試用期間のすべて|設定・解雇・延長・社会保険の扱いまで中小企業が守るべきルール

「入社した社員が期待外れだったが、どう対応すれば良いのだろうか?」 「試用期間中の社員から突然『退職したい』と言われたが、どうすれば?」 「そもそも、今の試用期間のルール運用が法的に問題ないか不安だ…」

中小企業の経営者や人事担当者の皆様にとって、試用期間の運用は悩ましい問題の一つではないでしょうか。従業員の適性や能力を見極める大切な期間である一方、法的なルールを理解しておかないと、思わぬトラブルに発展するリスクも潜んでいます。

この記事では、人事労務の専門家である社労士の視点から、試用期間の基本的な知識、よくあるトラブルとその対策、そして専門家を活用するメリットについて、分かりやすく解説します。

本記事でわかること

  • 試用期間の法的な位置づけと目的
  • 試用期間の適切な長さと設定時の注意点
  • 試用期間中の解雇の可否、条件、注意点
  • 試用期間中の給与、社会保険、有給休暇の取り扱い
  • 試用期間の延長や本採用拒否が認められるケースと手続き
  • 試用期間に関するトラブルを未然に防ぐポイント

この記事を読むことで、試用期間に関する疑問や不安を解消し、安心して従業員の採用・育成に取り組むための一助となれば幸いです。

目次

試用期間とは?試用期間の法的な位置づけ

試用期間とは、本採用をする前に、従業員の能力、スキル、勤務態度、適性などを見極めるために設けられる期間のことです。法的には、試用期間中の雇用契約は「解約権留保付労働契約」と解釈されるのが一般的です。

これは、企業側が「試用期間中の働きぶりを見て、本採用に適さないと判断した場合には、雇用契約を解約できる権利を留保している」という意味合いになります。ただし、この解約権は無制限に認められるわけではなく、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られます。

試用期間の目的とメリット・デメリット

企業が試用期間を設ける主な目的は、以下の通りです。

  • 従業員の適性評価: 履歴書や面接だけでは分からない、実際の業務遂行能力や職場への適応性を見極める。
  • ミスマッチの防止: 企業風土や業務内容とのミスマッチがないかを確認し、早期離職を防ぐ。
  • 教育・指導: 新入社員に対して集中的な教育や指導を行い、早期の戦力化を図る。

試用期間を設けることには、企業側と従業員側の双方にメリットとデメリットがあります。

メリットデメリット
企業側・従業員の適性や能力をじっくり見極められる<br>・ミスマッチによる本採用後のリスクを低減できる<br>・問題がある場合に、本採用拒否や解雇の判断が(通常の解雇よりは)比較的しやすい・試用期間中の教育・指導コストがかかる<br>・試用期間満了時の評価や判断に手間がかかる<br>・安易な本採用拒否はトラブルの原因になる
従業員側・実際の業務を通じて、自分に合う会社か判断できる<br>・入社後のミスマッチを感じた場合に、比較的退職しやすい・雇用が不安定な状態に置かれる<br>・本採用されるかどうかの不安を感じやすい

正社員との違い(雇用契約上の扱い)

試用期間中であっても、従業員は企業と労働契約を締結しており、労働基準法をはじめとする労働関係法令の保護を受けます。基本的には正社員と同様の扱いですが、前述の通り「解約権が留保されている」という点が大きな違いです。

ただし、試用期間開始から14日以内に解雇する場合は、解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要となる例外規定があります(労働基準法第21条)。しかし、この場合でも解雇理由の正当性は求められるため、安易な解雇は禁物です。

試用期間の長さ:どれくらいが適切?

試用期間の長さをどの程度に設定するかは、多くの企業が悩むポイントです。ここでは、法的な上限や一般的な期間、設定時の注意点について解説します。

法的な上限はあるのか

労働基準法において、試用期間の長さについて直接的な上限を定めた規定はありません。しかし、あまりにも長すぎる試用期間は、従業員の地位を不当に不安定なものにするため、公序良俗に反し無効とされる可能性があります。

判例などでは、一般的に1年を超える試用期間は長すぎると判断される傾向にあります。

一般的な期間と慣習

多くの企業では、3ヶ月から6ヶ月程度を試用期間として設定しています。これは、従業員の適性や能力を評価するために、ある程度の期間が必要である一方で、長すぎると従業員に与える不安が大きくなることを考慮した結果と言えるでしょう。

