近年注目される「ウェルビーイング」。言葉は知っていても、自社にどう活かせるのか、具体的な進め方に悩む経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。従業員の心身の健康、やりがい、そして幸福感を高めるウェルビーイングへの取り組みは、今や企業が持続的に成長するための重要な経営戦略です。
この記事では、人事労務の専門家である社労士の視点から、ウェルビーイングの基本、企業が取り組むメリットと注意点、具体的な実践ステップ、そして社労士がどのように貴社のウェルビーイング推進をサポートできるのかを、分かりやすく解説します。
社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)は、貴社のウェルビーイング推進を多角的にサポートし、従業員一人ひとりが輝く職場づくりをご支援します。
そもそもウェルビーイングとは?注目される背景も解説
ウェルビーイングという言葉を耳にする機会が増えましたが、その正確な意味や、なぜ今これほどまでに企業経営において重視されるようになったのか、基本的なところから確認していきましょう。
ウェルビーイングの基本的な意味:定義をわかりやすく
ウェルビーイング(Well-being)とは、単に病気でない、弱っていないということだけでなく、身体的、精神的、そして社会的にすべてが満たされた良好な状態にあることを意味する概念です 。この考え方は、世界保健機関(WHO)が1946年の憲章前文において、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいう」と定義したことが国際的に広まるきっかけとなりました 。
ウェルビーイングには、個人の感情や満足度といった「主観的ウェルビーイング」と、所得や学歴、健康寿命といった客観的なデータで測れる「客観的ウェルビーイング」の二つの側面があります 。近年、企業経営においては、従業員一人ひとりがどのように感じ、どの程度満足しているかという「主観的ウェルビーイング」を重視する傾向が強まっています 。デジタル庁が推進する「地域幸福度(Well-Being)指標」においても、幸福感や生活満足度に関するアンケート調査(主観指標)と、生活環境や人間関係などに関する客観的データを組み合わせて、地域ごとのウェルビーイングを可視化しようとする試みが見られます 。
このウェルビーイングの多面的な定義は、企業が従業員支援を考える上で、従来の健康管理(フィジカルヘルス、メンタルヘルス)に加えて、職場内の人間関係の質、コミュニケーションのあり方、さらには従業員の自己実現や成長機会の提供といった「社会的」側面にも注力する必要があることを示しています。これは、単に福利厚生プログラムを充実させるだけでなく、チームワークの促進、上司と部下の良好な関係構築、キャリアパスの提示、仕事の意義を実感できる環境づくりなど、より広範な取り組みが求められることを意味します。
ウェルビーイングを構成する要素として、いくつかの代表的なモデルが提唱されています。 その一つが、ポジティブ心理学のマーティン・セリグマン博士による「PERMA(パーマ)モデル」です 。これは、ウェルビーイングを高めるための以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。
- Positive Emotion(ポジティブ感情):喜び、感謝、希望、興味、誇りなど、前向きな感情を持つこと。
- Engagement(エンゲージメント・没頭):時間を忘れて何かに熱中し、フロー状態に入ること。
- Relationship(関係性):他者と良好な人間関係を築き、支え合い、つながりを感じること。
- Meaning(意味・意義):人生や仕事において、より大きな目的や価値を見出し、貢献している実感を持つこと。
- Accomplishment(達成感):目標を設定し、それを成し遂げることで得られる満足感や有能感。
また、日本国内では、慶應義塾大学の前野隆司教授が提唱する「幸せの4因子」も知られています 。これは、日本人の幸福感を分析し、以下の4つの因子で整理したものです。
- やってみよう因子(自己実現と成長):主体的に目標を定め、挑戦し、成長すること。
- ありがとう因子(つながりと感謝):他者とのつながりを持ち、感謝の気持ちを表現し、利他的であること。
- なんとかなる因子(前向きと楽観):物事を前向きに捉え、楽観的であり、困難な状況でも乗り越えられると信じること。
- ありのままに因子(独立と自分らしさ):他人と比較しすぎず、自分らしさを受け入れ、ありのままでいること
これらの構成要素を理解することは、企業がウェルビーイング向上のための具体的な施策を検討する上で役立ちます。
ここで、「健康経営」との違いについても触れておきましょう。健康経営は、主に従業員の身体的・精神的な健康管理に焦点を当て、生産性の向上や医療費の抑制などを目指す経営手法です。一方、ウェルビーイング経営は、従業員の社会的な幸福感や満足度も含めた、より包括的な「満たされた状態」を目指し、企業価値全体の向上を追求するものです 。
観点 | ウェルビーイング経営 | 健康経営 |
---|---|---|
主な焦点 | 従業員の包括的な幸福感(身体的・精神的・社会的) | 主に従業員の身体的・精神的健康 |
目標 | 企業価値向上、持続的成長、従業員の自己実現 | 生産性向上、医療費抑制、プレゼンティーズム改善 |
アプローチ | 従業員視点、エンゲージメント向上、働きがい、キャリア、人間関係など広範な施策 | 企業視点、健康診断、ストレスチェック、生活習慣改善など健康増進施策中心 |
対象範囲 | 健康経営よりも広く、従業員の働き方、キャリア、人間関係、私生活との調和まで考慮 | 主に職場における健康管理と健康増進活動 |
この比較からもわかるように、ウェルビーイング経営は健康経営の概念を包含しつつ、さらに広範な視点から従業員の幸福と企業の成長を目指す取り組みと言えます。
「主観的ウェルビーイング」が重視される現代において、企業は画一的な施策を提供するだけでなく、従業員一人ひとりの価値観やニーズに応じた、より個別化・多様化されたアプローチを検討する必要があります。例えば、ある従業員にとっては報酬の高さが幸福感に繋がるかもしれませんが、別の従業員にとっては自己成長の機会や柔軟な働き方がより重要かもしれません。そのため、選択制の福利厚生制度の導入、多様なキャリアパスの提示、個別のメンタリングプログラムの実施など、個々の状況や価値観に対応できる柔軟な施策が、ウェルビーイング向上には効果的です。これは、企業が多様な人材を活かし、その能力を最大限に引き出す上でも重要な視点となります 。
なぜ今、企業にウェルビーイングが求められるのか?
