失敗しない顧問社労士の選び方。7つのポイントと注意点【社労士解説】

「会社を成長させたい」「従業員に安心して働いてほしい」– こうした願いを持つ経営者や人事担当者の皆様にとって、人事労務の課題は尽きません。法改正への対応、複雑な労務手続き、採用や人材育成、そして時には労務トラブル…。これらの課題に直面し、どこから手を付ければ良いか分からず、本業に集中できないとお悩みではありませんか?特に中小企業の経営者の皆様は、日々変化する労働法規や人事管理の複雑さに頭を悩ませていることでしょう。

そんな時、信頼できる顧問社労士は、貴社の強力な味方となります。顧問社労士は単に手続きを代行するだけでなく、法的なリスクを未然に防ぎ、より良い職場環境を構築し、ひいては企業の持続的な成長を支える戦略的パートナーとなり得るのです。

私たち社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)は、これまで多くの企業様の人事労務課題に寄り添い、その解決と成長をサポートしてまいりました。

この記事では、顧問社労士選びで絶対に失敗しないための7つの重要な比較ポイントと、具体的な探し方、契約前の注意点に至るまで、専門家の視点から徹底的に解説します。この記事を読めば、貴社にとって最適なパートナーを見つけるための明確な指針が得られ、顧問社労士という選択が単なる業務委託ではなく、将来への戦略的投資であるとご理解いただけることでしょう。

目次

顧問社労士の役割とメリットを再確認

近年、働き方改革関連法や2025年4月施行予定の改正育児・介護休業法など、企業を取り巻く人事労務環境はますます複雑化しています。このような状況下で、顧問社労士の重要性はかつてないほど高まっています。  

顧問社労士の基本的な役割

社会保険労務士(社労士)は、労働関連法令や社会保険に関する専門知識を持つ国家資格者です 。会社経営において、社労士は人事労務管理の専門家として、多岐にわたる役割を担います。  

主な役割として、労働社会保険諸法令に基づく書類の作成・提出代行(1号業務)、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成(2号業務)、そして人事労務管理に関するコンサルティング(相談・指導)(3号業務)が挙げられます 。これらは、企業が健全な経営を行う上で不可欠な業務であり、社労士はこれらの業務を通じて企業を法的な側面から支えます。  

特に中小企業においては、専門の人事部を持たないケースも多く、経営者がこれらの複雑な業務を兼任することも少なくありません。そのような場合に、顧問社労士は「外部の人事部長」あるいは「法務アドバイザー」のような存在として、経営者を力強くサポートします。

社労士の業務範囲は手続き代行だけではない

社労士の業務は、単に行政機関への手続きを代行するだけに留まりません。確かに、従業員の入退社に伴う社会保険・労働保険の手続き、労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届といった事務手続きは主要な業務の一つです。しかし、現代の社労士に求められる役割は、より戦略的かつ多角的になっています。  

例えば、各種助成金の申請代行は社労士の独占業務であり、企業の財務状況改善に直接貢献できる分野です。また、就業規則の作成・変更、賃金制度や退職金制度の設計、人事評価制度の構築といった人事制度コンサルティングを通じて、企業の組織力強化や従業員のモチベーション向上を支援します。  

さらに、特定社会保険労務士であれば、個別労働紛争におけるあっせん代理人として、裁判外紛争解決手続(ADR)で企業をサポートすることも可能です。このように、社労士は手続き業務を基盤としつつも、企業の成長段階やニーズに応じた幅広いコンサルティングサービスを提供することで、経営の安定と発展に貢献します。多くの企業が社労士に求めるのは、単なる作業代行ではなく、このような専門知識を活かした積極的な提案や問題解決能力なのです。  

顧問社労士は頼れる相談相手

顧問社労士は、人事労務に関するあらゆる悩みや疑問に対して、専門的な知見に基づいたアドバイスを提供する、まさに「頼れる相談相手」です。日々の業務の中で発生する些細な疑問から、経営判断に関わる重大な問題まで、幅広く対応します。

例えば、「従業員からハラスメントの相談があったが、どう対応すべきか?」、「新しく従業員を雇い入れる際の注意点は?」、「最近法改正があったと聞いたが、自社は何をすべきか?」といった具体的な相談はもちろんのこと、「従業員のモチベーションを上げるにはどうしたら良いか?」「採用がうまくいかないが、何か良い方法はないか?」といった、より戦略的な課題についても、社労士は専門家としての視点から具体的なアドバイスや解決策を提示できます。  

特に中小企業の経営者にとっては、人事労務に関する悩みを一人で抱え込まずに済むという精神的な支えにもなります 。客観的な第三者の専門家として、冷静かつ的確な判断をサポートしてくれる存在は、企業経営において非常に心強いものです。  

顧問社労士を導入する5つのメリット

顧問社労士と契約することで、企業は具体的にどのようなメリットを享受できるのでしょうか。ここでは主な5つのメリットを解説します。

メリット1:法令遵守とリスク管理の強化

企業経営において、労働関連法令の遵守は絶対条件です。しかし、働き方改革関連法 や、2025年4月施行が予定されている改正育児・介護休業法 など、法改正は頻繁に行われ、その内容は複雑化する一方です。顧問社労士は、これらの最新情報に精通しており、企業が適切に対応できるようサポートします。  

具体的には、就業規則の適法性の確認や見直し、労働時間管理の適正化、ハラスメント防止措置の構築などを通じて、コンプライアンス体制を強化します。これにより、未払い残業代請求、不当解雇、各種ハラスメントといった労務トラブルを未然に防止し、企業が法的なリスクに晒されることを回避します。万が一トラブルが発生した場合でも、専門家として迅速かつ適切な対応をアドバイスし、問題の早期解決と企業へのダメージの最小化を図ることができます。法令遵守は、単に罰則を避けるためだけでなく、従業員との信頼関係を築き、社会的な信用を維持するための基盤となります。  

メリット2:人事労務の業務効率化とコスト削減

従業員の入退社手続き、社会保険・労働保険の各種届出、給与計算といった人事労務関連の事務作業は、非常に煩雑で時間を要します。顧問社労士にこれらの業務をアウトソーシングすることで、人事担当者の業務負担を大幅に軽減し、より戦略的なコア業務へリソースを集中させることが可能になります。  

社労士は専門知識と経験を活かし、これらの手続きを正確かつ迅速に処理します。また、近年ではクラウド型の労務管理システムなどを活用し、さらなる効率化を図る社労士も増えています 。これにより、手続きのミスや漏れによる追徴金や延滞金といった余計なコストの発生を防ぐことができます。一見、社労士への顧問料はコスト増に感じるかもしれませんが、専門知識のない担当者が時間をかけて対応することによる人件費や、ミスが発生した場合の損失を考慮すると、結果的にコスト削減に繋がるケースも少なくありません。この業務効率化によって生まれた時間は、採用戦略の立案や人材育成など、企業の成長に直結する活動に充てることができるのです。  

