法人保険のメリット・デメリットとは?加入する意味と落とし穴をFPが解説 

法人保険の最大のメリットは「事業の存続」と「将来の資金準備」にあります。 一方で、単純な節税目的で加入すると、かえって会社の資金繰りを悪化させるデメリットも存在します。

本記事では、士業の実務家目線から、法人保険のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 法人保険の基本的な仕組みと加入目的
  • 法人保険に加入する5つの主なメリット
  • 加入前に必ず知っておくべきデメリットと落とし穴
  • 自社が法人保険に向いているかどうかの判断基準
  • 失敗しないための検討ポイントと専門家活用の重要性
この記事の監修者

【西山 尚志 | ファイナンシャルプランナー】
株式会社altruloopフィナンシャルパートナーズ マネージャー
個人・法人保険及びファイナンシャルプランナーとして、個人のライフプランニングから法人の経営課題解決まで、多角的な視点でトータルサポートを提供している。保険商品の販売にとどまらず、保険募集人として、高度な専門性と倫理観を持ち、客観的かつ公正な立場から、顧客の最善の利益を追求する。

目次

法人保険とは?加入の目的を整理する

法人保険とは、企業が契約者となって加入する生命保険や損害保険のことです。個人向けの保険が「家族の生活保障」を主な目的とするのに対し、法人保険は「会社を守ること」を最大の目的としています。

法人保険の基本的な仕組み

法人保険の最大の特徴は、契約の構造にあります。原則として「契約者=法人」「被保険者=経営者や従業員」「受取人=法人(または遺族)」という形で契約を結びます。

個人保険の場合は、保険料を個人が負担し、万が一の際には家族が保険金を受け取ります。しかし法人保険では、会社が保険料を支払い、保険金や解約返戻金も会社が受け取るのが一般的です。

受け取った保険金は、借入金の返済や従業員の給与、役員の退職金など、会社の事業継続のために活用されます。保険料の取り扱いや保険金の受け取りにおいて、税務上の複雑なルールが絡む点も大きな特徴と言えるでしょう。

法人保険の主な加入目的

企業が法人保険に加入する目的は、主に以下の3つに大別されます。

  • 事業保障(リスク回避): 経営者の死亡や重度障害など、不測の事態による経営危機に備える。
  • 資金準備: 将来発生する役員退職金や事業承継にかかる多額の資金を、計画的に準備する。
  • 福利厚生: 従業員の退職金準備や死亡保障を確保し、働きやすい環境を整備する。

法人保険はこれらの目的を果たす有効な手段ですが、曖昧な理由で加入すると後々デメリットに直面します。 

法人保険に加入する主なメリット

法人保険には、会社の財務や経営基盤を強固にするためのさまざまなメリットがあります。

経営者の万一に備え、事業を守れる

中小企業において、経営者の手腕や信用力は会社の命綱です。もし経営者が突然亡くなった場合、取引先からの信用低下や金融機関からの借入金返済を迫られるリスクが生じます。

法人保険に加入していれば、死亡保険金を会社の当面の運転資金や借入金の返済に充てることが可能です。結果として、残された従業員やその家族、そして会社そのものを守ることができます。

具体的には、会社の短期的な固定費(人件費や家賃など)の半年〜1年分と、金融機関からの借入金残高を合算した金額を、保障額の目安にすると良いでしょう。

役員退職金・事業承継の資金を準備できる

経営者の退職金は数千万円規模になることも珍しくなく、実務では以下の計算式で適正額の目安を算出します。

  • 【役員退職金の適正額 = 最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率(※)】

※功績倍率の目安:社長3.0、専務2.5程度

たとえば「月額100万円・在任20年・社長」なら、目安は6,000万円です。これほどの現金を退職時に自己資金だけで一括で賄うのは、会社の資金繰りを悪化させる原因になります。

そこで法人保険を活用すれば、退職時期に解約返戻金がピークになるよう設定し、会社の現金を削らずに計画的な資金準備が可能です。事業承継時の自社株買い取りや、相続税の納税資金の確保にも役立ちます。

ただし、適正額を超えた過大な退職金は税務調査で経費(損金)として認められないリスクがあります。まずは税理士に自社の適正額を試算してもらいましょう。

保険料の一部を損金にできる(課税の繰延)

法人保険の保険料は、契約形態や商品の種類によって一部または全部を損金(法人の経費)に算入できます。これにより、当期の法人税負担を軽減する効果があります。

ただし、2019年(令和元年)の国税庁の通達改正により、かつてのような「全額損金算入で高い解約返戻率」を誇る節税保険は事実上姿を消しました。現在のルールでは、以下のように最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合が厳格に定められています。

出典:国税庁『定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ

この表が示す通り、最高解約返戻率が高い商品ほど、損金に落とせる割合が少なく(資産計上額が多く)なります。解約返戻率が85%を超えるような貯蓄性の高い保険は、保険料の大部分を資産として計上しなければならず、短期的な節税効果はほとんど見込めません。