ウェルビーイングが単なる流行語ではなく、現代の企業経営において不可欠な要素となりつつある背景には、社会や労働市場の大きな変化があります。これらの変化は個別の事象ではなく、相互に影響し合いながら、ウェルビーイング推進の緊急性と戦略的重要性を高めています。
働き方改革との関連性
2019年に施行された働き方改革関連法は、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現など、主に労働時間や待遇といった「働きやすさ」の改善に焦点が当てられました 。しかし、従業員が真に能力を発揮し、企業が持続的に成長するためには、この「働きやすさ」に加えて、仕事への情熱や貢献意欲といった「働きがい」、そして精神的な安定を含む「心の健康」も極めて重要です 。ウェルビーイングは、この働き方改革の理念をさらに深化させ、従業員の幸福感や自己実現までをも視野に入れた、より質の高い働き方の実現を目指すものと言えます。
また、育児・介護休業法の改正 など、従業員のライフワークバランスを支援し、多様な生き方を尊重する法整備も進んでいます。これらの法改正への対応は、企業にとって最低限の義務ですが、ウェルビーイングの観点からは、さらに一歩進んで、従業員が安心して働き続けられる環境を積極的に構築することが求められています。
人材獲得競争の激化
少子高齢化に伴い、日本の労働力人口は減少傾向にあり、多くの企業、特に中小企業においては人材確保が深刻な経営課題となっています 。このような状況下で、従業員の価値観も変化しています。特に若い世代を中心に、給与や待遇といった経済的な条件だけでなく、「働きがい」や「自己成長の機会」、「良好な人間関係」、「社会への貢献実感」といった要素を企業選択の際に重視する傾向が強まっています 。
従業員のウェルビーイングを重視し、心身ともに健康でいきいきと働ける環境を提供している企業は、求職者にとって魅力的に映り、採用競争において大きなアドバンテージとなります 。結果として、優秀な人材の獲得と定着に繋がり、企業の持続的な成長を支える基盤となるのです。働き方改革によって労働環境の最低基準が引き上げられた結果、従業員はより質の高い働き方を求めるようになり、これが人材獲得競争においてウェルビーイングを重視する企業が有利になる一因となっています。
SDGsとのつながり
SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりも、企業がウェルビーイングを重視する大きな理由の一つです。SDGsの17の目標のうち、特に目標3「すべての人に健康と福祉を (Good Health and Well-being)」や目標8「働きがいも経済成長も (Decent Work and Economic Growth)」は、企業のウェルビーイング推進と深く関連しています 。
企業がSDGsに貢献することは、単に社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、企業イメージの向上、投資家からの評価、さらには従業員のエンゲージメント向上にも繋がるとされています 。ウェルビーイングへの取り組みは、これらのSDGs目標達成に直接的に貢献するものであり、社会からの信頼を得て企業価値を高める上でも重要です。
このように、「働き方改革」「人材獲得競争」「SDGs」という背景要因は、複合的に作用し、ウェルビーイングを単に「対応すべき課題」から「戦略的投資」へと押し上げています。企業がウェルビーイングに取り組むことは、社内環境を改善するだけでなく、企業が社会全体の持続可能性に貢献する一翼を担うという、より大きな文脈で捉えることができます。従業員が健康で幸福に働くことは、医療費の抑制(間接的に社会保障制度への貢献)、地域社会への積極的な関与、創造性の発揮によるイノベーション促進などを通じて、社会全体のウェルビーイング向上にも繋がる可能性を秘めているのです。
企業がウェルビーイングに取り組むメリット・デメリットとは?
