事業譲渡で従業員はどうなる?転籍・同意書・退職金清算の実務を社労士が解説

事業譲渡は柔軟なM&A手法ですが、最大の難所は「従業員の取扱い」です。株式譲渡とは異なり、雇用関係の移転には一人ひとりの個別同意(転籍同意)が不可欠で、対応を誤れば取引の破綻や訴訟リスクを招きかねません。本記事では、転籍実務の要点を社労士の視点で体系的に解説します。

※事業承継全体の流れについては「【2026年版】事業承継の流れを5ステップで解説|準備期間・スケジュール・労務面の落とし穴まで社労士が解説」もあわせてご参照ください。

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この記事で分かること
  • 個別同意の重み:他手法(株式譲渡・分割)とは異なる「事業譲渡」特有の労務ハードル
  • 転籍同意書の要諦:法的紛争を避ける「必須7項目」と提示のタイミング
  • 退職金の精算・通算:コストと手取りを左右する、税務視点の数値シミュレーション
  • 転籍拒否への対応:配転や退職勧奨を含む、トラブル最小化の実務フロー
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目次

事業譲渡と他のM&A手法|従業員への影響の3つの違い

事業譲渡における従業員の取扱いを正確に理解するには、まず他のM&A手法との違いを押さえる必要があります。「事業譲渡」「株式譲渡」「会社分割」の3つは、似て非なるスキームであり、従業員への影響は根本的に異なります。

株式譲渡|雇用関係は当然に承継される

株式譲渡は、株主(オーナー)が交代するだけで、法人格そのものは一切変わりません。会社と従業員の間の雇用契約はそのまま継続し、従業員の個別同意は不要 です。労働条件もそのまま引き継がれ、就業規則の改定も当面は発生しません。

株式譲渡は、従業員への影響という観点では最もシンプルなM&A手法です。中小企業M&Aで株式譲渡が選ばれるケースが多いのは、この労務面の簡便さも理由の一つです。

事業譲渡|雇用関係は当然には承継されない

事業譲渡は、会社の一部または全部の事業を別法人に売却する取引です。従業員と会社の雇用契約は譲渡企業との関係で継続したままで、譲受企業には当然には移りません。譲受企業へ移籍させたい場合は、従業員一人ひとりから個別同意(転籍同意)を取得することが必須となります。

この「個別同意の原則」は民法625条(使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない)に由来する、労働法の基本ルールです。

会社分割|労働契約承継法による特別ルール

会社分割(吸収分割・新設分割)は、事業譲渡と似た側面を持ちますが、「労働契約承継法(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)」 という特別法が適用されます。同法に基づき、承継対象事業に主として従事する労働者については、原則として労働契約が当然に承継される仕組みです。

事業譲渡と会社分割は外観が似ているため混同されがちですが、労働契約の承継ルールが根本的に異なる点に注意が必要です。M&A手法を選択する段階で、労務面の負担を試算しておくことが、後工程の手戻りを防ぐコツになります。

社労士:野澤惇

事業譲渡か会社分割かで、従業員対応の難易度は10倍違います。労働契約承継法の対象は会社分割だけ。事業譲渡を選んだ瞬間、『従業員一人ひとりから個別同意を取る』という重い実務が確定します。M&A手法の選択段階から、税理士・M&A仲介だけでなく社労士にも相談することをおすすめします

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事業譲渡における従業員の3つの選択肢

事業譲渡が決定した場合、対象事業に従事していた従業員には、以下3つの選択肢があります。どの選択肢を取るかは従業員本人の判断に委ねられ、会社側が強制することはできません。

譲受企業への転籍|新たな雇用契約を結ぶ

譲渡企業との雇用契約を終了し、譲受企業と新たな雇用契約を結ぶパターンです。実務上はこのパターンが最も多く、事業譲渡の主要な目的の一つである「人材の承継」が実現する形となります。

労働条件は譲受企業の規程、または個別合意に基づき新規に設定されます。労働条件の継続性、勤続年数の通算、退職金の取扱い をどう設計するかが、転籍同意取得率を左右する大きな論点となります。

