「うちの会社も、そろそろ就業規則を作らないといけないのかな?」「従業員が10人を超えたけど、何から始めれば…」多くの経営者や人事担当者様が抱えるこの疑問。会社の憲法とも言える就業規則は、健全な企業運営と従業員が安心して働ける環境作りのために不可欠です。
本記事では、就業規則の作成義務に関する基本的な知識から、なぜ必要なのか、具体的な作成ステップ、そして放置するリスク、専門家である社労士に依頼するメリットに至るまで、あらゆる角度から詳細に解説します。法改正にも対応した最新情報で、皆様の疑問や不安を解消し、適切な対応をサポートいたします。社労士事務所altruloopは、貴社の実情に最適化された「生きた」就業規則作りを力強くお手伝いさせていただきます。
就業規則の作成義務はどれくらいの規模から?なぜ必要?
このセクションでは、就業規則の作成が法的にいつから義務となるのか、その根拠条文や具体的な条件、そして義務を怠った場合のリスクについて解説します。就業規則の作成義務は、企業の規模が一定以上になった際に発生する法的責任であり、単なる努力目標ではありません。この点を正確に理解することが、法令遵守の第一歩です。
「常時10人以上の労働者」がキーワード!作成・届出義務の発生条件とは
就業規則の作成と届出の義務は、労働基準法に明確に定められています。その最も基本的な条件が「常時10人以上の労働者を使用する事業場」であるかどうかです。
法的根拠と義務の内容
労働基準法第89条1項に基づき、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、「就業規則」を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります 。 この「常時10人以上の労働者」という基準は、就業規則作成義務の有無を判断する上で最も基本的なポイントです。この「常時」という言葉の解釈や、「労働者」の範囲、「事業場」の単位といった細かな定義を正確に把握することが重要になります。
また、作成した就業規則は、労働基準監督署長へ届け出ることも義務付けられています 。届出の期限は法律で明確に定められていませんが、「遅滞なく」届け出ることとされています 。作成しただけでは義務を果たしたことにならず、行政官庁への届出が完了して初めて法的な要件を満たします。この届出を怠ると、後述する罰則の対象となる可能性があります。
正社員だけ?労働者数の正しい数え方
「常時10人以上の労働者」をカウントする際には、いくつかの注意点があります。
労働者の範囲
「10人以上」のカウントには、正社員だけでなく、パートタイム労働者やアルバイトなども含まれます 。契約社員なども同様に含まれます。 多くの経営者が見落としがちなのが、この労働者の範囲です。正社員のみをカウントしてしまい、「うちはまだ9人だから大丈夫」と誤解しているケースが散見されます。パートやアルバイトであっても、常時雇用していれば労働者数に算入する必要があります。この誤解は、意図しない法令違反の温床となりやすいです。特にパート・アルバイトの多い小売業や飲食業などでは、経営者が気づかないうちに作成義務が発生しているケースが考えられます。
「常時」の解釈
「常時10人以上」とは、「常態として」10人以上の労働者を使用している状態を指します 。繁忙期など一時的に10人以上となる場合は該当しませんが、従業員の入退社が頻繁でも、常に10人以上いる場合は該当します 。 一時的な増減ではなく、企業の常態として労働者数が10人以上かどうかが判断基準となります。例えば、普段は8人でも、特定の期間だけ12人になるような場合は「常時10人以上」とは言えない可能性があります。逆に、人員の入れ替わりが多くても、常に10人以上の雇用が維持されていれば義務が発生します。
派遣労働者の扱い
派遣労働者は、派遣元の労働者としてカウントされるため、派遣先の労働者数には含めません 。派遣社員を多く活用している企業にとっては重要なポイントであり、自社の直接雇用の従業員のみでカウントします。
36協定との違い
36協定における労働者数のカウント方法 とは一部考え方が異なる場合があるため、混同しないよう注意が必要です。就業規則の作成義務における労働者数は、その事業場で常時使用されるすべての労働者(雇用形態を問わず)を指します。
労働者数のカウントミスによる就業規則の未作成は、罰則リスクだけでなく、助成金申請の機会損失や、万が一の労務トラブル発生時の企業側の防御手段の喪失にも繋がります。つまり、初期の小さな誤解が、将来的に大きな経営的損失を引き起こす可能性があるのです。
就業規則の作成義務は事業場ごとに判断!支店や営業所がある場合の注意点
就業規則の作成義務は、企業全体としてではなく、個別の事業場ごとに判断されるという点も重要です。
事業場単位の原則
就業規則の作成義務は、企業全体ではなく、本社、支店、営業所など、それぞれの事業場ごとに判断されます 。 たとえ会社全体の従業員数が10人未満であっても、ある支店の従業員数が常時10人以上であれば、その支店では就業規則の作成・届出義務が生じます。逆に、会社全体で100人いても、各事業場が10人未満であれば、原則として作成義務は発生しません(ただし、作成が推奨されることは後述します)。「事業場ごと」の原則を理解していないと、本社は義務を果たしていても、支店が法令違反状態にあるという事態を見逃す可能性があります。これは特に多店舗展開している企業にとって重要なリスク管理のポイントです。
事業場の独立性の判断
場所的に分散していても、規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力等を勘案して一つの事業場という程度の独立性がないものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱う場合があります 。また、労務管理(例:残業申請の承認権限)の実態によって判断されることもあります 。 単に場所が分かれているだけでなく、人事労務管理上の独立性があるかどうかがポイントです。例えば、小さな出張所で、勤怠管理や業務指示が全て本社一括で行われているような場合は、本社と一体の事業場と見なされることがあります。
一括届出制度
複数の事業場がある場合で、本社の就業規則と同一内容を適用する場合には、一定の要件(各事業場での意見聴取など)を満たせば、本社管轄の労働基準監督署に一括して届け出る制度も利用可能です 。 複数の事業所を持つ企業にとっては、事務手続きの負担を軽減できる有効な手段です。ただし、各事業場での意見聴取は別途必要になるなど、要件をしっかり確認する必要があります。
事業場ごとの管理体制の確立は、単に就業規則の作成義務への対応だけでなく、各拠点の労働環境の均質化やガバナンス強化にも繋がります。就業規則を各事業場の実態に合わせて(あるいは本社と統一して)整備する過程で、労務管理のあり方を見直す良い機会となり得ます。
作成義務を怠るとどうなる?