ウェルビーイング経営は多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかの注意点も理解しておく必要があります。
ウェルビーイング経営がもたらす5つのメリット
企業が積極的にウェルビーイングに取り組むことで、以下のような多岐にわたる具体的なメリットが期待できます。これらのメリットは個別に作用するだけでなく、相互に連関し、好循環を生み出すことで、企業の持続的な成長エンジンとなり得ます。
従業員のモチベーション向上
従業員が心身ともに満たされ、自分の仕事に意義や誇りを感じられるようになると、企業や担当業務に対する主体的な貢献意欲、すなわちエンゲージメントが強化されます 。モチベーションの高い従業員は、指示待ちではなく、自ら課題を発見し、改善提案を行うなど、自発的な行動が増える傾向にあります 。
生産性の向上
心身の健康が保たれることで、従業員の集中力や判断力が高まり、業務効率が向上します 。ある調査によれば、ウェルビーイングが高い従業員は生産性が31%高いというデータも報告されています 。また、健康状態の悪化や過度なストレスに起因するヒューマンエラーや作業の遅延を防ぐことにも繋がります 。
離職率の低下と定着率の向上
「従業員を大切にする企業である」という認識が社内に広がることで、従業員の企業に対する愛着や帰属意識が醸成されます 。働きがいがあり、心身ともに健康に、そして安心して働くことができる環境は、従業員の定着率を高め、貴重な人材の流出を防ぎます 。
企業イメージと採用競争力の強化
ウェルビーイングに積極的に取り組む姿勢は、「従業員を大切にするホワイトな企業」「働きがいのある会社」といったポジティブな企業イメージを社内外に浸透させます 。このような良好な企業イメージは、採用活動において優秀な人材を引きつける強力な武器となり、採用力の向上に大きく貢献します 。
創造性とイノベーションの促進
従業員が安心して意見を表明でき、失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる心理的安全性の高い職場環境は、新しいアイデアやイノベーションが生まれるための重要な土壌となります。ウェルビーイングが高い従業員は、創造性が通常の3倍になるという報告もあります 。前向きな気持ちで仕事に取り組むことで、固定観念にとらわれない柔軟な発想や、困難な課題に対する新たな解決策を生み出す能力が向上します。
これらのメリットが好循環を生み出すことで、企業は持続的な成長を遂げることができます。例えば、モチベーションの向上は生産性向上に直結し、成果の実感がさらなるモチベーションや創造性を引き出します。これが離職率の低下に貢献し、安定した労働力はノウハウの蓄積を促し、生産性向上やイノベーションを後押しします。そして、従業員満足度の高い企業は企業イメージが向上し、優秀な人材の獲得が容易になることで組織全体の能力が底上げされ、再び好循環が生まれるのです。
さらに、これらのメリットはコスト削減という観点からも捉えることができます。離職率の低下は、採用コストや新人教育コストの大幅な削減に直結します 。従業員の心身の健康増進は、病気による休職者の減少や医療費の抑制(健康保険料負担の観点から間接的に)、労働災害の発生率低下にも繋がる可能性があります 。生産性の向上は、同じリソースでより多くの成果を生み出すことを意味し、実質的なコスト効率の改善と言えます。これらのコスト削減効果は、ウェルビーイング施策にかかる初期投資を長期的に回収し、企業の利益に貢献する可能性を示唆しており、特にコスト意識の高い中小企業経営者にとっては重要な訴求ポイントとなります。
知っておきたいウェルビーイング導入のデメリットや注意点
メリットの多いウェルビーイング経営ですが、導入や推進にあたっては、以下のような点に留意し、慎重に進める必要があります。
効果測定の難しさ
従業員の幸福感やモチベーションといった主観的な要素は、売上や利益のように具体的な数値で測ることが難しく、施策の効果を客観的に評価しにくい側面があります 。そのため、効果測定のためには、従業員サーベイの結果(エンゲージメントスコア、満足度など)や、離職率、有給休暇取得率、ストレスチェックの結果といった複数の指標を組み合わせ、独自のKPI(重要業績評価指標)を設定する工夫が求められます 。
短期的なコスト発生の可能性
新たな制度の導入、研修の実施、福利厚生の充実、専門家へのコンサルティング費用など、初期投資や継続的なコストが発生する場合があります 。これらのコストは、長期的な視点で見れば従業員の生産性向上や離職率低下による将来的なリターンが期待できる「投資」と捉えることが重要ですが、短期的な財務状況への影響も考慮する必要があります 。
全社的な理解と協力体制の構築が不可欠
ウェルビーイング推進は、人事部門だけの取り組みでは成功しません。経営トップの強いコミットメントとリーダーシップが不可欠であり、経営層がその重要性を理解し、率先して取り組む姿勢を示すことが求められます 。また、施策が形骸化しないためには、従業員一人ひとりがウェルビーイングの意義を理解し、主体的に関わることが重要です 。研修や説明会を通じて、全社的な意識改革を図り、各現場部門の管理職や従業員の協力を得られるような体制を構築する必要があります。
特にリソースの限られる中小企業にとって、「効果測定の難しさ」と「短期的なコスト」は、ウェルビーイング導入の大きな心理的障壁となり得ます。このため、最初から大規模な投資をするのではなく、アンケートや1on1ミーティングの実施など低コストで始められる施策から着手するスモールスタートや、後述する助成金の活用が有効な手段となります。
また、「全社的な理解と協力体制の構築」の難しさは、日本企業特有の組織文化やコミュニケーションスタイルに起因する可能性も考慮に入れるべきです。トップダウンの号令だけでは現場に浸透しにくいケースも少なくありません。経営層からの明確なメッセージ発信と同時に、従業員が安心して意見を言える場を設け、施策に反映させるボトムアップの意見吸い上げ、そして現場のキーパーソンである中間管理職への働きかけが、施策の実効性を高める上で極めて重要になります。
ウェルビーイング向上のための具体的な取り組み事例
