「毎月の保険料がもったいないけれど、入らないと後悔するかもしれない」
家計を見直す際、生命保険の必要性について悩む方は少なくありません。ネット上などでも「生命保険はいらない」という意見を目にすることが増えました。しかし、すべての人にとって保険が不要なわけではありません。現在のライフステージや貯蓄額、加入している公的年金の種類によって、その結論は明確に分かれます。
本記事では、公的保障(遺族年金や高額療養費制度など)の仕組みを紐解きながら、生命保険がいらない人・必要な人の違いを実務家の視点で解説します。
- 生命保険が「いらない」と言われる3つの理由
- 生命保険に入っていない人の割合と年代別の傾向
- 万が一のときに役立つ公的保障(遺族年金・高額療養費・傷病手当金)の仕組み
- 生命保険が「いらない人」「入らないと後悔する人」の具体的な特徴
- 「生命保険は何歳まで必要か」を判断するための考え方

【西山 尚志 | ファイナンシャルプランナー】
株式会社altruloopフィナンシャルパートナーズ マネージャー
個人・法人保険及びファイナンシャルプランナーとして、個人のライフプランニングから法人の経営課題解決まで、多角的な視点でトータルサポートを提供している。保険商品の販売にとどまらず、保険募集人として、高度な専門性と倫理観を持ち、客観的かつ公正な立場から、顧客の最善の利益を追求する。
生命保険が「いらない」と言われる理由
公的保障が充実しているから
日本は国民皆保険制度を採用しており、病気やケガをした際の医療費自己負担は原則3割です。治療費が高額になった場合は「高額療養費制度」が適用され、万が一の死亡時には残された家族に「遺族年金」が支給されます。
国が用意しているセーフティネットを正しく活用すれば、民間の生命保険に加入しなくても最低限の生活を守れるケースは珍しくありません。その結果、「高い保険料を払ってまで民間保険に入る必要はない」と考える人が増えています。
貯蓄で備えられると考える人が増えているから
保険の本来の目的は「発生頻度は低いが、起きた場合の経済的ダメージが極めて大きいリスク」への備えです。
近年はNISAやiDeCoなどの非課税制度が普及し、自力で資産形成を行う人が増加しました。手元に数百万〜数千万円の流動資産があれば、突然の入院費用や当面の生活費は自己資金でまかなえます。「貯蓄は三角、保険は四角」と言われる通り、すでに十分な資産を築いている人にとって、保険の必要性は自然と低くなります。
必要性を感じない・知識がないから
「自分が病気になるはずがない」「まだ若いから大丈夫」と、リスクを現実的に捉えられないことも理由の一つです。特に20代などの若年層では、周囲で大きな病気をする人が少ないため、必要性を実感しにくい環境にあります。
また、保険商品の仕組みが複雑なため「よくわからないから入らない」という選択をする方もいます。客観的なリスク判断ではなく、単なる知識不足から「いらない」と思い込んでいるケースには注意が必要です。
生命保険に入っていない人の割合
生命保険の加入率(公的データ)
公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、生命保険(個人年金保険などを含む)の加入率は男性が77.6%、女性が81.5%です。
全体の約8割が何らかの保険に加入している一方で、裏を返せば「約2割の人は未加入」という事実があります。5人に1人は、民間の生命保険に頼らずに生活していることになります。

年代・属性による違い
未加入の割合を年代別に見ると、20代が最も高く、年齢が上がるにつれて加入率も上昇します。20代は独身者が多く、扶養家族がいないため大きな死亡保障を必要としないことが主な理由です。
30代〜40代になると、結婚や出産、住宅購入(ローン契約時の団体信用生命保険を含む)といったライフイベントを機に加入する人が急増します。また、正規雇用者よりも非正規雇用者や無職の人の方が未加入率が高いデータもあり、経済的な余裕が保険加入に直結している状況も読み取れます。
公的保障でどこまで備えられるか
生命保険の要否を判断するには、「公的保障でいくらもらえるのか」を正確に把握することが不可欠です。
遺族年金——万一のときの遺族の生活保障
一家の働き手が亡くなった場合、残された家族には「遺族年金」が支給されます。亡くなった方の職業や家族構成によって、受け取れる金額は大きく変わります。