就業規則の作成・届出義務を怠った場合、法律に基づく罰則が科されるだけでなく、企業経営に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
労働基準法上の罰則
就業規則の作成義務、届出義務、または後述する周知義務に違反した場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科せられる可能性があります 。 法律で定められた義務である以上、違反すれば罰則が科されるのは当然です。金額の多寡に関わらず、法令違反という事実は企業の信用問題に関わります。 罰金だけでなく、労働基準監督署による是正勧告の対象となることもあります 。勧告を無視したり、態度が悪質だった場合には、書類送検されるおそれもあります 。是正勧告は、行政指導の一環として行われ、企業に対して問題点の改善を求めるものです。これに従わない場合、より厳しい措置が取られる可能性があります。
30万円以下の罰金だけではない、隠れた経営リスクとは
「30万円以下の罰金」という直接的なペナルティは、実は氷山の一角に過ぎません。真に恐れるべきは、それに付随して発生する無形の損害であり、これらは企業の持続可能性を脅かすレベルになり得ます。
社会的信用の失墜
法令違反の事実は、取引先や金融機関、そして何より従業員や求職者からの社会的信用を大きく損なう可能性があります 。罰金額そのものよりも、法令を遵守しない企業であるというレッテルの方が、長期的な経営へのダメージは大きいと言えます。「ブラック企業」といったイメージが定着すれば、採用活動や事業展開にも悪影響を及ぼしかねません。
労使トラブルの頻発・深刻化
就業規則がない、あるいは内容が不十分だと、労働条件や服務規律が不明確になり、些細なことから労使間の紛争に発展しやすくなります 。裁判になった場合、会社側が不利になるケースも少なくありません。例えば、解雇や懲戒処分の基準がなければ、従業員から不当性を訴えられた際、会社は正当な対応であったことを証明するのが難しくなります。「言った言わない」の水掛け論になりがちです。
従業員のモチベーション低下・離職率の増加
ルールが不明確な職場では、従業員が不公平感や不安を感じやすく、働く意欲の低下や、優秀な人材の流出に繋がる可能性があります 。従業員は、公正なルールのもとで評価され、処遇されることを望んでいます。就業規則がない、あるいは形骸化していると、経営者や上司の恣意的な判断が横行していると受け取られかねず、従業員のエンゲージメントを著しく損ないます。
採用活動への悪影響
近年、求職者は企業の労働条件や職場環境を厳しくチェックする傾向にあります。就業規則を整備していない、あるいは公開していない企業は、採用競争において不利になる可能性があります。企業のコンプライアンス意識や従業員を大切にする姿勢は、就業規則の有無や内容にも表れます。求職者にとって、就業規則は入社前に企業の姿勢を知る重要な手がかりの一つです。
就業規則の不備は、短期的なコスト削減(作成の手間や費用を惜しむ)が、長期的に見て遥かに大きなコスト(紛争対応費用、採用コスト増、生産性低下)を生み出すという、典型的な「安物買いの銭失い」の構造を持っています。経営者はこの時間軸でのコストベネフィットを理解する必要があります。
従業員10人未満なら作成不要?作成するメリット・しないデメリット
従業員が常時10人未満の事業場では、法律上の就業規則作成義務はありません 。しかし、「義務がない=作る必要がない」と考えるのは早計です。
10人未満でも作成を推奨する理由
従業員数が10人未満の企業であっても、就業規則を作成することには多くのメリットがあります。
- 労使トラブルの未然防止
- 労働条件や服務規律を明文化することで、無用な誤解や紛争を未然に防ぐことができます 。これは企業の規模に関わらず重要です。従業員数が少なくても、労働に関する問題は起こり得ます。むしろ、小規模企業の方が経営者と従業員の距離が近い分、感情的な対立に発展しやすい側面もあります。明確なルールがあれば、客観的な基準で対応できます。
- 組織運営の基盤確立
- 就業規則は、企業の理念や方針を従業員に示し、組織としてのルールを確立する上で役立ちます。従業員が安心して働ける環境は、生産性の向上にも繋がります。会社の「約束事」を定めることで、従業員は何を基準に行動すればよいかが明確になり、安心して業務に集中できます。これは、組織の一体感を醸成し、成長の土台となります。
- 従業員の安心感と信頼関係の構築
- 労働条件が明確に示されることで、従業員は安心して働くことができ、会社への信頼感も高まります 。「この会社はルールがしっかりしている」という印象は、従業員の定着率向上にも貢献します。
- 将来への備え
- 企業が成長し、従業員数が10人以上に達した際には、いずれにしても作成義務が生じます。早い段階で整備しておくことで、スムーズな移行が可能です 。義務化されてから慌てて作成するよりも、時間的・精神的な余裕があるうちに、自社の実情に合ったものを作り込む方が賢明です。
10人未満の企業にとって就業規則の作成は「任意」ですが、これは「法的リスクを自己責任で負うか、未然に投資して回避するか」という経営判断を意味します。義務がないから作らない、というのは短期的な視点に過ぎません。
作成しない場合のデメリット
逆に、従業員10人未満の企業が就業規則を作成しない場合、以下のようなデメリットが考えられます 。
- 労働トラブルの解決手段・根拠がなくなる
- 解雇や懲戒処分、労働条件に関するトラブルが発生しても、会社側の対応を裏付ける明確な根拠がありません。特に問題社員への対応が困難になります。
- 従業員の不安や不信感を招く
- ルールや労働条件が不明確なため、従業員が不安を感じたり、会社への不信感を抱いたりする可能性があります。
- 会社・職場環境の秩序維持が困難になる
- 服務規律が曖昧だと、職場の秩序が乱れる原因となり得ます。
- 助成金の申請ができない場合がある
- 多くの助成金で就業規則の整備が要件の一つとされています。
- 従業員が10人以上に増えた際に急務となる
- いずれ10人以上になることを見越して早めに準備しておかないと、その時点で慌てて対応することになります。
- 公平な人事評価が困難になる
- 評価基準が曖昧になり、従業員の不満を招きやすくなります。
小規模企業における就業規則の作成は、単なるリスクヘッジに留まらず、企業の成長フェーズにおける「組織文化の礎」を築く行為と捉えられます。創業期の理念や価値観を明文化し、初期メンバーと共有することで、将来の組織拡大時にもブレない軸を形成する助けとなります。
就業規則を作成する重要性
就業規則は、法的な作成義務を果たすためだけのものではありません。むしろ、会社と従業員双方にとって、様々なリスクから守り、より良い職場環境を築くための強力な「盾」となるのです。
共通認識の醸成と判断基準
労働時間、休日、賃金、服務規律などの基本的なルールを明文化することで、会社と従業員の間の認識のズレを防ぎ、無用な誤解や対立を回避します 。 「暗黙の了解」や「口約束」は、後々トラブルの元になりがちです。就業規則という形で客観的なルールを定めることで、双方が同じ基準で物事を判断できるようになります。 万が一、問題が発生した場合でも、就業規則があれば公平かつ客観的な判断基準として機能し、迅速な解決に繋がります 。感情論ではなく、定められたルールに基づいて対応することで、こじれを防ぎ、早期の事態収拾が期待できます。
解雇・懲戒・ハラスメント…「言った言わない」を防ぐ拠り所