ウェルビーイング向上のためには、まず自社の現状を把握し、段階的に施策を進めていくことが重要です。ここでは、その進め方のステップと、職場で実践できる具体的な施策例をご紹介します。
【段階別】ウェルビーイング推進の進め方5ステップ
ウェルビーイング経営を効果的に進めるためには、以下の5つのステップで取り組むことをお勧めします 。このプロセス全体を通じて、特に「ステップ1:現状把握」の質が、後続のステップ全体の成否を大きく左右すると言えます。不正確な現状認識は、的外れな目標設定や効果の薄い施策につながりかねないため、慎重な対応が求められます。
ステップ1:現状把握と課題の明確化(アンケート・サーベイ活用)
まず、自社の従業員が現在どのような状態にあるのか、何に課題を感じているのかを客観的に把握することから始めます 。 具体的な方法としては、匿名性の高いアンケートやエンゲージメントサーベイ、法律で義務付けられているストレスチェック(50人未満の事業場でも努力義務)などを活用し、従業員の満足度、ストレスレベル、人間関係、キャリア観などを調査します 。勤怠データ(残業時間、有給取得率)、休職者データ、離職者データなども重要な情報源となります。必要に応じて、従業員代表や特定のグループへのヒアリングを実施し、より深い情報を収集することも有効です 。 この際、調査目的、測定項目、回収方法を明確にし、従業員が安心して本音で回答できる環境を整えることが重要です 。
ステップ2:目標設定と計画策定
現状把握で明らかになった課題に基づき、ウェルビーイング推進によって何を目指すのか、具体的な目標を設定し、それを達成するための計画を策定します 。 全ての課題に一度に取り組むのは難しいため、重要度や緊急度、取り組みやすさなどを考慮して課題の優先順位をつけます。そして、「半年以内にストレスチェックの高ストレス者割合を〇%削減する」「1年後のエンゲージメントサーベイの総合スコアを〇ポイント向上させる」など、**具体的で測定可能な目標(SMARTの法則などを参考に)**を設定します 。目標達成のために、いつ、誰が、何を行うのかを具体的にアクションプランに落とし込み、短期・中期・長期の視点で計画を立てると良いでしょう 。 策定した目標と計画は、経営層のコミットメントを得て、全社的な目標として共有することが推進力を高める上で重要です 。
ステップ3:施策の検討と実行
設定した目標と計画に基づき、具体的なウェルビーイング向上施策を検討し、実行に移します 。 例えば、コミュニケーション不足が課題であればコミュニケーション活性化施策、長時間労働が課題であれば労働時間管理の見直しや柔軟な働き方の導入などを検討します。施策を検討する際には、従業員の意見やニーズをできるだけ取り入れ、実効性の高いものにすることが大切です 。最初から大規模な施策を展開するのではなく、特定の部門や小規模なグループで試行し、効果や課題を検証しながら進めるスモールスタートも有効なアプローチです。 施策の目的や内容、期待される効果などを従業員に丁寧に説明し、理解と協力を得ることが成功の鍵となります。
ステップ4:効果測定と評価
実行した施策が実際にどのような効果をもたらしたのかを測定し、評価します 。 ステップ1で実施したサーベイを再度行い、変化を比較したり 、設定したKPI(離職率、有給取得率、残業時間など)の推移を定期的に確認したりします 。また、施策に対する従業員の感想や意見を収集することも重要です 。 効果測定は一度きりではなく、定期的に行い、施策の有効性を継続的に検証することが重要です。結果が芳しくない場合は、その原因を分析し、次の改善に繋げます。
ステップ5:改善と継続的な取り組み
効果測定と評価の結果に基づき、施策内容や進め方を改善し、ウェルビーイング向上への取り組みを継続的に発展させます 。 計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)のPDCAサイクルを回し続けることが基本です 。うまくいった施策や改善事例を社内で共有し、モチベーションを高めることも有効です。最終的には、ウェルビーイングの考え方を一過性のキャンペーンで終わらせず、組織の価値観や文化として根付かせていくことを目指します 。 ウェルビーイング推進は、一度計画・実行して終わりではなく、組織の成長や外部環境の変化に応じて柔軟に見直し、進化させていく「アジャイル」なアプローチが求められます。従業員のニーズや価値観、事業環境や社会情勢は常に変化するため、初期計画に固執せず、定期的な効果測定とフィードバックを通じて施策を柔軟に調整し、時には新たな取り組みを導入するなど、変化に対応し続ける姿勢が長期的な成功の鍵となります。
以下に、中小企業がこれらのステップを具体的に進める際のアクション例をまとめました。
ステップ | 中小企業の具体的アクション例 |
---|---|
1: 現状把握と課題の明確化 | 簡単な匿名アンケート(Googleフォーム等で作成可能)、ストレスチェック結果の(努力義務化されている50人未満事業場も)積極的活用、部門長へのヒアリング、少人数での意見交換会(ランチミーティングなど) |
2: 目標設定と計画策定 | 「離職率を前年比〇%削減」「有休取得率を平均〇日向上」「残業時間を月平均〇時間削減」など具体的かつ達成可能な目標を設定。短期(3ヶ月)・中期(1年)計画を策定。経営層と共有しコミットメントを得る。 |
3: 施策の検討と実行 | 低コストで始められる施策から優先的に実施(例:定期的な1on1ミーティング制度化、サンクスカード導入、ノー残業デー設定、時差出勤制度の一部試行、社内SNS活用)。従業員代表を交えた検討会開催。 |
4: 効果測定と評価 | 半年~1年後にアンケート再実施。関連指標(残業時間、離職者数、有休取得日数、健康診断有所見率など)のモニタリング。施策参加者への簡単なヒアリング。 |
5: 改善と継続的な取り組み | 評価に基づき施策内容を微調整(例:1on1の頻度見直し、サンクスカードの形骸化防止策)。成功事例や従業員の声を社内報や朝礼で共有。経営層からウェルビーイングの重要性を定期的にメッセージ発信。 |
このテーブルは、ウェルビーイング推進というやや抽象的なプロセスを、中小企業が具体的にイメージしやすいアクションレベルに落とし込んでいます。各ステップで「何をすればよいのか」が明確になるため、特にリソースが限られ、専門部署がないことの多い中小企業の人事担当者や経営者が、最初の一歩を踏み出す際のハードルを下げ、実践を促す効果が期待できます。
