【社労士との顧問契約】費用相場・契約内容・メリットを徹底解説

「社労士との顧問契約、本当に必要だろうか?」「費用に見合う価値はあるのだろうか?」 このようなお悩みをお持ちの中小企業経営者・労務担当者様は少なくありません。特に、スポット契約という選択肢もある中で、顧問契約に踏み切るべきか判断に迷うのは当然のことです。

この記事では、単なる料金やサービス内容の解説に留まらず、貴社が顧問契約を結ぶべきか否かを判断するための「明確な基準」を提示します。社労士事務所altruloopが、日々多くの経営者様からご相談いただくプロの視点から、その本質を解説します。

目次

まずは結論から:社労士の顧問料、費用相場は「従業員数」が基準です

社労士の顧問料について、多くの方が最初に知りたいのは「結局、いくらかかるのか?」という点でしょう。結論から言うと、顧問料の最も基本的な基準は「従業員数」です。

なぜなら、従業員数が増えるほど、入社・退社に伴う社会保険手続きの頻度や、労務管理の複雑さ、そして労務トラブルの発生確率が比例して高くなるからです 。顧問料は、この業務量とリスクの大きさを反映した、合理的な料金体系となっています。  

【料金表】従業員数ごとの顧問料の目安

以下は、一般的な業務(労務相談・労働社会保険手続き代行)を依頼した場合の顧問料の目安です。自社の規模と照らし合わせて、大まかな費用感を掴んでください。

従業員数顧問料(月額・税別)の目安
~9名20,000円~
10名~19名30,000円~
20名~49名50,000円~
50名~別途お見積もり

※上記はあくまで一般的な相場です 。サービス内容や事務所によって変動します。  

社労士事務所altruloopの料金表はこちら

顧問料に含まれるもの・含まれないもの

顧問契約を結ぶ際に重要なのが、料金に「何が含まれ、何が含まれないのか」を正確に把握することです。これにより、後から「これもやってもらえると思っていた」という認識のズレを防ぐことができます。

【顧問料に含まれることが多い業務】

  • 労務相談:労働時間、休日、ハラスメント、問題社員対応など、日々の労務に関するあらゆる相談への助言 。  
  • 労働・社会保険の手続き代行:従業員の入社・退社、出産、労災発生時などの各種手続き書類の作成と提出 。  
  • 法改正情報の提供:働き方改革関連法など、めまぐるしく変わる法律の最新情報と、企業が対応すべきことの案内 。  

【別途費用となることが多い業務(オプション)】

  • 給与計算:毎月の給与計算、賞与計算、年末調整など 。  
  • 就業規則の新規作成・大幅な改定:会社の憲法ともいえる就業規則をゼロから作成したり、全面的な見直しを行ったりする業務 。  
  • 助成金申請:雇用関連の助成金など、申請が複雑な書類の作成・提出代行 。  
  • 労務監査や行政調査の立会い:労働基準監督署などの調査に専門家として立ち会い、対応をサポートする業務 。  

これらのオプション業務は、顧問契約とセットで依頼することで、スポット(単発)で依頼するよりも割引料金が適用されるケースが多くあります 。  

なぜ事務所によって料金が違うのか?

同じ従業員数でも、社労士事務所によって顧問料が異なるのはなぜでしょうか。その理由は主に3つあります。

サービス範囲の違い

顧問料にどこまでのサービスが含まれているかは、事務所によって様々です。例えば、定期的な訪問コンサルティングが含まれている、チャットツールでの迅速な相談対応を標準サービスとしているなど、付加価値によって料金は変動します 。

専門性の違い

社労士にも得意な業種や分野があります。例えば、医療・介護業界、IT業界、建設業など、特定の業界の労務問題に精通している事務所は、その専門知識を活かした質の高いアドバイスが期待できるため、料金が高めに設定されることがあります 。  

