新しく従業員を採用したら、雇用保険の手続きをすみやかに進める必要があります。その際に必要になる書類のひとつが「雇用保険被保険者資格取得届」です。
ところが、実際に書いてみると「試用期間がある場合の資格取得日はいつにすればいいの?」「前職の番号がわからなかった場合はどうするの?」「賃金欄の千円単位ってどういう意味?」など、疑問が次々と出てくるものです。
この記事では、各項目の書き方を記入例とともにひとつひとつ丁寧に解説します。期限を過ぎてしまった場合の対処法や、マイナンバーをめぐる実務的な疑問にもお答えします。
- 雇用保険被保険者資格取得届の各項目の正しい書き方と記入例
- 試用期間がある場合の資格取得年月日の考え方(本採用日ではない点)
- 前職の被保険者番号が不明なときの対処法と備考欄の記入方法
- 提出期限(翌月10日)を過ぎた場合の遅延対応とさかのぼり加入の手順
- マイナンバーの必要性と、従業員が提供を拒否した場合の対処法
雇用保険被保険者資格取得届とは

どんな時に提出が必要か
雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の加入要件を満たす従業員を採用した際に、その従業員を被保険者として登録するためにハローワークへ提出する書類です。
提出が必要になる対象者は、次の2つの条件を両方満たす労働者です。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上継続して雇用される見込みがある
正社員はもちろん、パートタイムや契約社員、アルバイトであっても、上記の要件を満たす場合は届出が必要です。
提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。提出期限は、採用した月の翌月10日まで。正当な理由なく手続きを怠った場合は、雇用保険法第83条に基づき、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
各様式の入手方法
届出の様式はいくつかの方法で入手できます。
- ハローワークインターネットサービス(厚生労働省公式サイト)からPDFをダウンロードして印刷する
- ハローワークの窓口で用紙をもらう(複写式の用紙)
- e-Govを利用して電子申請する(用紙の準備は不要)
ダウンロードして印刷する際は、必ずA4用紙に等倍(100%)で印刷してください。拡大・縮小印刷を行うと、バーコードや文字の読み取りでエラーが発生する可能性があります。
各項目の書き方
①欄「個人番号(マイナンバー)」の書き方

採用した従業員の12桁のマイナンバーを記入します。
記入前に、本人確認と番号確認の両方を実施することが必要です。マイナンバーカードがあれば1枚で両方の確認が完了しますが、カードがない場合は通知カードなどで番号確認を行い、免許証などで本人確認を行います。
マイナンバーを含む書類を郵送する場合は、情報漏えいを防ぐため特定記録郵便または簡易書留を利用しましょう。
②欄「被保険者番号」の書き方

過去に雇用保険に加入したことがある従業員は、雇用保険被保険者証に記載されている10桁の番号をこの欄に記入します。
初めて雇用保険に加入する場合(これまでどこにも勤めたことがない新卒者など)は、この欄は空欄のままで問題ありません。
前職の番号がわからない場合は、この欄は空欄のままにしておき、備考欄に前職の会社名と在籍期間を記入して提出します。そうすることでハローワークが記録を照合して番号を特定してくれます。ただし、番号の重複登録が発生するリスクがあるため、可能であれば番号を確認してから提出するのがベターです。
③欄「取得区分」の書き方

「1新規」か「2再取得」のどちらかを記入します。
初めて雇用保険に加入する場合は「1」、過去にどこかで雇用保険に加入したことがある場合(転職者・再就職者など)は「2」を選択します。
迷った場合は、雇用保険被保険者証の有無で判断してください。証書を持っている場合は「2」、そうでない場合は「1」が目安です。
④〜⑥欄「氏名・フリガナ・性別」の書き方


住民票に記載された正式な氏名とフリガナを記入します。婚姻前の旧姓や通称名は使用できません。マイナンバーと一致する、住民票記載の氏名を使用してください。
婚姻や氏名変更があった場合は、変更後の氏名を記入します。
性別は、「1男」または「2女」の番号を記入します。
⑦欄「生年月日」の書き方