譲渡企業に残留|転籍を拒否する

従業員には転籍を拒否する権利があります。事業譲渡は従業員にとって勤務先・労働条件の重大な変更を伴う可能性があるため、会社側が強制することはできません

残留した場合、譲渡企業に残された他の事業や管理部門への配置転換が検討されます。ただし、事業譲渡により会社に残される業務が限られている場合、配置転換先が見つからず、退職勧奨や整理解雇の論点に進む可能性もあります。

退職|どちらとも雇用関係を結ばない

転籍にも残留にも応じず、退職を選択する従業員もいます。この場合の退職は「自己都合退職」として扱われるのが一般的ですが、事業譲渡を契機とした退職を 会社都合相当として扱う ケースもあります。

会社都合相当とされると、退職金の加算、雇用保険の基本手当の受給開始時期の早期化(給付制限なし)、受給期間の延長など、従業員側に有利な取扱いとなります。譲渡企業としては、この扱いを事業譲渡の条件交渉の材料にすることも可能です。

転籍同意書の取得|実務と文面のポイント

事業譲渡における従業員対応の中核が、転籍同意書の取得 です。ここを書面で押さえずに進めると、後日の紛争で必ず問題化します。

転籍同意書に必ず記載すべき7項目

転籍同意書には、最低限以下7項目を明記します。

  • 譲渡企業との雇用契約が終了する日
  • 譲受企業との雇用契約が開始する日
  • 譲受企業における労働条件(賃金、労働時間、休日、就業場所、業務内容など)
  • 退職金の取扱い(譲渡企業で清算するか、譲受企業で勤続年数を通算するか)
  • 有給休暇の取扱い(譲受企業へ引き継ぐか否か)
  • 譲渡企業の就業規則の適用終了と、譲受企業の就業規則への服従
  • 同意者の自署・押印・日付

特に 退職金と勤続年数の通算 は税務にも直結するため、口頭ではなく書面で明確化することが必須です。有給休暇についても、労働基準法上の権利として原則引き継ぐのが望ましいですが、譲渡企業で買い取り精算する選択肢もあり、どちらを選ぶかを書面化しておく必要があります。

同意取得のタイミング|クロージング前に完了する

転籍同意は、事業譲渡契約のクロージング前までに完了させるのが原則です。同意が得られない従業員がいる場合、譲受企業との契約条件にも影響するため、「主要従業員の転籍同意取得」を事業譲渡契約のクロージング条件(前提条件)として明示 するケースも多くあります。

クロージング後に同意取得を進めると、「先に事業譲渡が完了したのに、自分は譲渡企業に取り残された」という混乱が生じ、従業員の不信感を招きます。タイムラインの設計は、M&A仲介・弁護士・社労士が連携して組む必要があります。

説明会と個別面談のセット運用

書面の同意書だけでは、後日「内容を十分理解しないまま署名させられた」と主張される可能性があります。説明会で全体像を伝え、個別面談で個別事情を確認した上で同意書に署名してもらう プロセスが、訴訟耐性のある実務です。

具体的には、以下3点セットを揃えるのが実務の標準です。

  • 説明会の議事録と配布資料
  • 個別面談の記録(面談日、参加者、説明内容、質疑応答の概要)
  • 書面での同意書(自署・押印・日付)

最高裁は山梨県民信用組合事件(平成28年2月19日判決)において、労働者の同意が「自由な意思に基づくもの」と認められるためには、不利益の内容・程度を十分に説明した上での明示的な同意が必要と判示しています。この判例以降、裁判所の同意ハードルは高くなっており、3点セットの整備は必須といえます。

社労士:野澤惇

口頭同意は絶対NG。書面同意+説明会議事録+個別面談記録の3点セットを揃えるのが、後日の訴訟に耐える唯一の方法です。特に中高年従業員や長期勤続者は、転籍後に『労働条件が不利に変わった』として紛争化するリスクが高いので、面談記録は詳細に残しておきましょう