社労士の経験値や事務所の体制

経験豊富な社労士や、複数のスタッフでチーム対応する事務所は、複雑な案件にも迅速かつ的確に対応できる体制が整っています。こうした経験やサポート体制の充実度も、料金に反映される要素の一つです 。  

料金だけで判断するのではなく、自社の課題を解決してくれる専門性やサポート体制があるかという視点で選ぶことが、結果的に高い費用対効果につながります。

【本質】顧問契約は必要?スポット契約との判断基準

「うちの会社に、毎月固定費を払ってまで顧問契約は必要なのだろうか?」 これは、経営者として当然の問いです。この問いに答えるためには、自社の状況を客観的に見つめ、顧問契約とスポット契約のどちらが最適かを見極める「判断基準」を持つことが重要です。

こんな会社は「顧問契約」がおすすめです

以下のいずれかに当てはまる場合、貴社は顧問契約によって大きなメリットを享受できる可能性が高いと言えます。

従業員が10名以上で、入退社が頻繁にある

従業員が10名を超えると、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が法律で義務化されます 。これは、会社が組織として一定のルールを整備すべき段階に入ったことを示す、一つの節目です。  

また、入退社が頻繁になると、その都度、社会保険の資格取得・喪失手続き、離職票の作成など、煩雑な事務作業が発生します。これらの手続きをミスなく、迅速に行うだけでも担当者の負担は相当なものです。顧問契約は、これらの定型業務をアウトソーシングし、社内の貴重なリソースを本来の業務に集中させる効果があります 。  

法改正の情報を自社でキャッチアップするのが難しい

労働関連法は、毎年のように改正が行われます。特に近年は、働き方改革、同一労働同一賃金、パワハラ防止法など、企業経営に直結する重要な変更が続いています 。  

これらの情報を自社だけで正確に収集し、就業規則や賃金規程に適切に反映させるのは、専門家でなければ非常に困難です。

【事例】気づかぬうちに法令違反…ある日突然、労基署から調査通知が
ある従業員30名ほどの小売業の会社様が、慌てて私達の事務所に相談に来られました。理由は、労働基準監督署から「パートタイム・有期雇用労働法に関する調査」の通知が届いたことでした。 社長様は「パートさんには正社員より時給を高く設定しているし、問題ないはず」と考えていましたが、実際には賞与や一部手当の不支給が「不合理な待遇差」と見なされる可能性があったのです 。  
もし顧問契約があれば、法改正の施行前にリスクを指摘し、計画的に規程の見直しを進めることができたはずです。問題が起きてから慌てて対応するのと、事前に手を打っておくのとでは、かかるコストも精神的負担も天と地ほどの差があります。

将来の労務トラブルを未然に防ぎ、予防法務に力を入れたい

これが顧問契約を検討する上で最も重要な視点です。労務トラブルの多くは、ある日突然発生するわけではありません。 「あの管理職の言い方は、少しきついな…」 「最近、特定の部署だけ残業が突出して多いな…」 「雇用契約書の内容が、少し曖昧かもしれない…」 こうした小さな「火種」が、放置されることで大きな「火事(=訴訟などの深刻なトラブル)」に発展するのです 。  

顧問社労士は、日々の相談を通じて会社の内部事情を把握している「外部の人事部長」のような存在です。これらの火種を早期に発見し、「社長、この問題は放置すると危険です。今のうちにこう対処しましょう」と、トラブルが表面化する前に対策を講じる「予防法務」こそが、顧問契約の真価です 。  

こちらのケースなら「スポット契約」で十分かもしれません

一方で、顧問契約が全ての企業にとって最適解というわけではありません。信頼できるアドバイザーとして、正直にスポット契約が適しているケースもお伝えします。

  • 従業員数が少なく、入退社も年に1〜2回程度:組織が安定しており、労務に関する相談事がほとんど発生しない小規模な企業の場合、毎月の固定費を払うよりも、必要な時だけ依頼する方が合理的です 。  
  • 特定の業務だけを依頼したい:「就業規則を初めて作成したい」「今回だけ、この助成金を申請したい」など、依頼したい業務が明確かつ単発で完結する場合は、スポット契約が適しています 。  
  • まずは社労士との相性を試してみたい:いきなり長期契約を結ぶのは不安だという場合、まずは就業規則のレビューなど、比較的小さな業務をスポットで依頼し、その社労士の仕事ぶりや人柄、コミュニケーションの取りやすさなどを確認する「お試し」として活用するのも賢い方法です 。  