特に深刻なトラブルに発展しやすい解雇、懲戒、ハラスメントといった問題において、就業規則は重要な役割を果たします。
- 解雇・懲戒処分の根拠
- 解雇事由や懲戒処分の種類・事由を就業規則に具体的に定めておくことで、これらの措置の正当性を担保し、不当解雇などの訴えリスクを低減します 。就業規則に明確な規定がない状態での解雇や懲戒処分は、法的に無効とされる可能性が高まります。どのような場合にどのような処分が下されるのかをあらかじめ示しておくことが極めて重要です。
- ハラスメント防止の明示
- パワハラ、セクハラなどのハラスメント行為を禁止し、その場合の対応や処分を明記することで、ハラスメントの抑止効果と、発生時の適切な対応に繋がります 。2022年4月から中小企業にもパワハラ防止措置が義務化されており、就業規則への規定は企業が講ずべき措置の一つです。ハラスメントの定義、禁止行為、相談窓口、懲戒処分などを定めることが求められます。
- 「言った言わない」の防止
- あらゆる労働条件や服務規律について、書面で明確なルールが存在することで、「そんなことは聞いていない」「言ったはずだ」といった水掛け論を防ぎます。口頭での指示や注意は、記憶違いや解釈の違いが生じやすいため、就業規則という形で文書化しておくことが、無用な紛争を避ける上で極めて有効です。
就業規則によるルールの明確化は、経営者や管理職の「判断のブレ」を防ぎ、属人的な労務管理から脱却するための第一歩です。これにより、公平性が担保され、従業員の納得感が高まります。特に解雇や懲戒といった従業員にとって不利益な措置に関する規定を整備しておくことは、「守りの労務管理」の中核です。これが不十分だと、一つのトラブルが企業存続に関わるような大きな訴訟リスクに発展する可能性すら秘めています。
従業員の公平感と納得感を高め、働きがいのある職場環境を醸成
就業規則は、従業員が安心して働き、その能力を最大限に発揮できるような職場環境作りにも貢献します。
労働条件の透明化がもたらすもの
労働条件を就業規則によって透明化することは、従業員の信頼とモチベーションに繋がります。
- 公平性の確保
- 賃金規定、昇進・昇格基準、休暇制度などが全従業員に明確に開示されることで、処遇の公平性に対する信頼が生まれます 。「誰がどういう基準で評価され、どのような条件で働いているのか」が不透明だと、従業員は不公平感を抱きやすくなります。就業規則によってこれらの情報がオープンになることで、透明性が確保されます。
- 予測可能性の向上
- 従業員は自身のキャリアパスや労働条件の将来的な見通しを立てやすくなり、安心して長期的に働く意欲に繋がります。例えば昇給ルールが明確であれば、従業員は自身の頑張りがどのように評価され、将来の給与に反映されるのかを予測できます。これはモチベーション維持に重要です。
- エンゲージメントの向上
- 会社が従業員に対して誠実に情報開示し、公正なルールで運営しようとする姿勢は、従業員の会社への信頼感や愛着(エンゲージメント)を高める効果が期待できます 。従業員は、自分が大切にされている、公正に扱われていると感じることで、より積極的に業務に取り組み、会社に貢献しようという意識が高まります。
労働条件の透明化は、従業員の「心理的安全性」を高める効果があります。ルールが明確で公平であれば、理不尽な扱いや不透明な評価を恐れる必要がなくなり、従業員は安心して能力を発揮できます。就業規則を通じた労働条件の透明化と公平性の確保は、「攻めの採用戦略」においても強力な武器となり得ます。特に優秀な人材ほど、公正な評価制度や透明性の高い労働条件を重視する傾向にあるため、これらを整備しアピールすることで、人材獲得競争で優位に立てる可能性があります。
企業の秩序維持と経営理念・ビジョンの社内浸透
就業規則は、企業内の秩序を維持し、経営者の想いを従業員に伝えるツールとしても機能します。
服務規律の明確化と社員の意識統一
従業員が守るべきルールを定めることで、企業全体の方向性を統一します。
- 行動規範の提示
- 従業員として遵守すべき服務規律(例:職務専念義務、秘密保持義務、ハラスメント禁止、SNS利用の注意点など)を具体的に定めることで、企業が求める社員像や行動規範を明確に示し、従業員の意識統一を図ります 。どのような行動が推奨され、どのような行動が問題となるのかを具体的に示すことで、従業員は自律的に行動しやすくなります。
- 企業文化の醸成
- 服務規律や行動指針を通じて、企業が大切にする価値観や文化を従業員に浸透させることができます。例えば、顧客第一主義を掲げる企業であれば、それを体現するための具体的な行動規範を服務規律に盛り込むことで、日常業務の中で従業員の意識に働きかけることができます。
- 経営理念・行動指針の明文化
- 就業規則の前文や任意記載事項として、経営理念や行動指針を記載することで、全従業員への周知徹底と共感の促進を図ることができます 。就業規則は全従業員が目にする可能性のある重要な文書です。ここに経営トップの想いや会社の目指す姿を記すことで、日々の業務の拠り所となり、組織の一体感を高める効果が期待できます。
就業規則に経営理念や行動指針を盛り込むことは、トップダウンのメッセージを組織の末端まで一貫して届けるための有効なチャネルとなります。特に組織が拡大し、経営者と従業員の距離が遠くなるほど、このような明文化されたメッセージの重要性が増します。経営理念が浸透し、それに基づいた服務規律が守られる職場は、従業員の自律的な問題解決能力や、変化への対応力を高める可能性があります。理念や価値観が共有されていれば、従業員は細かな指示がなくとも「会社としてどうあるべきか」を判断軸に行動しやすくなるためです。これは、予測不可能な時代における企業のレジリエンス(回復力・適応力)強化に繋がります。
助成金申請や許認可で就業規則が必須となるケース
就業規則の整備は、法令遵守だけでなく、経営上のメリットに繋がることもあります。
助成金申請の要件
様々な雇用関連の助成金(例:キャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金など)の申請において、就業規則の整備や特定の規定の導入が支給要件となっている場合があります 。 例えば、正社員転換制度を設けてキャリアアップ助成金を申請する場合、その制度が就業規則に明記されている必要があります。また、年次有給休暇の計画的付与制度を導入して働き方改革推進支援助成金を受ける際も、就業規則への規定が必要です 。
許認可事業における要件
一部の業種や事業(例:労働者派遣事業、有料職業紹介事業など)では、許認可の取得や更新の際に、法令に適合した就業規則の整備が求められることがあります。 これらの事業では、適正な労務管理が行われていることが許認可の前提となるため、就業規則はその証明の一つとなります。
社会的評価
助成金の受給や適正な許認可の維持は、企業の社会的評価や信用度を高めることにも繋がります。国の制度を活用したり、法令を遵守して事業運営を行っていることは、対外的にクリーンな企業イメージを与える要素となります。
就業規則の整備は、「守りの労務管理」であると同時に、助成金活用という「攻めの経営戦略」にも繋がる両面性を持っています。法令遵守コストと捉えるだけでなく、経営資源獲得の機会と見る視点が重要です。助成金制度の多くは、国が推進する政策(例:非正規雇用の待遇改善、働き方改革、生産性向上など)へのインセンティブとして設計されています。就業規則をこれらの政策に合致するように見直すことは、単に助成金を得るだけでなく、社会の要請に応じた企業体質への変革を促し、結果として企業の持続可能性や競争力を高めることに繋がります。
就業規則記載すべき内容とは?