特に専門的な知識やスキルが求められる職種や、管理職などのポジションについては、6ヶ月程度の試用期間を設けるケースも見られます。

期間設定の際の注意点とリスク

試用期間の長さを設定する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 就業規則への明記: 試用期間の長さや、延長する場合の条件・手続きなどを就業規則に明確に定めておく必要があります。
  • 労働契約書への記載: 採用時には、労働契約書(または労働条件通知書)にも試用期間の有無、期間を明記し、従業員の合意を得ることが重要です。
  • 目的と合理性: 設定する試用期間の長さは、従業員の適性を見極めるという目的に対して合理的な範囲内である必要があります。不当に長い期間を設定すると、後々トラブルの原因となる可能性があります。
  • 一律設定の是非: 全ての職種や役職に対して一律の期間を設定するのではなく、業務内容や求められるスキルに応じて適切な期間を設定することを検討しましょう。

安易に長すぎる期間を設定したり、期間の根拠が曖昧だったりすると、従業員からの不信感を招くだけでなく、万が一の際に法的な紛争に発展するリスクも高まります。

試用期間中の解雇:ルールと注意点

試用期間中の解雇は、経営者や人事担当者にとって最も慎重な判断が求められる事項の一つです。「試用期間中だから解雇しやすい」という認識は大きな誤解であり、適切な手順と客観的・合理的な理由がなければ、不当解雇として法的な責任を問われる可能性があります。

試用期間中の解雇は難しい?(「解雇しやすい」は誤解)解雇権濫用法理の適用

試用期間中の解雇は、本採用後の解雇と比較すれば、解雇の有効性が認められる範囲はやや広いとされています。これは、企業側に「解約権が留保されている」ためです。

しかし、これは「自由に解雇できる」という意味ではありません。試用期間中の解雇であっても、解雇権濫用法理(労働契約法第16条)の適用を受けます。つまり、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、その解雇は無効となります。

試用期間の趣旨・目的に照らして、企業が当初知ることができなかった、あるいは知ることが期待できなかったような事実が判明し、その従業員を引き続き雇用しておくことが著しく不適当と判断される場合に限り、解雇が有効とされるのです。

解雇が認められる厳しい条件

試用期間中に解雇が有効と認められるためには、具体的に以下のような条件を満たす必要があります。

  • 契約時に知り得なかった重大な能力不足や適格性の欠如:
    • 業務遂行能力が著しく低い(例:経歴や面接時の説明と実際の能力が大きく乖離している)
    • 協調性が著しく欠如しており、他の従業員との業務に支障をきたす
    • 無断欠勤や遅刻を繰り返し、改善の余地が見られない
    • 重大な経歴詐称が発覚した
  • 改善指導の実施: 問題点が見られた場合、まずは具体的な指導や注意を行い、改善の機会を与える必要があります。いきなり解雇することは認められにくい傾向にあります。
  • 就業規則上の解雇事由への該当: 就業規則に定められた解雇事由に該当することも、解雇の正当性を補強する要素となります。

単に「期待していたほどではなかった」「会社の雰囲気に合わない気がする」といった曖昧な理由での解雇は、まず認められません。

解雇する際の具体的な手続きと必要書類

試用期間中にやむを得ず解雇を行う場合でも、適切な手続きを踏むことが極めて重要です。

  • 解雇予告または解雇予告手当の支払い:
    • 試用期間開始後14日を超えて雇用している従業員を解雇する場合、原則として30日以上前に解雇予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法第20条)。
    • 例外: 試用期間開始から14日以内の解雇であれば、解雇予告や解雇予告手当は不要です(労働基準法第21条)。ただし、この場合も解雇理由の正当性は求められます。
  • 解雇理由書の交付: 従業員から請求があった場合には、解雇理由を具体的に記載した書面(解雇理由証明書)を交付する義務があります(労働基準法第22条)。これは、解雇の客観的・合理的な理由を明確にする上で非常に重要です。具体的に、いつ、どのような事実があり、それが就業規則のどの条項に該当するのかなどを記載します。
  • 面談の実施: 解雇に至る前に、対象となる従業員と面談を行い、問題点や改善の状況、最終的な判断に至った経緯などを丁寧に説明し、弁明の機会を与えることが望ましいでしょう。

