法人保険で節税はできる?2019年改正後の損金算入ルールと「本当に得か」を解説

現在の法人保険は、純粋な「節税」ではなく、税金の支払いを先送りする「課税の繰延」としての意味合いが強くなっています。かつて横行した「全額損金にしつつ高い解約返戻金を受け取る」手法は、2019年の税制改正で大きく変わりました。

 本記事では、最新の損金算入ルールとともに、法人保険が自社にとって「本当に得か」を判断する基準を実務目線で端的に解説します。 

この記事でわかること
  • 法人保険の保険料を損金算入して法人税を減らす基本的な仕組み
  • 2019年の税制改正による「最高解約返戻率」に応じた新しい損金ルール
  • 損金割合がわかる早見表と、資産計上された保険料の取り扱い
  • 年間保険料30万円以下の特例(全額損金)を活用する条件と注意点
  • 法人保険が「本当に得になる(役立つ)」ケースと避けるべきケース
この記事の監修者

【西山 尚志 | ファイナンシャルプランナー】
株式会社altruloopフィナンシャルパートナーズ マネージャー
個人・法人保険及びファイナンシャルプランナーとして、個人のライフプランニングから法人の経営課題解決まで、多角的な視点でトータルサポートを提供している。保険商品の販売にとどまらず、保険募集人として、高度な専門性と倫理観を持ち、客観的かつ公正な立場から、顧客の最善の利益を追求する。

目次

法人保険で「節税できる」と言われる理由

保険料を損金にすると法人税が減る仕組み

保険料の損金算入による法人税節税の仕組み

法人が納める法人税は、会社の利益(税務上の「所得」)に対して一定の税率を掛けて計算されます。この所得を計算する際、売上などの「益金」から、経費などの「損金」を差し引くことが可能です。

法人保険の保険料を支払った際、その保険料の一部または全部を損金算入できる場合があります。損金が増えれば、その分だけ会社の課税所得が圧縮されるため、結果として当期に支払うべき法人税額を減らすことができます。

たとえば実効税率が30%の場合、年間100万円の保険料が全額損金になれば、法人税は約30万円軽減されます。これが法人保険による節税の基本です。 

しかし「節税」には大きな注意点がある

税金が減るのは魅力的ですが、法人保険の活用には「手元のキャッシュが確実に減る」という大きな注意点があります。 

先ほどの例で言えば、法人税を30万円減らすために、会社は現金100万円を保険会社に支払っています。つまり、税引き後の手元資金だけを見れば、保険に加入しないほうが現金は多く残るのです。

また、保険料の支払いは契約期間中ずっと続きます。もし会社の業績が悪化して資金繰りが苦しくなった場合、多額の保険料負担が経営を圧迫するリスクがあります。目先の節税目的だけで加入すると、かえって会社の体力を奪いかねないため注意が必要です。 

2019年の税制改正で損金算入ルールはどう変わったか

税制改正の背景:節税スキームへの規制

かつての法人保険市場では、「支払った保険料が全額損金になるにもかかわらず、解約時には支払った保険料の90%以上が戻ってくる」という、極端に節税効果の高い商品が多数販売されていました。経営者の間では、利益が出た年にこうした保険に加入し、意図的に利益を圧縮する手法が広く流行していたのです。

しかし、国税庁はこの過度な節税スキームを問題視しました。本来、支払ったお金の大部分が後で戻ってくるのであれば、それは経費(損金)ではなく、会社の資産(貯蓄)として扱うのが税務上の正しい考え方です。

この実態と税務処理のズレを是正するため、2019年(令和元年)にルールが厳格化されました。

定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いについては、令和元年6月28日付課法2-13他2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)が発遣され、取扱通達(法基通9-3-4等)の改正とともに、個別通達の廃止が行われており、令和元年7月8日以後の契約に係る定期保険又は第三分野保険の保険料については改正後の取扱いが適用されます(解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険の保険料については、令和元年10月8日以後の契約に係るものについて、改正後の取扱いが適用されます。)。
出典:国税庁ウェブサイト「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ

上の国税庁の記載の通り、令和元年7月8日以降に契約した定期保険や第三分野保険に対して新たな法人税基本通達が適用されました。これにより、以前のような極端な節税スキームは事実上封じられることになります。

「最高解約返戻率」に着目したルールへ

2019年の改正における最大の特徴は、保険の「種類」ではなく、実質的な経済効果である「最高解約返戻率」に着目して損金算入の割合を一律に決定するようになった点です。

以前は「逓増定期保険」や「長期平準定期保険」といった商品の名称や種類ごとに細かなルールが定められていました。しかし新ルールでは、契約期間中で最も解約返戻率が高くなる時点の数値(最高解約返戻率)を基準に、4つの区分が設けられました。