職場で実践できるウェルビーイング施策の具体例
企業の状況や従業員のニーズに合わせて、様々な施策が考えられます。ここでは代表的な取り組み分野と具体例をご紹介します。これらの施策は、単独で実施するよりも、相互に関連付け、組み合わせて実施することで相乗効果が期待できます。例えば、「柔軟な働き方」の導入は、「コミュニケーション活性化」のためのツール活用とセットで考えることで、デメリットを補いメリットを最大化できます。
労働環境の改善(長時間労働是正、柔軟な働き方)
- 長時間労働の是正:
- 勤怠管理システムの導入・徹底による労働時間の可視化と適正な管理 。
- ノー残業デーの設定、残業の事前申請ルールの徹底。
- 業務効率化のためのITツール導入支援(RPA、グループウェアなど)。
- 柔軟な働き方の推進:
- テレワーク、リモートワーク制度の導入・拡充 。
- フレックスタイム制、時差出勤制度の導入 。
- 短時間勤務制度、週休3日制などの検討。
- 休暇制度の充実(時間単位有給休暇、記念日休暇、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇など)。
- 快適なオフィス環境:
- 人間工学に基づいたオフィス家具(椅子、デスク)の導入、集中ブースやリフレッシュスペースの設置 。
- 観葉植物の配置、BGMの導入、適切な空調管理。
- WELL認証などを参考にした、心身の健康に配慮したオフィス環境整備 。
コミュニケーション活性化施策
- ツールの活用:
- 社内SNS、ビジネスチャットツール、バーチャルオフィスなどの導入・活用促進 。
- 感謝や称賛を気軽に伝え合うためのサンクスカード制度やアプリの導入 。
- 機会の創出:
- 上司と部下の定期的な1on1ミーティングの実施と質の向上 。
- 社内イベント(スポーツ大会、ファミリーデーなど)、懇親会、部活動・サークル活動への費用補助や支援 。
- 部門横断プロジェクトチームの組成や、他部署メンバーとの交流ランチの推奨 。
- フリーアドレスの導入(ただし、コミュニケーション希薄化の懸念もあるため、他の施策との組み合わせや目的の明確化が重要)。
- 心理的安全性の醸成:
- ハラスメント防止研修の定期的な実施、相談窓口の設置と周知徹底 。
- 役職や立場に関わらず、誰もが安心して意見を表明でき、建設的な議論ができるフラットな組織風土づくり。
健康増進プログラム(メンタルヘルスケア含む)
- フィジカルヘルス:
- 定期健康診断の受診勧奨、有所見者への産業医面談などのフォローアップ体制強化 。
- がん検診費用補助、人間ドック受診費用の補助、婦人科検診の推奨 。
- 運動機会の提供(ウォーキングイベントの開催、スポーツジム利用料補助、社内ヨガ教室やストレッチ講座の実施など)。
- 健康的な食事の提供・補助(社員食堂でのヘルシーメニュー提供、オフィスへの野菜・果物設置、食事補助サービスの導入など)。
- 禁煙支援プログラムの実施、卒煙成功者へのインセンティブ付与 。
- メンタルヘルス:
- ストレスチェックの実施と集団分析結果の職場環境改善への活用、高ストレス者への産業医・カウンセラー面談勧奨 。
- 外部EAP(従業員支援プログラム)サービスの導入、社内カウンセリング窓口の設置 。
- 管理職向けのラインケア研修、従業員向けのセルフケア研修の実施 。
- マインドフルネス研修、瞑想セミナーの実施、オフィス内への瞑想スペースの提供 。
キャリア形成支援・学びの機会提供
- キャリアパスの明確化:
- 従業員が将来のキャリアを具体的に展望できるよう、社内のキャリアパスや昇進・昇格基準を明確化し、全従業員に周知する 。
- 研修・リスキリング支援:
- 階層別研修、専門スキルアップ研修、資格取得支援制度(受験費用補助、合格報奨金など)の導入・拡充 。
- eラーニングシステムの導入による自己学習機会の提供、外部セミナー・研修への参加費用の補助。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)化など、事業環境の変化に対応するためのリスキリング(学び直し)の機会提供。
- キャリアカウンセリング:
- 人事担当者や外部のキャリアコンサルタントによる定期的なキャリア面談の実施、キャリア相談窓口の設置 。
- 自己決定感の醸成:
- 従業員が自律的にキャリアを選択し、主体的に成長していけるような機会や情報を提供し、挑戦を奨励する文化を育む 。
公正な評価とフィードバック
- 透明性の高い評価制度:
- 評価基準や評価プロセスを明確にし、従業員に事前に公開することで、評価の納得感を高める。
- 成果(定量評価)だけでなく、日々の業務プロセスやチームへの貢献度(定性評価)も評価に含めることを検討する 。
- 定期的かつ建設的なフィードバック:
- 評価結果を一方的に伝えるだけでなく、具体的な行動や成果について、良かった点(ポジティブフィードバック)と改善が期待される点(成長のためのフィードバック)を建設的に伝える 。
- 1on1ミーティングなどを活用し、評価時期だけでなく、日常的に双方向のコミュニケーションを図り、タイムリーなフィードバックを行う 。
- 成長支援としての評価:
- 評価を単に処遇決定のためだけでなく、従業員の成長を促すための重要な機会と捉え、今後の目標設定や能力開発、キャリアプランニングに繋げる 。
これらの施策は、従業員の「自己効力感(自分ならできるという感覚)」や「自己決定感(自分で選べるという感覚)」を高める方向性を持つものが多く、これらがウェルビーイングの重要な心理的基盤となり得ます。「キャリア形成支援」や「学びの機会提供」は、従業員が新たなスキルを習得し、できることが増えることで自己効力感を高めます。「柔軟な働き方」や選択制の福利厚生などは、従業員が自分のライフスタイルや価値観に合わせて働き方や支援を選べるため、自己決定感を尊重します 。これらの感覚は、PERMAモデルの「Engagement(没頭)」や「Accomplishment(達成感)」 にも通じ、内発的動機づけを促し、ウェルビーイングを内面から支えると考えられます。
ウェルビーイング推進における人事・労務担当者の役割とは?