トラブルを避けるためのポイント

試用期間中の解雇に関するトラブルを避けるためには、以下の点が重要です。

  • 採用選考の慎重化: 入口の段階で、自社が求める人物像やスキルセットを明確にし、慎重な採用選考を行うことが最も重要です。
  • 試用期間中の評価・フィードバックの徹底: 試用期間中は定期的に面談を行い、業務の進捗や課題について具体的なフィードバックを行います。改善点があれば明確に伝え、記録に残しておくことが大切です。
  • 記録の重要性: 指導内容、面談記録、勤怠不良の事実、問題行動などを客観的な証拠として記録しておくことは、万が一の際に企業の正当性を主張する上で不可欠です。
  • 就業規則の整備: 解雇事由や手続きについて、就業規則に明確に定めておく必要があります。
  • 専門家への早期相談: 解雇を検討する段階で、労働問題に詳しい社労士や弁護士に相談し、法的なリスクや適切な対応についてアドバイスを受けることを強く推奨します。ご不安がある場合は、専門家である社労士にご相談ください。

解雇以外の選択肢(配置転換、指導、合意退職など)

解雇は最終手段です。従業員に問題が見られた場合でも、まずは以下のような解雇以外の選択肢を検討しましょう。

  • 配置転換: 現在の部署や職務への適性がないと判断される場合、他の部署や職務への配置転換を検討します。
  • 追加の教育・指導: 改善の余地があると判断される場合は、再度具体的な指導計画を立て、教育・指導を強化します。
  • 合意退職の勧奨: 企業と従業員の双方が合意の上で雇用契約を終了する「合意退職」を提案することも一つの方法です。ただし、退職勧奨が強引であったり、執拗であったりすると、退職強要として違法となる可能性があるため注意が必要です。

これらの対応によっても改善が見られず、やむを得ず解雇という判断に至る場合でも、慎重な手続きが求められます。

試用期間中の労働条件:給与、社会保険、有給は?

試用期間中の従業員も、労働者として法的に保護されます。給与、社会保険、有給休暇などの労働条件について、企業は法令を遵守した適切な取り扱いをしなければなりません。

給与の考え方(本採用時との違いなど)

試用期間中の給与を、本採用後の給与よりも低く設定すること自体は、直ちに違法となるわけではありません。ただし、そのためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 就業規則や労働契約書への明記: 試用期間中の給与額と、本採用後の給与額を明確に区分して記載し、従業員の合意を得ていること。
  • 最低賃金の遵守: 当然ながら、試用期間中の給与であっても、都道府県ごとに定められている最低賃金額を下回ることは許されません。
  • 合理的な範囲内: 本採用後の給与額と比較して、あまりにも低い金額を設定することは、公序良俗に反するとして問題視される可能性があります。一般的には、本採用後給与の8割~9割程度が目安とされることが多いようです。

試用期間中であることを理由に、不当に低い賃金を設定することは避けましょう。

社会保険の加入義務

試用期間中であっても、以下の条件を満たす従業員は、原則として健康保険、厚生年金保険、雇用保険といった社会保険への加入義務が発生します。

  • 健康保険・厚生年金保険:
    • 常時雇用される従業員であること(試用期間中の従業員もこれに該当します)
    • 1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上であること(この基準に満たないパートタイム労働者等でも、一定の要件を満たせば加入対象となります)
  • 雇用保険:
    • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    • 31日以上の雇用見込みがあること(試用期間が31日以上であれば、この条件を満たします)

「試用期間中は社会保険に加入させなくても良い」という誤った認識を持つ企業も見受けられますが、上記の加入要件を満たしているにもかかわらず未加入であった場合、遡って保険料を徴収されるだけでなく、行政指導や罰則の対象となる可能性もあります。

有給休暇の付与タイミングと日数

年次有給休暇は、以下の2つの要件を満たした労働者に対して付与されます(労働基準法第39条)。

  1. 雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務していること
  2. その6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤していること

これらの要件を満たせば、試用期間中であっても、入社から6ヶ月が経過した時点で法律で定められた日数の年次有給休暇が付与されます。試用期間の有無によって、有給休暇の付与タイミングや日数が変わることはありません。

付与される日数は、その労働者の週所定労働日数や継続勤務年数に応じて異なります。

継続勤務年数通常の労働者(週所定労働日数5日以上 または 週所定労働時間30時間以上)
6ヶ月10日
1年6ヶ月11日
2年6ヶ月12日
3年6ヶ月14日
4年6ヶ月16日
5年6ヶ月18日
6年6ヶ月以上20日

(週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者については、比例付与の対象となります)

「試用期間中は有給休暇がない」というのは誤りであり、法令に基づいた適切な運用が必要です。

その他労働条件(労働時間、休日など)

試用期間中の従業員に対しても、労働時間、休憩、休日、時間外労働に関する労働基準法の規定は、正社員と同様に適用されます。

  • 法定労働時間: 原則として、1日8時間、1週40時間以内。
  • 休憩: 労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩。
  • 休日: 原則として、毎週少なくとも1日、または4週間を通じて4日以上の休日。
  • 時間外労働・休日労働: 36協定の締結・届出と、割増賃金の支払いが必要。

