般的です。

ステップ④ ピッチと号数を決める

ピッチと号数は、「標準的な評価の社員が、何年でその等級を卒業するか」から逆算します。たとえば、標準評価(B)で年2号上がり、5年で次の等級に昇格する想定なら、5年で10号です。そこに、昇格が遅れた社員や高い評価が続いた社員の余地を加えて、号数を20号程度にします。上限まで届いた社員は、昇格しない限り昇給が止まります。

ステップ⑤ 評価と昇給号数を結びつける

評価昇給号数(例)ピッチ2,500円の等級の昇給額
S4号10,000円
A3号7,500円
B(標準)2号5,000円
C1号2,500円
D0号0円

昇格したときは、「上の等級の、今の給与以上で最も近い号俸に格付けする」など、等級をまたぐときのルールも決めます。評価の仕組みは人事評価制度とは、評価シートの項目は人事評価シートのテンプレートで解説しています。

ステップ⑥ 移行シミュレーションをする

全社員を新しい等級と号俸に当てはめ、今の給与と比べます。今の給与以上で最も近い号俸に格付けし、等級の上限を超える社員は、超えた分を調整給とします。移行で増える人件費(月額×12か月と賞与への影響)を確認し、負担できなければ上限・下限やピッチを見直します。

賃金テーブル作成ツール(Excel)

等級ごとの初号(下限)・ピッチ・号数を入れると、号俸表と等級ごとの上限が自動で作られます。評価ランクごとの昇給号数、最低賃金のチェック、今の社員を当てはめる移行シミュレーションも入っています。

【ダウンロード:chingin-table-tool.xlsx をメディアにアップロードし、ここにファイルブロック(またはボタン)でリンク】

シート内容
使い方入力する欄と、自動で計算される内容の説明
設定等級ごとの初号・ピッチ・号数(上限と、等級間のつなぎ方を自動表示)、評価ランクごとの昇給号数、最低賃金のチェック
号俸表設定から自動で作られる号俸表(最大8等級・30号)
移行シミュレーション社員ごとの今の基本給を入れると、格付けする号俸・新しい基本給・調整給・今との差額を表示

最低賃金と賃金テーブル

月給制の社員も、最低賃金を下回ることはできません。月給が最低賃金を上回っているかは、次の式で確認します。

月給(基本給と、最低賃金の計算に含める手当の合計)÷ 1か月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金(時給)

1か月の平均所定労働時間は、年間の所定労働時間を12で割った時間です。たとえば、年間の所定労働時間が2,000時間、最低賃金が時給1,200円の地域なら、月給は200,000円以上が必要です。精皆勤手当・通勤手当・家族手当、時間外手当などは、最低賃金の計算に含めません。

最低賃金は毎年改定されます。1等級の下限だけを引き上げると、新人とベテランの給与差が縮まる「圧縮」や、後から入った社員の給与が上回る「逆転」が起きます。下位等級の金額を見直すときは、2等級以上とのバランスもあわせて確認します。

移行と調整給、賃金規程への記載

移行で給与を下げない

新しいテーブルに合わせて給与を下げることは、労働条件の不利益変更にあたります。就業規則(賃金規程)の変更による不利益変更は、原則として労働者との合意が必要で、合意がない場合は、変更の必要性・不利益の程度・代わりの措置・話し合いの状況などから合理的であり、周知されていることが必要です(労働契約法第9条・第10条)。詳しくは就業規則の不利益変更で解説しています。

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移行では、今の給与以上の号俸に格付けし、上限を超える分を調整給として支給するのが現実的です。調整給は、昇給のたびに減らしていく、一定の期間で段階的に減らす、といった縮め方を、移行の時点で決めて社員に説明します。

賃金規程に定める

賃金の決定・計算の方法と昇給に関する事項は、就業規則に必ず記載する事項です(労働基準法第89条)。等級・号俸による基本給の決め方、評価と昇給号数の関係、昇格時の格付け、調整給の扱いを賃金規程に定めます。賃金テーブルそのものを賃金規程の別表にする場合は、就業規則の一部として、意見聴取・届出・周知の対象になります。

賃金テーブルは社員に開示すべきか

賃金テーブルそのものを開示する法律上の義務はありません。労働基準法で明示・周知が求められているのは、賃金の決め方や昇給のルールです。ただし、賃金テーブルを賃金規程の別表にしている場合は、就業規則として周知が必要です。