メリット3:従業員の満足度向上と定着率アップ

公正な労働条件、適切な労働時間管理、ハラスメントのない安全な職場環境は、従業員が安心して働くための基盤です。顧問社労士は、これらの環境整備を通じて、従業員の満足度(ES)向上に貢献します。  

例えば、透明性の高い人事評価制度や納得感のある賃金制度の構築を支援することで、従業員のモチベーションを高めることができます。また、育児や介護と仕事の両立支援制度の導入・運用をサポートすることで、多様な人材が活躍できる職場づくりを推進します。

従業員満足度が高まれば、おのずと定着率も向上し、優秀な人材の流出を防ぐことができます。これは、採用コストや新人教育コストの削減にも繋がり、長期的に見て企業の競争力強化に貢献します。従業員が「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりは、社労士の重要な役割の一つです。  

メリット4:助成金の活用提案による経営支援

国や地方自治体は、雇用の安定、人材育成、職場環境の改善などを目的とした様々な助成金制度を設けています。例えば、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を支援する「キャリアアップ助成金」、従業員のスキルアップを支援する「人材開発支援助成金」、生産性向上と賃金引き上げを支援する「業務改善助成金」 などが代表的です。  

しかし、これらの助成金は種類が多く、申請手続きも複雑なため、情報を知っていても活用しきれていない企業が少なくありません。顧問社労士は、企業の状況や取り組みに合わせて最適な助成金を提案し、その申請手続きをサポートします。助成金の活用は、企業の財務負担を軽減しつつ、人材投資や労働環境改善を推進するための有効な手段です。これは単なる臨時収入ではなく、企業の成長戦略を実現するための「戦略的投資の原資」と捉えるべきであり、社労士はその活用をナビゲートする役割を担います。  

メリット5:経営に集中できる環境の実現

人事労務に関する専門的な業務や法改正への対応、潜在的な労務リスクへの懸念は、経営者や人事担当者にとって大きな負担となり得ます。これらの専門的な判断や実務を顧問社労士に委ねることで、経営者は安心して本業に専念できる環境を手に入れることができます。  

法改正の情報を常にキャッチアップし、適切な対応を検討する時間や、労務トラブルの対応に追われるストレスから解放されることは、経営者にとって計り知れないメリットです。これにより、経営戦略の策定、新規事業の開発、顧客との関係構築といった、企業の成長に直結するより重要な意思決定に時間とエネルギーを集中させることが可能になります。社労士は、いわば企業の「守り」を固めることで、経営者が「攻め」に転じるための土台作りを支援するのです。

良い顧問社労士の選び方・探し方【ステップ別】

顧問社労士選びは、自社にとって最適なパートナーを見つけるための重要なプロセスです。以下のステップに沿って進めることで、後悔のない選択が可能になります。

ステップ1:自社の課題と社労士に期待する役割を明確化する

顧問社労士を探し始める前に、まず「なぜ社労士が必要なのか」「社労士に何を期待するのか」を社内で明確にすることが最も重要です。この初期段階での整理が、後のミスマッチを防ぐための鍵となります)。  

例えば、初めて社労士を探す中小企業の経営者であれば、「何から相談して良いかも分からないので、労務管理の基本から教えてほしい」「煩雑な社会保険の手続きを丸ごとお願いしたい」といったニーズがあるかもしれません 。

一方、成長期にある企業の人事担当者であれば、「従業員増加に伴う就業規則の全面的な見直しや人事評価制度の構築をサポートしてほしい」「コンプライアンス体制を強化し、労務リスクを低減したい」といった、より専門的で具体的な課題を抱えているでしょう 。 既に顧問社労士がいて変更を検討している企業の場合は、現在の社労士に対する不満点(レスポンスの遅さ、提案力の不足、専門分野のミスマッチなど)を具体的にリストアップし、新しい社労士に何を改善してほしいのかを明確にすることが求められます。  

ステップ1-1:どんな業務を依頼したいかリストアップする

具体的にどのような業務を社労士に依頼したいのか、優先順位をつけてリストアップしましょう。 考えられる業務例としては、以下のようなものがあります。  

  • 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き代行
  • 労働保険(労災保険・雇用保険)の手続き代行
  • 給与計算業務のアウトソーシング
  • 就業規則、賃金規程、育児・介護休業規程などの作成・変更
  • 各種助成金の申請サポート
  • 労務相談(日常的な疑問解消、法改正対応、問題社員対応など)
  • 人事制度(評価制度、賃金制度)の構築・運用コンサルティング
  • 従業員研修(ハラスメント研修、管理職研修など)の実施

特に「何を依頼したら良いか分からない」という場合でも、それが一つの重要な課題認識です。その場合は、「自社の労務管理全般について診断し、課題を洗い出してほしい」というニーズを率直に伝えることが大切です。優れた社労士であれば、丁寧なヒアリングを通じて潜在的な問題点を発見し、必要なサポートを提案してくれるはずです。  

ステップ1-2:解決したい経営課題・労務課題を整理する

次に、現在会社が抱えている、あるいは将来的に発生しうると予測される経営上の課題や労務上の問題を具体的に書き出します。これには、単なる手続きの遅延といった表面的な問題だけでなく、その背景にある根本的な原因まで掘り下げて考えることが含まれます。

例えば、以下のような課題が考えられます。

  • 採用関連: 採用がうまくいかない、採用してもすぐに辞めてしまう(離職率が高い)。
  • 人材育成・定着: 従業員のスキルがなかなか向上しない、中核となる人材が育たない、従業員のモチベーションが低い。
  • 労務管理: 残業時間が慢性的に多い、有給休暇の取得率が低い、メンタルヘルス不調者が出始めている。
  • コンプライアンス: 最新の法改正に対応できているか不安、労務トラブルが発生してしまった(または発生しそう)。
  • 組織風土: 社内のコミュニケーションが不足している、ハラスメントが疑われる事案がある。

これらの課題に対して、社労士にどのような役割を果たしてもらい、どのような解決策や成果を期待するのかを明確にすることで、より具体的な社労士選びの軸が見えてきます。

ステップ2:顧問社労士を探す

自社の課題と期待する役割が明確になったら、次は実際に顧問社労士を探すステップに移ります。主な探し方と、それぞれのメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。複数の方法を組み合わせることで、より最適な社労士を見つけやすくなります。