就業規則に記載すべき内容は、労働基準法第89条により定められています 。大きく分けて「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」の3つがあります。これらを正しく理解し、網羅することが重要です。
表1: 就業規則の記載事項概要
区分 | 概要 | 代表例 |
---|---|---|
絶対的必要記載事項 | 必ず記載しなければならない事項 | 始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金(決定・計算・支払方法、昇給)、退職(解雇事由含む) |
相対的必要記載事項 | 会社として制度を設ける場合に記載しなければならない事項 | 退職手当、賞与、安全衛生、職業訓練、表彰・制裁など |
任意記載事項 | 会社が任意に記載できる事項 | 経営理念、服務規律の詳細、副業規定、ハラスメント防止規定など |
【絶対的必要記載事項】これだけは必ず盛り込むべき項目とは
これらは、いかなる企業であっても就業規則に必ず記載しなければならない、労働条件の根幹をなす事項です 。
始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇に関するルール
- 内容
- 始業・終業の時刻、休憩時間の長さ・与え方、法定休日(週1日または4週4日)と会社独自の休日、年次有給休暇の付与日数・取得手続き、その他の休暇(慶弔休暇など会社が定めるもの)について具体的に記載します 。労働時間管理は労務管理の基本中の基本です。これらの事項が曖昧だと、残業代未払いや休日取得に関するトラブルの原因となります。
- ポイント
- シフト制勤務や変形労働時間制、フレックスタイム制などを導入している場合は、その運用ルールも詳細に定める必要があります 。
賃金の決定、計算・支払方法、昇給に関するルール
- 内容
- 基本給、諸手当(役職手当、通勤手当など)の種類と計算方法、賃金の支払方法(銀行振込など)、賃金の締切日と支払日、時間外・休日・深夜労働の割増賃金率、昇給の時期や決定方法などを記載します 。賃金は従業員の生活に直結する最も重要な労働条件の一つです。計算方法や支払ルールが明確でないと、従業員の不信感を招き、紛争の原因となりやすい項目です。
- 注意点
- 賞与や退職金は、制度として設ける場合は相対的必要記載事項となります 。
退職に関するルール(解雇事由を含む)
- 内容
- 自己都合退職の手続き(退職願の提出時期など)、定年制度(定年年齢、再雇用制度など)、そして解雇事由を具体的に記載します 。退職、特に解雇に関するルールは、労使トラブルが最も発生しやすい領域の一つです。解雇事由が抽象的であったり、記載がなかったりすると、会社が行った解雇の正当性が問われることになります。
- 解雇事由の重要性
- 普通解雇、懲戒解雇、整理解雇など、どのような場合に解雇があり得るのかを具体的に列挙することが、不当解雇トラブルを防ぐ上で非常に重要です 。
絶対的必要記載事項の網羅は、単に法的な義務を果たすだけでなく、企業と従業員間の「契約の基本条件」を明確にする行為です。これが曖昧だと、労働契約そのものの安定性が揺らぎます。これらの基本事項を就業規則に「正しく」記載することは、将来の法改正や労働市場の変化に対応するための「土台」作りにもなります。例えば、働き方改革関連法による年休取得義務化 などに対応する場合も、まず基本的な休暇制度が就業規則に適切に定められていることが前提となります。
【相対的必要記載事項】会社として制度を設けるなら記載が必要な項目
これらは、会社として該当する制度を設ける場合に、就業規則への記載が必要となる事項です 。制度がない場合は記載義務はありませんが、誤解を避けるために「退職金制度はない」と明記することも考えられます 。
退職手当、賞与、最低賃金額、安全衛生、職業訓練、表彰・制裁など
- 退職手当: 適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払方法、支払時期などを定めます 。
- 臨時の賃金等(賞与など): 支給対象者、支給基準、支給時期、計算方法などを定めます 。
- 最低賃金額: 地域別最低賃金とは別に、企業独自の最低賃金額を定める場合に記載します 。
- 食費、作業用品等の負担: 従業員に食費や作業用品の費用負担をさせる場合に、その内容を定めます 。
- 安全衛生: 従業員が遵守すべき安全衛生に関する規律や、健康診断の実施、災害時の対応などを定めます 。
- 職業訓練: 従業員に対する教育訓練制度を設ける場合に、その内容、期間、費用負担などを定めます 。
- 災害補償、業務外の傷病扶助: 法定外の補償や扶助制度を設ける場合に記載します 。
- 表彰・制裁: 表彰の種類・基準や、制裁(懲戒処分)の種類・事由・手続きを定めます。懲戒処分については、その種類(けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇など)と、それぞれに該当する具体的な行為を明記することが極めて重要です 。
- その他全労働者に適用される事項: 休職制度、福利厚生制度など、上記以外で全労働者に適用されるルールがあれば記載します 。
相対的必要記載事項は、企業の「独自性」や「従業員への配慮」を具体的に示す項目群です。これらの制度を設けるか否か、設ける場合にどのような内容にするかは、企業の経営方針や文化が反映される部分と言えます。これらの事項を就業規則に明記することは、従業員の期待権を保護し、無用な紛争を避ける意味合いがあります。例えば、賞与について慣習的に支給されていても、就業規則に規定がなければ、業績悪化時に不支給とした場合に「約束が違う」とトラブルになる可能性があります。規定しておくことで、支給条件や減額・不支給の可能性をあらかじめ示せます。
【任意記載事項】会社独自のルールで個性を反映!より良い職場環境のために
法令で記載が義務付けられているわけではありませんが、会社が任意で定めることができる事項です。これらを活用することで、より自社の実情に合った、きめ細かいルール作りが可能です 。
経営理念・行動指針、服務規律の詳細、副業・兼業規定、SNS利用ガイドラインなど
- 経営理念・行動指針
- 会社の基本的な考え方や目指す姿を明示し、従業員の意識統一や企業文化の醸成に役立てます 。就業規則の冒頭などに記載することで、全従業員に会社の根幹となる価値観を伝えることができます。
- 服務規律の詳細
- 絶対的・相対的必要記載事項でカバーしきれない、より具体的な職場でのルール(例:服装規定、私物の持ち込み制限、情報セキュリティに関する規定など)を定めます 。職場の実態に合わせて、円滑な業務運営や秩序維持のために必要なルールを具体的に定めることができます。
- 副業・兼業規定
- 近年関心が高まっている副業・兼業について、許可制にするか、届出制にするか、あるいは一定の条件下で認めるかなど、会社のスタンスを明確にします 。副業・兼業を認める場合でも、本業への支障、情報漏洩、競業避止などの観点から、一定のルールを設けることが一般的です。
- SNS利用ガイドライン
- 従業員の私的なSNS利用が会社に悪影響を及ぼすことを防ぐため、注意すべき点や禁止事項などを定めます 。不適切な投稿による企業イメージの毀損や情報漏洩リスクに対応するために重要です。
- テレワーク規定
- テレワークを導入する場合、労働時間管理、費用負担、情報セキュリティなどに関するルールを定めます 。テレワークはオフィス勤務と異なる課題があるため、専用の規定を設けることが望ましいです。
近年注目される記載事項:ハラスメント防止規定、働き方改革関連法の対応
