労災保険とは?基礎知識と手続き、計算方法や労災発生時の対応フローまで徹底解説

労災保険は、従業員の業務中や通勤中の万が一の事態に備える、企業と従業員双方にとって不可欠なセーフティネットです。しかし、その制度内容は複雑で、手続きも煩雑だと感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、中小企業の経営者や人事・労務担当者の皆様が押さえておくべき労災保険の基礎知識から、加入手続き、保険料の仕組み、労災事故発生時の具体的な対応フロー、さらには専門家である社会保険労務士に相談するメリットに至るまで、分かりやすく徹底的に解説します。

東京渋谷・八王子の社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)が、貴社の労務管理を力強くサポートします。

目次

労災保険の基本:制度の目的と重要性

労災保険制度を理解する最初のステップは、その目的と、なぜ企業にとって加入が不可欠なのか、そしてしばしば混同される健康保険との明確な違いを把握することです。これらを理解することで、労災保険の重要性がより明確になります。

労災保険とは何か?分かりやすく解説

労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」といい、一般的には「労災(ろうさい)」と略して呼ばれます 。この制度の主な目的は、労働者が業務上の事由または通勤によって負傷したり、病気になったり、体に障害が残ったり、あるいは不幸にも死亡してしまった場合に、被災した労働者やその遺族に対して、迅速かつ公正な保護を行うことです 。  

労災は、主に次の2つの種類に大別されます。

  • 業務災害: 労働者が、業務が原因となって被った負傷、疾病、障害または死亡を「業務災害」といいます 。例えば、工場での作業中に機械に手を挟まれて怪我をする、建設現場で高所から転落するといった物理的な事故はもちろんのこと、業務上の強いストレスによる精神障害や、過度な長時間労働が引き起こす脳・心臓疾患(いわゆる過労死)も業務災害に含まれます 。業務災害として認定されるためには、その傷病が「業務に起因すること」が重要なポイントとなります。  
  • 通勤災害: 労働者が、通勤によって被った負傷、疾病、障害または死亡を「通勤災害」といいます 。ここでいう「通勤」とは、住居と就業場所との間の往復、複数の就業場所間の移動など、業務に就くための合理的な移動行為を指します。  

この業務災害と通勤災害の区別は非常に重要です。なぜなら、認定基準や、場合によっては労災保険給付の内容、さらには会社の責任範囲にも影響が出ることがあるためです。例えば、業務災害の場合には労働基準法による解雇制限(療養のための休業期間及びその後30日間は解雇できない)が適用されますが、通勤災害の場合は原則としてこの解雇制限の適用はありません 。また、通勤災害による休業給付では、初回の給付から200円(日雇特例被保険者は100円)の一部負担金が差し引かれるといった違いもあります 。これらの細かな違いを理解しておくことが、適切な初動対応につながります。

なぜ労災保険への加入が不可欠なのか?

労災保険への加入は、法律で定められた事業主の義務であると同時に、企業経営における重要なリスクマネジメントの一環です。

まず、法的な加入義務があります。原則として、労働者を一人でも雇用する事業(会社や個人事業主)は、その業種や規模にかかわらず、労災保険に加入しなければなりません 。これは強制適用事業と呼ばれ、保険料は全額事業主が負担します 。  

次に、従業員の保護と安心感の提供という観点です。従業員が日々の業務を安心して遂行できる環境を整備することは、企業の持続的な成長と発展に不可欠です。労災保険は、万が一の業務災害や通勤災害に対するセーフティネットとして機能し、従業員とその家族の生活を守ります 。  

さらに、企業の責任とリスクヘッジの側面も無視できません。労災保険に未加入の状態で労働災害が発生すると、事業主は労働基準法に基づく災害補償責任を直接負うことになり、治療費や休業補償など、場合によっては非常に高額な費用を全額自己負担しなければならなくなる可能性があります。加えて、未加入が発覚した場合には、過去に遡って保険料を徴収されるだけでなく、追徴金が課されたり、労災保険給付に要した費用の全部または一部を徴収されたりする罰則もあります 。  