ウェルビーイング推進において、人事・労務担当者は企業と従業員をつなぐハブとして、中心的な役割を担います。その役割は、従来の管理業務に加えて、従業員のエンゲージメントを高め、組織開発を促進する「戦略的パートナー」へと進化しつつあり、ウェルビーイング推進はその具体的な実践の場となります。
ウェルビーイング推進のキーパーソンとしての役割
人事・労務担当者は、ウェルビーイング推進の旗振り役として、多岐にわたる活動をリードします。 まず、経営層と緊密に連携し、自社の経営戦略や組織風土、従業員の特性を踏まえたウェルビーイング戦略を立案し、具体的な施策の企画・実行を推進します 。 次に、ウェルビーイングの重要性や会社の取り組みについて、研修の実施や社内広報(社内報、イントラネットなど)を通じて従業員に丁寧に周知し、理解と協力を促進することが求められます 。 また、ウェルビーイング推進は人事部門だけで完結するものではありません。健康管理部門(産業医や保健師など)、各事業部門の管理職、場合によっては労働組合など、関連部署や関係者と緊密に連携し、全社的な取り組みとして推進していく必要があります 。 そして、実施した施策の効果を定期的に測定・分析し、その結果に基づいて改善策を講じ、取り組みを継続的に進化させていくことも重要な役割です 。
関連法規の遵守と職場環境整備
ウェルビーイングの土台となるのは、従業員が安全かつ健康に働ける職場環境です。人事・労務担当者は、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法といった労働関連法規を遵守し、その基盤を整備する責任を負います 。これには、適切な労働時間管理(長時間労働の是正)、ハラスメント防止措置の実施、安全衛生管理体制の構築などが含まれます。 特に、労働安全衛生法においては、事業者は労働者の安全と健康を確保する義務があり、ストレスチェック制度の実施や産業医との連携などが求められています 。 ウェルビーイング推進に関する企業の方針や具体的な制度(例:柔軟な働き方の導入、新たな休暇制度、メンタルヘルス支援策など)を就業規則や関連規程に適切に反映させ、従業員に周知することも重要です 。 さらに、物理的な作業環境の改善(適切な照明、空調、騒音対策など)や、従業員が安心して意見を言え、互いに尊重し合える心理的安全性の高い職場風土の醸成にも積極的に取り組みます。
従業員の声を聞く仕組みづくりと実行
実効性のあるウェルビーイング施策を展開するためには、従業員のニーズや意見を的確に把握することが不可欠です。人事・労務担当者は、従業員がウェルビーイングに関する意見や要望を気軽に、そして安心して伝えられるフィードバックシステムを構築・運用します 。具体的には、目安箱の設置、定期的な匿名アンケートの実施、ハラスメント相談窓口とは別にウェルビーイングに関する専用相談窓口を設けることなどが考えられます。 また、定期的な1on1ミーティングやキャリア面談などを通じて、従業員一人ひとりの状況や考えを丁寧に把握し、個別最適なサポートに繋げることも重要です 。 そして最も大切なのは、収集した従業員の声を真摯に受け止め、分析し、ウェルビーイング施策の改善や新たな取り組みの企画に活かしていくことです 。従業員に「自分たちの声が会社に届き、具体的な変化に繋がる」という実感を繰り返し与えることができれば、従業員の当事者意識が醸成され、ウェルビーイング施策への積極的な参加を促し、施策の効果を高めるだけでなく、従業員自身のエンゲージメントや会社への信頼感の向上にも繋がるという好循環を生み出すことが期待できます。
ウェルビーイング推進に社労士を活用するメリットとは?