これにより、「解約返戻率が高い保険ほど、保険料の多くを資産計上する」という、抜け道のないシンプルなルールが確立しました。 

返戻率ごとの損金算入割合(早見表)

最高解約返戻率による4つの区分

現在のルールでは、最高解約返戻率の高さに応じて損金算入できる割合が明確に分かれています。以下は、原則として保険期間の「前半4割」にあたる期間の取り扱いをまとめた早見表です。

最高解約返戻率の区分当期の損金算入割合(前半4割期間など)資産計上割合
50%以下全額損金なし
50%超~70%以下約40%(法人保険 4割損金)約60%
70%超~85%以下約40%最高解約返戻率 × 90% など
85%超10%未満になることも当年度の解約返戻金増加額 × 70〜90% など
※70%超〜85%以下、および85%超の区分における計算式は簡略化して記載しています。
正確な計算は加入する保険商品の設計書等で必ず確認してください。

上記の早見表の根拠となる国税庁の規定は以下の通りです。少し専門的ですが、解約返戻率が高くなるほど、資産計上(=経費にできない部分)の割合や期間が厳しく設定されていることがわかります。

出典:国税庁ウェブサイト「定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い

資産計上した保険料は後で損金に戻る

資産計上された保険料は当期の経費にはなりませんが、永遠に損金にならないわけではありません。 

保険期間が経過して「後半」の期間に入ると、前半で積み立てた資産計上額を取り崩し、その年の支払保険料と合わせて損金に算入していく仕組みになっています。

たとえば、保険期間の後半に入ると当期の支払保険料が全額損金になるだけでなく、過去に資産計上した金額も徐々に経費として落とせるため、後半の所得圧縮効果は大きくなります。ただし、最終的に解約して返戻金を受け取った際には、残っている資産計上額と返戻金との差額が「雑収入」として益金(利益)になるため、トータルでの課税額は変わらない計算となります。

85%超は資産計上の割合が大きく節税向きでない

最高解約返戻率が85%を超えるような、いわゆる超高返戻率の保険商品は、支払った保険料の大部分(7割〜9割以上)を資産計上しなければなりません。

この区分では当期の損金算入額が極めて少なくなるため、目先の法人税を減らす効果はほとんど期待できません。そのため、「利益を保険で圧縮しよう」という節税目的には不向きです。純粋な資金積立や、万が一の保障目的として割り切って活用しましょう。 

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30万円特例で全額損金にできる条件

30万円特例とは

2019年のルール改正で厳しくなった損金算入ですが、中小企業にとって使い勝手の良い例外規定も用意されています。それが「法人保険 30万円特例」と呼ばれる制度です。

この特例は、最高解約返戻率が「70%以下」の法人保険において、被保険者1人あたりの年間保険料が30万円以下である場合、全額損金算入が認められるというものです。特例の条件については、国税庁のタックスアンサーでも以下のように明記されています。

出典:国税庁ウェブサイト「定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い

本来であれば、最高解約返戻率が50%超〜70%以下の保険は「4割損金・6割資産計上」となります。しかし、年払保険料が30万円以下という小規模な契約であれば、事務処理の簡略化などの観点から、例外的に支払った全額をその年の損金として処理できるのです。

30万円特例の注意点

この特例を利用する際、最も注意すべきは「同じ被保険者の年間保険料は合算で判定される」という点です。 A社で年額20万円、B社で年額15万円の保険に加入している場合、合計30万円を超えてしまうため特例は適用されず、原則通り「4割損金」の処理が必要となります。

また、この特例が適用されるのは「最高解約返戻率が70%以下」の保険に限られます。70%を超える保険については、年間保険料が30万円以下であっても特例の対象外です。導入を検討する際は、対象者の既存の保険契約をすべて洗い出し、合算して30万円以下に収まるかを正確に確認しなければなりません。

法人保険の節税は「本当に得」なのか

「節税」ではなく「課税の繰延」である

ここまで損金算入のルールを解説してきましたが、最大の疑問である「本当に得なのか」という点に切り込みます。結論から言うと、現在の法人保険は「節税」というよりも「課税の繰延」に過ぎません。

法人 保険料 損金算入をして経費扱いにすれば、確かに今の法人税は減ります。しかし、数年後に保険を解約して解約返戻金を受け取ったとき、そのお金は「雑収入(益金)」として会社の利益に加算されます。結果として、受け取った時点で法人税が課せられるため、トータルで支払う税金の額は減っていないのです。

税金が免除されるわけではなく、支払うタイミングを未来に先送りしているだけである点を押さえておきましょう。 

繰延が役立つケース・役立たないケース

課税の繰延が悪いわけではありません。会社の状況に応じて、役立つケースと役立たないケースが明確に分かれます。

繰延が役立つケース(出口戦略がある場合)

