【雇用前に絶対確認】外国人労働者の社会保険加入義務、3つの判断基準とは?

「うちの外国人従業員、社会保険はどうすれば…?」多くの経営者や労務担当者様が抱えるこの疑問。実は、その「なんとなく」の判断が、後に罰則や追徴金といった大きな経営リスクにつながるケースが後を絶ちません。

本記事では、社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)が、経営者が最も恐れる「加入義務の判断ミス」に焦点を絞り、具体的なリスクと今すぐできる確認方法を解説します。

社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)は、外国人雇用に関する豊富な支援実績がございます。この記事を読めば、自社が抱えるかもしれないリスクを具体的に理解し、手遅れになる前に対策を講じる重要性がわかります。

目次

まさかうちが?外国人雇用の社会保険でよくある加入漏れ3つの勘違い

外国人従業員の社会保険加入について、「うちは大丈夫」と思っていても、実は気付かぬうちに加入漏れが生じているケースは少なくありません。多くの場合、悪意ではなく、制度の複雑さや外国人雇用特有の状況から生じる「勘違い」が原因です。ここでは、特に経営者や労務担当者が見落としがちな3つのポイントを解説します。

勘違い1:「短期契約の外国人」だから不要だと思っていた

「外国人従業員とは数ヶ月の短期契約だから、社会保険への加入は不要だろう」。このように考える経営者の方は少なくありません。しかし、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務は、当初の契約期間の長さだけで決まるわけではありません。重要なのは「2か月を超える雇用の見込み」があるかどうかです 。雇用保険については「31日以上の雇用見込み」が基準となります 。  

例えば、当初の契約期間が1ヶ月であっても、契約書に「更新する場合がある」といった記載があったり、実態として契約更新が常態化しており、結果的に2ヶ月(雇用保険の場合は31日)を超えて雇用されることが当初から見込まれる場合は、最初の契約開始日から加入義務が発生します。

過去の当事務所へのご相談事例でも、「1ヶ月契約を繰り返していた外国人社員について、実質的には長期雇用と変わらないと判断され、2年分の社会保険料を遡及徴収された」というケースがありました。

特に注意が必要なのは、在留資格の種類です。「興行」や「技能実習」といった在留資格は、当初の契約期間が短くても、その性質上、一定期間の日本滞在と就労が見込まれるため、加入が必要となる場合があります 。また、社会保険の加入状況は、外国人従業員の在留資格更新の際にも確認される重要なポイントです 。加入義務を果たしていない場合、従業員の在留資格更新が許可されず、結果として貴重な人材を失うリスクにも繋がります 。  

「短期契約だから大丈夫」という自己判断は禁物です。契約内容や更新の実態、在留資格などを総合的に確認し、慎重に判断する必要があります。

勘違い2:「業務委託の外国人」だから不要だと思っていた

近年、外国人材と「業務委託契約」や「フリーランス契約」を結ぶ企業が増えています 。形式上、業務委託契約であれば、会社は雇用主としての社会保険加入義務を負わず、外国人本人が国民健康保険や国民年金に加入することになります 。  

しかし、ここで大きな落とし穴となるのが「偽装請負」の問題です。契約書の名称が「業務委託契約」であっても、実態として会社が外国人に対して具体的な仕事の進め方を指示したり、出退勤時間を管理したりするなど、「指揮命令関係」が認められる場合は、労働法上の「雇用関係」にあると判断される可能性があります 。  

労働省告示第37号では、適正な請負と判断されるための基準が示されており、例えば「業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと」や「労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと」が受注者(この場合は外国人本人)によって行われているかがポイントとなります 。  

万が一「偽装請負」と判断された場合、企業は遡って社会保険料の納付を求められるだけでなく、労働基準法違反として是正指導を受けたり、場合によっては罰則が科されたりするリスクがあります 。さらに、外国人本人の在留資格の審査においても、社会保険の加入状況は判断材料の一つとされており 、偽装請負と判断されるような不安定な就労形態は、在留資格の更新に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。  

契約形態の名称だけでなく、実際の業務指示や労務管理の実態を客観的に見極めることが極めて重要です。「これは業務委託だから社会保険は関係ない」と安易に判断せず、少しでも疑念があれば専門家にご相談ください。