元号区分のコードと年月日をセットで記入します。元号コードは次のとおりです。
| 元号 | コード |
|---|---|
| 昭和 | 5 |
| 平成 | 7 |
| 令和 | 9 |
記入例をいくつか挙げると次のようになります。
- 昭和50年4月1日生まれ → 「5-500401」
- 平成5年12月15日生まれ → 「7-051215」
- 令和元年(2019年)6月1日生まれ → 「9-010601」
年が1桁になる場合(令和1年・2年など)も「01」「02」のようにゼロを前につけて2桁で記入します。
⑧欄「事業所番号」の書き方

会社に付与された11桁の雇用保険適用事業所番号を記入します。
この番号は、雇用保険適用事業所設置届の提出時にハローワークから交付されています。不明な場合は、雇用保険料の納付書や雇用保険適用事業所台帳に記載されているため、そちらで確認してください。
⑩欄「賃金」の書き方

月給制の場合は月額賃金を千円単位で記入します。千円未満は切り捨てです。
例えば、基本給が230,000円、固定残業代が20,000円の場合、合計250,000円を千円単位で記入するため「250」と記入します。
何を賃金に含めるかも重要です。参考として、含めるものと含めないものを整理します。
| 賃金に含めるもの | 賃金に含めないもの |
|---|---|
| 基本給 | 通勤手当 |
| 固定残業代(時間外手当として支払われる場合) | 社会保険料の事業主負担分 |
| 職務手当・資格手当・住宅手当 | 賞与(臨時的に支払われる賃金) |
| 通勤手当以外の定例的な手当 | 実費弁償的な手当 |
試用期間中に賃金が低い場合は、試用期間中の実際の月額を記入します。本採用後の予定額を先に記入することはできません。
⑪欄「資格取得年月日」の書き方

この欄は記入ミスが特に多い項目のひとつです。記入するのは「本採用になった日」ではなく、「雇い入れた日(雇用契約の初日)」です。
試用期間がある場合も同様で、加入要件を満たしていれば試用期間の開始日を資格取得年月日として記入します。「試用期間が終わってから手続きしよう」「本採用が決まってから記入しよう」という判断は誤りです。
入社日が土日・祝日の場合も、日付をずらさずに実際の入社日を記入してください。
記入形式は生年月日と同じく元号区分+年月日で記入します。例えば令和7年4月1日入社の場合は「9-070401」となります。用後の予定額を先に記入することはできません。
⑫欄「雇用形態」の書き方

次の5つのコードから選択します。
- 1 日雇い
- 2 短時間労働者
- 3 派遣
- 4 季節的雇用
- 5 その他(一般)
正社員や一般的なパートタイム労働者(週20時間以上)は「5その他」を選択するケースが多くなっています。資格取得時点の雇用形態をもとに判断してください。
⑬欄「職種」の書き方

様式の裏面に職種コード一覧が掲載されています。現時点(雇い入れ時)の職種に対応する2桁のコードを選んで記入します。主なコードは次のとおりです。
| コード | 職種 |
|---|---|
| 01 | 管理的職業 |
| 02 | 専門的・技術的職業 |
| 03 | 事務的職業 |
| 04 | 販売の職業 |
| 05 | サービスの職業 |
| 08 | 生産工程の職業 |
試用期間後に職種が変わる予定がある場合でも、記入するのは雇い入れ時点の職種です。
⑮欄「1週間の所定労働時間」の書き方

雇用契約書で定めた1週間の所定労働時間を記入します。残業時間は含めません。
パートタイム労働者の場合は、加入要件(週20時間以上)との照合に使われる重要な項目です。正確に記入するよう注意してください。
変形労働時間制を採用している場合は、1週間あたりの平均所定労働時間を記入します。
⑯欄「契約期間の定め」の書き方

