従業員が10名を超え、法律で就業規則の作成・届出が義務となり、情報収集をされている経営者・人事担当者の皆様へ。今、まさに「無料のテンプレートで済ませるべきか、それとも費用をかけて専門家である社労士に依頼すべきか」という岐路に立たれているのではないでしょうか。
この記事では、単なる費用の比較に留まりません。「なぜ、専門家である社労士への依頼が必要なのか」という本質的な問いに対し、人事労務の専門家である社労士事務所altruloopが、実際のトラブル事例や法的な観点を交えながら、具体的にお答えします。
就業規則、無料テンプレートで本当に大丈夫?潜む3つの落とし穴
コストをかけずに就業規則を作成できる無料テンプレートは、確かに魅力的です。しかし、そのテンプレートをそのまま利用することは、会社の未来に3つの大きな「落とし穴」を掘る行為に他なりません。ここでは、多くの経営者が見落としがちな、致命的なリスクを具体的に解説します。
落とし穴1:法改正に追いつけず、気づかぬうちに法律違反に
最も警戒すべきリスクは、「知らないうちに法律違反を犯している」ことです。労働基準法をはじめとする労働関連法規は、社会情勢の変化に合わせて頻繁に、時には毎年改正されます 。しかし、インターネット上で配布されているテンプレートの多くは、一度作成されたきり更新されておらず、最新の法律に対応していないケースが散見されます 。
例えば、働き方改革関連法によって義務化された「年5日の年次有給休暇の取得義務」や、育児・介護休業法の改正による「産後パパ育休(出生時育児休業)」の新設など、近年の法改正は多岐にわたります。古いテンプレートには当然これらの規定は盛り込まれておらず、使用した時点で法令違反の状態となってしまいます。
厚生労働省が提供している「モデル就業規則」でさえ、あくまで「参考例」に過ぎません 。これをそのまま使うだけでは、自社の実態に合わないばかりか、法改正のたびに自社で内容を見直し、修正し続けなければなりません。
就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」が一つでも欠けていれば、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科される可能性もあります 。無料テンプレートという安易な選択が、結果的に法的な罰則という手痛い代償につながる危険性を、決して軽視してはなりません。
落とし穴2:実態と合わない雛形を使い、いざという時に会社を守れない
就業規則は、会社の「憲法」とも言える重要なルールブックです。しかし、テンプレートの画一的な条文は、現代の多様な働き方や、予期せぬ労務トラブルから会社を守る盾にはなり得ません。
多様な働き方への未対応が生むトラブル
近年、リモートワーク(テレワーク)や副業・兼業を導入する企業が増えていますが、一般的なテンプレートはこれらの新しい働き方を想定していません 。
例えばリモートワークでは、通信費や光熱費の負担、オフィス外での労働時間管理、情報セキュリティの確保といった特有のルールが必要です 。これらの定めがないままでは、費用負担をめぐる対立や、情報漏洩といった重大なインシデントにつながりかねません。
また、副業を無条件に認めてしまうと、従業員の長時間労働による健康問題や、本業への支障、競合他社での就労による利益相反といったリスクが発生します 。これらのリスクを管理するためには、会社の許可を必要とする「許可制」を導入し、その基準を就業規則に明確に定めておくことが不可欠です。
副業に関する規定の具体的な作り方については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

またリモートワークに関する規程はこちらの記事で詳しく解説しています。

「問題社員」への対応ができず、紛争に発展
労務トラブルの中でも特に深刻なのが、「問題社員」への対応です。テンプレートにある「職場の風紀・秩序を乱す行為」といった抽象的な懲戒事由だけでは、具体的な問題行動に対して有効な措置を講じることは困難です。
例えば、従業員がSNSで会社を誹謗中傷した場合、テンプレートの規定では懲戒解雇の根拠として弱く、不当解雇として訴訟に発展するリスクが非常に高くなります 。裁判で不当解雇と判断されれば、解雇の無効だけでなく、多額のバックペイ(解雇期間中の賃金支払い)を命じられる可能性もあります 。
会社を確実に守るためには、問題行動の具体例(例:SNSでの誹謗中傷、機密情報の漏洩、ハラスメント行為など)を就業規則に網羅的に列挙し、懲戒処分の種類と手続きを段階的に定めておく必要があります 。こうした備えがあって初めて、会社は正当な権利として秩序を維持し、リスクを管理できるのです。
良くあるトラブルに対する対策はこちらの記事で詳しく解説しています。

