働き方改革の進展に伴い、副業・兼業の扱いは重要な経営課題となっています。
多くの経営者が「時代の流れ」と理解しつつも、本業への支障や情報漏洩のリスクを懸念しているのが実情です。
しかし、旧態依然とした「全面禁止」は法的リスクを招き、優秀な人材を失う要因にもなりかねません。
本記事では、社労士の視点から、リスクを回避しつつ実務に即した就業規則の整備方法を徹底解説します。
- 副業は「原則解禁」だが、許可制によりリスク(競業・過重労働)を管理する方法
- 就業規則に盛り込むべき「4つの不許可事由」と具体的な条文例(競業避止・SNS規定など)
- 無断副業が発覚した際のNG行動(即解雇)と、裁判例に基づく正しい対応フロー
- 副業社員がいる場合の「残業代通算ルール」や「労災」など実務上の注意点
就業規則での「副業禁止」は違法か?
結論から言えば、副業を一律に禁止することは、法的に「無効」と判断されるリスクが極めて高いです。
まずは、法的原則と実務的なバランスを整理しましょう。
原則は「解禁」だが、全面禁止ではなく「許可制」なら有効
憲法第22条第1項では「職業選択の自由」が保障されています。
裁判所も「勤務時間外をどう過ごすかは労働者の自由」というスタンスを貫いており、合理的な理由のない一律禁止は公序良俗に反するとみなされます。
一方で、労働者には「職務専念義務」があり、本業に悪影響を及ぼす副業は制限可能です。
このバランスを保つための最適解が「許可制」の導入です。
事前に会社がリスク判定を行う権限を留保することで、秩序を守る防波堤として機能します。
会社が副業を制限・不許可にできる「4つの正当理由」
厚生労働省のガイドラインに基づき、会社が副業を制限できる正当な理由は以下の4点に集約されます。
これらは不許可の判断基準として、就業規則にも明記すべき項目です。
| 制限の理由 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 1. 労務提供上の支障 | 深夜労働による過労や、物理的なスケジュール重複で本業にミスや欠勤が出る場合。 |
| 2. 企業秘密の漏洩 | 本業で知り得た独自の技術や顧客リストが、副業先で流用されるリスクがある場合。 |
| 3. 競業避止(利益相反) | ライバル企業で働いたり、自ら競合事業を営んだりする、会社への背信行為。 |
| 4. 信用失墜・名誉毀損 | 反社会的勢力との関わりや公序良俗に反する業務など、企業の品位を汚す場合。 |
副業規定のポイントと記載例
実務で使える「条文例」を紹介します。
会社の規模や業種によって必要なニュアンスは異なりますが、ここでは汎用的かつ会社を守れる強固な条文構成を提案します。
届出制ではなく「許可制」にすべき理由
「届出制」は、報告さえすれば会社の承諾なしに開始できるため、管理の穴が大きくなります。
一度受理した副業を後から止めるのは法的にハードルが高く、懲戒処分を行おうとしても「会社は知っていた」という反論を許すことになりかねません。
一方「許可制」は、「開始前に止めることができる」のが最大のメリットです。
競業のリスクや過重労働の懸念を事前に審査し、必要であれば指導を行えるため、従業員が無自覚に違反行為に及ぶことを未然に防ぎ、結果として従業員を守ることにもつながります。
【条文例】同業他社でのアルバイトを禁止する「競業避止」
競業避止義務は、会社の売上や利益に直結する非常に重要な項目です。曖昧な表現ではなく、具体的に禁止する行為を特定することがポイントです。
【条文記載例】
第○条(副業・兼業の制限)
- 従業員が副業・兼業を行おうとする場合は、事前に所定の申請書を提出し、会社の許可を得なければならない。
- 会社は、前項の申請が次の各号のいずれかに該当する場合、許可をしないことができる。
(1) 会社の正当な利益を害するおそれがある場合
(2) 会社と競業する他社に雇用され、または業務委託契約等を締結して役務を提供する場合