勘違い3:「日本語が不自由」だから手続きは後でいいと思っていた

「採用した外国人がまだ日本語に慣れていないから、社会保険の説明や手続きはもう少し後で…」といった理由で、手続きを先延ばしにしてしまうケースも見受けられます。しかし、社会保険の加入義務は、従業員の日本語能力や本人の希望によって左右されるものではありません 。  

法律で定められた加入条件(労働時間、労働日数、雇用見込みなど)を満たしていれば、国籍や言語能力に関わらず、企業は適切に加入手続きを行う義務があります。外国人従業員が制度を理解できるように説明することはもちろん重要ですが、それは企業の努力義務であり、加入義務そのものを免除する理由にはなりません。

過去の事例では、手続きの遅れが原因で、外国人従業員が病気になった際に健康保険を使えず高額な医療費を自己負担せざるを得なくなったり、退職後の失業手当が受けられなかったりといったトラブルに発展したケースも報告されています。また、手続きの遅延自体が、行政指導の対象となる可能性もあります 。  

「言葉が通じないから」「本人がよく分かっていないようだから」といった理由は、行政機関には通用しません。必要であれば通訳を介したり、翻訳された資料を用いたりするなどして、速やかに手続きを進めることが求められます。コミュニケーションの難しさを理由にした手続きの遅延は、結果としてより大きなリスクを生む可能性があることを認識しておくべきです。

【国籍は無関係】外国人社会保険の加入義務、判断基準はこの2つだけ

外国人従業員の社会保険加入義務を判断する際、最も重要な原則は「国籍は無関係である」ということです 。日本国内の事業所で働く限り、日本人従業員と全く同じ基準で加入義務が判断されます。この大原則を理解した上で、具体的な判断基準を見ていきましょう。  

判断基準1:週の所定労働時間と月の所定労働日数

まず基本となるのは、いわゆる「フルタイム従業員」と同様の働き方をしているかどうかです。具体的には、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者(正社員など)の4分の3以上である場合、原則として健康保険・厚生年金保険、そして雇用保険の加入対象となります 。  

これは、外国人従業員であっても日本人従業員であっても変わらない、最も基本的な判断基準です。例えば、正社員の週所定労働時間が40時間、月所定労働日数が20日の会社であれば、週30時間以上かつ月15日以上働く外国人従業員は、この基準によって社会保険の加入対象となる可能性が高いと言えます。

判断基準2:【要注意】従業員数で変わるパート・アルバイトの加入義務拡大

上記の「4分の3基準」を満たさないパートタイムやアルバイトの外国人従業員であっても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となる場合があります。これは、近年の法改正により、短時間労働者への社会保険適用が段階的に拡大されているためです。特に中小企業にとっては、この変更点を正確に把握しておくことが極めて重要です。

以下の5つの条件をすべて満たす場合、パート・アルバイトの外国人従業員も社会保険の加入対象となります 。  

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること(残業代、賞与、通勤手当などは含みません )  
  • 2か月を超える雇用の見込みがあること(この期間要件は令和4年10月に「1年以上」から変更されました )  
  • 学生ではないこと(ただし、夜間学生や休学中の場合は加入対象となることがあります )  
  • 勤務先の従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が一定規模以上であること
    • 現行(~2024年9月まで):101人以上の企業  
    • 【重要】2024年10月以降:51人以上の企業  

この2024年10月からの従業員規模要件の変更は、特に注意が必要です。これまで対象外だった従業員数51人から100人の企業で働くパート・アルバイトの外国人従業員も、他の4つの条件を満たせば新たに社会保険の加入対象となります。

従業員数は、法人の場合、同一法人に所属する厚生年金保険の被保険者数で判断します。支店や営業所が複数ある場合は、企業全体での被保険者数が基準となります 。  

この適用拡大は、多くの企業にとって影響が大きい変更点です。自社がいつから対象となるのか、どの従業員が新たに対象となるのかを正確に把握し、準備を進める必要があります。

外国人パート・アルバイトの社会保険加入条件(健康保険・厚生年金保険)