「1あり」か「2なし」を選択します。
無期雇用(正社員など)の場合は「2なし」です。
試用期間付きの雇用でも、本採用後に無期雇用になる場合は「2なし」を選択します。試用期間は本採用に向けた試験的な期間であり、有期契約とは性質が異なるためです。
一方、試用期間後も契約期間が定められた有期雇用の場合は「1あり」を選択し、契約期間を記入します。

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翌月10日の期限を過ぎた場合
期限後提出でも必ず届出は必要
採用した月の翌月10日という提出期限を過ぎてしまっても、手続きをあきらめる必要はありません。期限を過ぎても届出は受理されますので、できるだけ早くハローワークへ提出してください。
手続きが遅れると、従業員が雇用保険の各種給付を受けられない期間が生じる可能性があります。未提出のままにしておくことは、期限超過よりもはるかにリスクが高いため、遅れていることに気づいたら速やかに対応しましょう。
遅延提出時に追加で必要な書類
提出が遅れた場合、ハローワークから通常の届出書類に加えて次のような書類の提出を求められることがあります。
- 遅延理由書(様式は自由形式。提出が遅れた理由と対象の労働者の氏名・雇い入れ年月日を記入する)
- 雇用(労働)契約書のコピー(雇用開始日を証明するもの)
- 労働者名簿のコピー
- 出勤簿またはタイムカードのコピー(雇用開始日前後の実態を証明するもの)
必要書類の種類はハローワークによって異なる場合があるため、提出前に管轄のハローワークへ電話で確認しておくと安心です。
さかのぼり加入(2年以内)の手続き
雇い入れから2年以内であれば、実際の雇い入れ日にさかのぼって資格を取得させることができます。
さかのぼり加入を行う場合は、本来の資格取得日から現在まで遡った期間の雇用保険料が未払い状態となっているため、事業主と被保険者がそれぞれの負担分を精算する必要があります。
なお、事業主の故意や重大な過失による未加入の場合は、2年を超えてさかのぼることが認められるケースもあります。詳しくは管轄のハローワークへ確認してください。
マイナンバーの必要性と取り扱い
マイナンバーの記入は本当に必要か
雇用保険関係の手続きにおけるマイナンバーの記入は、2016年(平成28年)1月から義務化されています。
記入がなくても届出自体は受理されますが、後日ハローワークから補完を求められる場合があります。マイナンバーを記入しておくと、ハローワーク側での被保険者番号の照合作業が省力化されるメリットがあります。
可能な範囲でマイナンバーを収集・記入するよう努めてください。
マイナンバーを収集する際の会社側の義務
マイナンバーを収集する際は、次の手順を守ることが法律で求められています。
まず、利用目的を明示してから収集します。「雇用保険の届出のため」という目的を従業員に事前に伝えておくことが必要です。
次に、本人確認と番号確認の両方を実施します。
- 本人確認:マイナンバーカードの顔写真で確認する、または運転免許証などで確認する
- 番号確認:マイナンバーカード・住民票の写し・通知カードなどで確認する
収集したマイナンバーは、利用目的以外に使用してはなりません(個人情報保護法・マイナンバー法)。書類は施錠できるキャビネットに保管するか、電子データの場合は暗号化するなど適切に管理してください。
従業員がマイナンバーの提供を拒否した場合
従業員がマイナンバーの提供を拒否した場合でも、会社側が提出を強要することはできません。
ただし、法律上の義務として「提供を求めた事実を記録に残すこと」が求められています。具体的には次の流れで対応します。
- マイナンバーの提供を求めた事実を社内で記録する
- 届出書の余白に「本人事由によりマイナンバー届出不可」と付記して提出する
- 可能であれば「マイナンバー提供拒否確認書」に従業員の署名をもらって保管しておく
この対応を取ることで、会社としての義務は果たしたことになります。
電子申請での提出方法
e-Govでの申請手順
e-Govを使った電子申請は次の手順で進みます。
発行まで数日〜2週間かかるため、事前に準備しておくことをお勧めします