探し方メリットデメリット
知人や経営者仲間からの紹介・信頼できる情報が得やすい
・紹介者の経験に基づいた評価が聞ける
・相性の良い社労士が見つかる可能性がある
・探す手間が省ける
・紹介の機会が限られる
・選択肢が狭まる
・紹介者の主観が入る可能性がある
・合わない場合に断りにくい
インターネット検索・多くの社労士事務所を比較検討できる
・事務所のHPで得意分野や実績、料金を確認しやすい
・口コミや評判を参考にできる
・地域を問わず探せる
・情報が多すぎて選ぶのが難しい
・情報の信頼性を見極める必要がある
・広告やPR記事に惑わされる可能性がある
・実際の対応力が見えにくい
金融機関や税理士など他士業からの紹介・専門家からの紹介なので一定の信頼性がある
・自社の状況を理解している士業からの紹介であればミスマッチが少ない
・連携がスムーズな場合がある
・紹介者の利益が絡む場合がある
・選択肢が限られる
・断りにくい場合がある
商工会議所や業界団体への相談・地域や業界に精通した社労士が見つかる可能性がある
・公的な団体なので安心感がある
・相談会などで直接話を聞ける機会がある
・紹介を受けられる社労士が限られる場合がある
・団体の会員である必要がある場合も
・積極的な紹介というより情報提供に留まることも

この表は、顧問社労士を探す際の最初の意思決定ポイントである「探し方」について、客観的な情報を提供します。各方法のメリット・デメリットを比較することで、読者は自身の状況(既存のネットワーク、情報収集にかけられる時間、重視する点など)に合わせて、最適な探し方を選択するための判断材料を得られます。これにより、闇雲に探し始めるのではなく、戦略的にアプローチできるようになり、結果としてミスマッチのリスクを減らすことに繋がります。

一つの探し方に固執せず、例えば知人からの紹介を参考にしつつも、必ずインターネットでその社労士事務所のウェブサイトや実績を確認する、あるいは商工会議所の相談会に参加して複数の社労士と話してみるなど、多角的に情報を収集・比較することが、より客観的で納得のいく選択に繋がります。特に、以前の社労士選びで何らかの不満があった企業(ペルソナ3)にとっては、より慎重な情報収集が求められるでしょう。

ステップ3:候補となる社労士事務所の情報を比較検討する

いくつかの候補となる社労士事務所が見つかったら、次は各事務所の情報をより詳しく収集し、比較検討する段階に入ります。この情報収集と比較が、最終的な選択の精度を高めます。

ステップ3-1:ホームページで確認すべき基本情報

社労士事務所のホームページは、その事務所の顔とも言える重要な情報源です。以下の点を中心にチェックしましょう。

  • 事務所概要: 事務所の正式名称、所在地、連絡先、代表者名、所属している社労士の数、設立年など、基本的な情報を確認します。
  • サービス内容: 具体的にどのような業務に対応しているのか、顧問契約にはどのようなサービスが含まれているのか、オプションサービスには何があるのかなどを確認します。
  • 得意分野・実績: 特定の業種(例:IT、建設、医療、介護など)や業務(例:助成金申請、就業規則作成、労務トラブル対応、人事制度構築など)に強みがあるか。具体的な実績や、可能であれば顧客の声(匿名でも可)が掲載されているかを確認します。  
  • 料金体系: 顧問料の基準、スポット契約の料金、相談料などが明示されているか。料金表が分かりやすく提示されているかは透明性の指標となります。  
  • 代表者やスタッフの紹介: 代表社労士や担当となりうるスタッフのプロフィール、経歴、保有資格、業務に対する理念や考え方などが紹介されているか。顔写真が掲載されていると、より事務所の雰囲気が伝わりやすくなります。
  • 情報発信の状況: ブログやコラム、セミナー開催情報などが定期的に更新されているか。法改正に関する情報など、専門家としての情報発信を積極的に行っているかは、その事務所の活動度合いや専門性を示す一つの目安となります。  
  • 問い合わせ方法: 電話、メール、問い合わせフォームなど、どのような連絡手段が用意されているか。無料相談の機会を提供しているかも重要なポイントです。

ホームページの情報が古い、サービス内容が曖昧、料金体系が不明瞭といった場合は、注意が必要かもしれません。  

ステップ3-2:実績や得意分野のチェックポイント

社労士事務所のホームページや資料で「実績豊富」「○○専門」といった記載を見かけることは多いですが、その言葉だけでなく、具体的な根拠を確認することが重要です。

  • 自社の業種・規模との関連性: 自社が属する業種や、同程度の企業規模でのサポート実績があるかを確認します。例えば、IT業界特有の労務問題や、従業員50名規模の企業が抱えがちな課題に対応した経験があるかなど、具体的に質問してみるのも良いでしょう。  
  • 得意分野の具体性: 「助成金申請に強い」とあれば、どのような種類の助成金で、どの程度の採択実績があるのか。「労務トラブル対応が得意」とあれば、どのような種類のトラブル(例:解雇、ハラスメント、未払い残業)をどのように解決に導いたのか、具体的な事例(個人情報に配慮した形)を尋ねてみましょう。
  • 「何でもできます」には注意: 社労士の業務範囲は非常に広いため、「何でもできます」とアピールする事務所よりも、特定の分野において明確な強みや専門性を持つ事務所の方が、質の高い専門的なサポートを期待できる場合があります。ただし、あまりに専門分野が限定的すぎると、将来的に別の課題が生じた際に対応できないリスクも考慮する必要があります。自社の現在の課題と将来の展望を照らし合わせ、バランスの取れた専門性を持つ社労士を選ぶことが肝要です。  

ステップ3-3:料金体系の透明性と妥当性

顧問社労士との契約は長期にわたることが多いため、料金体系の透明性と妥当性は非常に重要なチェックポイントです。

  • 明確な料金表の有無: ホームページに料金表が明記されているか、あるいは問い合わせに対して明確な料金基準が提示されるかを確認します。何にいくらかかるのかが曖昧な料金設定は、後々のトラブルの原因となりかねません。  
  • 見積書の内訳の確認: 見積もりを依頼する際には、必ず詳細な内訳を提示してもらいましょう。顧問料に含まれるサービス範囲、別途費用が発生するケース(例:特定の書類作成、通常業務範囲を超える相談、遠方への訪問交通費など)を具体的に確認することが不可欠です。  
  • 複数の事務所との比較: 可能であれば、複数の社労士事務所から見積もりを取り、提示されたサービス内容と料金を比較検討します。単に料金の安さだけで判断するのではなく、提供されるサービスの質や範囲、事務所の専門性などを総合的に考慮し、自社にとって最も費用対効果が高い(コストパフォーマンスが良い)選択をすることが重要です。 この段階で、料金に関する疑問点を解消しておくことが、安心して契約に進むための第一歩です。  

顧問社労士選びで失敗しないための7つの比較ポイント【重要】

候補となる社労士事務所をある程度絞り込んだら、次は実際に面談などを通じて、より深く比較検討するステップに進みます。以下の7つのポイントは、表面的な情報だけでは判断しにくい、社労士の実力や自社との相性を見極めるために非常に重要です。これらのポイントを丁寧に見極めることが、顧問社労士選びで後悔しないための鍵となります。各ポイントを見誤ると、期待したサポートが得られなかったり、後々トラブルに発展したりする可能性があります。  

ポイント1:コミュニケーションの取りやすさと相性  

質問しやすい雰囲気か?専門用語を分かりやすく説明してくれるか?

