就業規則の作成費用相場と後悔しない社労士選び【社労士監修】

  • 「就業規則を作成したいが、費用がどれくらいかかるのか見当がつかない」
  • 「費用を抑えたいが、法的に問題のない、しっかりとした就業規則を作りたい」
  • 「どの社労士に依頼すれば良いのかわからない」

就業規則は、企業の土台となる重要なルールブックです。しかし、その作成には専門的な知識が必要であり、費用も気になるところでしょう。特に従業員を雇用する上で、労働条件や服務規律などを明確に定めた就業規則は、労使間の無用なトラブルを未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整備するために不可欠です 。

厚生労働省の統計によれば、個別労働紛争の相談件数は依然として高い水準にあり、その内容は解雇、労働条件の引き下げ、いじめ・嫌がらせなど多岐にわたります 。これらのトラブルの多くは、就業規則の不備や未整備が原因となっているケースも少なくありません 。

本記事では、就業規則の作成費用の相場から、費用を左右するポイント、そして後悔しない社労士選びの秘訣まで、就業規則の作成・見直しに強みを持つ社労士が専門家の視点から徹底解説いたします。

目次

就業規則のオーダーメイドの必要性と社労士に依頼するメリット

インターネット上には無料の雛形も多数存在し、「雛形を使えば費用を抑えられるのでは?」とお考えになるかもしれません。しかし、安易な雛形の利用には大きなリスクが潜んでおり、結果として企業にとってより高額な代償を支払う事態を招きかねません。就業規則は、単なる書類ではなく、企業の秩序を守り、従業員との健全な関係を築くための法的な基盤となるものです。そのため、専門的な知識に基づいた適切な作成が不可欠であり、そこには相応の対価が発生するのです。この章では、「無料の雛形ではなぜ不十分なのか」「社労士に支払う費用は何に対するものなのか」といった点を深掘りし、費用相場の情報を得る前に、経営者としてご理解いただきたい重要なポイントを解説します。

オーダーメイドの必要性

就業規則の作成には、労働基準法で定められた記載事項を網羅する必要があります。具体的には、始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項(解雇事由を含む)といった「絶対的必要記載事項」は、必ず記載しなければなりません 。これらに加えて、退職手当、賞与、安全衛生、職業訓練など、企業が制度として設ける場合には記載が義務付けられる「相対的必要記載事項」も存在します 。これらの法的要件を満たすだけでも、一般的な雛形では対応しきれないケースが少なくありません。特に、厚生労働省が提供しているモデル就業規則も、あくまで一般的な事例を示す「モデル」であり、そのまま自社に適用すると、企業の実情にそぐわないばかりか、法的なリスクを生じさせる可能性すらあります 。例えば、社員区分の定義が曖昧であったり 、固定残業代制度の運用が不適切であったりするケースは、雛形利用の際に散見される問題点です。  

さらに、就業規則は企業の規模、業種、独自の企業文化、そして将来の成長戦略によって、盛り込むべき内容が大きく異なります 。例えば、IT業界であれば情報セキュリティに関する詳細な規定が、製造業であれば安全衛生に関するより具体的な規定が求められるでしょう。従業員数が10人未満の企業であっても、就業規則を作成することには、労使間トラブルの予防、公平性の担保、そして将来の事業拡大への備えといった大きなメリットがあります 。雛形ではカバーしきれないこれらの個別具体的な要素を反映させ、法的に有効かつ実効性のある就業規則を作成するためには、専門家によるオーダーメイドの対応が不可欠となるのです。このオーダーメイドのプロセスこそが、費用が発生する大きな理由の一つです。  

社労士に依頼するメリット:リスク回避と本業への集中

就業規則の作成を社会保険労務士(社労士)に依頼することには、単に手間が省けるという以上の、企業経営にとって重要なメリットが数多く存在します。最も大きなメリットの一つは、専門知識に基づく的確なリスク回避です。労働関連法規は頻繁に改正され、その内容は複雑化しています 。社労士はこれらの法改正に常に精通しており、最新の法令に準拠した就業規則を作成することで、企業が意図せず法令違反を犯すリスクを最小限に抑えます 。就業規則の不備は、未払い残業代請求、不当解雇訴訟といった深刻な労務トラブルに発展し、企業に多大な経済的損失や信用の失墜をもたらす可能性があります 。社労士が作成に関与することで、こうしたトラブルを未然に防ぎ、企業を守る強固な基盤を築くことができるのです 。  