- ハラスメント防止規定: パワハラ、セクハラ、マタハラなどの定義、禁止行為、相談窓口の設置、行為者への懲戒処分などを具体的に定めます。これは企業の法的義務(パワハラ防止措置義務など)を果たす上でも重要です 。職場におけるハラスメントは大きな社会問題であり、企業には防止措置を講じる義務があります。就業規則への規定はその中核となる取り組みです。
- 働き方改革関連法への対応:
- 年次有給休暇の時季指定義務
- 年10日以上の年休が付与される労働者に対し、年5日については使用者が時季を指定して取得させることが義務化されたため、その運用ルールを定めます 。
- 時間外労働の上限規制
- 36協定の範囲内であっても、時間外労働の上限(原則月45時間・年360時間など)が法律で定められたため、これを遵守するための社内ルールや意識付けを記載することが考えられます 。
- 同一労働同一賃金
- 正社員と非正規雇用労働者(パート、契約社員など)との間の不合理な待遇差を解消するための規定(賃金体系、福利厚生、教育訓練など)を整備します 。 働き方改革関連法は多岐にわたり、就業規則への反映が必須となる項目が多く含まれています。最新の法改正に常に対応していく必要があります。
- 年次有給休暇の時季指定義務
任意記載事項は、企業が「どのような会社でありたいか」「従業員に何を期待するか」を具体的に表現するキャンバスです。法定事項だけではカバーできない、その企業ならではの価値観や運営方針を反映させることで、就業規則を単なるルールブックから「企業文化の表明書」へと昇華させることができます。任意記載事項を戦略的に活用することは、従業員のエンゲージメント向上や、企業のブランドイメージ構築に貢献します。例えば、先進的な育児支援制度や、従業員の学びを積極的に支援する研修制度などを明記すれば、従業員満足度が高まり、対外的にも「働きやすい企業」「人を大切にする企業」というポジティブなイメージを発信できます。これは、採用競争力の強化や企業価値の向上に繋がります。
就業規則作成から届出までの全ステップ!具体的な進め方と注意点
就業規則の作成は、単に条文を作るだけでなく、法に基づいた適切な手続きを踏むことが不可欠です。ここでは、作成準備から従業員への周知徹底までの具体的なステップと、各段階での注意点を解説します。
表2: 就業規則作成から届出・周知までのステップ概要
ステップ | 内容 | 主なポイント |
---|---|---|
1 | 現状分析と骨子作成 | 既存規程確認、労働時間制度検討、企業理念・方針確認、従業員分類、独自ルールの洗い出し |
2 | 就業規則案の作成 | 法令適合性チェック、会社の実情に合わせたカスタマイズ、テンプレート利用の注意点 |
3 | 労働者代表からの意見聴取 | 適切な代表者選任、意見聴取の実施、意見書の作成・署名(記名押印) |
4 | 労働基準監督署への届出 | 必要書類(就業規則届、意見書、就業規則本文2部)の準備、管轄労基署への提出 |
5 | 従業員への周知徹底 | 掲示、書面交付、イントラネット掲載など、従業員がいつでも閲覧可能な状態にする |
ステップ1:現状分析と骨子作成~誰のための、どんな規則にするか~
就業規則作成の第一歩は、自社の現状を正確に把握し、どのような規則が必要かを明確にすることです。
- 企業理念・経営方針の確認
- 就業規則に反映させたい会社の基本的な考え方やビジョンを再確認します。
- 既存規程の確認
- 現在、社内に存在する雇用契約書、労働条件通知書、個別の規程(賃金規程、育児休業規程など)の内容を確認し、問題点や就業規則に盛り込むべき事項を整理します。
- 従業員の分類定義
- 正社員、契約社員、パートタイマーなど、異なる労働条件の従業員がいる場合、それぞれに適用するルールをどうするか検討します。必要に応じて、雇用形態別の就業規則を作成することも考慮します。
- 労働条件の現状把握と検討
- 労働時間、休日、賃金体系など、現在の労働条件の実態を把握し、法的な問題がないか、改善すべき点はないか検討します。導入したい労働時間制度(変形労働時間制、フレックスタイム制など)があれば具体化します。
- 盛り込みたい独自ルールの洗い出し
- 企業独自の理念や文化、業界特有の事情などを踏まえ、就業規則に盛り込みたい独自のルールや制度(例:福利厚生、表彰制度、副業規定など)をリストアップします。
この初期段階での現状分析と骨子作成の精度が、最終的に出来上がる就業規則の実効性と適合性を大きく左右します。ここでの検討が不十分だと、実態に合わない、あるいは法的に問題のある就業規則になってしまう可能性があります。現状分析のプロセスは、単に就業規則作成のためだけでなく、自社の労務管理全般における課題を可視化し、改善のきっかけを得る貴重な機会となり得ます。普段は見過ごされがちな問題点(例:曖昧な労働時間管理、不公平感のある評価制度など)が浮き彫りになることがあります。
ステップ2:就業規則案の作成~テンプレート利用の注意点とカスタマイズ~
骨子が固まったら、具体的な条文案の作成に入ります。
- 条文の作成
- ステップ1でまとめた骨子に基づき、具体的な条文案を作成していきます。厚生労働省のモデル就業規則や解説書、専門家(社労士)のアドバイスなどを参考にします 。
- 法令適合性のチェック
- 作成した条文案が、労働基準法をはじめとする関連法令に違反していないか、最新の法改正に対応しているかを徹底的に確認します。法令に違反する内容は、たとえ就業規則に定めても無効となります。
- 会社の実情に合わせたカスタマイズ:
- テンプレートの限界: 無料のテンプレートや他社の就業規則をそのまま流用するのは非常に危険です 。これらはあくまで雛形であり、自社の業種、規模、企業文化、従業員の構成、実態に合わない内容が含まれていたり、必要な規定が漏れていたりする可能性が高いです。
- 用語の統一と平易な表現
- 就業規則内で使用する用語(例:「従業員」「社員」など)を統一し、従業員にとって分かりやすい平易な言葉で記述するよう心がけます。
ステップ3:労働者代表からの意見聴取~正しい手順と意見書の取り扱い~
就業規則案が完成したら、法律で定められた意見聴取の手続きを行います。
- 意見聴取の法的義務
- 就業規則を作成・変更する際には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)の意見を聴かなければなりません (労働基準法第90条) 。これは従業員の知らない間に一方的に不利益な労働条件が定められることを防ぐための重要な手続きです。意見を「聴く」義務であり、必ずしも「同意」を得る必要はありません 。しかし、真摯に意見を聴き、可能な範囲で反映させる姿勢が望ましいです。
- 意見聴取の対象者選定 (過半数代表者の選任)
- 選任要件: 管理監督者でないこと、会社の指名ではなく民主的な手続き(投票、挙手など)で選出された者であることなど、適正な選任が必要です 。
- 注意点: 会社が一方的に指名したり、管理職が代表になったりすることは認められません 。選出経緯の記録を残しておくことが望ましいです 。
- 意見書の作成と取り扱い:
- 聴取した意見は、「意見書」として書面にまとめ、代表者の署名または記名押印をもらいます 。
- 意見書には、意見聴取日、意見の内容(「異議なし」「〇〇について反対」など具体的な意見)、労働者代表の氏名・職名、選出方法などを記載します 。
- この意見書は、就業規則を労働基準監督署へ届け出る際に添付する必要があります 。
- 反対意見が出た場合でも、その意見を無視せず、可能な範囲で協議し、その経緯を記録しておくことが望ましいです 。