ウェルビーイング推進は、人事労務管理、法務、組織開発、健康管理など多岐にわたる専門知識やノウハウが求められます。そのため、これらの分野における専門家である社労士(社会保険労務士)のサポートは、企業が効果的かつ効率的にウェルビーイングを推進する上で非常に有効です。特に、専門的な人事部門を持たない、あるいはリソースが限られている中小企業にとっては、社労士は「外部の専門チーム」として、頼れるパートナーとなり得ます。
専門的視点からの現状分析と課題抽出
社労士は、労働関連法規や最新の人事労務管理の専門家として、企業の労務状況を客観的に診断します。勤怠管理の運用状況、賃金制度の妥当性、就業規則の内容、ハラスメント対策の実施状況など、ウェルビーイングの土台となる部分の課題を的確に洗い出すことができます 。 また、従業員サーベイやストレスチェックの結果を専門的な知見から分析し、データだけでは見えにくい潜在的な問題点や、優先的に取り組むべき課題を特定するサポートを行います 。 さらに、社労士は多くの企業の事例や法改正、助成金の最新情報に精通しているため、それぞれの企業の状況やニーズに合った効果的なアプローチを見つけるための有益な情報提供が期待できます 。
法令遵守を踏まえた制度設計と就業規則整備
ウェルビーイング向上のために新しい制度(例:テレワーク制度、フレックスタイム制度、時間単位の有給休暇制度、メンタルヘルス不調者の休職・復職支援制度など)を導入する際には、労働基準法、労働安全衛生法、育児・介護休業法といった関連法規を遵守した制度設計が不可欠です。社労士は、これらの法的な要件をクリアしつつ、企業の運用実態に即した実効性のある制度構築を支援します 。 導入する制度や法改正(例えば、近年改正が続く育児・介護休業法への対応 は多くの企業にとって喫緊の課題です)に合わせて、就業規則や関連規程の作成・変更をサポートします。これにより、労使間の無用なトラブルを未然に防ぎ、制度の円滑な運用を可能にします 。 適切な制度設計と規程整備は、ハラスメント問題の予防や、メンタルヘルス不調者が発生した場合の適切な対応フローの確立など、企業が抱える様々な労務リスクを低減することにも繋がります。
助成金活用の提案と申請サポートの可能性
ウェルビーイング推進や働き方改革に関連する施策の導入にはコストが伴う場合がありますが、国や地方自治体が提供する様々な助成金を活用することで、その負担を軽減できる可能性があります。社労士は、例えば厚生労働省が管轄する「人材確保等支援助成金」(テレワークコースや雇用管理制度助成コースなど)、「両立支援等助成金」(出生時両立支援コース、育児休業等支援コース、介護離職防止支援コースなど)、「業務改善助成金」 といった数多くの助成金の中から、企業の取り組み内容や状況に合わせて最適なものを調査し、提案します 。 助成金の申請は、要件確認や書類作成が煩雑で専門知識が求められることが多いですが、社労士が申請手続きをサポート(書類作成支援や一部代行など)することで、企業の担当者の負担を大幅に軽減し、受給の可能性を高めることができます 。
研修・セミナーの実施による意識改革支援
ウェルビーイング推進を成功させるためには、経営層から一般従業員まで、組織全体の意識改革が不可欠です。社労士は、そのための研修やセミナーを企画・実施するサポートも行います。 例えば、管理職向けには、ウェルビーイングの重要性、部下のメンタルヘルスケア(ラインケア)の具体的な方法、ハラスメントを発生させないためのコミュニケーション術、適切な労務管理に関する知識などを習得するための研修を提供します 。 一般従業員向けには、セルフケアの方法、ストレスマネジメントスキル、アサーティブコミュニケーション、マインドフルネスといった、一人ひとりのウェルビーイング意識を高めるためのセミナーやワークショップを提供できます 。 これらの研修やセミナーを通じて、ウェルビーイング推進に向けた全社的な共通認識を醸成し、従業員の主体的な取り組みを促進します。
第三者としての客観的なアドバイスと伴走支援
社労士は、社内の人間関係や過去の慣習にとらわれない第三者の立場から、客観的かつ専門的なアドバイスを提供できます 。これにより、社内では気づきにくい問題点や、より効果的な解決策が見つかることがあります。 ウェルビーイング施策の進捗状況を定期的にモニタリングし、効果測定の結果や最新の法改正、社会情勢などを踏まえて、改善策や次の一手を具体的に提案します。 また、時には経営層と従業員の間の橋渡し役となり、円滑なコミュニケーションをサポートし、双方にとって納得感のある合意形成を支援する役割も担うことがあります。 ウェルビーイング推進は一朝一夕に達成できるものではなく、長期的な視点での取り組みが必要です。社労士は、計画策定から施策の実行、効果測定、そして改善に至るまで、継続的に企業に寄り添い、目標達成まで伴走支援します 。このような伴走支援は、ウェルビーイング推進を一過性のプロジェクトで終わらせず、組織文化として定着させるための継続的な推進力と、変化に対応するための調整機能としての役割を果たし、取り組みが形骸化することを防ぎます。
以下に、社労士を活用するメリットと具体的なサポート内容の例をまとめました。
社労士活用のメリット | 具体的なサポート内容例 |
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専門的視点からの現状分析と課題抽出 | 労務診断の実施、従業員サーベイ結果の分析、関連法規との照合、課題の優先順位付け支援、他社事例の提供 |
法令遵守を踏まえた制度設計と就業規則整備 | 最新法改正(育児・介護休業法、労働安全衛生法など)に対応した就業規則・各種規程の作成・改定、ハラスメント防止規程の整備、多様な働き方(テレワーク、フレックス等)導入支援、メンタルヘルス不調者対応フロー構築支援 |
助成金活用の提案と申請サポート | 企業が活用可能な雇用関連助成金(人材確保等支援助成金、両立支援等助成金等)の調査・選定、受給要件の確認、申請計画の策定、申請書類作成代行・支援、行政機関との折衝 |
研修・セミナーの実施による意識改革支援 | 管理職向けラインケア研修・労務管理研修、従業員向けセルフケア研修・ハラスメント防止研修、ウェルビーイング啓発セミナーの企画・実施 |
第三者としての客観的なアドバイスと伴走支援 | 定期的な進捗状況ヒアリングと課題共有、施策の効果測定サポートと改善提案、労使トラブル予防のためのアドバイス、経営層への報告・提言、ウェルビーイング推進委員会の運営サポート |
この表を通じて、社労士がウェルビーイング推進において単なるアドバイザーではなく、実務的な実行支援者であることがお分かりいただけるかと存じます。
よくある質問
ウェルビーイング推進に関して、経営者や人事担当者の皆様からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。
Q. ウェルビーイングとは具体的にどのような状態を指すのですか?簡単に教えてください。
A. ウェルビーイングとは、単に身体的に健康であるだけでなく、精神的にも満たされ、社会的にも良好な関係を築き、幸福を感じている状態を指します 。仕事においては、やりがいを感じ、安心して働くことができ、自己成長を実感できるような状態と言えるでしょう。WHO(世界保健機関)の定義では、「肉体的、精神的、社会的に完全に良好な状態」とされています。