また、社労士への依頼は、経営者や人事担当者が本来注力すべきコア業務へ集中するための時間を創出します 。就業規則の作成や見直しには、関連法令の調査、条文の起案、従業員代表からの意見聴取、労働基準監督署への届出など、多くの時間と専門的な知識が必要です。これらを自社で行う場合、担当者は膨大な時間を費やすことになり、結果として他の重要な業務が滞ってしまう可能性があります。社労士にこれらの業務を委託することで、企業は貴重なリソースを有効活用し、事業成長や生産性向上といった本業に専念できるようになります。さらに、就業規則の整備は、キャリアアップ助成金や働き方改革推進支援助成金など、各種助成金の申請要件となる場合も多く 、社労士はその活用についても適切なアドバイスを提供できます。このように、社労士への依頼費用は、単なるコストではなく、リスク回避、時間創出、そして助成金活用の可能性といったリターンをもたらす「戦略的投資」と捉えることができるでしょう。  

【従業員数別】就業規則の作成費用の相場

就業規則の作成費用は、企業の状況や依頼する社労士事務所によって異なりますが、一つの目安として従業員規模別の相場観を把握しておくことは重要です。一般的に、従業員数が増えるほど、就業規則に盛り込むべき内容が複雑化し、対応すべき法的リスクも多様化するため、作成にかかる工数が増加し、費用も高くなる傾向にあります。ここでは、中小企業様が最も気にされる「自社の規模だと、おおよそどれくらいの費用がかかるのか」という疑問にお答えするため、従業員規模を3つの区分に分けて、それぞれの費用相場と、その背景にある一般的な考慮事項について解説します。なお、以下に示す費用はあくまで一般的な目安であり、個別の状況や依頼内容(例えば、特殊な規程の追加やコンサルティングの範囲など)によって変動することをご理解ください。正確な費用については、複数の社労士事務所に見積もりを依頼し、サービス内容と照らし合わせて比較検討することが肝要です。

従業員数30名以下の場合の費用相場

従業員数が30名以下の企業様、特にペルソナとして想定している従業員数30名規模の企業様の場合、就業規則の作成費用は、一般的に20~30万円程度が相場と考えられます 。この規模の企業では、初めて本格的な就業規則を作成する、あるいは既存の簡易的なものから法的に整備されたものへ移行するケースが多く見られます。そのため、基本的な労働条件(労働時間、休日、賃金など)や服務規律、採用・退職に関する事項など、労働基準法で定められた絶対的必要記載事項を中心とした本則の作成が主な作業となることが多いです。  

この費用帯で提供されるサービスには、通常、現状のヒアリング、就業規則案の作成、法的なチェック、そして労働基準監督署への届出代行などが含まれます。ただし、非常に安価なプランの場合、テンプレートを一部修正する程度の内容であったり、届出代行が含まれていなかったりすることもあるため、見積もり時にはサービス範囲を詳細に確認することが重要です。従業員数が10人未満の企業であっても、就業規則を作成することには、労使トラブルの予防や従業員の公平な処遇、将来的な企業の成長への備えといった大きなメリットがあります 。費用を抑えたいというニーズは理解できますが、安さだけを追求し、内容の薄い就業規則を作成してしまうと、いざという時に企業を守る機能を果たせない可能性があることも念頭に置くべきです。  

従業員数31名~100名の場合の費用相場

従業員数が31名から100名程度の中規模企業様の場合、就業規則の作成費用は30~50万円程度が一般的な相場感となります 。この規模になると、企業組織がより複雑化し、正社員だけでなく契約社員やパートタイマーなど多様な雇用形態の従業員が混在するケースが増えてきます。また、部門が細分化されたり、役職段階が増えたりすることで、それぞれの立場に応じた労働条件や服務規律をより詳細に定める必要性が高まります。  

したがって、就業規則本則に加えて、賃金規程、退職金規程、育児・介護休業規程、ハラスメント防止規程 、テレワーク勤務規程 といった各種別規程の作成も視野に入れる必要が出てくるでしょう。これらの別規程の作成は、多くの場合オプション料金となり、基本料金に上乗せされる形で費用が発生します。特に、近年の法改正(例えば、2025年施行の育児・介護休業法改正 )への対応は必須であり、これらを盛り込むためには専門的な知識と適切な条文設計が求められます。社労士との打ち合わせ回数も増える傾向にあり、その分、費用も上昇する要因となります。  