「内容を確認」ボタンをクリックし、エラーが無いか確認する。
良ければ、そのまま申請する。

なお、資本金1億円を超える法人については、2020年4月から電子申請が義務化されています。
給与計算ソフト・労務システムからの申請手順
SmartHR・マネーフォワードクラウド・freee人事労務などの労務管理システムを利用している場合は、そのシステムから直接電子申請が可能です。
システムに登録済みの従業員データと連携して届出書を自動作成できるため、入力の手間が大幅に削減されます。提出後の被保険者証・確認通知書の管理もシステム上で行えます。
使用しているシステムがe-Govとの連携に対応しているかどうかを事前に確認しておきましょう。
電子申請時の注意点
電子申請を行う際に気をつけておきたい点は次のとおりです。
マイナンバーを含むデータを送信するため、使用するパソコンやネットワーク環境のセキュリティ設定を事前に確認してください。
送信後は必ず「到達確認番号」を記録・保管しておきましょう。申請の証拠となる重要な番号です。
申請完了の通知メールが届くまでは、紙での提出を行わないようにしてください。電子申請と窓口申請が二重になってしまうリスクがあります。
よくある質問
- 試用期間中の従業員の資格取得年月日はいつにすればいいですか?
-
試用期間の開始日(入社日)を記入します。本採用になった日ではありません。
試用期間中であっても雇用保険の加入要件を満たしていれば、試用期間の初日が資格取得年月日となります。「試用期間が終わってから手続きしよう」という対応は、届出の遅延に該当しますのでご注意ください。
- 前職の被保険者番号がわからない場合、どうすればいいですか?
-
②欄は空欄のままにして、備考欄に前職の情報を記入して提出してください。
備考欄には「前職:○○株式会社 在職期間○年○月〜○年○月」のように記入します。ハローワーク側が前職の記録から番号を照合してくれますが、番号の重複登録が起きることもあるため、可能であれば番号を確認してから提出するのがベターです。
- 賃金が月によって変動する場合、⑮欄には何を書けばいいですか?
-
雇用契約書に定めた月額固定賃金を基準に記入してください。
変動する可能性がある残業代は含めず、毎月固定で支払われる賃金のみで計算するのが原則です。試用期間中で賃金が通常より低い場合は、試用期間中の実際の月額を記入します。
- 翌月10日を過ぎてしまいました。提出先はどこですか?
-
提出先は通常と同じく管轄のハローワークです。
ただし期限超過の場合は、遅延理由書や雇用契約書のコピーなど追加書類の提出を求められる可能性があります。持参・郵送の前にまず管轄のハローワークへ電話で確認してから準備を進めるのがスムーズです。
- マイナンバーを記入しないと届出が受理されませんか?
-
受理はされますが、後日補完を求められることがあります。
従業員がマイナンバーの提供を拒否した場合は、提供を求めた事実を記録した上で、届出書の余白に「本人事由によりマイナンバー届出不可」と付記して提出してください。これで会社側の義務は果たしたことになります。
- 電子申請で提出した後に記入ミスが判明しました。どう対処すればいいですか?
-
管轄のハローワークへ電話で連絡し、訂正方法の指示を受けてください。
e-Gov上では提出後の取り消しが原則できないため、ハローワークの指示に従って訂正の手続きを進めることになります。

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まとめ
雇用保険の手続きは、新しく迎えた従業員が安心して働き始めるための大切な第一歩です。最初は書き方に迷う項目もあるかもしれませんが、万が一期限を過ぎてしまっても焦らず速やかに対応すれば問題ありません。
本記事のポイントを押さえて、スムーズな登録を進めていきましょう。
- 提出期限は採用月の翌月10日まで
- 資格取得年月日は「試用期間の初日」を記入
- 前職の被保険者番号が不明な場合は空欄でOK
- マイナンバーの提供を拒否された場合は余白に付記
- 電子申請や労務システムの活用で業務を効率化
雇用保険の手続きは、新入社員が安心して働くための大切な第一歩です。
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