そして、社会的信用の維持も重要なポイントです。労災保険への未加入は、法令遵守意識の欠如と見なされ、「ブラック企業」といった不名誉なイメージを持たれる原因となりかねません。これは、採用活動において優秀な人材を確保することを困難にし、既存従業員の信頼を損ない、離職率の上昇にも繋がる可能性があります 。また、建設業などでは、元請企業が下請企業に対して労災保険の加入を現場入場の条件とすることも一般的です。これは元請企業が負う安全配慮義務とも関連しており、未加入は受注機会の損失に直結することもあります 。  

このように、労災保険への加入は、単なるコストではなく、従業員を守り、企業自身のリスクを軽減し、社会的な信用を維持するための不可欠な投資と言えるでしょう。

労災保険と健康保険の違いは?

労災保険と健康保険は、どちらも病気やケガの際に利用できる公的な医療保険制度ですが、その目的や適用範囲が大きく異なります。この違いを正しく理解しておくことは非常に重要です。

項目労災保険(労働者災害補償保険)健康保険
目的・対象業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡など 業務外の私生活における病気、ケガ、出産、死亡など
自己負担原則としてなし(治療費・薬剤費など全額給付)原則として一部負担あり(例:3割負担)
保険料負担全額事業主負担 原則として事業主と被保険者(従業員)が折半
主な給付内容例療養(補償)等給付、休業(補償)等給付、障害(補償)等給付、遺族(補償)等給付など療養の給付、傷病手当金、出産育児一時金、埋葬料など
管轄労働基準監督署全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合など

重要な注意点として、業務上のケガや病気(労災)に対して健康保険を使用することはできません 。もし誤って健康保険証を提示して治療を受けてしまった場合は、速やかに医療機関や加入している健康保険組合等にその旨を申し出て、労災保険への切り替え手続きを行う必要があります 。切り替え手続きを怠ると、一時的に治療費の全額を自己負担しなければならなくなる場合があるなど、被災した従業員にとって不利益が生じる可能性があります。  

労災保険の加入手続き

労災保険への加入は、法律で定められた事業主の義務です。ここでは、具体的にどのような事業主と労働者が対象となり、どのような流れで、いつまでに、何をして加入手続きを完了させるのか、そして例外的なケースである特別加入制度について詳しく解説します。

労災保険の加入対象となる事業主と労働者の範囲

労災保険の適用対象は非常に広範です。

事業主の範囲: 原則として、労働者を一人でも雇用している事業は、その業種や規模(株式会社、有限会社、個人事業主など形態を問わず)にかかわらず、**労災保険の適用事業所(強制適用事業所)**となります 。つまり、従業員を雇い入れた時点で、事業主は労災保険の加入手続きを行う義務が生じます。 ただし、例外として、個人経営の農林水産業の一部(常時使用する労働者が5人未満の場合など)は、当分の間、労災保険への加入が任意(任意適用事業)とされています 。  

労働者の範囲: 労災保険の対象となる「労働者」とは、事業主に使用されて労働し、賃金を得ている全ての人を指します。これには、正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員、嘱託社員、日雇い労働者など、雇用形態や呼称、労働時間の長短、国籍などに関わらず、全ての人が含まれます 。 例えば、週に数時間しか働かないアルバイトであっても、雇用契約に基づき働いている限り、労災保険の対象となります。  

ただし、以下の場合は原則として労災保険の一般の労働者としては扱われません。

  • 法人の役員:代表取締役や業務執行権を持つ役員は、原則として労働者とはみなされず、労災保険の対象外です。ただし、役員であっても工場長を兼務するなど、実態として労働者的性格が強い場合は、労働者として扱われる部分について労災保険の対象となることがあります 。  
  • 同居の親族:事業主と同居している親族は、原則として労働者とはみなされません。しかし、一般の労働者と全く同じ条件で働き、賃金も他の労働者と同様に支払われているなど、労働者性が明確に認められる場合は、労働者として扱われることがあります 。  
  • 派遣社員:派遣社員の場合、雇用契約は派遣元の派遣会社と結んでいるため、労災保険の加入手続きや保険料の支払いは派遣元の会社が行います 。派遣先企業は、派遣社員が安全に働けるよう配慮する義務はありますが、労災保険の直接の加入義務者ではありません。    