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退職金の清算と勤続年数の通算

事業譲渡における退職金の取扱いには、大きく分けて2つの選択肢があります。それぞれの実務と税務上の影響を整理します。

原則|譲渡企業での退職として一旦清算

最もシンプルな扱いは、譲渡企業との雇用契約終了時に退職金を一旦清算 する方法です。従業員は譲渡企業から退職金を受け取り、税務上は退職所得として 退職所得控除 の適用を受けられます。譲受企業では勤続年数ゼロからのスタートとなります。

この方法のメリットは、精算がシンプルで税務上も明快な点です。一方、譲渡企業にとっては退職金の一括支給キャッシュアウトが発生する点、従業員にとっては今後の退職金が減額される点がデメリットとなります。

例外|譲受企業で勤続年数を通算

譲受企業が従業員の引き留めや人材確保のため、譲渡企業での勤続年数を譲受企業で通算するケースもあります。この場合、譲渡企業で退職金は支給されず、将来の退職時に通算勤続年数で譲受企業から支給される形になります。

通算する場合は、譲渡企業から譲受企業へ 退職給付債務の引継ぎ(負債移転) が発生するため、譲渡対価の調整が必要です。また、税務上は通算が認められるための要件があり、税理士との連携が必須になります。

数値シミュレーション|清算 vs 通算で何が変わるか

具体例として、勤続15年・基本給40万円・退職金規程あり(自己都合80%)の従業員Aさんで比較します。

清算パターンでは、Aさんは譲渡企業から退職金480万円を受領します。勤続15年の退職所得控除は600万円のため、このケースでは退職所得税は発生せず、手取り480万円がそのまま残ります。

通算パターンでは、譲渡企業からの支給はゼロ。その代わり譲受企業で将来退職するときに、譲渡企業時代の15年+譲受企業での勤続年数を合算して退職金が計算されます。仮に譲受企業でさらに10年勤続して退職する場合、通算25年分の退職金が支給され、退職所得控除も25年分(1,150万円)が適用されます。

短期的にはキャッシュ受領のある清算が有利に見えますが、長期的には通算のほうが退職所得控除を最大限活用できる場合もあります。従業員の年齢・転籍後のキャリア展望を踏まえて、ケースバイケースで判断すべき論点です。

前払い退職金という選択肢

譲渡企業・譲受企業のいずれも退職金制度を引き継がず、譲受企業での給与に上乗せする「前払い退職金」を選択するケースもあります。この場合は退職所得控除の対象外となり、給与所得として課税 されるため、従業員の手取り額が大きく減る点に注意が必要です。

前払い退職金は、退職金制度そのものを廃止したい譲受企業側の都合で提案されることが多いですが、従業員にとって税務上不利になるため、提案する際は税引後の手取りベースで比較することが実務の鉄則です。

従業員が転籍を拒否した場合の対応

事業譲渡における最大のリスクの一つが、転籍拒否者の発生です。実務的にどう対応するかを段階的に整理します。

拒否する権利は従業員にある|強制不可

繰り返しになりますが、事業譲渡における転籍を強制することはできません「拒否したら解雇」という運用は明確に違法であり、後日の解雇無効訴訟で必ず会社が敗訴します。

拒否者が出た場合は、まず拒否の理由を丁寧にヒアリングすることから始めます。労働条件への不安、譲受企業の経営への不信、家族の事情、人間関係の問題など、拒否の理由はさまざまです。理由が判明すれば、譲受企業との条件再交渉や情報追加提供で解決できるケースも少なくありません。

譲渡企業に残った従業員への対応

譲渡企業に残った従業員は、他の事業部門や管理部門への配置転換 が検討されます。配置転換が可能な場合は新たな職務命令を出し、業務に従事してもらう形になります。

ただし配置転換が現実的でない場合(譲渡企業に残された業務がほぼない、配置転換先のスキルマッチがないなど)には、退職勧奨や整理解雇の論点に進みます。

整理解雇の4要件と実務上のハードル

事業譲渡を理由とする整理解雇は、判例上の整理解雇の4要件を満たす必要があります。

  • 人員削減の必要性(経営上の必要性)
  • 解雇回避努力(配置転換・希望退職募集など)
  • 人選の合理性(客観的・公平な基準)
  • 手続の妥当性(労働者・労働組合への説明・協議)