判定項目加入が必要となる条件備考
週の所定労働時間20時間以上
月額賃金(所定内)8.8万円以上残業代、賞与、通勤手当、家族手当、精皆勤手当などは含めない
雇用期間の見込み2ヶ月を超える見込み当初の契約期間だけでなく、更新の可能性も含めて判断
学生学生ではない夜間学生、通信制学生、休学中の学生、卒業見込証明書があり卒業後も勤務予定の学生は加入対象となる場合がある
勤務先の企業規模(被保険者数)~2024年9月:101人以上
2024年10月~:51人以上
同一企業(法人番号が同一)の厚生年金保険の被保険者数で判断 。50人以下の企業でも労使合意に基づき任意で加入可能(任意特定適用事業所)

上記の5つの条件をすべて満たす場合に加入対象となります。

あなたの会社は大丈夫?今すぐできる自己診断チェックリスト

外国人従業員の社会保険加入について、自社の対応が適切かどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。一つでも「いいえ」や「不明」がある場合は、加入漏れのリスクがあるかもしれません。

チェック項目はいいいえ不明
雇用している外国人従業員全員について、氏名、在留資格、在留期間、週の所定労働時間、月の所定労働日数、月額賃金(所定内)を正確に把握していますか?
週の所定労働時間および月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上となる外国人従業員は、全員社会保険に加入させていますか?
従業員数101人以上の企業(2024年10月からは51人以上の企業)】 週20時間以上、月額賃金8.8万円以上、2ヶ月超の雇用見込みがあり、学生ではないパート・アルバイトの外国人従業員は、全員社会保険に加入させていますか?
当初の契約期間が短くても(例:1ヶ月)、契約更新の可能性があったり、実質的に長期雇用が見込まれる外国人従業員について、最初の契約開始時から社会保険の加入手続きを行っていますか?
「業務委託契約」を締結している外国人がいる場合、その外国人に対して具体的な業務指示や時間管理、場所の拘束などを日常的に行っていませんか?(偽装請負の疑いがないと言い切れますか?)
外国人従業員の日本語能力を理由に、社会保険に関する説明や加入手続きを遅らせたことはありませんか?
社会保険の加入手続きについて、外国人従業員本人から「入りたくない」という申し出があった場合でも、加入条件を満たしていれば強制加入であることを説明し、適切に手続きを行っていますか?
外国人従業員の在留資格の更新手続きの際に、社会保険の加入状況が影響することを理解していますか?

このチェックリストで「いいえ」や「不明」の項目があった場合、あるいは判断に迷う場合は、自己判断せずに専門家である社会保険労務士にご相談いただくことを強くお勧めします。

もし加入義務違反が発覚したら?経営を揺るがす3大リスク

外国人従業員の社会保険加入義務を軽視し、手続きを怠った場合、企業は深刻な経営リスクに直面する可能性があります。単に「知らなかった」では済まされず、その代償は金銭的な負担にとどまりません。ここでは、特に影響の大きい3つのリスクについて具体的に解説します。

リスク1:最大2年分の保険料と延滞金という「想定外のコスト」

社会保険の加入義務違反が発覚した場合、最も直接的なダメージとなるのが金銭的な負担です。年金事務所などの調査により未加入が指摘されると、原則として過去最大2年分まで遡って社会保険料を徴収されます 。  

ここで特に注意すべきは、この遡及徴収の際に、企業が従業員負担分の保険料も併せて支払うよう指導されるケースが多いという点です 。つまり、企業負担分と従業員負担分の両方を、過去2年分一括で納付しなければならない可能性があるのです。例えば、ある従業員の社会保険料(企業負担分+従業員負担分)が月額5万円だったとすると、2年分では120万円になります。もし企業が従業員負担分も肩代わりすることになれば、その負担はさらに大きくなります。  

さらに、未納であった保険料に対しては延滞金が課されます。日本年金機構の定める延滞金の利率は、納付期限の翌日から3ヶ月を経過する日までは年2.4%、それ以降は年8.7%(令和6年時点)とされており、決して低いものではありません 。これに加えて、未加入期間の保険料に対して10%の追徴金が課されることもあります 。  

ある中小企業では、数名の外国人従業員の加入漏れが発覚し、2年分の遡及保険料と延滞金を合わせて数百万円の支払いを命じられた事例も存在します。このような想定外の支出は、企業の資金繰りを圧迫し、経営計画に大きな狂いを生じさせる可能性があります。

