企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している会社員の方から「iDeCo(個人型確定拠出年金)と併用して掛金を増やせないか」という相談をよく受けます。
企業型確定拠出年金 iDeCo併用は可能です。かつては勤め先の規約による制限がありましたが、度重なる法改正で実質的に撤廃されました。とくに2024年12月の制度改正で加入時の手続きが大幅に簡素化され、より手軽に併用できる環境が整っています。
本記事では、併用による節税効果や「掛金上限額」の計算方法を図解を交えて解説します。企業型DC独自の「マッチング拠出」との比較についても、実務上の判断基準を交えて紹介します。
- 企業型DCとiDeCoの併用ルール
- 併用時の掛金上限額と具体的な計算方法
- マッチング拠出とiDeCoの比較・選び方
- 併用のメリット・注意点と申込み手順

【西山 尚志 | ファイナンシャルプランナー】
株式会社altruloopフィナンシャルパートナーズ マネージャー
個人・法人保険及びファイナンシャルプランナーとして、個人のライフプランニングから法人の経営課題解決まで、多角的な視点でトータルサポートを提供している。保険商品の販売にとどまらず、保険募集人として、高度な専門性と倫理観を持ち、客観的かつ公正な立場から、顧客の最善の利益を追求する。
結論:企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCoは併用可能
企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者は、現在、原則として自由にiDeCoを併用できます。併用が可能になった経緯と、例外的に認められないケースを解説します。
2022年の法改正で「原則併用OK」に緩和された
現在、会社側の許可や規約の変更を待たずに、個人の意思でiDeCo口座を開設できます。
その理由は、2022年10月施行の法改正により、併用に関する要件が大幅に緩和されたためです。法改正以前は、お勤め先の企業型DC規約に「iDeCoとの併用を認める」という規定がなければ加入できませんでした。
現在では事業主側の規約に縛られず、原則としてすべての企業型DC加入者がiDeCoを利用できるよう制度が改められています。
例外としてiDeCoと併用できないケース
原則としてideco 企業型確定拠出年金併用は可能ですが、企業型DCで「マッチング拠出」をすでに利用している場合は併用できません。
マッチング拠出とは、会社が拠出する事業主掛金に対し、従業員自身が給与の一部を上乗せして掛金を支払う仕組みです。ひとつの制度内で個人の掛金拠出による税制優遇を二重に受けることを防ぐため、マッチング拠出とiDeCoの併用は禁じられています。
したがって、すでに毎月の給与からマッチング拠出として掛金が天引きされている方がiDeCoを始めたい場合は、まず社内でマッチング拠出の停止手続きを行う必要があります。
企業型確定拠出年金とiDeCoを併用する3つのメリット
企業型確定拠出年金iDeCo併用 メリットのなかでも、注目すべきは税制面での優遇措置です。具体的な3つのメリットを解説します。

1. 掛金全額が所得控除され、節税効果が最大化する
最大のメリットは、iDeCoとして拠出した掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、毎年の所得税および住民税が軽減される点です。
企業型DCの事業主掛金はもともと非課税ですが、iDeCoで自己資金を追加拠出することで、個人の課税所得をさらに圧縮できます。日本の所得税は累進課税のため、所得が高い方ほど節税効果は高まります。
たとえば、年収500万円の会社員がiDeCoで毎月2万円(年間24万円)を積み立てた場合、所得税(10%)と住民税(10%)を合わせ、年間で約48,000円の税負担が軽減されます。これを30年間継続した場合、累計の軽減額は約144万円になります。
2. 運用益が非課税になり、効率よく資産を増やせる
2つ目は、長期間の資産運用で発生した利益に税金がかからないことです。