(3) 自ら会社と競業する事業を営むこと、または競業する会社の役員等に就任する場合
(4) その他、会社と利益相反関係を生じさせる活動を行う場合
【解説】
この条文のポイントは、「競業」の定義を広く取っている点です。
単に「同業他社への就職」と書くだけでは、抜け道が生じる可能性があります。
例えば、「雇用契約」ではなく「業務委託契約」であれば就職ではないと主張されるかもしれません。
あるいは、友人が立ち上げた同業会社の「手伝い」や「アドバイザー」といった名目であれば逃れられると考える従業員もいるでしょう。
そのため、上記例のように「雇用され」「業務委託契約等を締結して」「自ら事業を営む」「役員等に就任する」と、あらゆる形態を網羅的に列挙することが重要です。
これにより、どのような形であれ、ライバル関係になる活動は認めないという会社の強い意志を示すことができます。
【条文例】本業に支障を出さないための「長時間労働の制限」
働き方改革関連法により、残業時間の上限規制が厳格化されています。
副業によって本業の労働時間管理がおろそかになると、会社自身が労働基準法違反に問われるリスクがあります。
【条文記載例】
第○条(労働時間の管理および健康配慮)
会社は、従業員の健康管理および労働基準法遵守の観点から、副業・兼業先での労働時間を含めた総労働時間を把握し、管理するものとする。
従業員は、副業・兼業を行うにあたり、本業に支障を来さないよう、自らの責任において健康管理および時間管理を行わなければならない。
会社は、次の各号に該当する場合、副業・兼業の許可を取り消し、またはその内容の変更を命じることができる。
(1) 本業と副業・兼業の労働時間を通算し、法令で定める時間外労働の上限規制を超えるおそれがある場合
(2) 連日の深夜労働や休日なしの勤務等により、従業員の疲労蓄積が著しく、健康を害するおそれが高いと認められる場合
(3) 前各号のほか、本業の労務提供に具体的な支障が生じていると会社が判断した場合
【解説】
ここでは、労働時間の「通算」について触れている点が重要です。
法的には、事業主が異なっても労働時間は通算されます(労働基準法第38条)。
したがって、会社としては「副業先でどれだけ働いているか」を知る権利と義務があります。
この規定を設けることで、会社は定期的に副業の状況をモニタリングし、もし「最近、残業が増えて顔色が悪いな」と感じた場合に、この条文を根拠として副業の制限や停止を命じることが可能になります。
また、「自らの責任において」という文言を入れることで、従業員自身の自律的な管理を促す効果も期待できます。
【条文例】会社の信用を守る「秘密保持」と「SNS利用規定」
現代ならではのリスクに対応するための条文です。
情報漏洩や炎上は、一度起きると企業の存続に関わるダメージとなり得ます。
【条文記載例】
第○条(秘密保持および信用維持)
従業員は、副業・兼業に従事するにあたり、会社の機密情報(顧客名簿、技術データ、営業ノウハウ、人事情報等を含むがこれらに限られない)を漏洩し、または使用してはならない。従業員は、副業・兼業において、会社の名誉や信用を毀損する行為、またはそのおそれのある行為を行ってはならない。
インターネットやSNS等を利用した副業・兼業を行う場合、会社の許可なく、会社の社名、ロゴ、または自身が会社に所属していることを特定できる情報を掲載してはならない。
副業・兼業の内容が、公序良俗に反する場合、または反社会的勢力と関係がある場合は、これを許可しない。
【解説】
第1項では、何が機密情報にあたるかを例示しています。
これにより、従業員が「これは秘密だと思わなかった」と言い逃れすることを防ぎます。
第3項のSNS規定は、近年特に重要性が増しています。
「某大手商社勤務」などの肩書きをプロフィールに入れて過激な発言をするアカウントが炎上し、特定班によって企業が特定され、会社にクレームが殺到する事例は後を絶ちません。