101名以上の場合の費用相場(参考)

従業員数が101名を超える大規模企業様の場合、就業規則の作成費用は50万円以上となることが一般的であり、企業の状況によっては60万円を超えるケースも珍しくありません。この規模になると、就業規則は単なるルールブックではなく、企業統治や人事戦略の根幹をなす重要な規程群としての性格を強く帯びてきます。

多くの場合、労働組合との交渉が必要となったり、複雑な人事制度(評価制度、等級制度、賃金テーブルなど)との整合性を詳細に検討する必要が生じます。また、コンプライアンス体制の構築、内部通報制度の整備、多様な働き方への対応(フレックスタイム制、裁量労働制など)、グローバル展開に伴う規定など、カバーすべき範囲が格段に広がり、求められる専門性もより高度になります。そのため、画一的なパッケージ料金ではなく、企業の個別具体的な状況を詳細にヒアリングした上で、オーダーメイドの見積もりとなるのが通常です。社労士には、法務的な側面だけでなく、経営戦略的な視点からのコンサルティング能力も期待されるため、費用もそれに応じて高くなる傾向があります。この規模の企業様が就業規則作成を検討される場合は、複数の専門性の高い社労士事務所に相談し、提案内容と費用を総合的に比較検討することが不可欠です。

従業員規模別 就業規則作成費用相場(目安)

従業員規模費用相場(目安)主な作成内容・特徴
~10名15万円基本規程(本則)中心。初めての作成や簡易的なものからの移行が多い。
11名~30名20万円~30万円基本規程に加え、企業の状況により一部別規程の検討も。法対応の重要性が増す。
31名~50名20万円~40万円複数の雇用形態、部門別対応など、やや複雑化。賃金規程等の別規程作成のニーズが高まる。
51名~100名40万円~50万円組織の複雑化に対応した詳細な規程が必要。ハラスメント防止、育児介護など各種規程の整備が重要。
101名~50万円~個別見積もりが基本。労働組合対応、複雑な人事制度との連携、高度なコンサルティングを含む。

上記はあくまで一般的な目安であり、規程の数や内容の複雑さ、法改正対応の範囲、コンサルティングの有無などにより変動します。正確な費用は必ず社労士事務所にご確認ください。

就業規則の作成費用を左右する3つのポイント

就業規則の作成費用は、一律ではありません。いくつかの重要なポイントによって、その金額は大きく変動します。経営者の皆様が社労士事務所に見積もりを依頼される際、提示された金額の妥当性を判断し、また、自社のニーズに合わせて賢い選択をするためには、これらの費用変動要因を理解しておくことが不可欠です。ここでは、就業規則の作成費用を左右する主要な3つのポイント、「基本料金に含まれる範囲」「オプション料金となる特別条項や規程の追加」「社労士事務所ごとの料金体系と専門性の違い」について、それぞれ具体的に解説していきます。これらのポイントを押さえることで、費用対効果の高い就業規則作成を実現するための一助となるでしょう。

基本料金:条文作成、リーガルチェックの範囲

社労士事務所が提示する就業規則作成の「基本料金」には、通常、企業運営に最低限必要な中核部分の作成と、その法的な妥当性の確認が含まれます。具体的には、まず経営者様や人事ご担当者様からのヒアリングを通じて、企業の現状の労働条件、勤務体系、企業文化、そして就業規則に関するご要望などを把握します 。そのヒアリング内容に基づき、労働基準法で定められた絶対的必要記載事項(労働時間、休日、賃金、退職など)を網羅した就業規則の本則の条文案を作成します。作成された条文案は、最新の労働関連法規に照らし合わせて、法的に問題がないか、潜在的なリスクを抱えていないかといった「リーガルチェック」が行われます 。このリーガルチェックは、就業規則が法的な盾として機能するために極めて重要なプロセスです。  

さらに、多くの事務所では、作成した就業規則(案)に対する従業員代表からの意見聴取手続きのサポートや、完成した就業規則を管轄の労働基準監督署へ届け出る代行業務も基本料金の範囲内に含んでいます 。ただし、「基本料金」でカバーされる具体的なサービス範囲は社労士事務所によって異なるため、見積もり時には、どこまでが含まれているのかを詳細に確認することが肝心です。例えば、ヒアリングの回数や修正の範囲に制限があるか、法改正情報の提供や簡単な労務相談も含まれるのか、といった点です。基本料金だけで法的に問題のない、自社の実情にある程度即した就業規則が作成できるのか、それとも実質的にオプションの追加が必須となるのかを見極めることが重要となります。  