落とし穴3:助成金の要件を満たせず、数百万円の機会損失も
就業規則は、会社を守る「守りのツール」であると同時に、助成金を活用して経営を強化する「攻めのツール」でもあります。しかし、テンプレートの就業規則では、この最大のチャンスを逃すことになります。
特に影響が大きいのが、非正規雇用労働者の正社員転換などを支援する「キャリアアップ助成金」です。この助成金は、要件を満たせば従業員1人あたり最大で80万円という高額な支給が受けられますが、その審査では就業規則の内容が厳格にチェックされます 。
テンプレート利用で不支給となる典型的なケースは以下の通りです。
- 賞与・退職金規定の不備:正社員の待遇として「賞与または退職金の制度」があることが必須です。「業績により支給する場合がある」といった曖昧な表現では認められず、原則として支給する旨が明記されていなければなりません 。
- 昇給規定の欠如:就業規則に「昇給に関する事項」が明確に定められている必要があります 。
- 正社員の定義が不明確:正社員とパートタイマーなど、他の雇用形態との労働条件(賃金体系、手当など)の違いが、就業規則や賃金規程で明確に区別されている必要があります 。
- 規定整備のタイミング:これらの規定は、正社員へ転換する6ヶ月以上前に整備され、適用されていなければなりません 。
助成金の審査官は、会社の意図を汲み取ってはくれません。就業規則を「技術仕様書」のように捉え、要件を満たす文言が一つでも欠けていれば、機械的に不支給と判断します。たった一つの条文の不備で、本来得られるはずだった数百万円の資金を失う。これこそが、無料テンプレートがもたらす最大の「見えない損失」なのです。
助成金に関する就業規則の作り方は下記記事を参考にしてください。


社労士への依頼費用、その「価格」には理由があります
無料テンプレートのリスクを理解すると、次に気になるのは「では、社労士に頼むといくらかかるのか?」という点でしょう。ここでは、費用の相場観と、その価格に含まれる本質的な価値について、包み隠さず解説します。
費用相場:作成で20万円~、顧問契約ならもっと安く
社労士に就業規則の作成を依頼する場合の費用は、依頼内容や事務所によって異なりますが、一般的な相場は存在します。まず、その全体像を把握しましょう。
サービス内容 | 費用相場 | 備考 |
---|---|---|
就業規則の新規作成 | 200,000円 ~ 300,000円 | 企業の規模や規程の複雑さにより変動 |
就業規則の変更・見直し | 50,000円 ~ 150,000円 | 変更範囲によります |
顧問契約内の作成 | 顧問料+割引価格 | 多くの事務所で作成費用が割引になります |
格安サービス | 30,000円 ~ | 付属規程が別料金の場合が多く注意が必要です |
新規で一から作成する場合、20万円~30万円程度が中心的な価格帯です 。ただし、これはあくまで目安であり、従業員数や業種、盛り込む規程の複雑さによって変動します。
ここで注意したいのが、一部の格安サービスに見られる「価格のトリック」です 。例えば「就業規則作成3万円」と謳っていても、それが対象としているのは正社員向けの「本則」のみというケースがあります。しかし、法律上、パートタイマーや契約社員がいる場合は、その従業員向けの就業規則も別途必要です。また、育児・介護休業規程なども、多くの場合、別規程として作成が求められます。結果的に、必要な規程をすべて揃えると、当初の価格からは程遠い金額になってしまうことがあるのです。
一方で、顧問契約を締結している場合、就業規則の作成費用が割引価格で提供されることが多く、長期的な視点で見ればコストを抑える賢い選択肢となり得ます 。
社労士事務所altruloopの就業規則の作成・見直しのサービスページはこちら
料金に含まれるもの:書類作成だけではない、3つの価値
社労士に支払う費用は、単なる「書類作成代」ではありません。その価格には、会社の未来を守り、成長を後押しするための、大きく分けて3つの専門的な価値が含まれています 。
- 徹底したヒアリングに基づく「完全オーダーメイド」の防御策
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社労士は、テンプレートを流用しません。まず、経営者や人事担当者へ徹底的なヒアリングを行い、貴社の事業内容、従業員の働き方の実態、企業文化、そして潜在的な労務リスクまでを深く理解します 。その上で、貴社のためだけに最適化された、いわば「オーダーメイドの鎧」としての就業規則を設計します。
- 法務の専門家としての「プロアクティブなリスク管理」
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経験豊富な社労士は、過去の数多くの労働紛争事例や裁判例を熟知しています 。そのため、現時点では問題になっていなくても、将来トラブルの火種となり得る「グレーゾーン」を予見し、先回りして対策を講じることが可能です。これは、法務の専門知識がないままでは決してできない、プロならではの価値です。
- 経営目標を達成するための「攻めの経営ツール」
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優れた就業規則は、会社を守る「盾」であると同時に、経営目標を達成するための「剣」にもなります。例えば、助成金の受給要件を戦略的に満たす条文を設計したり 、従業員のモチベーションを高める評価・賃金制度を規程に連動させたりすることで、就業規則を企業の成長を加速させるための強力なツールへと昇華させることができるのです 。
費用対効果:「安心」と「時間」を生む、未来への投資
最終的に、社労士への依頼費用は「コスト」ではなく「投資」です。そのリターンは計り知れません。
例えば、20万円の費用で就業規則を作成したとします。これにより、30万円の罰金リスクを回避し、1人あたり80万円の助成金の不支給リスクを防ぎ、金額には換算できない訴訟リスクと、その対応に費やす膨大な時間と労力から解放されるのです 。
経営者が本来集中すべきは、日々の労務管理の不安ではなく、事業の成長です。専門家に任せることで得られる「法的な安心感」と、経営に専念できる「貴重な時間」。これこそが、社労士に依頼する最大の費用対効果と言えるでしょう。
就業規則の作成・変更の依頼の流れと対応地域【altruloopの場合】
「社労士に依頼する価値は分かった。でも、どうやって依頼すればいいのか分からない」という方のために、ここからは具体的な依頼のステップと、後悔しないための社労士選びのポイントを解説します。
ご相談から届出まで、最短1ヶ月の5ステップ
社労士事務所altruloopでは、お客様の負担を最小限に抑え、スムーズに手続きを進めるため、以下の5つのステップで就業規則作成をサポートします。ご依頼から労働基準監督署への届出まで、標準的には1ヶ月~1.5ヶ月で完了します 。
まず、初回無料相談にて、貴社の現状、お悩み、そして就業規則に込めたい想いやビジョンをじっくりお伺いします 。労働時間、休日、賃金体系など、具体的な労働条件についても確認させていただきます。
ヒアリング内容に基づき、貴社に最適な就業規則の構成とサービス内容をご提案し、明確な料金をお見積りします。ご納得いただけた上で、正式にご契約となります。
ヒアリングから約2週間で、貴社専用の就業規則の原案(たたき台)を作成し、ご提示します。内容をご確認いただき、修正や追加のご要望を反映させながら、完成度を高めていきます。
完成した就業規則案を基に、法律で定められた手続きである「従業員代表からの意見聴取」を行います。意見書への記入方法なども含め、全面的にサポートします。
完成した就業規則、意見書、届出書を、当事務所が責任を持って管轄の労働基準監督署へ届け出ます。届出完了後、製本したものと編集可能なデータ形式で納品し、従業員の皆様への周知方法についてもアドバイスいたします。
対応地域:東京23区を中心に、全国オンライン対応
社労士事務所altruloopは、東京23区を中心に首都圏での対面相談にも対応しております。また、Zoomなどのオンライン会議システムを活用し、全国のお客様からのご相談、ご依頼に対応可能です。遠方のお客様も、どうぞお気軽にお問い合わせください。
北海道/青森県/岩手県/宮城県/秋田県/山形県/福島県/茨城県/栃木県/群馬県/埼玉県/千葉県/東京都/神奈川県/
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熊本県/大分県/宮崎県/鹿児島県/沖縄県
よくある質問
就業規則の作成に関して、お客様から特によくいただくご質問とその回答をまとめました。
Q. 従業員が10名未満でも、作成した方が良いですか?
はい、強く推奨します。労働基準法上の作成義務は常時10名以上の事業場に課せられていますが、労働トラブルは企業の規模に関係なく起こり得ます 。従業員が1名でも、採用時に労働条件や職場のルールを明文化した就業規則を提示することで、認識のズレを防ぎ、安心して働ける環境の証明となります。将来のトラブルを未然に防ぐ「予防法務」の観点から、早期の作成が望ましいです。
従業員10人未満での就業規則の必要性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