これらの例外に該当する可能性のある方々については、後述する「特別加入制度」の利用を検討することができます。

労災保険の加入手続きの流れと必要書類

労災保険の加入手続きは、事業を開始し、初めて労働者を雇い入れた際に行う重要な手続きです。

手続き場所: 原則として、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署で行います 。公共職業安定所(ハローワーク)でも相談は可能ですが、労災保険の成立手続き自体は労働基準監督署の管轄です。  

手続き期限: 保険関係が成立した日(通常は労働者を初めて雇い入れた日)の翌日から10日以内に「保険関係成立届」を提出する必要があります 。また、「労働保険概算保険料申告書」は、保険関係成立の日の翌日から50日以内に提出し、保険料を納付します 。  

主な必要書類

  • 保険関係成立届:労災保険の適用事業所となったことを届け出るための書類です 。  
  • 労働保険概算保険料申告書:その年度に支払う見込みの賃金総額に基づいて概算の保険料を計算し、申告・納付するための書類です 。  
  • 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の写し:法人の場合に必要です 。  
  • 事業所の所在地が確認できる書類:賃貸借契約書の写しなど(法人の場合で、登記上の本店所在地と実際の事業所所在地が異なる場合など)。
  • 事業の実態が確認できる書類:事業許可証の写し、会社のパンフレットなど(業種によって求められる場合があります)。

手続きのポイント: 労災保険は、事業所単位で適用される保険です。したがって、一度事業所として加入手続きを行えば、その後、従業員を採用したり退職したりする都度、個別の加入・喪失手続きを行う必要はありません(この点は、従業員ごとに入退社手続きが必要な雇用保険や健康保険・厚生年金保険とは異なります)。 ただし、年に一度、前年度の保険料を確定させ、新年度の概算保険料を申告・納付する「年度更新」の手続きが必要になります。  

手続きを怠ると、遡って保険料を徴収されるだけでなく、追徴金が課されたり、万が一労災事故が発生した際に給付額の一部または全部を事業主が負担しなければならなくなるなどのペナルティがありますので、速やかに手続きを行いましょう 。  

労災保険の特別加入制度とは?対象者とメリット・デメリット

労災保険は、原則として「労働者」の保護を目的とした制度ですが、労働者ではないものの、その業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと考えられる一定の人々に対して、任意で労災保険への加入を認める「特別加入制度」があります 。  

特別加入できる主な対象者は以下の通りです。

スクロールできます
対象者区分主な加入要件・特徴主なメリット主なデメリット・注意点
中小事業主等常時使用する労働者数が一定規模以下(例:金融・小売業等は50人以下、卸売・サービス業は100人以下、その他は300人以下)の事業主。法人の役員や事業主の家族従事者も、業務の実態により加入可能。労働保険事務組合への事務委託が必要な場合が多い。労働者と同様の業務を行う際の災害補償。民間保険より保険料が割安な場合がある。経営者自身の万が一に備えられる安心感。保険料は全額自己負担。補償範囲は労働者としての業務遂行中の災害に限られ、経営判断や役員会出席中の災害などは対象外となる可能性。手続きが煩雑な場合がある。二次健康診断等給付は対象外。
一人親方その他の自営業者労働者を使用せずに特定の事業(建設業、個人タクシー、運送業、漁業、林業、医薬品配置販売など)を行う者。多くの場合、特別加入団体を通じて加入。業務中のケガや病気に対する手厚い補償(治療費全額、休業補償など)。元請企業からの仕事受注条件をクリアできる(特に建設業)。支払った保険料は社会保険料控除の対象となり節税効果も期待できる。保険料や特別加入団体の組合費・手数料は全額自己負担。業務災害の認定範囲が限定される場合がある。加入手続きや給付請求手続きに手間がかかる場合がある。
特定作業従事者特定の危険有害な作業(特定農作業、指定農業機械作業、林業の伐木等作業、家内労働者及びその補助者の特定作業、ITフリーランス、自転車配達員、芸能関係作業従事者、アニメーション制作作業従事者、柔道整復師など)に従事する者。多くの場合、特別加入団体を通じて加入。危険性の高い作業に従事する実態に即した補償。安心して業務に専念できる。保険料・団体費用は自己負担。加入条件や対象業務が細かく定められている。複数の異なる特定作業に従事する場合、それぞれで加入が必要になる可能性があり、費用負担が増すことも。
海外派遣者日本国内の事業主から海外の支店、工場、合弁企業、提携先企業などに派遣される労働者や、海外の中小規模事業に事業主等として派遣される者など。派遣元の事業主が手続きを行う。海外での業務災害や通勤災害に対する日本の労災保険による補償。現地の労災補償制度が不十分な場合に有効。派遣元の事業が日本国内で労災保険に加入していることが前提。現地採用者や留学目的の者は対象外。災害発生前に加入している必要がある。
フリーランス(特定受託事業者)2024年11月1日より、企業等から業務委託を受けて事業を行うフリーランス(特定受託事業者)や、同様の事業を消費者から委託を受けて行うフリーランスが、業種を問わず幅広く特別加入の対象に。業務中のケガや病気に対する経済的補償。安心して仕事に集中できる。クライアントからの信頼向上に繋がる可能性。保険料は全額自己負担。加入手続きや年度更新などの事務作業が必要。補償範囲や認定条件について誤解が生じないよう注意が必要。