現在の法人保険における損金算入は、あくまで「課税のタイミングを将来に先送りしている(課税の繰延)」に過ぎない点に注意してください。それでも、利益が出た年の税負担を和らげ、将来の資金需要に備える手段としては、依然として有効な選択肢です。

解約返戻金を資金として活用できる

解約返戻金のある法人保険は、単なるリスクへの備えだけでなく、会社の「貯金箱」としての機能も果たします。

業績が悪化して一時的に資金繰りが苦しくなった場合、保険を解約して解約返戻金を運転資金に充てることが可能です。また、解約しなくても「契約者貸付制度」を利用すれば、解約返戻金の一定範囲内(通常70〜90%程度)で保険会社からスピーディーに資金を借り入れられます。

金融機関の融資と異なり、煩雑な審査なしで即座に資金を調達できるため、経営のセーフティーネットとして非常に頼りになる機能です。

福利厚生を充実させ、人材の定着につながる

法人保険は経営者だけでなく、従業員向けの福利厚生としても活用できます。代表的なのが、養老保険を活用した「ハーフタックスプラン(福利厚生プラン)」です。

これは、役員・従業員全員を被保険者とし、満期保険金の受取人を法人、死亡保険金の受取人を従業員の遺族とする契約形態です。要件を満たせば、支払保険料の半分を福利厚生費として損金に算入しつつ、従業員の退職金準備と死亡保障を両立できます。

充実した福利厚生は、従業員の安心感につながり、優秀な人材の採用や離職防止(リテンション)に直結します。 

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法人保険のデメリット・加入前に知っておきたい落とし穴

法人保険には魅力的なメリットがある半面、仕組みを正しく理解していないと会社に損害を与えるデメリットも存在します。ここでは、加入前に必ず把握しておくべき落とし穴を解説します。

節税効果は限定的(課税の繰延にすぎない)

「法人保険=節税」というイメージを持つ方も多いですが、これは正確ではありません。保険料を損金に算入して当期の税金を減らせても、将来解約した際に受け取る解約返戻金は「益金(会社の利益)」として計上されるからです。

後述する「出口対策」を適切に行わなければ、結局は解約時に多額の法人税を納めることになり、トータルのキャッシュアウトは保険に入らない場合と変わらない、あるいは悪化する可能性すらあります。

保険料がキャッシュフローを圧迫することがある

法人保険の保険料は、長期間にわたって継続的に支払い続ける必要があります。業績が好調なときは問題なくても、赤字に転落した際に保険料の支払いが重荷となるケースは後を絶ちません。

とくに貯蓄性の高い保険は保険料が高額になりがちです。「節税になるから」と無理な金額で契約してしまうと、手元の現金(キャッシュフロー)が枯渇し、最悪の場合は黒字倒産を引き起こす危険性もあります。

保険料は、業績が変動しても無理なく払い続けられる範囲内に設定することが鉄則です。

早期解約すると元本割れする

解約返戻金のある保険であっても、加入して数年以内の早期に解約した場合、解約返戻金は支払った保険料の総額を大きく下回ります。いわゆる「元本割れ」の状態です。

急な業績悪化で資金が必要になり、泣く泣く早期解約した結果、手元に戻ってきたのは支払った金額の半分以下だった、という失敗例は少なくありません。

法人保険は、あくまで中長期的な計画に基づいて継続することを前提とした金融商品であることを忘れないでください。

解約返戻金の受取時に「出口対策」が必要

解約返戻金を受け取った際は法人税の課税対象(益金)となります。 これを相殺するためには、多額の経費(損金)が発生するタイミングに合わせて保険を解約する「出口対策」が不可欠です。

もっとも一般的な出口対策は、役員の退職金支払い時期に合わせることです。退職金という大きな損金と、解約返戻金という大きな益金をぶつけることで、法人税の負担を抑えつつ手元に現金を残せます。

計画的な出口戦略がないまま満期を迎えたり、解約返戻率のピークを過ぎてしまったりすると、法人保険のメリットは半減してしまいます。

名義変更時の課税リスクに注意

かつて、法人で契約した保険の解約返戻率が低いタイミングで役員個人に名義変更し、その後個人で解約して利益を得るという「名義変更プラン」が節税手法として流行しました。

しかし、2021年の国税庁の通達改正により、このような租税回避を目的とした名義変更には厳しい規制が課されています。現在、不当に低い評価額で個人へ名義変更を行うと、役員賞与とみなされ、多額の所得税や法人税が課せられるリスクがあります。

税務上のルールは年々厳格化しているため、古い知識に基づくグレーな節税スキームには絶対に手を出さないよう注意しましょう。

法人保険が向いている会社・向いていない会社

法人保険を活用すべき会社と、そうでない会社の特徴は以下のとおりです。 

法人保険が向いている会社

以下のような特徴を持つ企業は、法人保険に向いています。 

  • 毎期安定した利益が出ている: 継続的な保険料の支払いに耐えうる強固な財務基盤がある。
  • 経営者への依存度が高い: 社長に万一のことがあると、直ちに資金繰りや業務に支障をきたす。
  • 後継者が決まっている: 将来の事業承継や役員退職金の支払いに向けて、明確な資金計画が必要である。
  • 金融機関からの借入金が多い: 経営者死亡時に借入金を清算し、遺族や後継者に負債を残さないようにしたい。