面談の際には、社労士が威圧的な態度を取らず、こちらの話を丁寧に聞き、真摯に答えようとしてくれるかを確認しましょう。法律用語や専門用語をそのまま使うのではなく、人事労務に詳しくない人にも理解できるように、平易な言葉で具体例を交えながら説明してくれるかは非常に重要です。説明の分かりやすさは、社労士が顧客の立場や知識レベルをどれだけ理解し、配慮しているかの現れと言えます。顧客が本当に知りたいこと、理解すべきことを的確に伝えられない社労士は、自己満足に陥っているか、顧客視点が欠けている可能性があります。  

レスポンスの速さと丁寧さ

問い合わせや相談に対する返信が迅速であるか、またその内容が丁寧で的確であるかを確認します。メールや電話での応対の質も、その事務所の顧客対応姿勢を判断する材料となります。特に、労務トラブルのような緊急を要する事態が発生した場合に、どの程度の速さで対応してくれるのか、連絡体制についても事前に確認しておくことが望ましいでしょう。レスポンスの遅さは、業務の遅延だけでなく、企業側の不安を増大させる要因ともなります。  

定期的な訪問やオンライン面談の頻度

顧問契約を締結した場合、どの程度の頻度で訪問してくれるのか、あるいはオンラインでの面談を実施してくれるのかを確認しましょう。自社が希望するコミュニケーションの頻度や方法(対面重視か、オンライン活用かなど)と、社労士事務所の提供するスタイルが合致しているかを見極めることが大切です。定期的な接点を持つことで、社労士は企業の現状をより深く理解し、潜在的な問題の早期発見や、よりタイムリーなアドバイス提供に繋がります。  

ポイント2:自社の業種・規模への理解と実績

特定の業種(例:IT、建設、医療、介護など)への専門性

自社が属する業種(例:IT業界、建設業界、医療・介護業界、飲食業界、製造業界など)におけるサポート実績や専門知識の有無を確認します。その業種特有の労働時間管理、安全衛生管理、許認可関連の労務手続き、業界特有の助成金などについて、具体的な知見や対応経験があるかを質問してみましょう。例えばIT業界であればテレワークや裁量労働制の導入・運用、建設業であれば複雑な労働時間管理や社会保険加入問題、医療・介護業界であれば特有の勤務シフトや処遇改善加算への対応などが挙げられます。業種特化を謳う社労士は深い知見を持つ一方で、他業種の新しい取り組みに関する情報が入りにくい側面も考慮し、自社のニーズとのバランスを見極めることが重要です。  

会社の成長フェーズに合わせた提案力

企業の成長フェーズ(創業期、成長期、安定期、変革期など)によって、人事労務に関する課題や求められる戦略は異なります。自社の現在のステージを社労士が正しく理解し、それに合わせた人事制度の設計、組織体制の整備、人材育成プランなどを提案してくれるかを見極めましょう。特に成長期の企業(ペルソナ2)は、従業員数の増加に伴い、労務管理の複雑化、ルールの明確化、管理職の育成などが急務となるため、これらの課題に対応できる提案力が求められます。  

同規模の企業のサポート実績

自社と同程度の従業員数や事業規模の企業をサポートした実績があるかを確認することも大切です。中小企業と大企業とでは、利用できるリソース、意思決定のスピード、直面する労務問題の性質などが大きく異なります。同規模の企業での実績があれば、より現実的で実践的なアドバイスが期待できます。

ポイント3:得意分野と提供サービス範囲の確認

就業規則作成、給与計算、助成金申請、労務トラブル対応など

自社が依頼したいと考えている主要な業務(例:就業規則の新規作成や全面改訂、毎月の給与計算代行、特定の助成金申請、問題社員への対応策、労働基準監督署の調査対応など)について、その社労士が豊富な経験と実績を持っているか、具体的な事例を交えて説明を求めましょう。特に、労務トラブル対応や人事制度設計といった高度な専門性や判断力が求められる業務については、どのようなアプローチで問題解決に取り組むのか、過去の成功事例などを詳しく聞くことが有効です。

最新の法改正やDX化への対応力

労働関連法規は頻繁に改正されます。特に働き方改革関連法 や、2025年に多くの改正項目が施行される育児・介護休業法 など、企業実務に大きな影響を与える法改正について、社労士が正確な情報を把握し、企業に対して適切な対応策を具体的に提案できるかは非常に重要です。  

表3: 2025年施行の主な労働関連法改正ポイント(育児・介護休業法など)

改正項目例 (育児・介護休業法等)主な内容施行時期 (予定)
子の看護等休暇の対象拡大・取得事由拡大対象となる子の年齢を小学校就学前から小学校3年生までに拡大。取得事由に子の行事参加(入園式等)や学級閉鎖等を追加。勤続6ヶ月未満の労働者の労使協定による除外不可。2025年4月1日
所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大残業免除を請求できる子の年齢を3歳未満から小学校就学前までに拡大。2025年4月1日
3歳未満の子を養育する労働者に対するテレワーク導入の努力義務化事業主は、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう措置を講じることが努力義務化。2025年4月1日
育児休業取得状況の公表義務の対象企業拡大男性の育児休業等取得率等の公表義務の対象企業を、常時雇用する労働者数1000人超から300人超の企業に拡大。2025年4月1日
介護離職防止のための雇用環境整備・個別周知・意向確認等の義務化介護に直面した労働者に対する両立支援制度(介護休業、介護休暇、その他柔軟な働き方等)の個別周知・意向確認、雇用環境整備(研修実施、相談窓口設置等から1つ以上)を事業主に義務化。2025年4月1日
3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者への柔軟な働き方の措置義務事業主は、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対し、始業時刻変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇付与等のうち2つ以上の措置を講じ、労働者が選択できるようにすることが義務化(いずれか1つは短時間勤務制度以外)。2025年10月1日
雇用保険の「出生後休業支援給付」「育児時短就業給付」新設男性の産後パパ育休(出生時育児休業)取得促進のため、休業中の手取りを実質10割相当とする「出生後休業支援給付」を創設。2歳未満の子を養育するために時短勤務をする労働者の賃金低下を補う「育児時短就業給付」を創設。2025年4月1日

この表は、企業が対応すべき法改正の複雑さの一端を示しており、このような最新情報への対応力は社労士選びの重要な指標となります。

また、クラウド型の勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入支援、電子申請への対応など、人事労務分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する知識やサポート体制も確認しておきたいポイントです 。DX化への対応力がない社労士では、業務効率化の機会を逃す可能性があります 。  