また、悪質なケースと判断された場合には、健康保険法や厚生年金保険法に基づき「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」といった刑事罰が科される可能性もゼロではありません 。  

リスク2:従業員との信頼関係崩壊と「労務トラブル」

社会保険への未加入は、外国人従業員にとって直接的な不利益をもたらし、企業と従業員との信頼関係を著しく損なう原因となります。

まず、健康保険に加入していなければ、病気やケガをした際に医療費の全額を自己負担しなければならず、経済的な困窮を招く可能性があります 。厚生年金保険に未加入であれば、将来受け取れる年金額が減る、あるいは国民年金のみの場合は基礎年金のみとなり、十分な老後保障が得られない可能性があります。また、日本での年金加入期間が短い外国人の方が帰国する際に受け取れる「脱退一時金」の額にも影響します 。  

雇用保険に加入していなければ、万が一失業した場合に失業手当を受け取ることができず、生活の安定が脅かされます 。育児休業給付や介護休業給付といったセーフティネットも利用できません。  

労災保険は、国籍や就労形態に関わらず全ての労働者に適用されますが 、企業が適切な加入手続きを怠っていた場合、労災発生時の手続きが煩雑になったり、場合によっては企業が給付額の一部または全部を負担するよう求められたりすることもあります 。  

これらの不利益は、外国人従業員が企業に対して不信感を抱く十分な理由となり得ます。過去には、社会保険未加入が原因で、従業員から未払い賃金請求(本来天引きされるべき保険料が天引きされていなかった場合など)や、逸失利益(受けられるはずだった給付が受けられなかったことによる損害)の賠償を求める訴訟に発展したケースも存在します 。  

さらに、社会保険の未加入は、外国人従業員の在留資格の更新や変更申請の際に不利に働くことがあります 。企業側の不手際が原因で従業員の在留が不安定になるような事態は、深刻な労務トラブルを引き起こしかねません。従業員が労働基準監督署や年金事務所に相談・通報することで、行政調査に繋がることもあります。  

リスク3:行政調査による「信用の失墜」

社会保険の未加入が疑われる場合、年金事務所や労働基準監督署による行政調査が行われることがあります 。調査のきっかけは、定期的なもの、従業員や関係者からの通報、他省庁からの情報連携(例:税務情報との突合)など様々です。マイナンバー制度の導入により、各省庁間の情報連携はより緊密になっており、以前にも増して加入漏れが発覚しやすくなっていると言えるでしょう 。  

調査では、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、雇用契約書などの書類提出を求められ、担当者へのヒアリングが行われます 。調査の結果、加入漏れなどの違反が確認されれば、是正指導が行われ、遡及加入や未払い保険料の納付を命じられます 。  

指導に従わない場合や、悪質性が高いと判断された場合は、前述の罰則が科される可能性があります。また、厚生労働省は、重大または悪質な法令違反を繰り返す企業に対して、企業名を公表する制度を設けています 。社会保険の未加入のみで直ちに企業名が公表されるケースは稀ですが、他の労働関係法令違反と複合していたり、多数の労働者に長期間影響を及ぼしていたりするような場合は、企業の社会的信用を大きく損なう事態も考えられます。  

行政調査が入ること自体が、企業にとっては大きな時間的・精神的負担となります。また、調査や指導の事実が取引先や金融機関、顧客などに知られれば、企業の信用低下は避けられません。特に外国人材の採用においては、コンプライアンス意識の低い企業というイメージが広まれば、将来的な採用活動にも悪影響を及ぼすでしょう。

よくある質問

外国人雇用の社会保険に関して、経営者や労務担当者の方から寄せられることの多いご質問とその回答をまとめました。

Q. 外国人アルバイトを雇っています。短時間・短期間のつもりですが、社会保険に加入させないとどうなりますか?

A. 外国人アルバイトであっても、国籍に関わらず日本人と同様の条件で社会保険の加入義務が生じます。労働時間や日数が正社員の概ね4分の3以上であれば原則加入です。それに満たない場合でも、特に2024年10月からは従業員51名以上の企業では、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上、2ヶ月を超える雇用の見込みがあり、学生でない、といった条件を全て満たすパート・アルバイトの方も健康保険・厚生年金保険の加入対象となります 。未加入が発覚した場合、最大で過去2年分の保険料の遡及徴収や延滞金の支払い、さらには従業員から社会保険未加入によって被った損害(例:医療費の自己負担増など)に対する賠償を請求されるリスクがあります 。  