オプション料金:特別条項、規程の追加

就業規則の基本料金に含まれる本則(基本的なルールを定めたもの)に加えて、多くの企業では、より詳細なルールや特定の状況に対応するための「別規程」や「特別条項」の作成が必要となることがあります。これらは通常、オプション料金として別途費用が発生します 。例えば、賃金の詳細な決定方法、計算根拠、手当の種類や支給基準などを定めた「賃金規程」、退職金の支給条件や計算方法を明確にする「退職金規程」は、多くの企業で作成が推奨されます。  

近年特に重要性が増しているのが、「育児・介護休業規程」です。2025年4月および10月には育児・介護休業法の大幅な改正が施行され 、企業は子の看護等休暇の対象拡大、柔軟な働き方の措置の導入、個別周知・意向確認の義務化など、多岐にわたる対応が求められます。これらの法改正に適切に対応した規程を作成することは、コンプライアンス遵守の観点からも不可欠です。  

その他にも、テレワークの導入に伴う「テレワーク勤務規程」、職場におけるハラスメントを防止するための「ハラスメント防止規程」、企業の機密情報や顧客情報を守るための「秘密保持規程」、従業員の副業や兼業に関するルールを定める「副業・兼業規程」 などが代表的なオプション規程として挙げられます。これらの規程を作成する場合、1規程あたり数万円程度の追加費用がかかるのが一般的です。自社にとってどの規程が必要かを見極め、社労士と相談しながら作成を進めることが、費用対効果の高い就業規則整備に繋がります。  

社労士事務所の料金体系と専門性

就業規則の作成費用は、依頼する社労士事務所の料金体系や、その事務所が持つ専門性によっても大きく変動します。料金体系については、顧問契約の範囲内で就業規則の作成や軽微な変更が含まれている場合もあれば、就業規則作成は完全に別途料金となる場合もあります 。また、就業規則一式の作成をパッケージ料金で提供している事務所もあれば、企業の状況に応じて個別の作業項目ごとに費用を積み上げていく見積もり方式の事務所も存在します。そのため、複数の事務所から見積もりを取る際には、料金体系の違いを理解し、単純な総額だけでなく、どのようなサービスが含まれているのかを詳細に比較することが重要です。  

さらに、社労士の専門性や経験も費用に影響を与える要素です。例えば、特定の業種(医療、建設、ITなど)の労務管理に深い知見を持つ社労士や、頻繁な法改正への対応、特に近年の働き方改革関連法や2025年の育児・介護休業法改正などに迅速かつ的確に対応できる社労士は、その専門知識に対する対価として費用が高めに設定されていることがあります 。また、単に条文を作成するだけでなく、就業規則の運用に関するコンサルティングや、従業員への説明会の実施、関連する人事制度の構築支援まで行うような、コンサルティング能力の高い社労士の場合も、提供される付加価値に応じて費用が変動します 。安価な料金設定の事務所が必ずしも質が低いわけではありませんが、費用と提供されるサービスの質・範囲のバランスを慎重に見極める必要があります。自社の課題解決に真に貢献してくれる専門性を持った社労士を選ぶことが、長期的な視点で見れば最もコストパフォーマンスの高い選択と言えるでしょう。  

費用を抑えつつ、質の高い就業規則を作成するための3つのヒント

「就業規則の重要性は理解できたけれど、できる限り費用は抑えたい。しかし、安かろう悪かろうでは困る」。これは多くの中小企業経営者様が抱える共通の思いでしょう。費用を抑えることと、質の高い就業規則を作成することは、決して相反するものではありません。いくつかのポイントを押さえることで、賢くコストを管理しつつ、企業の現状と将来のリスクに対応できる、実効性のある就業規則を手に入れることが可能です。ここでは、そのための具体的な3つのポイント、「複数の社労士事務所から見積もりを取る」「必要な要件を明確に伝える」「助成金制度の活用を検討する」について、それぞれ詳しく解説していきます。これらのポイントを実践することで、予算内で最大限の効果を発揮する就業規則作成を目指しましょう。