特別加入制度は、働き方の多様化が進む現代において、セーフティネットを広げる重要な役割を担っています。特にフリーランスへの対象拡大は、多くの個人事業主にとって朗報と言えるでしょう。しかし、任意加入であること、保険料が自己負担であること、そして手続きの煩雑さなどが加入のハードルとなる場合もあります。ご自身の働き方やリスクを考慮し、必要に応じて専門家である社労士に相談の上、加入を検討することが推奨されます。

労災保険料の仕組み:計算方法と納付のポイント

労災保険料は、企業が負担する重要なコストの一つです。ここでは、保険料がどのように計算され、いつ、どのように納付するのか、そして保険料負担を軽減できる可能性のある「メリット制」について、具体的なポイントを解説します。

労災保険料の計算方法と保険料率

労災保険料は、全額事業主負担であり、労働者が負担することはありません 。 基本的な計算方法は以下の通りです。  

労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率  

  • 賃金総額: その年度内(4月1日から翌年3月31日まで)に、全ての労働者(パート、アルバイト等も含む)に支払われる賃金の総額を指します。ここでの「賃金」とは、給料、手当、賞与など、労働の対償として支払われる全てのものを含みます。ただし、役員報酬(労働者性が認められる部分を除く)や退職金、慶弔見舞金などは原則として賃金総額には含まれません。
  • 労災保険料率: 事業の種類ごとに、過去の災害発生状況などを考慮して、厚生労働大臣が決定します 。災害リスクが高い業種ほど保険料率は高く、リスクが低い業種ほど低く設定されています。例えば、建設事業や林業などは比較的高く、事務作業が中心の商業などは低くなる傾向があります。 この労災保険料率は、原則として3年ごとに改定されます。直近では、令和6年度(2024年度)から労災保険料率が改定され、全54業種のうち17業種で引き下げ、3業種で引き上げとなり、業種平均では4.5/1000から4.4/1000へと0.1ポイント引き下げられました 。 自社の事業がどの業種に該当し、どの保険料率が適用されるかについては、厚生労働省のウェブサイトなどで最新の「労災保険率表」を確認することが不可欠です。  

正確な賃金総額の把握と、自社に適用される正しい労災保険料率の確認が、適正な保険料計算の第一歩となります。

労災保険料のメリット制とは?

労災保険の「メリット制」とは、個々の事業場の労働災害の発生状況に応じて、その事業場に適用される労災保険率または労災保険料額を、一定の範囲内(原則としてプラスマイナス40%)で増減させる制度です 。  

この制度の主な目的は、以下の2点です。

  1. 事業主間の保険料負担の公平性の確保:同じ業種であっても、個々の事業場の作業環境や安全対策への取り組みによって災害発生率は異なります。メリット制は、これらの実態を保険料に反映させることで、負担の公平を図ります 。  
  2. 事業主による労働災害防止努力の促進:災害発生が少なければ保険料が安くなり、多ければ高くなるため、事業主が積極的に災害防止に取り組むインセンティブとなります 。  

メリット制の適用要件

メリット制が適用されるためには、事業の継続性や規模に関する一定の要件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです 。  