労働者代表からの意見聴取は、単なる形式的な手続きではなく、労使間のコミュニケーションを促進し、就業規則への従業員の納得感を高めるための重要なプロセスです。このプロセスを丁寧に行うことで、就業規則のスムーズな導入と運用に繋がります。意見聴取プロセスを適切に実施することは、企業の透明性や公正性を示すことになり、従業員エンゲージメントの向上に寄与します。従業員が「自分たちの意見が経営に反映される可能性がある」と感じることは、会社への信頼感を醸成し、より建設的な労使関係を築く上で効果的です。
ステップ4:労働基準監督署への届出~必要書類と提出方法~
意見聴取が完了したら、管轄の労働基準監督署へ就業規則を届け出ます。
大項目 | 小項目 | 詳細 |
---|---|---|
届出義務 | ー | 作成または変更した就業規則は、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります 。 |
必要書類 | 就業規則(変更)届 | 労働基準監督署のウェブサイトなどから様式をダウンロードできます 。事業場の名称・所在地、代表者名などを記載します。 |
意見書 | ステップ3で作成した労働者代表の意見書。 | |
就業規則本文 | 作成・変更した就業規則。 | |
提出方法 | ー | 管轄の労働基準監督署の窓口に持参するか、郵送で提出します 。近年では電子申請も可能になっています 。 |
一括届出制度の活用 | ー | 複数の事業場があり、本社の就業規則と同一内容を適用する場合、一定の要件下で本社管轄の労働基準監督署に一括して届け出ることができます。これにより、各事業場ごとに届出を行う手間を省けますが、各事業場での意見聴取は必要です。 |

上記書類は各2部(提出用と控え用)用意しましょう
届出プロセスは、行政による就業規則の形式的な受理手続きであり、これをもって就業規則の内容が全て法的に問題ないと保証されるわけではありません。しかし、この手続きを怠ると明確な法令違反となり、罰則の対象となります。電子申請の活用 は、行政手続きのDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環であり、企業の事務負担軽減に貢献します。これにより、人事担当者はより戦略的な業務に時間を割くことが可能になります。また、届出記録が電子的に残ることで、管理の効率化も期待できます。
ステップ5:従業員への周知徹底~「作って終わり」にしないために~
就業規則の作成・届出が完了しても、それで終わりではありません。最も重要なステップの一つが、従業員への周知です。
- 周知義務の法的根拠
- 作成・届け出た就業規則は、従業員に周知しなければなりません (労働基準法第106条) 。周知されていない就業規則は、原則として効力が認められません 。いくら立派な就業規則を作成し、届け出ても、従業員がその内容を知らなければ意味がありません。周知は就業規則を有効に機能させるための絶対条件です。
- 具体的な周知方法
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示または備え付ける: 休憩室や食堂など、従業員がいつでも自由に閲覧できる場所に置きます。
- 書面を労働者に交付する: 各従業員に就業規則のコピーを配布します。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する: 社内イントラネットや共有フォルダにデータを保存し、従業員が各自のPCからいつでもアクセスできるようにします。
- 周知のポイント
- 全従業員が対象: 正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなど、就業規則が適用される全ての従業員に周知する必要があります。
- 変更時も同様に周知: 就業規則を変更した場合も、変更内容を速やかに周知しなければなりません 。
- 口頭での説明だけでは不十分: 説明会を開くことは理解を深める上で有効ですが、それだけでは周知義務を果たしたことにはならず、上記いずれかの方法で物理的に閲覧可能な状態にする必要があります 。
- 入社時の説明: 新たに入社する従業員には、労働契約締結時までに就業規則の内容を説明し、周知することが望ましいです 。
周知義務の履行は、就業規則の「法的効力」を確保するための最終かつ最も重要なステップです。これを怠ると、それまでの作成・届出の努力が水泡に帰す可能性があります。効果的な周知活動は、単に法的義務を果たすだけでなく、従業員の就業規則への理解を深め、ルール遵守の意識を高める効果があります。説明会やQ&Aセッション を組み合わせることで、就業規則を「自分たちのルール」として受け入れやすくなり、形骸化を防ぐことができます。
就業規則を作成・更新しないリスクとは?
就業規則を作成しない、あるいは作成しても長年見直しをせず古いまま放置しておくことは、企業にとって多くの深刻なリスクを招きます。これらのリスクは、罰金といった直接的なものだけでなく、企業の信用や従業員の士気、さらには事業継続そのものに関わる可能性も秘めています。
リスク1:予期せぬ労使紛争勃発!会社が不利になるケースとは
就業規則がない、または内容が陳腐化している場合、労使間の些細な認識の違いが大きな紛争へと発展するリスクが高まります。
- ルール不在による混乱
- 労働条件や服務規律に関する明確なルールがないため、従業員の解釈や行動がバラバラになり、些細なことから紛争に発展しやすくなります 。例えば、遅刻の取り扱いや休暇の申請方法などが曖昧だと、従業員間で不公平感が生じたり、会社側の対応に一貫性がなくなったりして、不満が噴出する可能性があります。
- 問題社員への対応困難
- 就業規則に懲戒事由や手続きが定められていないと、問題行動を起こす社員に対して有効な懲戒処分を下すことが難しく、会社が不利な立場に立たされます 。懲戒処分は従業員にとって重大な不利益処分であるため、その根拠となる規定が就業規則に明確に定められている必要があります。
- 法改正への未対応
- 労働関連法規は頻繁に改正されます。古い就業規則のままでは、最新の法律に適合しておらず、その部分は無効とみなされる可能性があります 。これにより、法改正によって新たに生じた企業の義務を果たしていない状態になり、トラブル時に会社が不利になります。例えば、働き方改革関連法で導入された年5日の年休取得義務化などに対応していない古い就業規則では、従業員との間で年休取得に関する紛争が生じた場合に、会社側の主張が認められにくくなります。
就業規則の不備(未作成・陳腐化)は、労使間の「信頼のインフラ」が欠如している状態を意味します。信頼の基盤がなければ、些細な誤解や意見の相違が容易に深刻な対立へとエスカレートします。法改正への未対応が引き起こすリスクは、単に「その条項が無効になる」というレベルに留まらず、企業全体のコンプライアンス体制の脆弱性を示唆し、経営陣の法的リスク認識の甘さを露呈することになります。これは、対外的な信用失墜だけでなく、従業員からの信頼をも損なう可能性があります。
リスク2:従業員の不信感増大と職場のモラル低下
就業規則の不備は、従業員の会社に対する信頼を損ない、職場全体の士気を低下させる原因となります。
- 不公平感の蔓延
- ルールが曖昧だと、上司の個人的な判断や気分で処遇が決まっているのではないかという疑念が生じやすく、従業員間に不公平感が広がります 。例えば、同じようなミスをしても、ある人は厳しく叱責され、別の人は見逃されるといった状況が続けば、従業員は会社や上司を信頼できなくなります。
- モチベーションの低下