プラスアルファの提案(人事制度構築、研修など)があるか

基本的な手続き代行や労務相談に加えて、企業の成長や課題解決に繋がるようなプラスアルファの提案をしてくれるかも重要です。例えば、従業員のモチベーション向上や生産性向上を目的とした人事評価制度の構築支援、管理職向けの労務管理研修やハラスメント防止研修の実施、組織風土改善のためのコンサルティングなど、より踏み込んだサービスを提供できる社労士は、企業の戦略的パートナーとなり得ます 。社労士を選ぶ際には、単に「業務代行型」なのか、それとも「コンサルティング型」のサポートも期待できるのかを見極めることが大切です 。  

ポイント4:料金体系の明確さと費用対効果

表2: 顧問料の目安(従業員規模別)

従業員数月額顧問料(目安)
~9人20,000円 ~ 30,000円
10人 ~ 19人30,000円 ~ 40,000円
20人 ~ 29人40,000円 ~ 50,000円
30人 ~ 49人50,000円 ~ 60,000円
50人 ~ 99人70,000円 ~ 100,000円
100人以上100,000円 ~ (要相談)

注: 上記は一般的な目安であり、実際の料金は依頼する業務範囲、地域、事務所の方針により異なります。

この表は、顧問料の一般的な水準を把握するための一助となりますが、あくまで参考として捉え、個別の見積もりとサービス内容を精査することが重要です。

顧問料に含まれるサービス範囲はどこまでか

見積もりを取る際には、月額の顧問料に具体的にどのようなサービスが含まれているのかを詳細に確認しましょう。例えば、電話やメールでの相談回数に制限はあるのか、定期的な訪問や情報提供は含まれるのか、社会保険の算定基礎届や労働保険の年度更新といった定型的な手続きは顧問料の範囲内なのか、といった点です。この範囲が明確でないと、後から追加料金が発生する可能性があります。  

オプション料金や追加費用の有無

顧問契約の基本サービス範囲外となる業務や、通常よりも手間のかかる業務については、オプション料金や追加費用が発生するのが一般的です。例えば、就業規則の新規作成や大幅な改訂、助成金の申請代行、個別労働紛争の対応、労働基準監督署の調査立ち会いなどは、別途費用となることが多いです。どのような場合に別途費用が発生するのか、その際の料金算定基準は何かを事前に確認しておくことが、予算管理上も重要です。  

提供される価値と費用のバランス

料金の絶対額だけでなく、提供されるサービスの質や範囲、社労士の専門性や経験、レスポンスの速さ、提案力などを総合的に評価し、支払う費用に見合う価値があるかを慎重に判断する必要があります。例えば、少し顧問料が高くても、 proactive な情報提供や的確なアドバイスによって将来的な労務リスクを大幅に軽減できるのであれば、それは費用対効果が高いと言えるでしょう。逆に、料金が安くても、必要な時に適切なサポートが得られなければ意味がありません。真の費用対効果は、単に金額の比較ではなく、社労士がもたらす安心感、業務効率化、リスク回避、そして企業成長への貢献度によって測られるべきです。  

ポイント5:担当者の経験と人柄  

担当者が変わる可能性はあるか

特に規模の大きな社労士事務所の場合、最初に面談した代表社労士ではなく、別の担当者がつくケースがあります。その場合、実際に担当してくれる社労士の経験や専門性、人柄を事前に確認できるか、また、担当者が途中で変更になる可能性はあるのか、あるとすればどのような場合か、といった点を確認しておきましょう。チームで対応する体制の事務所であれば、メイン担当者とサブ担当者の役割分担なども聞いておくと良いでしょう。  

担当者の専門知識と実務経験

担当となる社労士が、社会保険労務士としての資格を持っていることはもちろんですが、それだけでなく、どのような分野でどの程度の専門知識と実務経験を持っているかを確認することが重要です。例えば、自社が抱える課題(例:複雑な労務トラブル、人事制度改革、特定の業種特有の問題など)に対応できるだけの深い知見と経験があるか、具体的な事例を交えて質問してみましょう。資格を取得したばかりで実務経験が乏しい、いわゆる「ペーパー社労士」ではないかどうかも見極めるポイントです。  

親身になって相談に乗ってくれるか

専門知識や経験が豊富であることは大前提ですが、それと同時に、企業の立場や担当者の気持ちに寄り添い、親身になって相談に乗ってくれるかどうかも非常に大切な要素です。高圧的な態度を取ったり、一方的に法律論を述べたりするのではなく、こちらの話をじっくりと聞き、共に解決策を考えてくれるような姿勢の社労士であれば、安心して悩みを打ち明け、信頼関係を築いていくことができるでしょう。  

ポイント6:IT・DXへの対応力とセキュリティ意識  

クラウド勤怠管理システムや給与計算ソフトへの対応

自社で既に利用している、あるいは導入を検討しているクラウド型の勤怠管理システム(例:KING OF TIME、ジョブカンなど)や給与計算ソフト(例:マネーフォワード クラウド給与、freee人事労務など ( 文脈より))について、社労士がどの程度知識を持ち、連携やデータ活用に対応できるかを確認しましょう。これらのシステムとスムーズに連携できれば、データの二重入力の手間が省け、業務効率が大幅に向上します。  

電子申請への積極性

労働保険・社会保険の各種手続きについて、e-Govなどの電子申請システムを積極的に活用しているかを確認します。電子申請は、手続きの迅速化、ペーパーレス化、コスト削減に繋がり、行政機関も推奨しています。社労士が電子申請に精通していれば、企業はこれらのメリットを享受できます。  

個人情報や機密情報の取り扱い体制

従業員のマイナンバーを含む個人情報や、会社の経営に関わる機密情報をどのように管理し、保護しているか、具体的なセキュリティ対策(例:データの暗号化、アクセス制限、物理的な保管方法、情報漏洩対策など)について質問しましょう。プライバシーマークの取得やISMS認証の取得など、客観的な指標も参考になります。社労士のIT・DX対応力は、もはや「あれば良い」というレベルではなく、効率的で安全なサービス提供のための必須条件と言えるでしょう。  

ポイント7:事務所の方針や理念への共感

どのような理念を持って業務に取り組んでいるか

社労士事務所のホームページの「事務所概要」や「代表挨拶」、「経営理念」といったページを確認したり、面談の際に直接、どのような想いや価値観を持ってクライアントサービスに取り組んでいるのかを尋ねてみましょう。例えば、「企業の成長と従業員の幸福を両立させる」「予防労務を通じて紛争のない職場づくりに貢献する」「常にクライアントの立場に立ち、最善の解決策を追求する」など、事務所ごとに様々な理念があります。  

長期的なパートナーシップを築けそうか

面談を通じて、社労士が自社の事業内容や経営課題、将来のビジョンに対して真摯に関心を示し、深く理解しようと努めてくれるか、そして共に成長していこうという姿勢が見られるかを感じ取ることが大切です。単に目先の業務をこなすだけでなく、中長期的な視点から企業の人事労務戦略について一緒に考え、提案してくれるような社労士であれば、真のビジネスパートナーとして長く付き合っていくことができるでしょう。この「組織レベルでの相性」は、技術的な能力以上に、関係の質を左右する重要な要素です。