「事業譲渡で業務がなくなった」というだけでは要件を満たさず、配置転換や退職勧奨を尽くした上での最終手段である必要があります。また、厚生労働省の「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」(平成28年)では、事業譲渡を直接の理由とする整理解雇は原則として避けるべき とされており、この指針違反が認定されると後日の紛争で会社側に不利に働きます。

退職勧奨の実務ポイント

整理解雇の前段階として、退職勧奨が行われるのが一般的です。退職勧奨では、割増退職金の提示、再就職支援サービスの提供、退職時期の柔軟性 などをセットで提案するのが実務の標準です。

退職勧奨が「強要」と評価されると違法となるため、以下の点に配慮が必要です。

  • 面談回数を過度に重ねない(一般的には3回程度が限度)
  • 一回の面談時間を長引かせない(1時間以内が目安)
  • 退職勧奨を拒否する自由があることを明示する
  • 面談記録を残し、適切な手順を踏んだことを文書化する
社労士:野澤惇

拒否者が出たら、まず原因を聴く。労働条件の不安なら譲受企業との再交渉、人間関係の不安なら譲受企業との面談機会の設定など、対症療法で解決できるケースが意外と多いです。最初から整理解雇の発想に行くと、組織全体の信頼が崩れ、転籍予定だった他の従業員まで動揺します

事業譲渡発表前後の従業員コミュニケーション

事業譲渡の発表タイミングと説明手順は、転籍同意取得率を大きく左右します。情報の出し方ひとつで、M&A取引の成否が分かれます。

発表タイミングのベストプラクティス

事業譲渡の発表は、最終契約締結後〜クロージング前 が一般的です。早すぎると情報漏洩や動揺で取引が破綻するリスク、遅すぎると同意取得の時間が不足するリスクがあります。

実務上は、クロージングの2〜3ヶ月前に発表するのが標準的なタイムラインです。この期間で説明会・個別面談・同意書取得を完了させ、クロージング時には転籍手続きの準備が整っている状態にするのが理想的です。

説明会の設計|全体集会+個別面談

説明のプロセスは、全体集会で事実と全体スケジュールを伝え、その後の個別面談で各従業員の労働条件と同意確認を行うのが標準的な流れです。

全体集会では、事業譲渡を決断した経営者の想い、譲受企業の概要と事業方針、従業員の雇用維持に関する方針、今後のスケジュールなどを伝えます。質疑応答の時間を十分に取り、従業員の疑問や不安をその場で可視化することも重要です。

個別面談では、労働条件の詳細(賃金、労働時間、勤務地、業務内容)、退職金の取扱い、有給休暇の引継ぎ、同意のタイミングなどを一人ひとり確認します。個別事情(家族、通勤距離、健康状態など)への配慮も、同意取得率を高める実務のポイントです。

厚労省指針の遵守

厚生労働省は平成28年に「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」を策定しています。この指針では、以下が求められています。

※令和8年に一部改正

  • 事業譲渡を理由とした整理解雇の原則禁止
  • 労働者への十分な説明と協議の実施
  • 労働組合がある場合は誠実な交渉
  • 転籍後の労働条件の継続性への配慮

指針自体に法的強制力はありませんが、後日の紛争で「指針違反」が認定されると会社側に不利に働きます。指針は厚労省サイトで無償公開されているため、事業譲渡の準備段階で必ず確認することをおすすめします。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/saihen/68297_00001.html

また事業承継時の従業員への詳細な説明手順は「事業承継を従業員にどう伝える?」記事で解説しています。

事業譲渡・従業員に関するよくある質問

事業譲渡の発表タイミングはいつが適切?