- 遺族基礎年金: 国民年金・厚生年金の加入者を問わず、「18歳到達年度の末日までにある子」がいる配偶者、またはその子に支給されます。
- 遺族厚生年金: 会社員・公務員(厚生年金加入者)が亡くなった場合に支給。子の有無は問わず、配偶者等に支給されます。
会社員で専業主婦の妻と幼い子ども2人がいる場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されるため、月額十数万円の保障が確保できるケースが多くなります。
高額療養費制度——医療費の自己負担に上限
病気やケガで長期入院や手術をした際、医療費の家計負担が青天井になるのを防ぐのが「高額療養費制度」です。
年齢や所得に応じて「ひと月あたりの自己負担限度額」が定められています。年収約370万〜770万円の一般的な収入帯であれば、月の医療費上限は約8万〜9万円です。

仮に100万円の医療費がかかっても、窓口で支払う(または後日払い戻される)自己負担額は9万円弱で済むため、過剰な医療保険への加入は必要ありません。
傷病手当金——働けないときの収入保障(会社員)
会社員や公務員(健康保険組合・協会けんぽ等の加入者)が病気やケガで連続して3日以上休業し、給与が支払われない場合、4日目から「傷病手当金」が支給されます。

支給額は「直近1年間の標準報酬月額の平均額の3分の2」に相当し、支給開始日から最長1年6ヶ月にわたって受け取れます。働けない期間も一定の収入が保証されるため、会社員にとっては非常に心強い制度です。
公的保障でカバーされない部分が保険の検討ポイント
日本の公的保障は手厚いものの、以下の費用は全額自己負担となります。
- 差額ベッド代(個室代)や入院中の食事代
- 先進医療の技術料
- 自営業・フリーランス(国民健康保険)の休業中の生活費
- 子どもを大学まで行かせるための高額な教育費不足分
これら「公的保障だけでは足りない部分」を明確にし、その不足額を現在の貯蓄でまかなえるかどうかが、保険加入を検討する際の最大の基準となります。
生命保険が本当に「いらない人」の特徴
具体的な特徴を解説する前に、属性別の公的保障の厚さと保険の必要性を一覧表にまとめました。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
| 属性・ライフステージ | 公的保障の厚さ | 生命保険の必要性 | 優先すべき保険の種類 |
| 独身(20〜30代) | 普通 | ✖️ 低い | 医療保険(少額)、就業不能保険 |
| 会社員・公務員(扶養あり) | 充実(遺族厚生年金など) | △ 貯蓄次第 | 収入保障保険、定期保険 |
| 自営業・フリーランス(扶養あり) | 薄い(遺族基礎年金のみ) | ◎ 非常に高い | 収入保障保険、就業不能保険、医療保険 |
| シニア層(資産形成済み) | 普通(高額療養費など) | △ 相続対策次第 | 終身保険(相続税対策用) |
表の通り、公的保障と貯蓄のバランスによって必要性は変わります。以下の条件に当てはまる方は、無理に加入する必要性は低いでしょう。
扶養する家族がいない独身の人
独身の場合、自分が亡くなったあとに経済的に困窮する家族がいません。そのため、数千万円といった高額な死亡保障を備える意味はありません。
お葬式代や遺品整理の費用として、200万〜300万円程度の貯蓄があれば十分です。ただし、死亡保障は不要でも、自分が病気で働けなくなった際のリスクに備える就業不能保険や、がん保険などは検討の余地があります。
十分な貯蓄・資産がある人
万が一の事態が起きても、手元の貯蓄や資産(現金、株式、不動産など)で家族の生活費や医療費をまかなえる人は、生命保険はいりません。
たとえば、子どもが独立済みで数千万円の老後資金を確保しているシニア層が該当します。若い世代であっても、家計の年間支出の数年分に相当する現金を保有していれば、医療保険や死亡保険の優先度は大きく下がります。
公的保障が手厚い会社員・公務員
会社員や公務員は「遺族厚生年金」や「傷病手当金」といった手厚い公的保障に守られています。
さらに、大企業の健康保険組合などでは独自の「付加給付」があり、高額療養費制度の自己負担上限が2万〜3万円程度に抑えられているケースも存在します。勤務先の福利厚生制度や退職金の規定を確認し、十分な保障が用意されているなら、民間の生命保険を上乗せする必要はありません。
生命保険に入らないと後悔しやすい人の特徴
一方で、安易に未加入を選択し、万一の際に生活が破綻してしまう「生命保険入らない後悔」を抱える人もいます。以下に該当する方は、保険による備えを強く推奨します。