顧問契約の前に必ず確認すべきことと注意点

顧問社労士の候補が決まり、いよいよ契約という段階に進む前に、いくつか必ず確認しておくべき重要な事項と注意点があります。これらを怠ると、後々「こんなはずではなかった」という事態になりかねません。

契約形態(顧問契約、スポット契約)の理解

まず、自社がどのような形で社労士のサポートを必要としているのかを明確にし、それに合った契約形態を選択することが重要です。主な契約形態には、「顧問契約」と「スポット契約」があります。  

顧問契約の一般的なサービス内容とメリット

顧問契約は、月額または年額の固定料金で、継続的に人事労務に関する相談や手続き代行、情報提供などのサポートを受ける契約形態です。 一般的なサービス内容としては、以下のようなものが挙げられます(事務所によって異なります)。

  • 労働社会保険諸法令に関する相談(電話、メール、面談)
  • 法改正情報の提供と対応アドバイス
  • 従業員の入退社に伴う基本的な手続き代行
  • 簡単な書類のチェックや作成支援
  • 定期的な訪問や打ち合わせ

メリット

  • いつでも気軽に相談できる安心感がある
  • 社労士が自社の状況を継続的に把握してくれるため、より的確なアドバイスが期待できる
  • 問題が発生する前の予防的な対応がしやすい
  • 継続的なサポートが必要な場合、スポット契約を繰り返すよりもトータルコストを抑えられる場合がある などが挙げられます。

スポット契約が適しているケース

スポット契約は、特定の業務や課題が発生した際に、その都度依頼する契約形態です。 例えば、以下のようなケースが考えられます。  

  • 就業規則を初めて作成する、または大幅に見直したい
  • 特定の助成金の申請手続きだけを依頼したい
  • 労働基準監督署の調査が入ったので、その対応だけをお願いしたい
  • 特定の従業員との間で労務トラブルが発生し、その解決支援を依頼したい
  • 年に一度の労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届の作成・提出だけを依頼したい  

日常的な労務相談は不要だが、専門的な知識が必要な業務が突発的に発生する場合や、まずは特定の業務で社労士の力量を試してみたいという場合に適しています。ただし、頻繁にスポット契約を依頼するようであれば、顧問契約の方が結果的にコストパフォーマンスが良い場合もあります。

見積書と契約書の内容を徹底チェック

契約を締結する前には、提示された見積書と契約書の内容を隅々まで確認し、不明な点や疑問点は全て解消しておくことが極めて重要です。口頭での約束だけでなく、必ず書面で内容を確認しましょう。  

業務範囲、報告義務、免責事項、解約条件

契約書の中でも特に注意して確認すべき項目は以下の通りです。  

  • 業務範囲 : 顧問契約の場合、具体的にどのような業務が顧問料に含まれ、どのような業務が別途費用となるのか、その範囲を明確に確認します。スポット契約の場合は、依頼する業務内容が正確に記載されているかを確認します。
  • 報告義務 : 社労士が業務の進捗状況や結果をどのように報告するのか、その頻度や方法を確認します。
  • 料金と支払条件: 顧問料や各業務の料金、支払時期、支払方法などを確認します。
  • 秘密保持義務: 企業情報や個人情報の取り扱いについて、適切な秘密保持条項が盛り込まれているかを確認します。
  • 免責事項 : 社労士がどのような場合に責任を負わないのか、その範囲と条件を確認します。あまりに広範な免責事項は注意が必要です。
  • 契約期間と更新条件: 顧問契約の場合、契約期間はどのくらいか、自動更新なのか、更新時の手続きはどうなるのかを確認します。
  • 解約条件 : 契約期間の途中で解約する場合の条件(解約申し入れの期限、違約金の有無など)を必ず確認します 。この解約条件が曖昧だったり、一方的に不利な内容だったりすると、後々トラブルになる可能性があります。  

契約書は、社労士と企業の間の約束事を定める非常に重要な書類です。内容を十分に理解し、納得した上で署名・捺印するようにしましょう。

不明点は遠慮なく質問する

見積書や契約書の内容、あるいはサービス全般について、少しでも不明な点や疑問に思うことがあれば、遠慮なく社労士に質問しましょう。曖昧な理解のまま契約を進めてしまうと、後で「思っていたのと違った」ということになりかねません。  

質問に対して、社労士が丁寧に分かりやすく説明してくれるかどうかも、その社労士の信頼性を見極める一つのポイントです。誠実な社労士であれば、クライアントが納得するまで説明責任を果たすはずです。

無料相談を有効活用するコツ

多くの社労士事務所では、契約前に無料相談の機会を設けています。この無料相談は、社労士の専門性や人柄、事務所の雰囲気などを直接確認できる貴重な機会ですので、有効に活用しましょう。  

事前に相談したい内容をまとめておく

無料相談の時間は限られていることが多いです。時間を有効に使うために、事前に相談したい内容や質問したいことをリストアップしておくことをお勧めします。自社の現状(業種、従業員数、抱えている課題など)を簡潔に説明できるように準備しておくと、より具体的なアドバイスを引き出しやすくなります。  

複数の社労士と面談して比較する

可能であれば、1つの事務所だけでなく、2~3の社労士事務所と面談し、比較検討することをお勧めします。それぞれの社労士の提案内容、得意分野、料金、そして何よりも相性を比較することで、より自社に合った社労士を見つけやすくなります。  

事務所の雰囲気や社労士の人柄を感じ取る

無料相談は、社労士の専門知識を確認するだけでなく、その人柄や話しやすさ、事務所全体の雰囲気を感じ取る絶好の機会です 。質問に対して真摯に答えてくれるか、親身になって話を聞いてくれるかなど、コミュニケーションの取りやすさも重要な判断材料です。最終的には、「この社労士なら信頼して任せられる」と感じられるかどうか、直感も大切にしましょう。無料相談は、社労士が企業を評価する場であると同時に、企業が社労士を評価する「双方向の面接」の機会と捉え、積極的に情報を収集し、疑問を解消することが成功の鍵です。  

こんな社労士には要注意!避けるべきケース

顧問社労士選びで失敗しないためには、良い社労士を見極めるポイントと同時に、「避けるべき社労士」の特徴を知っておくことも重要です。以下のようなケースに該当する社労士は、注意が必要かもしれません。  

専門用語ばかりで説明が分かりにくい

面談や相談の際に、法律用語や専門用語を多用し、一般の経営者や人事担当者には理解しにくい説明をする社労士は要注意です 。本当に顧客の立場に立って考えてくれる社労士であれば、専門的な内容も平易な言葉で、具体例を交えながら分かりやすく説明しようと努めるはずです。説明が分かりにくい場合、アドバイスを正しく理解・実行できず、結果として問題解決に繋がらない可能性があります。  

