従業員の入退社に伴う社会保険手続き、毎月の給与計算、年に一度の年度更新…。これらの煩雑な業務に追われ、本業に集中できていないと感じていませんか?手続きの漏れやミスは、将来の労務トラブルに発展しかねません。
この記事では、社会保険手続きを社労士に依頼する場合の具体的な代行範囲と費用、そして「自社に最適な依頼形態」を見つけるための判断基準を専門家が解説します。社会保険手続きのアウトソーシングに関するお悩みは、社労士事務所altruloopにご相談ください。
社労士に依頼できる社会保険手続きの具体的な代行範囲
社会保険労務士(社労士)に依頼できる手続きは多岐にわたります。単に書類を作成・提出するだけでなく、タイトな期限を守り、法的に正確な処理を行うことが専門家としての価値です。ここでは、代表的な手続きを「入退社時」「随時」「年次」の3つの場面に分けて解説します。
【基本】入社・退社時に発生する手続き
従業員の雇用サイクルで最も頻繁に発生するのが、入社・退社時の手続きです。
従業員が入社したとき
新たに従業員を雇用した場合、主に「健康保険・厚生年金保険」と「雇用保険」の加入手続きが必要です。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届:この届出を事実発生から5日以内に年金事務所へ提出します 。この手続きによって、従業員の健康保険証が発行されるため、迅速な対応が不可欠です。
- 雇用保険被保険者資格取得届:この届出は、雇用した月の翌月10日までにハローワークへ提出します 。
これらの手続きは、従業員が安心して働くための第一歩であり、企業の信頼性にも直結します。
従業員が退社したとき
従業員が退職する際には、加入時とは逆の資格喪失手続きを行います。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届:退職日から5日以内に提出します 。健康保険証の回収も必要です。
- 雇用保険被保険者資格喪失届および離職証明書:退職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出します 。この離職証明書をもとに、退職者の失業手当受給に不可欠な「離職票」が発行されます 。
特に離職票の発行手続きは、退職理由の記載などが後のトラブルに発展しやすいため、専門家による客観的かつ正確な処理が重要です。社労士が手続きを代行する場合、社労士の職印(付記印)を押すことで、賃金台帳や出勤簿といった添付書類の一部を省略できる場合があり、手続きの簡素化と迅速化に繋がります 。
【随時】病気・ケガ・出産などで発生する手続き
従業員のライフイベントに応じて、不定期に発生する手続きも数多く存在します。これらは専門知識を要するものが多く、従業員の生活に直接関わるため、特に正確性が求められます。
- 業務中や通勤中のケガ(労災保険):業務災害や通勤災害が発生した場合の給付申請です 。治療費や休業中の生活を支える重要な手続きであり、状況に応じた適切な書類選択が必要です。
- 業務外の病気やケガ(傷病手当金):従業員が私的な病気やケガで長期間仕事を休む場合に、生活を保障するための手当金の申請です 。療養中の従業員本人に代わり、会社が手続きをサポートすることで、安心して治療に専念できる環境を整えられます。
- 従業員の出産・育児(産休・育休給付金):産前産後休業や育児休業を取得する従業員が受け取る給付金の申請手続きです 。法改正も頻繁に行われる分野であり、最新の知識に基づいた対応が求められます。

【年次】年に一度の重要な手続き
年に一度しか行わないものの、全従業員に関わる非常に重要な手続きです。ミスが許されず、企業の負担も大きい業務と言えます。
- 算定基礎届(定時決定):毎年7月1日から10日までに提出する、全従業員の社会保険料を決定するための手続きです 。4月〜6月に支払った給与の平均額から「標準報酬月額」を算出し、その年の9月から翌年8月までの保険料がこの届出によって確定します 。もし計算を誤ると、 後から最大2年分の差額を追徴されるリスクもあります 。
- 年度更新:毎年6月1日から7月10日までに行う、労働保険(労災保険・雇用保険)料の申告・納付手続きです 。前年度の保険料を確定させて精算し、新年度の概算保険料を納付します。対象となる賃金の範囲を正確に把握する必要があり、複雑な計算が伴います 。

【料金の結論】顧問契約 vs スポット依頼、貴社に合うのはどっち?