扶養する家族がいる人
小さな子どもや、専業主婦(夫)の配偶者がいる場合、家計の主な収入源である方が亡くなると、残された家族の生活は一気に立ち行かなくなります。
遺族年金が支給されても、子どもの大学進学費用(一人あたり1,000万〜2,000万円)や日々の生活費を全額カバーすることは困難です。残された家族が経済的な理由で将来の選択肢を狭めないよう、掛け捨ての定期保険などで必要な金額をカバーしておくべきです。
貯蓄が少ない人
現時点で貯蓄が少ない人ほど、生命保険の必要性は高まります。
数十万円の貯金しかない状態で重い病気になり、休職を余儀なくされた場合、医療費の支払いと生活費の減少で一気に家計がショートします。貯蓄が目標額に達するまでの「つなぎ」として、最低限の医療保険や就業不能保険を活用し、リスクを外部化しておくことが身を守る盾となります。
自営業・フリーランスの人
自営業やフリーランス(第1号被保険者)は、会社員に比べて公的保障が極めて脆弱です。
- 死亡時: 子どもがいない配偶者には遺族基礎年金が支給されません。
- 病気・ケガの休業時: 国民健康保険には「傷病手当金」がないため、働けない期間の収入はゼロになります。
公的保障の薄さを補うため、自営業者こそ民間の就業不能保険や収入保障保険で自衛する必要があります。ここを怠ると、自身の病気やケガがそのまま事業の倒産や一家の破綻に直結しかねません。
「何歳まで必要か」は状況の変化で考える
「生命保険は何歳まで必要か」という疑問には、年齢ではなく「ライフステージの状況」で判断します。
たとえば、子どもが独立して教育費の負担がなくなり、住宅ローンも完済(または団体信用生命保険で相殺)したタイミングが一つの目安です。定年退職を迎え、夫婦二人が年金で暮らしていけるだけの老後資金が貯まっていれば、その時点で高額な死亡保険は「いらない」状態になります。
定期的に保障内容の棚卸しを行い、状況の変化に合わせて減額していくことが後悔しないコツです。
生命保険 いらないでよくある質問
生命保険は本当にいらないのですか?
すべての人に不要なわけではありません。
十分な貯蓄がある人」「扶養家族がいない人」にとっては不要なケースが多い一方、貯蓄が少ない方や公的保障の薄い自営業の方にとっては、生活を守るために不可欠なツールです。
独身なら生命保険はいらないですか?
自分の葬儀代程度の貯蓄(200万〜300万円)があれば、死亡保険は原則不要です。
ただし、自分が病気やケガで働けなくなったときの生活費リスクに備える「就業不能保険」などは、貯蓄額に応じて検討の余地があります。
生命保険に入っていない人はどのくらいいますか?
生命保険文化センターの調査によると、日本人の約2割(5人に1人)が生命保険に入っていません。
特に20代の若年層や単身世帯で未加入の割合が高くなっています。
生命保険は何歳まで必要ですか?
「何歳まで」という明確な決まりはありません。
「一番下の子どもが独立したとき」や「定年退職して老後資金の目処が立ったとき」など、遺族が経済的に困らなくなったタイミングが、大きな死亡保障を手放す目安となります。
入らずに後悔するのはどんな人ですか?
「貯蓄がないのに保険にも入っていない人」や「自営業で傷病手当金がないのに医療保障を備えていない人」です。
突発的な病気で収入が途絶え、医療費の支払いで借金を抱えてしまうなど、取り返しのつかない事態に陥るリスクがあります。
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まとめ
生命保険の必要性は、世間の極端な意見に流されるのではなく、ご自身の現状を客観的に分析して判断することが大切です。
- 遺族年金や高額療養費などの「公的保障」が充実しているため、保険が不要と言われることが多い
- 日本人の約2割は生命保険に未加入であり、貯蓄や公的保障でリスクに備えている
- 「独身」「十分な貯蓄がある」「手厚い保障がある会社員」は生命保険がいらない可能性が高い
- 「扶養家族がいる」「貯蓄が少ない」「自営業・フリーランス」は保険に入らないと生活破綻のリスクが高い
- 保険は「公的保障と現在の貯蓄で足りない部分」だけをピンポイントで補うのが賢い活用法
「自分の場合、公的保障でいくらもらえるのか(いくら足りないのか)」を正確に計算するには専門知識が必要です。
無駄な保険料を削り、本当に必要な備えだけを知りたい方はお気軽にご相談ください。

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