料金説明が曖昧、高圧的な態度

料金体系について明確な説明がなかったり、見積もりの内訳が不明瞭だったりする社労士は、後々料金トラブルに発展するリスクがあります。また、相談者に対して高圧的な態度を取ったり、上から目線で話したりする社労士も避けるべきです 。顧問社労士とは長期的な信頼関係を築く必要があるため、安心して相談できる相手でなければなりません。  

実績や成功事例が具体的に示されない

「実績豊富」「何でもお任せください」といった言葉だけでなく、自社の業種や課題に関連する具体的な実績や、過去の成功事例(個人情報に配慮した形で)を示してくれない社労士は、本当にその分野での経験やノウハウがあるのか疑問が残ります。経験に基づかないアドバイスは、実効性に乏しい可能性があります。  

その他、以下のような点も注意信号と考えられます。

  • 問い合わせに対するレスポンスが一貫して遅い 。  
  • 法改正などの新しい情報提供がほとんどない、あるいは遅い。  
  • ITツールやクラウドシステムへの対応に消極的、または知識が乏しい。  
  • 事務所のホームページが長期間更新されていない、情報が古い。
  • ネガティブな口コミや評判が多い(ただし、情報の真偽は見極めが必要)。

これらの警告サインは、社労士の専門性、顧客対応の姿勢、あるいは業務遂行能力に関する潜在的な問題を示唆している可能性があります。契約前にこれらの点に気づくことが、後悔しない社労士選びには不可欠です。

よくある質問 (Q&A)

顧問社労士の選定や契約に関して、経営者や人事担当者の皆様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q. 初めて社労士に相談するのですが、何を準備すれば良いですか?

A. 初めてのご相談をより有意義なものにするために、以下の点を事前に準備されることをお勧めします。

  • 相談したい内容の明確化: まず、何に困っていて、社労士にどのようなサポートを期待するのか(例:就業規則の作成、給与計算のアウトソーシング、労務トラブルの相談、助成金の申請支援など)を具体的に整理し、リストアップしておくと良いでしょう。  
  • 自社の基本情報: 会社の正式名称、所在地、業種、従業員数(正社員、パートなど内訳も)、設立年月日、現在の労務管理体制の概要(専任担当者の有無など)といった基本情報をまとめておくと、社労士が状況を把握しやすくなります。
  • 関連資料の準備: 相談内容によっては、既存の就業規則、雇用契約書のサンプル、給与規程、労働者名簿、組織図、あるいは問題となっている事案に関する記録(メールのやり取り、面談記録など)があれば、より具体的で的確なアドバイスが得られます。  
  • 質問リストの作成: 聞きたいこと、確認したいことを事前にメモしておくと、相談時間を有効に活用でき、聞き忘れを防ぐことができます。  
  • 期待する成果のイメージ: 相談を通じて、最終的にどのような状態になりたいのか、大まかなゴールをイメージしておくと、社労士も具体的な提案をしやすくなります。

これらの準備をしておくことで、限られた相談時間の中で、より深い議論や具体的なアドバイスを引き出すことが可能になります。

Q. 顧問料の相場はどのくらいですか?また、費用対効果はどう判断すれば良いですか?

A. 顧問料の相場は、企業の従業員数、依頼する業務範囲、社労士事務所の規模や専門性、地域などによって大きく異なります。一般的には、従業員数が増えるほど顧問料も高くなる傾向にあります。例えば、従業員10名未満の企業で月額2万円~3万円程度、従業員30名程度の企業で月額4万円~5万円程度が一つの目安とされていますが、これはあくまで参考値です(本記事内「表2: 顧問料の目安(従業員規模別)」参照)。詳細な料金は、必ず個別の社労士事務所に見積もりを依頼して確認してください。  

費用対効果の判断については、以下の点を総合的に考慮することが重要です。

  • 提供されるサービスの価値: 顧問料にどのようなサービスが含まれているのか(相談回数、手続き代行の範囲、情報提供の頻度、訪問の有無など)を詳細に確認し、その内容が自社のニーズと合致しているか、料金に見合う価値があるかを評価します。  
  • 潜在的なコスト削減・リスク回避効果: 社労士に依頼することで、労務トラブルの未然防止による損害賠償リスクの回避、適切な助成金の活用による資金調達、人事労務業務の効率化による間接的な人件費の削減など、目に見えにくいコスト削減効果やリスク回避効果も考慮に入れるべきです。  
  • 専門性による付加価値: 単なる手続き代行だけでなく、法改正への的確な対応、人事制度構築支援、経営戦略に沿った労務コンサルティングなど、専門家ならではの知識や経験に基づく付加価値がどれだけ期待できるかを評価します。
  • 時間的価値の創出: 経営者や人事担当者が煩雑な労務管理業務から解放され、本来注力すべきコア業務に集中できる時間は、企業にとって大きな価値を生み出します。
  • 複数の事務所との比較: 複数の社労士事務所から見積もりを取り、提示されたサービス内容と料金を比較検討することが不可欠です。ただし、料金の安さだけで選ぶのではなく、自社の課題解決に最も貢献してくれる社労士、長期的なパートナーとして信頼できる社労士を選ぶという視点が最も重要です。  

費用対効果は、単に支払う金額と提供される作業量を比較するだけでなく、社労士の専門性や提案力がもたらす将来的なメリットやリスクヘッジまで含めて判断することが肝要です。

Q. 今の顧問社労士に不満がある場合、変更する際の注意点はありますか?

A. 現在の顧問社労士に不満があり、変更を検討される場合には、以下の点に注意して進めることをお勧めします。

  • 不満点の明確化: まず、なぜ変更したいのか、現在の社労士に対する具体的な不満点(例:レスポンスが遅い、提案がない、専門分野が合わない、コミュニケーションが取りにくい、料金が高いなど)を客観的に整理・記録します。これが、次の社労士選びで同じ失敗を繰り返さないための重要な基準となります。  
  • 現行契約内容の確認: 現在の顧問契約書を詳細に確認し、契約期間、解約申し入れの時期や方法(書面通知が必要かなど)、中途解約の場合の違約金の有無などを正確に把握します。解約に関する条項は特に注意深く確認してください。  
  • 業務の引継ぎ準備: 新しい社労士へスムーズに業務を引き継げるよう、関連書類(就業規則、労働者名簿、賃金台帳、過去の社会保険・労働保険手続きの控え、係争中の案件資料など)を整理し、リストアップしておきます。給与計算などを依頼している場合は、データの形式や移行方法についても事前に確認が必要です。
  • 解約意思の伝達方法とタイミング: 現顧問社労士には、これまでの感謝の意を伝えつつ、解約の意思を伝えます。理由を伝える際には、相手に配慮し、角が立たないようにするのが望ましいでしょう。「知人が社労士事務所を開業したため」「主要取引先から別の社労士を紹介されたため」といった理由を伝えるのも一つの方法です。解約のタイミングとしては、年度更新や算定基礎届の提出、賞与計算といった大きな業務が一区切りついた時点などが、比較的スムーズに移行しやすいでしょう。  
  • 新しい社労士の選定は慎重に: 今回の変更理由を踏まえ、同じ轍を踏まないよう、本記事で解説した「7つの比較ポイント」などを参考に、複数の候補を比較検討し、無料相談などを活用して、自社に本当に合った社労士を慎重に選びましょう。
  • 情報共有の範囲: 新しい社労士には、変更に至った経緯や以前の社労士との間で問題となった点を(守秘義務に配慮しつつ)伝えることで、より良い関係構築に繋がる場合があります。