区分内容
開示するメリット昇給・昇格したときの給与が分かり、目標を持ちやすい。給与の決め方への納得が高まる
開示するときの注意ほかの社員の給与が推測されやすい。上限が見えて頭打ち感を持たれることがある

全部を開示するか、しないかの二択ではなく、本人の等級の範囲と昇給のルールだけを開示する方法もあります。

パート・有期社員と賃金テーブル

パートタイム・有期雇用労働法では、正社員と短時間・有期雇用の社員との間で、不合理な待遇差を設けることが禁止され、短時間・有期雇用の社員から求められたときは、待遇差の内容と理由を説明する義務があります(同法第14条第2項)。同一労働同一賃金ガイドラインでは、基本給を能力や経験に応じて支給する場合、同じ能力・経験であれば同じ支給をすることが求められています。正社員だけに賃金テーブルを作る場合も、パート・有期社員の時給や等級との関係を説明できるように整理しておきます。

よくある失敗と対策

失敗原因対策
多くの社員が数年で上限に届き、昇給が止まった号数が少なすぎる、昇格の基準がない昇格までの標準年数から号数を逆算し、昇格の基準を決める
昇格しても給与がほとんど上がらない等級間の重なりが大きすぎる開差型・接続型に近づけるか、昇格時の格付けルールを見直す
新人とベテランの給与差がなくなった最低賃金の改定で1等級だけ引き上げた下位等級全体のバランスを毎年見直す
調整給がいつまでも残る縮め方を決めていない移行時に、縮め方と期間を決めて説明する
表はあるが、評価と結びついていない評価と昇給号数の関係を決めていない評価ランクごとの昇給号数を賃金規程に定める

評価・等級・報酬をあわせた制度の作り方は人事評価制度の作り方で解説しています。

よくある質問

賃金テーブルと給与テーブルは違うものですか?

同じものです。「賃金表」と呼ぶこともあります。

賃金テーブルは必ず作らなければいけませんか?

法律上の義務はありません。ただし、昇給の基準がないと、昇給の理由を社員に説明できず、社員間のバランスも崩れやすくなります。賃金の決定・計算の方法と昇給に関する事項は、就業規則に記載する必要があります。

等級の数はいくつがよいですか?

社員数と役割の段階によりますが、30名程度までなら3〜5段階、100名規模なら5〜7段階が目安です。等級が多すぎると、昇格の違いを説明しにくくなります。

ベースアップをしたら賃金テーブルも変えるのですか?

ベースアップ(全体の賃金水準の引き上げ)をする場合は、賃金テーブルの金額そのものを書き換えます。号俸ごとに一定額または一定率を上乗せする方法が一般的です。

中途採用者は何号に格付けすればよいですか?

任せる役割で等級を決め、経験や前職の給与を踏まえて号俸を決めます。同じ等級の既存の社員と比べて、高すぎたり低すぎたりしないかを確認します。

まとめ

本記事のまとめ
  • 賃金テーブルは、等級と号俸ごとの基本給を一覧にした表。評価で昇給に差をつけるなら段階号俸表が基本。
  • 上限・下限は世間相場・最低賃金・人件費の負担から、ピッチと号数は昇格までの年数から決める。
  • 評価ランクごとの昇給号数と、昇格時の格付けのルールを決める。
  • 移行では給与を下げず、今の給与以上の号俸への格付けと調整給で対応する。
  • 賃金の決め方は賃金規程に定め、最低賃金の改定のたびに下位等級を見直す。

社労士事務所altruloopでは、社会保険労務士が、等級と賃金テーブルの設計から、移行シミュレーション、賃金規程への反映、社員への説明まで一貫して支援しています。人事評価制度とあわせた見直しや、大企業・グループ会社の賃金制度の統一にも対応しています。

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監修者

【野澤 惇|社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloopホールディングス 代表
人事労務DD(人事労務デューデリジェンス)・IPO準備の労務監査/労務是正を強みとする社会保険労務士。建設・介護・医療・IT・製造・飲食・小売・人材・不動産など多業種の労務顧問、就業規則作成、人事評価制度構築にも対応。
登録番号:13250298

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