- 公平な評価や処遇が期待できない職場では、従業員の働く意欲(モチベーション)が低下し、生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります 。「頑張っても正当に評価されない」「ルールがコロコロ変わる」といった環境では、従業員は努力する意欲を失いがちです。
- 人材の流出
- 優秀な人材ほど、公正で透明性の高い職場環境を求める傾向にあります。不信感や不満が募れば、貴重な人材が他社へ流出してしまうリスクが高まります。魅力的な職場環境を提供できなければ、人材獲得競争で不利になるだけでなく、既存の優秀な社員の引き留めも難しくなります。
従業員の不信感やモラルの低下は、目に見えにくいコストとして企業経営に悪影響を及ぼします。生産性の低下、離職に伴う採用・教育コストの増加、社内の雰囲気悪化など、じわじわと企業体力を蝕んでいきます。就業規則の不備が引き起こす職場のモラル低下は、企業のイノベーション能力や変化対応力を削ぐ可能性があります。従業員が会社を信頼せず、心理的安全性が低い状態では、新しいアイデアを提案したり、積極的に業務改善に取り組んだりする意欲が生まれにくいためです。
リスク3:労働基準監督署からの是正勧告や行政指導、罰金の可能性
法令で定められた義務を怠れば、行政からの指導や罰則の対象となるのは当然です。
- 法的義務違反
- 従業員10人以上の事業場で就業規則を作成・届出・周知していない場合、労働基準法違反となり、労働基準監督署から是正勧告や行政指導を受ける可能性があります 。労働基準監督署は、定期的な調査(臨検監督)や従業員からの申告などにより、企業の労務管理状況をチェックしています。
- 罰則の適用
- 指導に従わない、あるいは違反が悪質と判断された場合には、30万円以下の罰金が科されることがあります 。これは、就業規則の作成義務、届出義務、周知義務のいずれに違反した場合でも対象となります。
労働基準監督署の調査や指導は、企業にとって労務管理体制を見直す強制的な機会となり得ます。これをネガティブに捉えるだけでなく、専門的な指摘を受けて改善するチャンスと捉えることもできます。是正勧告や罰金といった事態は、企業のレピュテーションリスクに直結します。特に近年はSNSなどで情報が拡散しやすいため、一度「法令違反企業」というイメージが付くと、その回復には多大な時間と労力を要します。
リスク4:採用活動への悪影響と企業の社会的信用の低下
就業規則の不備は、社内だけでなく、社外からの評価にも深刻な影響を与えます。
- 求職者からの敬遠
- 現代の求職者、特に若年層は、企業のコンプライアンス意識や働きやすさを重視します。就業規則が未整備であったり、内容が不十分であったりすると、「従業員を大切にしない会社」「ブラック企業かもしれない」という印象を与え、採用競争で不利になります。企業のウェブサイトや採用情報で就業規則に関する情報が乏しい場合、求職者は不安を感じる可能性があります。
- 社会的評価の低下
- 法令遵守は企業が社会の一員として果たすべき基本的な責任です。就業規則の不備は、取引先、金融機関、地域社会などからの評価を低下させ、事業活動全体に影響を及ぼす可能性があります 。特にBtoB取引や融資審査などにおいて、企業のコンプライアンス体制は重要な評価項目の一つです。
- 企業ブランドの毀損
- 労務トラブルが頻発したり、行政指導を受けたりする事態は、企業ブランドイメージを大きく傷つけます。一度失った信用を回復するのは容易ではありません。
採用市場において、就業規則の整備状況は「見えない求人広告」としての役割を果たします。整備されていればプラスのメッセージを、不備があればマイナスのメッセージを、求職者に対して無言のうちに発信しています。就業規則の不備が招く社会的信用の低下は、資金調達の困難化や、ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)の観点からの評価低下にも繋がり、企業の持続的な成長を阻害する要因となり得ます。
就業規則の作成・見直しを社労士に依頼するメリットと費用感
就業規則の作成や見直しは、自社で行うことも不可能ではありませんが、労働法の専門家である社会保険労務士(社労士)に依頼することで、多くのメリットが得られます。専門家の知見を活用することで、法的に万全なだけでなく、企業の実情に即した「生きた就業規則」を作成することが可能になります。
メリット1:最新法改正への完全準拠と法的リスクの最小化
労働関連法規は頻繁に改正されるため、常に最新の情報をキャッチアップし、就業規則に反映させることは容易ではありません。
- 専門知識の活用
- 社労士は労働基準法をはじめとする労働関連法規の専門家であり、最新の法改正情報にも精通しています 。頻繁に行われる法改正の内容を正確に把握し、自社の就業規則に適切に反映させるのは、専門家でなければ困難な作業です。
- 法令違反リスクの低減
- 社労士が作成に関与することで、就業規則が法令に違反するリスクを大幅に低減し、法的なトラブルを未然に防ぐことができます 。知らないうちに法令違反の条項を設けてしまうといった事態を避けることができます。
- 判例・行政解釈への対応
- 最新の判例や行政解釈を踏まえた、より実務的でリスクの少ない就業規則を作成できます 。法律の条文だけでなく、実際の運用や裁判例を考慮したアドバイスが期待できます。
社労士への依頼は、「転ばぬ先の杖」としての保険的機能も果たします。法改正への対応漏れや不適切な条項による将来的な紛争リスクを、専門家の知見によって事前にヘッジすることができます。最新法改正への迅速かつ的確な対応は、企業のコンプライアンス体制の信頼性を高め、従業員や取引先からの評価向上にも繋がります。これは、単にリスクを回避するだけでなく、企業の社会的責任を果たす姿勢を示すことにもなります。
メリット2:企業の実情とビジョンを反映した「攻めと守り」の規則作成
社労士は、単に法律に適合した就業規則を作成するだけでなく、企業の特性や目指す方向性を踏まえた、より戦略的な規則作りをサポートします。
- オーダーメイドの就業規則
- 社労士は、企業の業種、規模、企業文化、経営者のビジョン、従業員の状況などを丁寧にヒアリングし、会社の実情に最適化されたオーダーメイドの就業規則を作成します 。テンプレートの丸写しでは対応できない、その会社ならではの課題やニーズに応じた規則作りが可能です。
- 「攻め」としての就業規則の活用
- 就業規則を単なる義務遂行やリスク回避(守り)のためだけでなく、従業員のモチベーション向上、生産性向上、人材育成、企業文化の醸成といった「攻め」のツールとして活用するための戦略的なアドバイスが期待できます 。例えば、独自の表彰制度やキャリアパス制度、働きがいを高めるための柔軟な勤務制度などを盛り込むことで、従業員のエンゲージメントを高め、企業の成長を後押しする就業規則を目指せます。
テンプレート利用のリスクとオーダーメイドの価値
無料テンプレートは手軽に入手できますが、その利用には注意が必要です。無料テンプレートは、自社の実情に合わずトラブルの原因になったり 、最新の法改正に対応していなかったりするリスクがあります 。 社労士によるオーダーメイド作成では、これらのリスクを回避し、法的に問題なく、かつ会社の実情に即した「生きた」就業規則を作成できます 。作成過程で自社の労務管理上の問題点が明らかになることもあります 。
社労士による「企業の実情とビジョンを反映した」就業規則作成は、経営戦略と人事戦略を連携させるための具体的な手段となり得ます。経営者が目指す会社の姿と、それを支える人材マネジメントのあり方を、就業規則という形で明文化します。「攻めと守り」を両立させた就業規則は、従業員のウェルビーイング(心身ともに健康で幸福な状態)と企業の持続的成長を同時に追求するための基盤となります。従業員が安心して能力を発揮でき、公正に評価される環境は、企業の生産性向上やイノベーション創出に不可欠であり、就業規則はその土台を支えます。