複数の社労士事務所から見積もりを取る

就業規則の作成費用を適切に把握し、かつ自社に最適な社労士を見つけるためには、複数の社労士事務所から見積もりを取ることが非常に有効です 。最低でも2~3社の事務所に声をかけ、それぞれの提案内容と料金を比較検討することをお勧めします。見積もりを依頼する際には、単に「就業規則を作りたい」と伝えるだけでなく、自社の従業員数、業種、現在の就業規則の有無(あればその内容)、特に就業規則で解決したい課題や盛り込みたい事項などを具体的に伝えることが重要です。これにより、各事務所はより実態に即した見積もりと提案を行うことができます。  

受け取った見積書は、総額だけでなく、その内訳を詳細に確認しましょう。基本料金には何が含まれ、どのような作業がオプションとなるのか、修正回数に制限はあるのか、納期はどれくらいか、といった点を明確にすることが大切です。また、料金だけでなく、提案されている就業規則の内容、担当する社労士の実績や専門性、そして実際に話してみた際の相性なども総合的に比較検討する必要があります。ある事務所では基本料金が安くても、必要な規程がすべてオプションで結果的に高額になるケースや、逆に料金はやや高くても、手厚いコンサルティングや法改正への迅速な対応が期待できるケースもあります。複数の提案を比較することで、自社のニーズと予算に最も合致した社労士事務所を選び出すことが可能になります。

2. 必要な要件を明確に伝える

社労士に就業規則の作成を依頼する前に、社内で必要な規程や盛り込みたい内容、現状の労務管理における課題などを事前に整理し、社労士に明確に伝えることは、費用を抑えつつ質の高い就業規則を作成するための重要なポイントです。社労士はヒアリングを通じて企業の状況を把握しますが、依頼側から具体的な情報提供があれば、よりスムーズかつ的確に作業を進めることができ、結果として手戻りや不要な作業を減らし、工数の削減、ひいては費用の抑制に繋がります。

具体的には、既存の就業規則(もしあれば)、労働条件通知書、雇用契約書、賃金台帳、タイムカードなどの勤怠記録、過去に発生した労務トラブルの記録やその対応状況などを事前に準備しておくと、社労士は企業の現状を迅速かつ正確に把握できます 。例えば、過去の労務トラブルの記録があれば、それを踏まえた再発防止策を就業規則に盛り込むことができ、より実効性の高いものになります。また、どのような働き方を推進したいか、どのような福利厚生制度を導入したいか、といった将来的なビジョンや、現在課題と感じている点(例:残業時間の管理、有給休暇の取得促進、ハラスメント対策など)を具体的に伝えることで、社労士はそれらを反映したオーダーメイドの就業規則を効率的に作成できます。社内で事前にこれらの情報を整理し、社労士との初回相談時に提示できるように準備しておくことが、質の高い就業規則を効率的に、そして結果的に費用を抑えて作成するための鍵となります。  

助成金制度の活用を検討する

就業規則の作成や見直し、あるいはそれに伴う労働環境の整備に対して、国や地方自治体が提供する助成金制度を活用できる場合があります。これらの助成金を上手く利用することで、就業規則作成にかかる費用負担を軽減できる可能性があります。例えば、有期契約労働者の正社員転換や処遇改善を目的とした「キャリアアップ助成金」では、正社員転換制度などを就業規則に明記することが要件の一つとなっています 。また、労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進など、働き方改革に取り組む企業を支援する「働き方改革推進支援助成金」なども、就業規則の整備が関連してくることがあります 。  

これらの助成金は、種類によって対象となる取り組みや支給要件、申請手続きが異なります。自社がどのような助成金の対象となり得るのか、また、その申請にはどのような就業規則の規定が必要なのかを正確に把握することが重要です。助成金の申請手続きは複雑で、専門的な知識が求められることも少なくありません。そのため、助成金に詳しい社労士に相談することで、活用可能な助成金の選定から申請手続きのサポートまで一貫して依頼できる場合があります。社労士に就業規則作成を依頼する際に、併せて助成金活用の可能性についても相談してみることをお勧めします。ただし、助成金は要件を満たせば必ず受給できるものではなく、予算や審査がある点には留意が必要です。