個人の発信活動は自由ですが、会社の看板を使うことには許可が必要であると明確に定めておくことで、こうした巻き込まれ事故のリスクを低減できます。
参考:就業規則に「副業」の定めがない場合のリスクについては下記記事を参考にしてください


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もし従業員が勝手に副業したら?違反発覚時の対応
ルールを破る従業員が出た際、感情的な即解雇は厳禁です。
日本の労働法において解雇は「最終手段」であり、形式的な規則違反だけでは、裁判で「解雇権の濫用」とされるリスクが非常に高いためです。
まずは冷静に事実確認を行い、段階的な対応を検討しましょう。
即解雇はNG?「懲戒解雇」が認められるハードルは高い
不当解雇のリスクとして、労働契約法第16条の「解雇権濫用の法理」を理解する必要があります。
単に「無断で副業した」という事実だけでは不十分で、以下の要素が厳しく審査されます。
- 企業秩序の著しい乱れ(例:引き抜き行為など)
- 会社への重大な損害(例:機密情報の流出)
- 信頼関係の完全な破壊(例:競合他社の役員就任)
実害がない(例:本業に影響のない範囲の単発バイト)場合、解雇は無効となり、会社が多額の賠償金を支払うリスクがあります。
過去の裁判例から見る「処分が有効になるケース」
裁判所が処分を「有効」と認めるかどうかの境界線は、企業秩序への影響度や背信性の強さにあります。
以下の代表的な3つの判例は、実務上の判断基準として非常に重要です。
| 裁判例(事件名) | 処分の有効性 | 判断のポイントと実務への教訓 |
|---|---|---|
| 小川建設事件 | 有効(解雇) | 毎日6時間の深夜労働。 実際にミスがなくても、本業への労務提供に支障が出る可能性が極めて高いと判断されました。 |
| 橋元運輸事件 | 有効(解雇) | 管理職がライバル会社の取締役に就任。 地位の高い者が競業行為を行うことは、会社への重大な背信行為とみなされます。 |
| マンナ運輸事件 | 不当(不許可が違法) | 本業に支障がない副業を、会社が合理的な理由なく不許可にし続けるのは「裁量権の逸脱」であり、慰謝料請求の対象となります。 |
要注意:会社側の拒否が「違法」となった事例(マンナ運輸事件)
「許可制なら、会社は何でも拒否できる」わけではありません。
- 事案:給与カットを補うための「休日の数時間だけの副業」を、会社が合理的な理由なく何度も却下したケース。
- 判決:裁判所は会社の対応を「裁量権の逸脱(ルールを盾にした嫌がらせ)」とみなし、会社側に慰謝料の支払いを命じました。
- 教訓:不許可にするには、本業への支障や情報漏洩リスクといった「納得感のある客観的な理由」が不可欠です。
これらの判例から、不許可や懲戒処分には、単なる規則違反だけでなく「客観的かつ合理的な理由」が不可欠であることがわかります。
実務的な対応フロー:事実確認から始末書、軽い懲戒まで
以上の判例を踏まえ、実務において違反者が出た場合の安全な対応フローを整理します。
まずは「噂」や「密告」の段階で動くのではなく、裏付けを取ります。
- 本人のSNSの投稿(副業の様子がアップされていないか)
- 副業先のホームページ(名前や写真が載っていないか)
- 興信所による調査(必要に応じて)
などを通じて、副業の内容、頻度、期間を客観的に把握します。
いきなり処分通知を突きつけるのではなく、本人を呼んで面談を行います。
「副業をしているという話を聞いたが事実か?」と確認し、本人の言い分(弁明)を聞きます。
「親の介護費用が必要だった」「規定を知らなかった」「ボランティアの延長だと思っていた」など、情状酌量の余地がある事情が出てくるかもしれません。
この「話を聞くプロセス」を踏んだかどうかが、後の紛争で処分の正当性を主張する際に重要になります。
前述の「4つの正当理由」に照らし、会社への実害を検証します。
- 過重労働になっているか?
- 競業にあたるか?
- 機密情報は漏れているか?