試用期間であることを理由に、これらの法定労働条件を下回る取り扱いをすることはできません。

試用期間の延長・本採用拒否:よくある疑問

試用期間の運用において、期間の延長や本採用の可否判断は、企業にとって慎重な対応が求められる場面です。ここでは、これらのよくある疑問について解説します。

試用期間は延長できるか?延長が認められる条件と手続き

試用期間の延長は、企業が一方的に自由に行えるものではありません。試用期間の延長が認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 就業規則等への明記:
    • 試用期間を延長する場合があること
    • 延長する期間の上限
    • 延長する場合の具体的な理由(例:従業員の能力・適格性について、当初の試用期間内では判断が困難な場合など)
    • 延長する場合の手続き これらが就業規則や労働契約書に明記されており、従業員に周知されていることが大前提です。
  • 合理的な理由: 延長の理由が、客観的に見て合理的である必要があります。単に「もう少し様子を見たい」といった曖昧な理由では認められません。例えば、従業員が試用期間中に病気で長期間休んだため、十分な評価ができなかった場合などが考えられます。
  • 従業員の同意: 就業規則等に延長の定めがあったとしても、実際に延長する際には、従業員に対して延長の理由、期間などを具体的に説明し、同意を得ることが望ましいでしょう。
  • 延長期間の相当性: 延長する期間も、社会通念上相当な範囲内である必要があります。当初の試用期間と合わせて、著しく長期間にならないように注意が必要です。

安易な延長のリスク

合理的な理由なく、あるいは就業規則等に根拠なく試用期間を延長することは、以下のようなリスクを伴います。

  • 従業員の不信感: 従業員は、企業に対する不信感を抱き、モチベーションの低下につながる可能性があります。
  • 法的紛争のリスク: 延長の有効性を巡って、従業員から訴訟を起こされるリスクがあります。特に、延長を繰り返したり、不当に長期間にわたって不安定な地位に置いたりするような場合は、違法と判断される可能性が高まります。

試用期間の延長は、あくまでも例外的な措置として慎重に判断する必要があります。

本採用を拒否できるのはどんな場合か?本採用拒否が有効となる条件

試用期間満了時に、企業が従業員の本採用を拒否することは、実質的には「解雇」と同じ意味合いを持ちます。したがって、本採用拒否が有効となるためには、試用期間中の解雇と同様に、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる必要があります。

具体的には、以下のような場合が考えられます。

  • 能力不足・適格性の欠如: 試用期間中の勤務成績や業務遂行能力が著しく不良で、改善の指導を行ったにもかかわらず向上が見られない場合。
  • 勤務態度の不良: 正当な理由のない欠勤、遅刻、早退を繰り返したり、職場の規律を著しく乱す行為があったりし、指導によっても改善されなかった場合。
  • 協調性の欠如: 他の従業員との円滑な協力関係を築くことができず、業務に支障を生じさせている場合で、改善指導にも応じなかった場合。
  • 経歴詐称: 採用時に申告された経歴や能力に重大な虚偽があり、それが本採用の判断に影響を与えるような場合。

これらの理由は、試用期間の趣旨・目的に照らして、本採用前に初めて明らかになった、あるいはその程度が明確になった事実に限られます。採用時に既に分かっていた事柄や、軽微なミスなどを理由に本採用を拒否することは困難です。

本採用拒否の手続きと注意点

本採用を拒否する場合も、試用期間中の解痘と同様の手続きと注意が必要です。

  • 本採用拒否の通知: 試用期間満了前に、本人に対して本採用しない旨とその理由を明確に通知する必要があります。口頭だけでなく、書面で通知することが望ましいでしょう。
  • 解雇予告または解雇予告手当: 試用期間開始後14日を超えて雇用している場合は、解雇予告(30日前)または解雇予告手当の支払いが必要です(試用期間満了と同時に契約終了とする場合も同様です)。
  • 解雇理由証明書の交付: 従業員から請求があれば、本採用拒否の理由を具体的に記載した証明書を交付しなければなりません。
  • 記録の保管: 本採用拒否に至った経緯、指導記録、面談記録などを証拠として保管しておくことが重要です。

本採用拒否は、従業員にとって非常に大きな影響を与える決定です。判断に迷う場合は、必ず事前に専門家である社労士に相談し、法的な妥当性やリスクについて確認することをお勧めします。法的に問題ないか判断に迷う場合は、お気軽にお問い合わせください。

試用期間中の通知書、どう書く?