【重要】就業規則作成で失敗しない!社労士選びの3つの注意点

就業規則の作成を依頼する社労士を選ぶ際、費用はもちろん重要な判断基準の一つですが、それだけで決めてしまうと後々後悔することになりかねません。質の高い、本当に自社のためになる就業規則を作成し、長期的に良好な労務管理を実現するためには、費用以外の側面にも目を向ける必要があります。ここでは、就業規則作成で失敗しないために、経営者の皆様に特に注意していただきたい社労士選びの3つの重要なポイント、「専門性と実績」「コミュニケーション能力」「料金体系の透明性」について、具体的な見極め方と共に解説します。これらの注意点を押さえることで、信頼できるパートナーとしての社労士を見つけ出し、安心して就業規則作成を任せることができるでしょう。

専門性と実績:自社の業種や規模に合った経験があるか

社労士を選ぶ上で最も重要なポイントの一つが、その専門性と実績です。社労士の業務範囲は広く、それぞれに得意分野があります 。就業規則の作成・見直しを依頼するのであれば、当然ながら就業規則関連業務に豊富な経験と高い専門性を持つ社労士を選ぶべきです。特に、自社の業種特有の労働慣行や法規制、あるいは企業規模(特に中小企業)の労務管理に精通しているかどうかは、実効性のある就業規則を作成する上で極めて重要になります 。例えば、建設業や運送業、医療・介護業界など、特殊な勤務形態や法的規制が多い業種では、その業界に特化した知識と経験を持つ社労士でなければ、適切なアドバイスや規定作成が難しい場合があります 。  

実績を確認する際には、単に「何件作成したか」という数だけでなく、どのような業種・規模の企業の就業規則を手がけてきたのか、具体的な事例(個人情報に配慮した形での紹介)や顧客の声などを確認すると良いでしょう 。また、近年の頻繁な法改正(例えば、働き方改革関連法、2025年施行の育児・介護休業法改正など )にどれだけ迅速かつ的確に対応してきたかも、専門性を見極める重要な指標となります。初回相談の際には、「当社の業種での就業規則作成経験はありますか?」「最近の法改正で、特に注意すべき点は何だとお考えですか?」といった具体的な質問をしてみることをお勧めします。  

コミュニケーション能力:親身に相談に乗ってくれるか

就業規則は、一度作成したら終わりではありません。法改正への対応や企業の成長に伴う見直しなど、継続的なメンテナンスが必要となります。そのため、社労士とは長期的なパートナーシップを築くことになります。この関係性において、専門知識の高さと同等、あるいはそれ以上に重要となるのが、社労士のコミュニケーション能力です 。経営者や人事担当者の抱える悩みや課題に親身に耳を傾け、専門用語を分かりやすく解説し、企業の状況に合わせた具体的なアドバイスをしてくれる社労士でなければ、安心して相談することは難しいでしょう。  

特に中小企業の経営者は、労務に関する専門知識が十分でない場合も多く、漠然とした不安や疑問を抱えていることも少なくありません。そのような状況を理解し、経営者の立場に立って、共に課題解決を目指してくれる姿勢が求められます。レスポンスの速さも重要な判断基準の一つです 。質問や相談に対して迅速かつ丁寧に対応してくれる社労士は、多忙な経営者にとって心強い存在となります。初回相談や見積もり依頼の際のやり取りを通じて、「この社労士は話しやすいか」「こちらの意図を正確に汲み取ってくれるか」「説明は分かりやすいか」といった点を確認することが大切です。「専門家だから」と遠慮することなく、気軽に相談できる雰囲気があるかどうかは、最終的な満足度を大きく左右するポイントと言えるでしょう。  

料金体系の透明性:見積もり内容が明確で納得できるか

就業規則作成を依頼するにあたり、料金体系の透明性は非常に重要です 。見積もりを依頼した際に、何にどれくらいの費用がかかるのか、基本料金に含まれるサービス範囲はどこまでで、どのような場合にオプション料金が発生するのか、といった点が明確に提示されるかを確認しましょう。不明瞭な料金体系のまま契約してしまうと、後から想定外の追加費用を請求されたり、期待していたサービスが含まれていなかったりといったトラブルに繋がりかねません。  