顧問社労士の変更は、企業にとって少なからず労力のかかる作業ですが、より良いサポートを得るための前向きなステップと捉え、計画的に進めることが大切です。

Q. 中小企業でも顧問社労士は必要ですか?どのようなメリットがありますか?

A. 中小企業にこそ、顧問社労士の必要性が高いと言えます。大企業と比べて、中小企業では人事労務専門の部署や担当者を配置する余裕がない場合が多く、経営者自身が日常業務と並行して複雑な労務管理に対応しなければならないケースが少なくありません。その結果、知らず知らずのうちに法令違反のリスクを抱えてしまったり、労務問題への対応が後手に回ってしまったりすることがあります。  

中小企業が顧問社労士を活用する主なメリットは以下の通りです。

  • 法令遵守とリスク回避: 専門家である社労士が、最新の法改正に対応した就業規則の整備や適切な労務管理を行うことで、コンプライアンス体制を強化し、労務トラブルを未然に防ぎます 。  
  • 本業への集中: 煩雑な社会保険・労働保険の手続きや給与計算、労務相談などを社労士に任せることで、経営者や従業員は本来のコア業務に集中できます 。
  • コスト効率の最適化: 専任の人事担当者を雇用するコストと比較して、顧問契約の方が費用を抑えられる場合があります。また、手続きミスによる追徴金や、労務トラブル発生時の対応コストなどを考慮すると、結果的に経済的です。
  • 助成金の有効活用: 中小企業が活用しやすい様々な助成金の情報をタイムリーに得られ、申請手続きのサポートを受けることで、資金調達や人材投資に役立てることができます。  
  • 従業員の安心感と定着率向上: 労働条件や職場環境が適切に整備されることで、従業員は安心して働くことができ、結果として満足度や定着率の向上に繋がります 。
  • 経営に関する相談相手: 労務問題だけでなく、採用、人材育成、組織活性化といった「人」に関する経営課題全般について、専門的なアドバイスや客観的な意見を得られる頼れるパートナーとなり得ます 。

企業規模が小さいからこそ、専門家の力を借りて効率的かつ確実に人事労務管理を行うことが、企業の持続的な成長にとって重要です。

Q. 最近の法改正(育児・介護休業法など)について、社労士はどのように対応してくれますか?

A. 近年、働き方改革関連法や育児・介護休業法など、企業の人事労務管理に大きな影響を与える法改正が相次いでいます。特に2025年4月からは、改正育児・介護休業法の多くの項目が施行され、企業には新たな対応が求められます 。このような法改正に対して、顧問社労士は以下のようなサポートを提供します。  

  • 最新情報の提供と詳細解説: まず、法改正の具体的な内容、企業が新たに対応すべき事項、施行スケジュール、違反した場合の罰則などを、専門家の視点から分かりやすく解説します 。
  • 就業規則・関連規程の改定サポート: 法改正に伴い、就業規則本体や育児・介護休業規程、ハラスメント防止規程などの見直し、あるいは新規作成が必要になる場合があります。社労士は、これらの規程が法改正に準拠し、かつ自社の実情に合ったものになるよう、具体的な条文案の作成から届出までをサポートします。
  • 社内制度の構築・見直し支援: 例えば、改正育児・介護休業法では、子の看護休暇の対象拡大、所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大、3歳未満の子を養育する労働者へのテレワーク導入努力義務などが盛り込まれています。これらの制度を社内でどのように運用していくか、具体的なルール作りや運用フローの整備を支援します。  
  • 従業員への周知・説明会の実施支援: 新しい制度や変更点を従業員に正しく理解してもらうための説明資料の作成や、社内説明会の開催をサポートします。これにより、制度の円滑な導入と利用促進を図ります。
  • 必要な行政手続きの代行: 法改正に伴い、行政機関への届出が必要となる場合があります(例:一般事業主行動計画の策定・変更届の提出など)。これらの手続きを企業に代わって行います。
  • 実務運用に関するアドバイス: 新しい制度を実際に運用する上での具体的な勤怠管理方法、休業申出の受付・処理フロー、代替要員の確保策、育児休業取得状況の公表義務への対応 など、実務レベルでの細かな疑問や課題に対してアドバイスを提供します。  
  • 関連助成金の活用提案: 法改正への対応を支援する助成金(例:両立支援等助成金など)があれば、その情報提供や申請手続きのサポートも行います。

社労士は、法改正の内容を単に伝えるだけでなく、それが企業の実務にどのような影響を与え、具体的に何をすべきかを明確にし、スムーズな対応を支援する役割を担います。

まとめ:信頼できる顧問社労士選びで、安心経営の第一歩を

顧問社労士選びは、単に外部の専門家に業務を委託するという行為を超え、企業の将来の成長と安定を左右する可能性のある重要な経営判断の一つです。人事労務の課題が複雑化し、法令遵守の要請がますます高まる現代において、信頼できる社労士の存在は、経営者にとって心強い支えとなります。

本記事でご紹介した「顧問社労士の役割とメリットの再確認」、「後悔しないための選び方のステップ」、そして特に重要な「7つの比較ポイント」や「契約前の注意点」が、貴社にとって最適なビジネスパートナーを見つけるための一助となれば幸いです。

自社の現状の課題や将来のビジョンを深く理解し、経営者や人事担当者の立場に親身に寄り添い、そして専門家として的確なアドバイスと実務サポートを提供してくれる社労士との出会いは、計り知れない価値を企業にもたらします。それは、法務リスクの低減、業務効率の向上、従業員満足度の向上、そして何よりも経営者が安心して本業に専念できる環境の実現に繋がるからです。

この記事が、貴社にとって最高の顧問社労士を見つけるための一歩となり、安心経営の実現に貢献できることを心より願っております。

社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)では、全国対応・初回相談無料でご相談を承っております。人事労務に関するお悩みはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。

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監修者(社労士)

社会保険労務士(社労士事務所altruloop代表)
労務管理・人事制度設計・法改正対応をはじめ、実務と経営をつなぐ制度づくりを得意とする。戦略コンサルファームでは新規事業立ち上げや組織改革に従事し、大手〜スタートアップまで幅広い企業の支援実績あり。
現在は東京都渋谷区や八王子を拠点にしている社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)代表として、全国対応で実務と経営の両視点から企業を支援中。

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