この段階で、実害がほとんどない(例:休日に趣味の手芸品をネットで売っている程度)のであれば、重い処分は避けるべきとの判断になります。
違反の程度に応じて処分を決定します。
| 違反の程度 | 推奨される対応 | 処分の内容 |
|---|---|---|
| 軽微(実害なし、初犯) | 注意指導・始末書 | 口頭注意またはけん責(始末書提出)。副業は正規の手続きで許可し、継続を認めることも検討。 |
| 中程度(軽度の業務支障、無断継続) | 軽い懲戒処分 | 減給または出勤停止。副業の即時停止命令。 |
| 重大(競業、秘密漏洩、著しい業務支障) | 重い懲戒処分 | 懲戒解雇または諭旨解雇。損害賠償請求も視野に。 |
一人の違反者が出たということは、他の従業員も同様のことを考えている可能性があります。
就業規則の再周知を行い、許可申請のルールを改めて全社員に説明することで、組織全体の引き締めを図ります。
副業社員がいる場合の「労働時間管理」と「労災」の注意点
人事労務担当者にとって、副業解禁の最大のハードルは、法律上の管理が複雑になることです。
特に「労働時間管理(残業代)」と「労災保険」については、知らなかったでは済まされない法的責任が発生します。
労働時間の通算ルール(割増賃金の支払い義務はどちらにあるか)
労働基準法第38条第1項には、次のような規定があります。
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
これは非常に強力な規定です。
A社(本業)とB社(副業)という全く別の会社で働いていても、法律上は「一人の労働者の労働時間」として合計して計算しなければなりません。
そして、その合計時間が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた場合、その超過分については割増賃金(残業代)を支払う義務が発生します。
ここで最大の問題となるのが、「どちらの会社が残業代を払うのか?」という点です。
原則的なルールは、「後から労働契約を締結した会社」に支払い義務があります。
【具体例】
- A社(本業・先に契約):所定労働時間 9:00〜18:00(休憩1時間、実働8時間)
- B社(副業・後に契約):所定労働時間 19:00〜22:00(実働3時間)
このケースでは、A社で働いた時点で、すでに法定労働時間の8時間に達しています。
したがって、その後に働くB社での3時間は、すべてが「法定時間外労働」となります。
結果として、B社(副業先)は、時給等の賃金に加えて、最初から割増賃金(通常の1.25倍以上)を支払わなければなりません。
多くの副業先企業は、このルールを知らずに通常の時給しか払っていないケースがありますが、これは厳密には労働基準法違反(賃金未払い)となります。
逆に言えば、自社の社員が他社で副業をする場合(自社がA社の立場)、自社には割増賃金の支払い義務は原則発生しません。
ただし、自社で残業させた場合は、通算ルールの適用順序が複雑になるため注意が必要です。
【管理モデル(簡便な計算方法)】
いちいち他社での労働時間を把握して日次で計算するのは、実務上ほぼ不可能です。
そこで厚生労働省は「管理モデル」という手法を提案しています。
これは、副業開始時に、A社とB社それぞれの「労働時間の上限枠」を決めてしまう方法です。
- A社枠:所定内+残業10時間まで
- B社枠:所定内+残業5時間まで
このように枠を決めておけば、それぞれの枠内である限り、相手の会社の労働時間を気にせず、自社の労働時間だけで割増賃金を計算できるという特例的な運用です。
導入には労使協定等の手続きが必要ですが、事務負担を劇的に減らすことができます。
副業先への移動中に怪我をしたら?労災保険の適用関係
次に、労災保険についてです。
副業を持つ労働者が増えたことに対応し、2020年(令和2年)9月に労災保険法が改正され、補償内容が手厚くなりました。
1. 移動中の災害(通勤災害)
本業の会社(A社)を退社し、そのまま副業の会社(B社)へ向かう移動中に事故に遭った場合、これは「通勤災害」として認定されます。
法改正により、「就業の場所から他の就業の場所への移動」も通勤の定義に明確に含まれるようになりました。
この場合、原則として「移動の終点となる会社(これから働く会社=B社)」の労災保険を使って申請を行います。
ただし、どちらの会社の業務とも言えない微妙なケースもあるため、事故が起きた際は管轄の労働基準監督署に相談することが確実です。
2. 複数事業労働者への給付(合算ルール)
これが最も大きな改正点です。
以前は、副業先(B社)で怪我をして休業する場合、B社の低い賃金のみをベースに休業補償が計算されていました。
これでは、生活を支える本業の収入が補償されず、被災労働者が困窮してしまいます。
改正後は、「本業(A社)と副業(B社)の賃金を合算した額」を基礎として、休業給付などの補償額が決定されるようになりました。