Q. 相談だけでも可能ですか?
もちろん可能です。当事務所では、「既存の就業規則に法的なリスクがないか診断してほしい」「最近の法改正について、自社で対応すべきことを教えてほしい」といったご相談だけでも承っております 。貴社の状況を丁寧にヒアリングした上で、必ずしも全面的な改訂だけが選択肢ではありません。現状のリスクとメリット・デメリットを整理し、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。
Q. 助成金に強い就業規則とは何ですか?
申請したい助成金の支給要件を熟知し、その要件を過不足なく満たすように戦略的に整備された就業規則のことです。例えば、キャリアアップ助成金であれば正社員転換制度や賃金アップの根拠規定、両立支援等助成金であれば育児・介護休業に関する規定などを、助成金の審査官が判断に迷わないよう、明確かつ具体的に定める必要があります 。ただ条文を設けるだけでなく、助成金の趣旨や審査のポイントを理解した上で作成することで、受給の可能性が格段に高まります。
Q. 納期はどのくらいかかりますか?
ヒアリングから初回案のご提示までにおよそ2週間、その後の修正と最終確認、従業員代表の意見聴取などを経て、ご依頼から1ヶ月~1.5ヶ月での届出が標準的なスケジュールです。もちろん、これはあくまで目安であり、規程のボリュームやお客様との打ち合わせの頻度によって変動します。お急ぎの場合も、可能な限り柔軟に対応いたしますので、まずはご希望の納期をご相談ください。
まとめ
就業規則は、作成が法律で義務付けられているから作る、単なる「守り」の書類ではありません。適切に設計・運用することで、助成金の活用による資金調達、明確なルールによる従業員のエンゲージメント向上、そして企業理念の浸透といった、企業の成長を後押しする「攻め」の経営ツールとなり得ます。
目先のコスト削減のために無料テンプレートを利用する選択は、法改正への未対応、労務トラブルの発生、そして得られるはずだった助成金の機会損失という、計り知れないリスクを将来に先送りする行為に他なりません。
社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)では、全国対応・初回相談無料でご相談を承っております。人事労務に関するお悩みはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。