試用期間に関連して企業が従業員に交付する可能性のある通知書としては、以下のようなものが考えられます。

  • 採用通知書(試用期間の定めを明記): 試用期間の有無、期間、試用期間中の労働条件などを記載します。
  • 試用期間延長通知書: 延長の理由、延長後の期間、延長期間中の労働条件などを記載します。
  • 本採用通知書: 試用期間が無事終了し、本採用となる旨を通知します。
  • 本採用拒否通知書(解雇通知書): 本採用しない旨とその具体的な理由、解雇日などを記載します。
  • 解雇理由証明書: 従業員からの請求に基づき、解雇(本採用拒否)の具体的な理由を記載します。

これらの通知書を作成する際には、以下の点に留意しましょう。

  • 法令遵守: 記載内容が労働基準法等の法令に違反していないか確認します。
  • 具体性・客観性: 特に解雇や本採用拒否に関する通知書では、理由は抽象的な表現を避け、客観的な事実に基づいて具体的に記載します。
  • 明確性: 誰が読んでも誤解が生じないよう、明確な言葉で記載します。
  • 書面での交付と記録: 重要な通知は書面で交付し、その控えを保管しておきましょう。

通知書の具体的な文面作成に不安がある場合は、社労士にご相談いただくことで、法的に適切な書面の作成サポートを受けることができます。

よくある質問 (Q&A)

ここでは、試用期間に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. 試用期間中に、従業員から「退職したい」と申し出があった場合、どうすれば良いですか?

A1. 従業員からの退職の申し出は、原則として受け入れる必要があります。試用期間中であっても、従業員には退職の自由があります。民法上は、期間の定めのない雇用契約の場合、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了するとされています(民法第627条第1項)。ただし、就業規則に別途退職に関する規定(例:退職希望日の1ヶ月前までに申し出ることなど)がある場合は、それに従うよう促すことは可能です。引き継ぎの必要性などを説明し、円満な退職となるよう話し合いましょう。

Q2. 試用期間中の従業員の能力が期待ほどではなかった場合、すぐに解雇できますか?

A2. いいえ、すぐに解雇できるわけではありません。試用期間中の解雇も、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限られます。まずは具体的な指導や教育を行い、改善の機会を与える必要があります。それでも改善が見られず、業務に著しい支障が生じるような場合に、初めて解雇を検討することになります。その際も、適切な手続きを踏むことが重要です。

Q3. 試用期間の長さに法的な決まりはありますか?

A3. 法律で試用期間の長さの上限が明確に定められているわけではありません。しかし、あまりにも長すぎる試用期間は公序良俗に反し無効とされる可能性があります。一般的には3ヶ月から6ヶ月程度が多く、長くても1年を超える場合は慎重な検討が必要です。期間設定の際には、その業務における適格性判断に必要な合理的期間であることが求められます。

Q4. 試用期間中の給与を本採用後よりも低く設定しても問題ありませんか?

A4. はい、問題ありません。ただし、そのためには就業規則や労働契約書にその旨を明記し、従業員の合意を得ていることが前提です。また、設定する給与額は最低賃金を下回ってはならず、本採用後の給与と比較して著しく低い場合は問題となる可能性があります。

Q5. 試用期間中に社会保険に加入させる必要はありますか?

A5. はい、加入要件を満たせば、試用期間中であっても社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)への加入義務が発生します。「試用期間だから加入させなくても良い」ということはありません。

まとめ

試用期間は、企業が従業員の適性を見極め、従業員が企業を見極めるための重要な期間です。しかし、その運用には法的なルールが伴い、安易な判断や対応は思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。特に、解雇や本採用拒否といった判断は慎重に行い、適切な手続きを踏むことが不可欠です。

試用期間の運用に少しでも不安を感じたり、判断に迷うことがあったりした場合には、人事労務の専門家である社労士にご相談いただくことをお勧めします。

社労士事務所altruloopでは、試用期間に関するご相談はもちろん、就業規則の作成・見直し、労務トラブルの予防・対応など、企業の人事労務に関する様々なお悩みに対応しております。全国対応、初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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監修者(社労士)

社会保険労務士(社労士事務所altruloop代表)
労務管理・人事制度設計・法改正対応をはじめ、実務と経営をつなぐ制度づくりを得意とする。戦略コンサルファームでは新規事業立ち上げや組織改革に従事し、大手〜スタートアップまで幅広い企業の支援実績あり。
現在は東京都渋谷区や八王子を拠点にしている社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)代表として、全国対応で実務と経営の両視点から企業を支援中。

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