顧問契約の最大の価値は「いつでも相談できる安心感」

スポット契約と顧問契約の最大の違いは、単なる業務の依頼形式の違いではありません。それは、問題との向き合い方が「事後対応」になるか「事前予防」になるかの違いです。

スポット契約は、問題が起きてから消防車を呼ぶようなものです。退職した元従業員から内容証明郵便で未払い残業代を請求されたり、労働基準監督署から突然調査の連絡が来たり… 。その時点で初めて慌てて社労士を探し、ゼロから会社の状況を説明し、不利な立場から交渉を始めなければなりません。この時の精神的負担と、手遅れになるリスクは計り知れません。  

一方、顧問契約は、会社の健康状態を常に把握している「かかりつけ医」を持つことに似ています。日々の些細な相談の中から、「このままだと、将来こういう問題が起こるかもしれません」と予兆を捉え、先手を打つことができます。 この「いつでもプロに相談できる」という安心感こそが、経営者を日々の労務管理の不安から解放し、本来注力すべき事業の成長戦略や顧客開拓といった「本業」に集中できる環境を作り出すのです 。月々の顧問料は、この安心感と、経営者が本業に専念できる時間を買うための「戦略的投資」と言えるでしょう。  

顧問契約で「どこまで」頼める?具体的な業務範囲

顧問契約を検討する際、「具体的に何を、どこまでやってもらえるのか」を明確にイメージすることは非常に重要です。ここでは、一般的な顧問契約に含まれる業務範囲を具体例とともにご紹介します。

基本業務①:労働・社会保険の手続き代行

従業員の入社から退職まで、ライフステージの様々な場面で発生する行政手続きを代行します。これらの手続きは種類が多く、提出先も年金事務所やハローワークなど多岐にわたるため、専門家に任せることで正確かつ迅速な処理が可能になります。

  • 入社時:健康保険・厚生年金保険の資格取得届、雇用保険の被保険者資格取得届など
  • 在職中:住所や氏名の変更届、賞与支払届、扶養家族の追加・削除、労災事故発生時の給付請求手続き、産前産後休業・育児休業に関する手続きなど
  • 退職時:健康保険・厚生年金保険の資格喪失届、雇用保険の被保険者資格喪失届、離職証明書(離職票)の作成など

これらの手続きを自社で行う場合、担当者が調べながら作業することで多くの時間が割かれますが、社労士に任せることで担当者の業務負担を大幅に削減できます 。  

社労士事務所altruloopの社会保険手続きサービスページはこちら

基本業務②:日々の労務に関する相談・助言

顧問契約の核となるサービスが、この労務相談です。経営者や労務担当者が日々直面する「人」に関する疑問や悩みに、専門家として的確にアドバイスします。

【具体的な相談例】

  • 「この残業代の計算方法は、法律的に正しいだろうか?」
  • 「勤怠不良の社員に注意したいが、パワハラと言われないか心配だ」
  • 「メンタル不調を理由に休職したいと従業員から申し出があったが、会社としてどう対応すればよいか?」
  • 「従業員同士のトラブルが発生してしまった。どう介入すべきか?」
  • 「最新の法改正で、当社がすぐに見直すべき点は何か?」