将来、大規模な支出(損金)が発生する予定が明確な場合は、法人保険が非常に役立ちます。代表的なのは「役員の退職金」や「大規模な設備投資」です。

保険を解約して多額の返戻金(益金)を受け取った同じ決算期に、退職金という大きな経費(損金)を計上します。すると、益金と損金が相殺され、解約時の法人税の発生を防ぐことができます。このように、出口(解約時)の使い道が明確に決まっている場合、法人保険は計画的な資金準備と税務コントロールの優れたツールとなります。

繰延が役立たないケース(出口戦略がない場合)

一方で、「今期はたまたま利益がたくさん出たから、とりあえず税金を減らしたい」という理由だけで加入するのはお勧めしません。

明確な出口戦略がないまま解約時期を迎えると、多額の解約返戻金がそのまま利益に乗ってしまい、結局その年に多額の法人税を支払うことになります。これでは資金を長期間拘束されただけで、実質的なメリットは得られません。

節税目的だけの加入はリスクがある

明確な目的のない節税対策には、重大な経営リスクが潜んでいます。

1つ目は、資金繰りの悪化リスクです。 保険料は現金で支払うため、会社のキャッシュは確実に減少します。帳簿上は黒字でも、手元に現金がない「黒字倒産」の引き金になりかねません。

2つ目は、元本割れのリスクです。 法人保険の多くは、契約から数年以内の早期に解約すると、解約返戻金が支払った保険料を大きく下回ります。もし想定外の業績悪化で解約せざるを得なくなった場合、節税できた金額以上に損害を被る可能性が高いのです。

保険はあくまで「万が一の保障」が本来の目的です。目先の税金対策だけを追求した無理な加入は避けるべきでしょう。

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【法人保険 節税でよくある質問】

法人保険で節税できますか?

純粋な「節税」は困難です。

保険料の損金算入によって当期の税金を減らすことはできますが、解約時に返戻金を受け取ると益金として課税されるため、実態は「課税の繰延(先送り)」となります。返戻金を役員退職金などの経費と相殺する「出口戦略」があって初めて意味を持ちます。

法人保険の保険料は全額損金にできますか?

最高解約返戻率が50%以下の保険(掛け捨てなど)であれば、原則として全額損金算入が可能です。

また、最高解約返戻率が70%以下の保険でも、被保険者1人あたりの年間保険料が30万円以下であれば、特例として「法人保険 全額損金」の処理が認められます。

4割損金とはどういう意味ですか?

最高解約返戻率が「50%超~70%以下」の法人保険に適用されるルールのことです。

原則として保険期間の前半4割の期間において、支払った保険料の約40%を損金に、残りの約60%を資産に計上しなければならないという決まりを指します。

30万円特例の30万円は何の金額ですか?

被保険者1人あたりが1年間に支払う保険料(年換算保険料)の合計額です。

同じ役員に対して複数の保険契約(他社での契約も含む)がある場合は、それらをすべて合算した金額が30万円以下である必要があります。

結局、法人保険は節税対策として入る価値がありますか?

「単に税金を減らしたい」という目的だけであれば、資金繰りを悪化させるリスクがあるため入る価値は低いです。

しかし、「経営者の万が一の死亡リスクに備えたい」「将来の役員退職金を計画的に積み立てたい」という明確な目的があり、その副次的効果として税務上のメリットを享受するのであれば、十分に価値のある手段と言えます。

まとめ

法人保険を活用する際は、目先の節税効果にとらわれず、中長期的な会社のキャッシュフローと出口戦略を冷静に見極めることが重要です。 

本記事のまとめ
  • 法人保険は純粋な節税ではなく、税金の支払いを先送りする「課税の繰延」である
  • 2019年の改正により「最高解約返戻率」に応じて損金割合が決まるルールになった
  • 最高解約返戻率が50%超〜70%以下の保険は、原則「4割損金・6割資産計上」となる
  • 解約返戻率70%以下で年額30万円以下の保険なら、特例で全額損金にできる
  • 加入の際は、将来の役員退職金などと相殺する明確な「出口戦略」が必須である

自社の状況に合った最適な法人保険の活用方法や、正しい税務処理についてご不安な点があれば、最新の税制に精通した専門家へご相談されることをお勧めします。

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監修者

【西山 尚志 | ファイナンシャルプランナー】
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個人・法人保険及びファイナンシャルプランナーとして、個人のライフプランニングから法人の経営課題解決まで、多角的な視点でトータルサポートを提供している。保険商品の販売にとどまらず、保険募集人として、高度な専門性と倫理観を持ち、客観的かつ公正な立場から、顧客の最善の利益を追求する。

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