通常、証券会社等の課税口座で投資信託を運用し利益が出ると、20.315%の税金が課されます。しかし、企業型DCとiDeCoの口座内での運用益は全額非課税となるため、税金分をそのまま再投資に回すことができます。
毎月2万円を拠出し、年利3%で30年間運用できたと仮定すると、運用益は約390万円です。通常の課税口座であれば約79万円が徴収されますが、確定拠出年金制度を活用していればこの金額が手元に残ります。
3. 企業型DCにない金融商品を選べる
併用することで、勤め先が用意した運用商品のラインナップに縛られず、自由に金融商品を選べるようになります。
企業型DCの運用商品は、会社が契約している運営管理機関が選定した商品に限られます。信託報酬(運用コスト)が割高なファンドや元本確保型の商品しか選択肢がないケースも少なくありません。
iDeCoを併用しネット証券等で口座を開設すれば、信託報酬が安い全世界株式や米国株式のインデックスファンドなどを自由に選択できます。企業型DCで安全な商品を、iDeCoで積極的な利回りを狙う商品を選ぶなど、制度をまたいだ運用が可能です。
企業型DCとiDeCoを併用する場合の掛金「上限額」
企業型dc ideco 併用 上限のルールは、複数の年金制度が絡むため複雑です。現行制度(2024年12月改正後から2026年11月まで適用)に基づく、個人の掛金上限額の決定方法を解説します。
iDeCoの掛金上限額の基本ルール
会社員が企業型DCとiDeCoを併用する場合、それぞれの掛金を合算した総額が「月額55,000円以内」に収まる必要があります。
この全体枠に加え、iDeCo単体で拠出できる金額には「最大で月額20,000円まで」という上限が設けられています。全体枠の55,000円に余裕があっても、iDeCoの掛金だけを20,000円以上に設定することはできません。また、iDeCoの掛金は最低5,000円から1,000円単位で設定するというルールもあります。
確定給付企業年金(DB)に加入しているかどうかが鍵
自身のiDeCo上限額を算出する鍵は、お勤め先が「確定給付企業年金(DB)」など他の退職給付制度を併用して導入しているかどうかにあります。加入状況によって、計算式が以下の2パターンに分かれます。
パターン① 企業型DCのみ加入している場合
お勤め先が企業型DCのみを実施している場合の計算式は以下のようになります。
- iDeCoの拠出限度額 = 55,000円 - 企業型DCの事業主掛金(※ただし最大20,000円が上限)
会社が毎月10,000円を企業型DCに拠出している場合、余枠は45,000円ですが、iDeCo単体の上限が適用されるため、設定できるiDeCoの掛金上限額は20,000円となります。
一方、会社が毎月40,000円を拠出している場合は、余枠が15,000円となるため、iDeCoの限度額は15,000円です。
パターン② 企業型DCとDBの両方に加入している場合
企業型DCに加えて、確定給付企業年金(DB)等にも加入している場合、2024年12月の制度改正によりiDeCoの上限額が「最大20,000円」に引き上げられました。計算式は以下の通りです。
- iDeCoの拠出限度額 = 55,000円 - (企業型DCの事業主掛金 + DB等の他制度掛金相当額)(※ただし最大20,000円が上限)
注意点として、会社が負担する企業型DCの掛金とDBの掛金相当額の合計が、すでに月額50,000円を超えているケースが挙げられます。全体枠の55,000円から差し引くと残枠が5,000円未満となり、iDeCoの最低掛金額(5,000円)を満たせないため、実質的にiDeCoを利用できなくなります。
自身の「企業型DCの事業主掛金」の確認方法
上記の計算式を当てはめるためには、「現在の事業主掛金額」や「DBの掛金相当額」を把握することが不可欠です。
確認するには、企業型DCの記録関連運営管理機関の加入者向けWebサイトにログインするか、年に1回郵送される運用報告書、毎月の給与明細書(確定拠出年金事業主掛金の欄)などを見るのが確実です。
書類やサイトで判別できない場合は、お勤め先の人事・労務担当部署に対し「現在の企業型DCの事業主掛金額と、DB等他制度の掛金相当額を教えてほしい」と直接照会してください。
「マッチング拠出」と「iDeCo併用」はどちらを選ぶべき?