法人保険の必要性が低い会社

一方で、次のような状況の企業には、法人保険の優先度は低くなります。

  • 慢性的な赤字、または手元資金が少ない: 保険料の支払いがキャッシュフローを圧迫し、倒産リスクを高める。
  • すでに十分な現預金(内部留保)がある: 万一の事態や退職金の支払いを自社資金だけで問題なくカバーできる。
  • 近い将来、廃業やM&Aによる売却を予定している: 長期的な資金準備や事業保障の必要性が薄い。

法人保険への加入を判断するときのポイント

「自社は法人保険に入るべきか?」と迷った際は、以下の3ステップで判断してください。 

STEP
まず加入の目的を明確にする

もっとも重要なのは「何のために保険に入るのか」を明確にすることです。

「事業保障の確保」「退職金の準備」「福利厚生の充実」など、具体的な目的を設定してください。「銀行や税理士に勧められたから」「なんとなく節税になりそうだから」といった曖昧な理由での加入は、後悔の元となります。

目的が定まれば、必要な保障額や保険の種類、適切な保険期間はおのずと決まってきます。

STEP
メリットとデメリットを総合的に判断する

目的が明確になったら、自社にとってのメリットがデメリット(リスク)を上回るかを検証しましょう。

とくに、保険料の支払いがキャッシュフローに与える影響のシミュレーションは必須です。悲観的な業績見通しであっても保険料を維持できるか、早期解約時の元本割れリスクを許容できるかなど、数字に基づいた冷静な判断が求められます。

STEP
保険・税務・労務に詳しい専門家に相談する

法人保険の設計には、保険商品の知識だけでなく、法人税法や所得税法などの税務、さらには退職金規程などの労務管理に関する総合的な知見が不可欠です。

たとえば、役員退職金を損金として認めてもらうには、株主総会の決議や適正な退職金規程の整備が必要です。また、税制改正によるルールの変更にも常にキャッチアップしなければなりません。

そのため、保険の営業担当者だけでなく、自社の実情を深く理解している税理士や社会保険労務士などの士業専門家に相談し、多角的な視点からアドバイスを受けてください。 

法人保険のメリットでよくある質問

法人保険の導入を検討される方からよくいただく疑問について、端的に回答します。

法人保険に入る一番のメリットは何ですか?

最大のメリットは「経営のリスクに備えながら、将来の大型出費(退職金など)に向けた資金準備ができること」です。

万一の事業保障と資金の積み立てを両立できる点は、他の金融商品にはない強みと言えます。

法人保険は節税になりますか?

完全な節税にはなりません。

保険料支払い時に損金算入できても、将来の解約時には益金となるため、税金の支払い時期を遅らせる「課税の繰延」にすぎません。効果を得るには、解約時の益金と経費(退職金など)を相殺する出口対策が必須となります。

法人保険のデメリットは何ですか?

主なデメリットは、長期間の保険料支払いが資金繰りを圧迫する可能性があること、早期解約すると元本割れすることです。

また、税制改正によって過去の節税手法が使えなくなる税務リスクも存在します。

どんな会社が法人保険に向いていますか?

安定した黒字経営を続けており、キャッシュフローに余裕がある会社です。

また、社長個人の信用力で事業が成り立っている企業や、将来の事業承継を見据えて計画的に資金を準備したい企業に向いています。

法人保険に加入すべきか、どう判断すればいいですか?

まずは「加入目的(リスクへの備えか、資金準備か)」を明確にしてください。

そのうえで、保険料が経営を圧迫しないかをシミュレーションし、税理士などの専門家を交えて、税務・財務の両面から自社に最適かを見極めることが大切です。

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まとめ

法人保険は企業の防衛策として有効ですが、万能ではありません。自社の財務状況と目的に照らし合わせ、客観的な視点から導入を判断してください。 

本記事のまとめ
  • 法人保険の最大の目的は、会社の事業継続と将来の資金(退職金など)の計画的な準備である
  • 保険料の損金算入は「課税の繰延」であり、解約時の税務処理(出口対策)が必須となる
  • 無理な保険料設定はキャッシュフローを悪化させ、早期解約による元本割れのリスクを招く
  • 加入すべきかは、自社の財務状況や後継者の有無、借入金の規模などから総合的に判断する
  • 失敗を防ぐためには、最新の税制や労務に精通した士業の専門家に相談することが確実である

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監修者

【西山 尚志 | ファイナンシャルプランナー】
株式会社altruloopフィナンシャルパートナーズ マネージャー
個人・法人保険及びファイナンシャルプランナーとして、個人のライフプランニングから法人の経営課題解決まで、多角的な視点でトータルサポートを提供している。保険商品の販売にとどまらず、保険募集人として、高度な専門性と倫理観を持ち、客観的かつ公正な立場から、顧客の最善の利益を追求する。

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