これにより、どちらの職場で事故が起きても、労働者の生活水準に見合った十分な補償が受けられるようになっています。
企業としては、副業を許可する際、こうした労災のリスクも説明し、「移動には公共交通機関を使うこと」「無理な急ぎの移動をしないこと」といった安全指導を行うことが望まれます。
副業を許可する際に提出させるべき書類(トラブル防止)
ここまで解説してきた通り、副業許可制の運用には様々な法的ポイントがあります。
これらを確実に担保し、後々のトラブルを防ぐためには、口頭でのやり取りではなく、しっかりとした書面を取り交わすことが不可欠です。
最後に、会社が用意しておくべき2つの重要書類、「副業許可申請書」と「誓約書」について、その雛形と必須項目を解説します。
副業許可申請書と誓約書の雛形
この書類は、単なる事務手続きのための紙切れではありません。
万が一裁判になった際、「会社はリスクを説明し、本人はそれを理解して誓約した」ということを証明する強力な証拠となります。
【副業許可申請書・誓約書 記載例】
副業・兼業許可申請書 兼 誓約書
株式会社〇〇 代表取締役 殿
私は、就業規則第〇条に基づき、以下の通り副業・兼業の許可を申請します。なお、許可された場合には、以下の誓約事項を遵守することを誓約します。
1. 副業・兼業先の情報
- 企業名(屋号): 株式会社△△
- 所在地: 東京都〇〇区…
- 事業内容: Webサイト制作およびコンサルティング
- 雇用形態: アルバイト ・ 業務委託 ・ 自営 ・ その他
- 契約期間: 202〇年〇月〇日 ~ 202〇年〇月〇日
- 従事する業務内容: プログラミングおよびデバッグ作業
2. 勤務時間・日数
- 勤務日: 毎週 土曜日・日曜日
- 勤務時間: 10:00 ~ 16:00 (休憩 1時間)
- 所定外労働の有無: 無 ・ 有(月〇時間程度)
3. 誓約事項
(職務専念) 副業・兼業を行うことにより、貴社における業務遂行に支障を来さないよう、健康管理および時間管理を徹底します。疲労の蓄積等により本業に悪影響が生じた場合は、直ちに副業・兼業を中止または縮小します。
(秘密保持) 貴社の業務上知り得た技術、ノウハウ、顧客情報等の機密情報を、副業・兼業先において一切漏洩・使用しません。
(競業避止) 貴社と競合する事業者への就労や、競合する事業の自営は行いません。また、貴社の顧客を副業・兼業先に誘導する等の利益相反行為を行いません。
(信用維持) 貴社の名誉や信用を損なうような行為、または貴社の品位を汚すような職務には従事しません。また、貴社の許可なく、貴社の社名や所属を対外的に表示しません。
(報告義務) 申請内容に変更が生じた場合、または副業・兼業を終了した場合は、速やかに会社に報告します。
(損害賠償・処分) 本誓約事項に違反し、貴社に損害を与えた場合は、その損害を賠償する責任を負います。また、違反が発覚した場合は、副業・兼業の許可が取り消され、就業規則に基づく懲戒処分を受けることに異議を申し立てません。
年 月 日
所属:〇〇部
氏名:〇〇 〇〇 印
【書類作成のポイント】
- 事業内容の詳細確認: 「IT関連」といったざっくりした記載ではなく、具体的に何をするのかを書かせることで、競業リスクを正確に判定します。
- 雇用形態の確認: アルバイト(労働契約)なのか、業務委託(請負・委任)なのかによって、前述の「労働時間通算ルール」の適用有無が変わるため、必須の項目です。
- 許可の取消権の明記: 誓約事項の最後に、「違反時は許可を取り消す」と明記しておくことで、問題発生時にスムーズに停止命令を出せるようにしておきます。
まとめ
副業・兼業の解禁は、もはや避けては通れない時代の潮流です。
企業にとっては、情報漏洩や労務管理といった新たなリスクへの対応が求められる一方で、従業員の自律的なキャリア形成を促し、社外で得た知見を本業に還元してもらう(オープンイノベーション)という大きなチャンスでもあります。
重要なのは、リスクを恐れて「全面禁止」に逃げ込むことではなく、「許可制」という適切なフィルタリング機能を実装し、リスクをコントロール可能な状態に置くことです。
今回解説した以下のポイントを、ぜひ自社の就業規則整備に役立ててください。
- 「原則解禁・許可制」への移行: 全面禁止は違法リスクが高い。許可制により審査権限を確保する
- 4つの基準の明記: 就業規則には「競業避止」「秘密保持」「労務提供上の支障」「信用失墜」の4つの不許可事由を明記する
- 適正な運用フロー:無断副業が発覚しても即解雇は避け、実害の有無を確認した上で段階的な処分を行う
- 副業者の労働時間の通算:残業代や労災の適用ルール(移動中の災害など)を把握しておく
就業規則の実務的な運用や法的な判断に迷うことがあれば、労務の専門家へ相談するのも一つの手です。
プロの視点を取り入れることで、リスクを未然に防ぎ、より強固で安心な組織体制を築くことができます。
まずは自社の規定が現状に即しているか、一度点検することから始めてみましょう。