企業型DCのマッチング拠出とiDeCoの併用は制度上同時に利用できず、二者択一となります。ご自身の状況に応じて選ぶための判断基準を提示します。

そもそもマッチング拠出とは?
マッチング拠出とは、会社が拠出する事業主掛金に対し、従業員が希望する金額を給与から上乗せして拠出できる制度です。会社の退職金規程やDC規約に導入されている場合のみ利用できます。
上乗せした個人の掛金は、iDeCoと同様に全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。そのため、所得税や住民税の軽減効果はiDeCoと遜色ありません。掛金が給与から天引きされ、年末調整で所得控除の手続きが完結するため、確定申告の手間がない点が特徴です。
マッチング拠出を選ぶべき人・メリット
マッチング拠出のメリットは「手数料の負担がないこと」と「資産管理の手軽さ」です。
企業型DCの口座管理手数料は原則として会社が負担するため、従業員がマッチング拠出を利用して掛金を追加しても、追加の手数料は発生しません。
また、資金の運用窓口が企業型DCの口座一つに集約されるため、複数の口座を管理する手間が省けます。運用コストを抑えたい方や、投資管理をシンプルにしたい方にはマッチング拠出が適しています。
iDeCo併用を選ぶべき人・メリット
iDeCo併用のメリットは「商品の選択肢が豊富であること」と「転職時のポータビリティ」です。
企業型DCの商品ラインナップは保守的で、信託報酬の高い商品が混在しがちです。iDeCoを利用すれば、ネット証券等を通じて信託報酬の低い優良なインデックスファンドを自由に選択できます。
さらに、将来的に転職や独立を検討している場合、個人のiDeCo口座を持っていれば運用環境を維持しやすくなります。運用コストや商品の質にこだわりたい方にはiDeCoの併用をおすすめします。
【比較表】口座管理手数料や選べる商品の違い
マッチング拠出とiDeCo併用の違いを比較表として整理しました。
| 比較項目 | マッチング拠出(企業型DC) | iDeCoの併用 |
|---|---|---|
| 税制優遇(所得控除) | 掛金全額が控除対象 | 掛金全額が控除対象 |
| 口座管理手数料 | 原則なし(会社が負担) | 自己負担(最低月額171円〜) |
| 運用商品の選択肢 | 会社のラインナップに限定 | 自由に金融機関と商品を選べる |
| 掛金の支払い方法 | 給与天引きのみ | 銀行口座からの引落しが基本 |
| 税務申告の手間 | 年末調整のみで完結 | 年末調整等での申告が必要 |
| 資産管理の煩雑さ | 口座が1つにまとまり管理が容易 | 口座が2つに分かれ個別管理が必要 |
企業型DCとiDeCoを併用する際の注意点・デメリット
企業型確定拠出年金 ideco 併用 メリットは大きいですが、実務上の注意点やデメリットも存在します。利用する前に以下の3点を確認してください。
iDeCoの口座管理手数料が毎月発生する
iDeCoを利用する場合、国民年金基金連合会などへ支払う法定の口座管理手数料が最低でも月額171円(年間2,052円)毎月発生します。
掛金額が少ない場合、この手数料の負担が大きくなります。月額5,000円(年間60,000円)の場合、年間2,052円の手数料は元本の約3.4%に相当します。運用リターンでこの率を上回らなければ実質的に元本割れとなるため、掛金額を多めに設定するなどの工夫が求められます。
原則60歳まで資金を引き出せない
確定拠出年金は老後のための年金制度であるため、原則として60歳まで資金を引き出すことができません。
住宅購入や教育費など、まとまった資金が必要になるライフイベントに備え、手元の預貯金を過剰にiDeCoに回すのは危険です。「60歳まで引き出せなくても日々の生活に支障のない余剰資金」の範囲内で掛金を設定することが鉄則です。
自分で金融機関を選び、開設手続きを行う手間がかかる