Q. 中小企業でもウェルビーイングに取り組むメリットはありますか?また、デメリットや注意点は?
A. はい、中小企業にこそ大きなメリットがあります。主なメリットは、従業員のモチベーション向上、生産性向上、離職率低下による人材確保・定着、企業イメージ向上による採用力強化、創造性の促進などです 。中小企業は一人ひとりの従業員が組織全体に与える影響が大きいため、ウェルビーイング向上の効果をより実感しやすいと言えます。 注意点としては、効果測定の難しさ、短期的なコスト発生の可能性、全社的な理解と協力体制の構築が必要な点が挙げられます 。しかし、スモールスタートを心がけたり、助成金を活用したり、社労士のような専門家に相談したりすることで、これらの課題に対応しながら貴社に合った進め方を見つけることが可能です。
Q. ウェルビーイングを推進したいのですが、何から手をつければ良いかわかりません。
A. まずは、従業員サーベイやストレスチェックの結果分析、個別ヒアリングなどを通じて自社の現状を客観的に把握し、課題を明確にすることから始めましょう 。その上で、具体的な目標を設定し、優先順位をつけて施策を計画・実行していくというステップが一般的です 。最初から大きなことをやろうとせず、例えば定期的な1on1ミーティングの導入や、感謝を伝え合う文化づくりなど、できることからスモールスタートするのも有効です。社労士にご相談いただければ、現状分析から計画策定、具体的な施策の実行までトータルでサポートいたします。
Q. ウェルビーイング推進に活用できる助成金はありますか?
A. はい、あります。例えば、厚生労働省の「人材確保等支援助成金(テレワークコースや雇用管理制度助成コースなど)」や「両立支援等助成金(出生時両立支援コース、育児休業等支援コース、介護離職防止支援コースなど)」、「業務改善助成金」などが、働きやすい環境整備や従業員のウェルビーイング向上に繋がる取り組みを支援しています 。これらの助成金は、それぞれ対象となる取り組みや受給要件が細かく定められており、申請手続きも複雑な場合があります。社労士にご相談いただければ、貴社が活用できる可能性のある助成金の調査から申請サポートまでお手伝いできますので、ウェルビーイング推進の経済的ハードルを下げるためにも、ぜひご検討ください。
Q. ウェルビーイングの取り組み効果はどのように測定すれば良いですか?
A. ウェルビーイングの効果測定は難しい側面もありますが、いくつかの方法を組み合わせて多角的に評価することが推奨されます 。 具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 従業員サーベイの定点観測: エンゲージメントサーベイ、従業員満足度調査、ストレスチェックなどを定期的に実施し、スコアや各項目の変化を時系列で追います。
- 客観的指標のモニタリング: 離職率、採用応募者数、有給休暇取得率、平均残業時間、健康診断の有所見率、休職者数などの人事関連データを継続的に収集・分析します。
- 従業員からの直接的なフィードバック: 施策への参加状況や満足度に関するアンケート、1on1ミーティングや意見交換会でのヒアリング内容、社内SNSでのコメントなども、定性的な効果を把握する上で重要な情報源となります。 これらの主観的指標と客観的指標を組み合わせ、自社にとって重要なKPI(重要業績評価指標)を設定し、その変化を追っていくことが大切です。
まとめ
ウェルビーイングへの取り組みは、もはや一部の大企業だけのものではありません。従業員一人ひとりが心身ともに健康で、やりがいを感じながら能力を最大限に発揮できる職場環境を構築することは、企業の規模に関わらず、持続的な成長と競争力強化に不可欠な経営戦略です。
本記事では、ウェルビーイングの基本的な考え方から、企業が取り組む具体的なメリット、実践のステップ、そして私たち社労士が専門家としてどのように皆様のウェルビーイング推進をご支援できるかについて解説しました。
何から手をつければ良いか分からない、自社に合った進め方を知りたい、法的な側面や助成金の活用についても相談したいなど、ウェルビーイング推進に関するお悩みやご要望がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。専門家の知見を活用し、効果的かつ効率的に、従業員が輝く職場づくりを実現しましょう。
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