メリット3:煩雑な意見聴取・届出プロセスまで一括サポート
就業規則の作成には、条文作成だけでなく、法に基づいた一連の手続きが必要です。
- 手続きの代行・サポート
- 労働者代表の適切な選任方法のアドバイス、意見聴取の進め方、意見書の作成、労働基準監督署への届出書類の作成・提出代行など、煩雑で専門知識が必要な一連の手続きをサポートまたは代行してもらえます 。これらの手続きは法的な要件が細かく、不備があるとやり直しになることもあります。専門家である社労士に任せることで、スムーズかつ確実に進めることができます。
- 時間と労力の削減
- 経営者や人事担当者は、これらの手続きに費やす時間と労力を大幅に削減し、本来の業務に集中できます 。特に中小企業では、人事専任の担当者がいないことも多く、社労士のサポートは大きな助けとなります。
- 反対意見への対応
- 労働者代表から反対意見が出た場合など、デリケートな状況における交渉や調整についてのアドバイスも期待できます 。
手続きの代行・サポートは、単なる事務作業のアウトソーシングではなく、法的に有効な就業規則を確実に成立させるための「品質保証」の意味合いを持ちます。手続きの不備による無効リスクを回避できます。社労士が意見聴取プロセスに関与することは、労使間のコミュニケーションを円滑にし、より建設的な合意形成を促進する可能性があります。中立的な専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、客観的な議論がしやすくなる場合があります。
メリット4:助成金活用も視野に入れた戦略的アドバイス
就業規則の整備は、様々な助成金の申請要件となっていることが多く、社労士はその活用についてもサポートできます。
- 助成金情報の提供と申請サポート
- 社労士は各種雇用関連助成金に関する最新情報に精通しており、企業の状況に合わせて活用可能な助成金の提案や、申請手続きのサポートを行います 。
- 受給可能性の向上
- 助成金の支給条件を的確に理解し、企業がその条件を満たせるよう、就業規則の整備を含めた具体的なアドバイスを行うことで、助成金の受給可能性を高めることができます 。
- 法令遵守と一体となった活用
- 助成金の申請プロセスにおいては、適切な労務管理や法令遵守が前提となります。社労士は、これらの観点からも企業をサポートし、不正受給のリスクを回避しつつ、助成金を有効活用できるよう支援します 。
社労士に助成金申請を依頼することで、経営者は本業に集中でき、結果として企業全体の生産性向上にも繋がります 。助成金の活用は企業の成長や従業員の待遇改善に大きく貢献しますが、適切な準備と計画が不可欠です。社労士の専門性を活用することで、これらの機会を最大限に活かすことができます。
社労士への依頼費用
社労士に就業規則の作成や変更を依頼する場合の費用は、依頼内容や企業の規模、社労士事務所の方針によって異なります。
- 新規作成の費用相場
- 一般的に、就業規則の新規作成を社労士に依頼する場合、15万円~30万円程度が相場とされています 。規定の数や内容の複雑さ、従業員数などによって変動し、オーダーメイドで詳細なコンサルティングを含む場合は50万円前後になることもあります 。よりシンプルな内容であれば、数万円から対応している事務所もあります 。
- 一部変更の費用相場
- 既存の就業規則の一部(例:賃金規程、育児介護休業規程のみ)を変更する場合の費用相場は、3万円~15万円程度です 。変更範囲や難易度によって価格は大きく変動します。
- アドバイスや内容確認の費用相場
- 就業規則作成に関するアドバイスや、自社で作成した案のリーガルチェックを依頼する場合の費用相場は、5万円~20万円程度です 。
- サービス範囲と費用の関係
- 費用は、単に就業規則の条文を作成するだけでなく、現状分析、ヒアリング、複数回の打ち合わせ、関連規程(賃金規程、育児介護休業規程など)の作成、労働者代表からの意見聴取のサポート、労働基準監督署への届出代行、従業員への説明会の実施など、どこまでのサービスを含むかによって大きく変わります。複数の社労士事務所から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが重要です。
費用だけでなく、社労士の実績、専門分野、コミュニケーションの取りやすさなども考慮し、自社に合った信頼できるパートナーを選ぶことが、満足のいく就業規則作成に繋がります。
よくある質問
Q. 就業規則の作成義務は何人から発生しますか?
A. 常時10人以上の労働者を使用する事業場ごとに、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています 。この「労働者」には、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなども含まれます 。
Q. 就業規則を作成しないと、どのような罰則がありますか?
A. 就業規則の作成義務、届出義務、または周知義務に違反した場合、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります 。また、労働基準監督署から是正勧告を受けることもあります 。
Q. 従業員が10人未満の会社でも就業規則を作成するメリットはありますか?
A. はい、多くのメリットがあります。法律上の作成義務はありませんが、就業規則を作成することで、労使トラブルを未然に防ぎ、職場のルールを明確化し、従業員の安心感を高めることができます 。また、助成金の申請要件となる場合もあります 。将来的に従業員が増えた際にもスムーズに対応できます。
Q. 就業規則の変更手続きはどのように行いますか?
A. 就業規則を変更する場合も、新規作成時とほぼ同様の手続きが必要です。まず変更案を作成し、労働者代表の意見を聴取して意見書をもらいます。その後、変更後の就業規則、意見書、就業規則変更届を所轄の労働基準監督署に届け出ます 。そして最も重要なのは、変更内容を従業員に周知することです 。
Q. パートタイマーやアルバイト専用の就業規則は必要ですか?
A. 必ずしも専用の就業規則が必要というわけではありませんが、正社員と労働時間、賃金、休暇などの労働条件が異なる場合は、それらの違いを明確にする必要があります。一つの就業規則の中でパートタイマー等に関する特則を設ける方法や、別途パートタイマー就業規則を作成する方法があります 。重要なのは、適用されるルールが明確になっていることです。
まとめ
就業規則の作成は、常時10人以上の労働者を使用する企業にとっては法律上の義務です。しかし、その重要性は単に義務を果たすという点に留まりません。就業規則は、会社のルールを明確にし、従業員が安心して働ける公平な職場環境を整備し、無用な労使トラブルを未然に防ぐための、企業経営における不可欠なツールと言えます。
労働条件の明確化、服務規律の確立、ハラスメント防止措置の明示、そして経営理念の浸透など、就業規則が果たす役割は多岐にわたります。また、法改正への適切な対応や、企業の実情に合わせたカスタマイズには、専門的な知識と経験が不可欠です。テンプレートの安易な利用は、かえってリスクを招く可能性も否定できません。
社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)では、全国対応・初回相談無料でご相談を承っております。人事労務に関するお悩みはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。