こうした相談に対し、最新の法律や判例に基づいたアドバイスを提供することで、トラブルを未然に防ぎ、万が一発生した場合でも被害を最小限に抑えることができます 。  

社労士事務所altruloopの労務相談サービスページはこちら

オプション業務:給与計算、助成金申請、就業規則作成など

基本の顧問契約に加えて、企業のニーズに合わせて様々な業務をオプションとして追加できます。

  • 給与計算:毎月の勤怠データに基づき、各種手当や社会保険料、税金などを正確に計算し、給与明細を作成します。法改正に伴う保険料率の変更などにも確実に対応します。
  • 助成金申請:人材採用や雇用環境の改善など、企業が活用できる助成金は数多く存在します。しかし、申請要件が複雑で書類作成も煩雑です。社労士が活用可能な助成金の提案から申請までをサポートします。
  • 就業規則作成・改定:企業の憲法ともいえる就業規則を、法改正に対応させつつ、企業の実態に合った内容で作成・見直しを行います。

これらの業務は、顧問契約とセットで依頼することで、スポットで個別に依頼するよりも割安な料金で提供されることが一般的です 。  

就業規則の重要性や作成ポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

あわせて読みたい
会社を守る就業規則の作り方とは?作成方法や記載項目を社労士が解説 初めて従業員を雇う経営者の皆様へ。「就業規則はネットの雛形で十分」と思っていませんか?実は、その安易な判断が、将来の深刻な労務トラブルを招く火種になりかねま...

よくある質問

社労士との顧問契約を検討される経営者様から、よくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q. 契約期間に縛りはありますか?

A. 通常は1年契約で、その後は自動更新となるケースが一般的です。ただし、契約内容は事務所によって異なりますので、契約書で「契約期間」と「解約の申し出時期」(例:契約満了の3ヶ月前まで、など)を必ず確認しましょう。契約前に内容を丁寧に説明してくれる、信頼できる事務所を選ぶことが大切です 。  

Q. どの社労士に依頼しても同じですか?

A. いいえ、全く違います。料理人に和食やフレンチといった得意分野があるように、社労士にも労務トラブル対応、助成金申請、人事制度構築など、それぞれ得意な分野があります 。また、IT業界や医療・介護業界など、特定の業種に特化した知識を持つ社労士もいます。自社の課題と社労士の専門性が一致しているかを見極めることが、良いパートナーシップを築く上で非常に重要です。  

Q. 相談のしやすさも重要ですか?

A. 非常に重要です。労務問題は、時に迅速な判断が求められます。そのため、レスポンスの速さやコミュニケーションの取りやすさ(電話、メール、チャットツールなど)は、いざという時の安心感に直結します 。また、「こんな初歩的なことを聞いても大丈夫だろうか」と感じさせない人柄や、経営者の悩みに親身に寄り添ってくれるかといった「相性」も大切です。無料相談などを活用して、ぜひ直接話してみることをお勧めします。  

Q. 顧問契約の費用は経費になりますか?

A. はい、経費として計上できます。社労士に支払う顧問料は、全額「支払手数料」や「業務委託費」などの勘定科目で損金として処理することが可能です。節税の観点からもメリットがあると言えます 。  

まとめ

社労士との顧問契約は、単なる手続きのアウトソーシングではありません。それは、将来起こりうる解雇トラブル、未払い残業代請求、ハラスメント問題といった予期せぬ労務リスクから会社を守り、経営者が安心して事業に集中できる環境を整えるための「戦略的投資」です。

この記事でお伝えした「費用相場」と、顧問契約とスポット契約の「判断基準」を参考に、貴社にとって最適なパートナーシップの形をご検討ください。

社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)では、全国対応・初回相談無料でご相談を承っております。人事労務に関するお悩みはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

監修者(社労士)

社会保険労務士(社労士事務所altruloop代表)
助成金申請・就業規則・労務DD等を得意とする。前職の戦略コンサルファームでは新規事業立ち上げや組織改革に従事し、大手〜スタートアップまで幅広い企業の支援実績あり。
現在は東京都渋谷区や八王子を拠点にしている社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)代表として、全国対応で実務と経営の両視点から企業を支援中。

目次