最終契約締結後〜クロージング前が原則です。

早すぎると情報漏洩リスク、遅すぎると同意取得時間不足のリスクがあります。一般的には、クロージングの 2〜3ヶ月前に経営陣→部長層→全社員 の順で段階的に伝達するのが実務の標準です。SNS時代は情報漏洩リスクが高いため、発表直前まで秘密保持を徹底することも重要です。

一部の従業員だけ転籍させることは可能?

可能です。譲受企業が労働条件に合意する従業員のみ受け入れる、あるいは特定スキルを持つ従業員のみ転籍させるという選択肢もあります。

ただし 「年齢が高い」「賃金が高い」だけを理由とした転籍除外 は、年齢差別や不当な選別と評価されるリスクがあるため、業務上の必要性に基づいた選別が必須です。選別基準は客観的かつ文書化しておくことが、後日の紛争予防につながります。

未払い残業代は譲渡企業/譲受企業どちらが払う?

原則として、譲渡企業の在籍中に発生した未払い残業代は 譲渡企業の債務 として残ります。

ただし事業譲渡契約で「労務関連債務も承継する」と明記した場合は譲受企業に承継されます。労務デューデリジェンスで未払い残業代が発覚した場合は、クロージング前に譲渡企業で精算するか、譲渡対価から控除する形で調整するのが実務です。

詳細は「事業承継における労務デューデリジェンス」記事をご参照ください。

転籍後に労働条件を下げることは可能?

譲受企業との新雇用契約のため、譲渡企業時の労働条件を必ずしも維持する必要はありません。

ただし、転籍同意書で約束した労働条件を一方的に変更することは、就業規則の不利益変更や個別同意の論点となり、ハードルは非常に高くなります。

詳細は「事業承継で就業規則はどうなる?」記事の不利益変更セクションをご参照ください。

事業譲渡を理由に解雇できる?

原則できません。事業譲渡そのものを解雇理由にすることは、平成28年厚労省指針で明確に避けるべきとされています。

配置転換・退職勧奨を尽くした上での整理解雇は理論上可能ですが、整理解雇の4要件(人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の妥当性)を満たす必要があり、実務上のハードルは極めて高いです。事業譲渡に反対する従業員への対応は、解雇ではなく配置転換・退職勧奨で解決するのが原則です。

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まとめ

事業譲渡における従業員の取扱いは、株式譲渡や会社分割と根本的に異なり、従業員一人ひとりからの個別同意取得 という重い実務が伴います。

本記事のまとめ
  • 個別同意の必須化:自動承継されないため、一人ひとりの同意が不可欠
  • 従業員の選択権:転籍・残留・退職を自ら選ぶ権利が保証される
  • 紛争の未然防止:網羅的な同意書と丁寧な面談でリスクを封じ込める
  • 退職金の出口戦略:清算か通算か、税務上の有利不利を事前にシミュレーション
  • 拒否者への段階対応:配置転換や退職勧奨など、手順を踏んだ慎重なアプローチ
  • 適切な公表時期:厚労省指針に基づき、実行の2〜3ヶ月前を目安に発表

事業譲渡における従業員対応を誤ると、M&A取引そのものの破綻、転籍後の大量離職、未払い残業代訴訟など、譲渡対価を上回る損失を招くリスクがあります。M&A仲介会社や弁護士だけでなく、労務実務の専門家である社労士を早期から関与させることが、事業譲渡の成功率を大きく高める実践的なアプローチです。

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監修者(社労士)

【野澤 惇 | 社会保険労務士】
社労士事務所altruloop/株式会社altruloop代表
社会保険労務士として、建設・介護・医療・IT業界など累計100社以上の労務顧問を担当。 労務DD・就業規則作成・人事評価制度構築・給与計算/社会保険手続きなどの実務に精通し、高難易度な労務DD案件も多数対応。
現在は東京都八王子・渋谷を拠点に、全国対応で大手企業からスタートアップまで幅広く支援しています。
登録番号:13250298

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