マッチング拠出が社内申請で完結するのに対し、iDeCoは自分で金融機関を選び、口座開設手続きを一から行う手間がかかります。
ただし、この手続きの手間は近年の法改正で改善されました。2024年12月の制度改正により、会社員がiDeCoに加入する際に必須だった「事業主の証明書」の提出が廃止されたのです2。会社とのやり取りが不要になり、個人のスマートフォン等で申し込み手続きが完結するよう改善されています2。
企業型確定拠出年金とiDeCoの併用を始める手順
iDeCoの併用を開始するための具体的な手順を解説します。
まず、現在加入している企業年金制度の状況を把握します。
確定給付企業年金(DB)を導入しているか、そして企業型DCの事業主掛金がいくら支払われているかを確認し、自身のiDeCo掛金上限額を確定させます。また、現在マッチング拠出を利用している場合は、社内で停止手続きを進めてください。
次に、iDeCo口座を開設する金融機関を選びます。金融機関を選ぶ際のポイントは以下の2点です。
- 金融機関独自の運営管理手数料が「無料」であること
- 信託報酬が低い優良なインデックスファンドを豊富に扱っていること
これらを満たす大手ネット証券(SBI証券や楽天証券など)は、有力な選択肢となります。
選んだ金融機関のWebサイトから、iDeCoの加入申し込みを行います。手続きには基礎年金番号がわかるもの、マイナンバーカード、掛金引き落とし用の銀行口座情報が必要です。
事業主の証明書が廃止されたため、オンラインのみで申請が完了します。国民年金基金連合会による審査(1〜2ヶ月程度)を経て、自宅に「加入確認通知書」が届けば併用運用がスタートします。
良くある質問
iDeCoの掛金額は途中で変更できますか?
年に1回だけ変更可能です。
毎年1回に限り1,000円単位で変更できます。企業型DCの事業主掛金改定で併用上限を超えた場合は、速やかにiDeCoの掛金変更手続きを行ってください。
マッチング拠出からiDeCo併用への切り替えはすぐにできますか?
可能ですが、社内手続きに1〜2ヶ月ほどかかります。
同時利用はできないため、先に勤務先で「マッチング拠出の停止」を申請します。停止時期に合わせてiDeCo口座の開設手続きを進めるのがスムーズです。
2024年12月の改正で、会社への「事業主証明書」提出は不要になりましたか?
はい、原則として会社への書類提出は不要です。
法改正により「事業主の証明書」が廃止され、Web上の個人申込みで完結します。ただし、上限オーバーを防ぐため事前に自身の企業型DC掛金額を確認しておきましょう。
転職や退職をした場合、併用していたiDeCoはどうなりますか?
iDeCo口座は継続できますが、変更手続きが必要です。
転職先の年金制度に応じて上限額が変わるため、「被保険者種別変更届」の提出が必要です。前職の企業型DC資産も転職先DCまたはiDeCoへ移換します。
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まとめ
本記事では、企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCoの併用について、法制度、掛金上限額の計算方法、メリット・デメリットを解説しました。
2024年12月の改正による掛金上限額の引き上げや手続きの簡素化により、会社員にとってiDeCoは利用しやすい制度になりました。「所得控除」と「運用益非課税」の優遇措置を活かして老後資金を効率よく形成するため、企業型DCとiDeCoの併用は有効な選択肢です。
まずはご自身の企業年金の加入状況と掛金上限額を把握し、マッチング拠出との違いを比較したうえで、資産形成に向けた手続きを進めてみてください。
- 法改正により企業型DCとiDeCoは併用OK
- iDeCoの上限額は月最大2万円
- 手数料重視はマッチング、商品重視はiDeCo
- 全額所得控除と運用益非課税で節税できる

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