社労士への依頼を考えたとき、最も悩むのが「顧問契約」と「スポット依頼」のどちらを選ぶべきか、という点でしょう。これは単なる料金プランの違いではなく、社労士とどのような関係性を築きたいかという経営判断そのものです。ここでは、それぞれの特徴と費用感を明確にし、貴社にとって最適な選択を導き出します。
必要な時だけ頼む「スポット契約」が最適なケースと費用
スポット契約は、特定の業務を単発で依頼する形態です。
こんな企業にオススメ
- 従業員数が少なく、人の出入りが年に数回程度しかない
- 普段、労務に関する相談事はほとんど発生しない
- まずは特定の業務で、社労士の仕事ぶりを試してみたい
費用の目安
業務ごとに料金が発生します。以下は一般的な料金相場です 。
- 入社手続き(社会保険・雇用保険セット/1名):15,000円〜20,000円
- 退職手続き(離職票作成含む/1名):15,000円〜30,000円
- 算定基礎届(〜10名):30,000円〜50,000円
- 労働保険の年度更新(〜10名):30,000円〜50,000円

メリットは必要な時に必要な分だけ費用を払えばよい点ですが、手続きが頻繁に発生すると顧問契約より割高になる可能性があります。また、関係性が都度リセットされるため、会社の深い内情を理解した上でのアドバイスは期待しにくい側面があります 。
継続的な安心を得る「顧問契約」が最適なケースと費用
顧問契約は、月額定額で継続的に労務サポートを受ける契約形態です。手続き代行に加え、日々の労務相談も含まれることが一般的です。
こんな企業におすすめ
- 従業員数が10名以上、または今後増員予定がある
- 入退社が頻繁に発生する
- 日頃から労務管理や法改正について気軽に相談できる専門家が欲しい
- 労務リスクを未然に防ぎ、安心して本業に集中したい
費用の目安
顧問料は従業員数に応じて変動するのが一般的です。以下の料金で、前述した入退社手続き、随時発生する手続き、年次手続きの多くがカバーされます 。
従業員数(役員含む) | 月額顧問料の目安(手続き代行+労務相談) |
〜9名 | 20,000円 〜 30,000円 |
10〜19名 | 30,000円 〜 40,000円 |
20〜29名 | 40,000円 〜 50,000円 |
30名〜 | 50,000円 〜 |
※給与計算を依頼する場合は別途費用がかかります。



顧問契約は、単なる業務代行ではなく、企業の「かかりつけ医」や「お守り」のような存在です 。継続的な関わりを通じて会社の状況を深く理解し、潜在的なリスクを早期に発見・予防できるのが最大のメリットです。
【診断】3つの質問でわかる!貴社に最適な契約形態
まだ迷っている方は、以下の3つの質問に答えてみてください。貴社に本当に必要なサービス形態が見えてきます。
- 「月間の入退社数は平均1名以上ですか?」
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「はい」の場合、スポット契約を月に何度も利用すると、すぐに顧問契約の月額料金を超えてしまう可能性があります。コストパフォーマンスの観点から顧問契約が有利になるケースが多いです。
- 「手続き以外に、日頃から労務に関する相談をしたいですか?」
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「はい」の場合、顧問契約が断然おすすめです。例えば「この従業員の勤務態度を注意したいが、どう伝えれば良いか」「新しい手当を設けたいが、法的な問題はないか」といった日常的な相談に、いつでも専門家の視点で回答を得られます。スポットでの相談は割高になりがちです 。
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「法改正の情報を自社でキャッチアップし、対応できていますか?」
「いいえ」または「自信がない」場合、顧問契約の価値は非常に高いです。労働関連法規は頻繁に改正されます 。顧問社労士がいれば、 自社では何もしなくても法改正に自動的に対応でき、気づかぬうちに法令違反を犯すリスクを防げます。
社労士への依頼で得られる「手続き代行以上」の3つの価値
社労士への依頼は、単なる「事務作業の外注」ではありません。それは企業の成長を支え、未来のリスクを回避するための「戦略的投資」です。ここでは、手続き代行だけでは測れない3つの付加価値をご紹介します。
法改正への自動アップデートとコンプライアンス強化
働き方改革関連法をはじめ、労働法規は目まぐるしく変化しています 。これらの情報を自社で常に追いかけ、就業規則や社内運用に正確に反映させるのは至難の業です。