Q. 外国人を役員として迎え入れますが、社会保険への加入は必要ですか?

A. 外国籍の役員(取締役など)であっても、法人の代表者や業務執行権を持つ役員として法人から労務の対償として報酬を受けている場合は、原則として健康保険・厚生年金保険の加入対象となります 。これは、社長一人の会社であっても同様です 。ただし、役員としての実態がなく、非常勤で、かつ報酬が社会通念上役員報酬とは言えないほど低い場合など、例外的に加入対象外と判断されるケースもあります。具体的な状況によって判断が異なるため、専門家にご相談いただくことをお勧めします。  

Q. 社会保険の手続き漏れで、過去の保険料を遡って請求されるのが怖いです。どのくらいの期間、いくらぐらい請求されるのですか?

A. 社会保険料の徴収の時効は2年です。そのため、年金事務所などの調査で加入漏れが発覚した場合、最大で過去2年分まで遡って保険料を請求される可能性があります 。この際、企業が本来従業員の給与から天引きして納付すべきだった従業員負担分の保険料についても、企業がまとめて納付するよう指導されることが一般的です 。さらに、納付が遅れたことに対する延滞金も加算されます 。請求される具体的な金額は、未加入だった従業員の人数、それぞれの報酬額、未加入期間によって大きく変動します。場合によっては数百万円に上ることもあり、企業の資金繰りに大きな影響を与える可能性があります。  

Q. 雇用する外国人が「年金はどうせもらえないから入りたくない」と言っています。どう対応すればよいですか?また、帰国時に何か制度はありますか?

A. 社会保険(厚生年金保険を含む)の加入は、加入条件を満たす限り法律上の義務であり、従業員本人の希望によって加入の要否が決まるものではありません 。まずはこの点を丁寧に説明し、理解を求めることが重要です。 その上で、外国人の方が将来年金を受け取れないかもしれないという不安に対しては、いくつかの制度があることを伝えるのが良いでしょう。  

  • 脱退一時金制度:日本国籍を有しない方が、厚生年金保険や国民年金の保険料を6ヶ月以上納めて日本を出国した場合、一定の条件を満たせば、これまで納めた保険料の一部が一時金として払い戻される制度があります 。  
  • 社会保障協定:日本が社会保障協定を締結している国(アメリカ、ドイツ、韓国、中国など多数 )の出身者であれば、日本の年金加入期間を母国の年金制度の加入期間に通算できる場合があります。これにより、母国での年金受給資格を得やすくなったり、受給額が増えたりすることがあります 。 これらの制度について情報提供することで、外国人従業員の不安を和らげ、社会保険制度への理解を促すことができます。  

まとめ

外国人従業員の社会保険手続きは、その複雑さから「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされない重大な経営リスクを内包しています。本記事で解説したように、加入義務の判断を誤ると、最大2年分の社会保険料の遡及徴収と延滞金という金銭的負担、従業員との信頼関係の失墜や労務トラブル、そして行政調査による信用の失墜といった、経営の根幹を揺るがしかねない事態を招く可能性があります。

特に、2024年10月からはパート・アルバイトの社会保険適用が従業員51人以上の企業にも拡大されるなど、制度は常に変化しています。自己判断に頼ることは極めて危険です。

「うちの会社は大丈夫だろうか…」 少しでも不安を感じられた経営者様、労務担当者様は、手遅れになる前に専門家である社会保険労務士にご相談ください。気づかないうちに抱えているそのリスクを、専門家と一緒に解消し、安心して外国人雇用を進められる体制を整えましょう。

社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)では、全国対応・初回相談無料でご相談を承っております。人事労務に関するお悩みはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。

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監修者(社労士)

社会保険労務士(社労士事務所altruloop代表)
労務管理・人事制度設計・法改正対応をはじめ、実務と経営をつなぐ制度づくりを得意とする。戦略コンサルファームでは新規事業立ち上げや組織改革に従事し、大手〜スタートアップまで幅広い企業の支援実績あり。
現在は東京都渋谷区や八王子を拠点にしている社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)代表として、全国対応で実務と経営の両視点から企業を支援中。

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