信頼できる社労士事務所であれば、見積書には具体的な作業項目とその単価、所要時間などが詳細に記載されており、なぜその金額になるのかについて納得のいく説明があるはずです。例えば、「就業規則本則作成一式」といった大まかな項目だけでなく、「ヒアリング(〇時間)」「条文案作成(〇条)」「リーガルチェック」「従業員代表意見書作成サポート」「労働基準監督署への届出代行」など、具体的な作業内容が明記されているかを確認します。また、修正回数の上限や、納品後のフォローアップ(法改正情報の提供など)の有無、顧問契約への移行の条件なども事前に確認しておくべき事項です。料金の安さだけで選ぶのではなく、提供されるサービスの質と範囲、そして料金の透明性を総合的に判断し、納得感を持って契約できる社労士を選ぶことが、後悔しないための重要なポイントとなります。

後悔しない社労士選びのチェックリスト

チェック項目確認方法重要度
専門性と実績
自社の業種・規模での就業規則作成実績があるかHP確認、初回相談で質問、過去事例の提示依頼
最新の法改正(育児・介護休業法など)に精通しているか初回相談で具体的な法改正対応について質問
労務トラブル予防・解決に関する実績・知見があるかHP確認、事例紹介、初回相談で質問
コミュニケーション能力
説明は専門用語を避け、分かりやすいか初回相談での説明の仕方を確認
親身に相談に乗ってくれる、質問しやすい雰囲気か初回相談での対応、話しやすさを確認
レスポンス(メールや電話の返信)は迅速かつ丁寧か問い合わせ時や見積もり依頼時の対応速度・内容を確認
こちらの意図や要望を正確に汲み取ってくれるか初回相談でのヒアリング力、提案内容を確認
料金体系の透明性
見積書は詳細で、各項目の料金が明確か見積書の内容を精査
基本料金に含まれるサービス範囲が明記されているか見積書、契約書案で確認
オプション料金が発生する場合とその条件が明確か見積もり時、契約前に質問
契約期間や解約条件、納品後のフォロー体制について説明があるか契約書案で確認、不明点は質問

このチェックリストはあくまで一例です。自社の状況に合わせて項目を追加・修正してご活用ください。

まとめ:貴社に最適な就業規則作成を、経験豊富な社労士がサポートします

本記事では、中小企業の経営者様や人事ご担当者様が抱える「就業規則の作成費用」に関する疑問や不安を解消するため、費用相場からその内訳、費用を左右するポイント、そして質の高い就業規則を効率的に作成するためのヒント、さらには後悔しない社労士選びの注意点に至るまで、幅広く解説してまいりました。就業規則は、単に法律で定められているから作成する、というものではありません。それは、企業の健全な成長を支え、従業員が安心して能力を発揮できる職場環境を構築するための、いわば「羅針盤」であり「盾」となるものです 。特に、頻繁な法改正 や多様化する働き方への対応が求められる現代において、専門家の知見に基づき、自社の実情に即した就業規則を整備することの重要性はますます高まっています。  

費用相場はあくまで目安であり、最も大切なのは「その費用で何が得られるのか」という費用対効果を見極めることです。無料の雛形や安価なサービスには、一見魅力的に見えるかもしれませんが、企業特有のリスクに対応できなかったり、法改正への追従が不十分であったりする結果、将来的に大きなトラブルや損失を招く可能性も否定できません 。経験豊富な社労士は、法的な専門知識はもちろんのこと、多くの企業の事例に触れてきた経験から、貴社が抱える潜在的なリスクを予見し、それを未然に防ぐための最適な就業規則を設計します。また、助成金の活用提案 や、作成後の運用サポートまで含めた長期的な視点でのアドバイスも期待できます。  

当事務所では、全国の中小企業様を対象に、就業規則の作成・見直しに関するご相談を承っております。初回のご相談は無料ですので、「まずは自社の状況を相談したい」「費用について詳しく知りたい」といったご要望にも丁寧にお応えいたします。経験豊富な社労士が、法改正への的確な対応はもちろん、労務トラブルのリスクを最小限に抑え、従業員がいきいきと働ける職場環境づくりを通じて、貴社の持続的な成長を力強くサポートさせていただきます。

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監修者(社労士)

社会保険労務士(社労士事務所altruloop代表)
労務管理・人事制度設計・法改正対応をはじめ、実務と経営をつなぐ制度づくりを得意とする。戦略コンサルファームでは新規事業立ち上げや組織改革に従事し、大手〜スタートアップまで幅広い企業の支援実績あり。
現在は東京都渋谷区や八王子を拠点にしている社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)代表として、全国対応で実務と経営の両視点から企業を支援中。

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