社労士と顧問契約を結ぶことで、法改正という外部環境の変化に対して、プロが自動でアップデートをかけてくれるようになります。法改正のたびに「うちはどう対応すれば?」と悩む必要はありません。これにより、コンプライアンス体制が強化され、行政調査や労務トラブルのリスクを大幅に低減できます 。
電子申請による迅速化と「待つ時間」の削減
多くの社労士事務所では、社会保険手続きを電子申請(e-Gov)で対応しています 。電子申請のメリットは絶大です。
- 24時間365日申請可能:役所の開庁時間を気にする必要がありません。
- 移動時間・コストの削減:担当者が年金事務所やハローワークの窓口に足を運ぶ必要がなくなり、交通費や移動時間をゼロにできます 。
- 手続きの迅速化:郵送にかかる日数がなくなり、書類の到着も早まります。これにより、従業員の手元に健康保険証が届くまでの期間も短縮されます。
手続きを起点とした、労務トラブルの「予防」
これが、経験豊富な社労士が提供できる最も重要な価値かもしれません。私たちは、一つひとつの手続きを「点」ではなく「線」で捉え、その背景にある労務リスクの芽を摘み取ります。
例えば、ある従業員の「傷病手当金」の申請依頼があったとします。私たちは単に書類を作成するだけでなく、「なぜこの方は休職に至ったのか?」「職場環境に問題はなかったか?」という視点を持ちます。もし、長時間労働が背景にあるなら、勤怠管理の見直しや36協定の再点検を提案します。
また、ある従業員の「離職票」作成依頼があった際、退職理由が「自己都合」となっていても、ヒアリングの中で会社への不満が垣間見えれば、それが将来「不当解雇」として訴えられるリスクはないか検討します。そして、他の従業員に同様の不満が広がらないよう、就業規則や面談制度の見直しを助言することもあります 。
このように、手続きという入口から、労務トラブルという出口を未然に塞ぐ。これが専門家による「予防労務」の考え方です。
よくある質問
Q. どこまでの情報を渡せば、あとは丸投げできますか?
A. 従業員様の氏名、生年月日、入社日、給与額などの基本情報をご提供いただければ、必要書類の作成から行政への申請まで全て代行します。これらの情報は、専用のチャットツールや共有フォルダ、あるいは簡単なExcelフォーマットなどで、安全かつ手軽にご連携いただけます。「これを渡せば、あとはお任せ」という状態を構築しますのでご安心ください。
Q. 依頼から業務開始までの流れを教えてください。
A. まずは無料相談にて、貴社の現状やお悩み、ご要望を詳しくお伺いします。その内容に基づき、最適なプランとお見積りをご提示いたします。ご提案内容にご納得いただけましたらご契約となり、速やかに業務引継ぎを開始します。最短でご相談から1週間程度で、万全のサポート体制をスタートさせることが可能です。
Q. 地方の企業ですが、オンラインで対応してもらえますか?
A. はい、全く問題ございません。当事務所では、クラウド型の労務管理システムやWeb会議システム、チャットツールを完備しております。これにより、全国どの地域の企業様に対しても、訪問と変わらない品質のサービスをオンラインでご提供しています 。実際に、遠方の多くの企業様をサポートさせていただいております。
Q. 助成金の相談も一緒にできますか?
A. はい、もちろんです。むしろ、社会保険手続きと助成金は密接に関わっています。多くの助成金は、適正な労務管理(社会保険の加入、就業規則の整備など)が受給の前提条件となっているからです 。日頃から顧問契約で労務管理を整えつつ、活用できる助成金をこちらから積極的にご提案し、申請サポートまで一貫して対応することが可能です。
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まとめ
社会保険手続きは、社労士に依頼することで、担当者の負担を劇的に軽減し、経営者や従業員が本来の業務に集中するための貴重な時間を生み出します。重要なのは、料金の安さだけで選ぶのではなく、「スポット契約」と「顧問契約」のどちらが自社の事業フェーズや従業員規模、そして将来の展望に合っているかを冷静に見極めることです。この記事が、その判断の一助となれば幸いです。
社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)では、全国対応・初回相談無料でご相談を承っております。人事労務に関するお悩みはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。