  • 事業の継続性:労災保険の保険関係が成立してから3年以上経過していること。
  • 事業の規模
    • 継続事業(一般的な事業):連続する3保険年度中の各保険年度において、使用労働者数が100人以上であるか、または20人以上100人未満で災害度係数が0.4以上であること。
    • 一括有期事業(建設業など):連続する3保険年度中の各保険年度において、確定保険料の額が40万円以上であること。
    • 単独有期事業(大規模な建設工事など):確定保険料の額が40万円以上であるか、または建設の事業で請負金額が1億1千万円以上(素材生産量が1000立方メートル以上)であること。

メリット収支率とメリット料率の算定: 過去3年間の保険給付等の額と確定保険料の額との割合である「メリット収支率」を算定し、その収支率に応じてメリット増減率(±40%など)が決定されます 。 そして、その業種に適用される労災保険率(基準労災保険率)から、通勤災害や二次健康診断等給付に充てられる非業務災害率(全業種一律 0.6/1000)を引いた率に、メリット増減率を乗じて調整し、再度非業務災害率を加えたものが、実際に適用される「メリット料率」となります 。

計算式:メリット料率 = (基準労災保険率 – 非業務災害率) × (100 + メリット増減率(%)) / 100 + 非業務災害率  

通知方法: メリット制が適用される事業主には、毎年送付される労働保険の年度更新申告書に「労災保険率決定通知書」が同封され、適用されるメリット料率が知らされます 。  

注意点

  • 通勤災害はメリット制の算定基礎から除外されます。つまり、通勤災害の発生件数はメリット収支率に影響しません 。  
  • 中小企業事業主が所定の安全衛生措置を講じた場合には、メリット増減率の割引幅がさらに拡大される「特例メリット制」という制度もあります 。  

メリット制は、企業の安全衛生活動が保険料という形で直接的に評価される仕組みであり、積極的な災害防止努力がコスト削減にも繋がることを示しています。

労災保険料の申告・納付時期と方法

労災保険料は、雇用保険料と合わせて「労働保険料」として、年に一度「年度更新」という手続きによって申告・納付します 。  

年度更新とは

前年度(4月1日から翌年3月31日まで)の確定した賃金総額に基づいて確定保険料を計算し、前年度に概算で納付した保険料との過不足を精算します。同時に、新年度(当年4月1日から翌年3月31日まで)に支払う見込みの賃金総額に基づいて概算保険料を計算し、申告・納付する一連の手続きです 。  

申告・納付期間

原則として、毎年6月1日から7月10日までの期間に行います 。この期間内に申告書を提出し、保険料を納付する必要があります。  

納付方法

主な納付方法は以下の通りです。

  • 金融機関窓口:銀行、信用金庫、郵便局などの窓口で納付書を使用して納付します 。  
  • 口座振替:事前に手続きをすれば、指定した金融機関の口座から自動的に引き落とされます。納付忘れを防ぐことができ便利です 。  
  • 電子納付(e-Gov):政府の電子申請システム「e-Gov」を利用して、インターネット経由で申告から納付まで行うことができます。24時間いつでも手続きが可能ですが、事前の利用者登録や電子証明書の準備などが必要になる場合があります 。  

延納(分割納付)

概算保険料額が一定額以上(原則40万円以上、労災保険か雇用保険のどちらか一方のみ成立している場合は20万円以上)の場合、または労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、労働保険料を年3回に分割して納付(延納)することができます 。 各期の納期限は以下の通りです。

 

  • 第1期:7月10日
  • 第2期:10月31日
  • 第3期:翌年1月31日 (納期限が土日祝日の場合は、その翌営業日となります)。  

納付遅延のペナルティ

納付期限までに保険料を納付しない場合、延滞金が課されることがあります 。年度更新の手続きは年に一度の重要な義務ですので、計算ミスや申告漏れ、納付遅れがないよう、計画的に準備し、期限内に正確に行うことが求められます。  

もしもの時!労災事故発生時の対応フローと注意点

労働災害は、いつ、どの企業で発生してもおかしくありません。万が一、従業員が業務中や通勤中に被災した場合、企業は迅速かつ適切に対応することが求められます。ここでは、事故発生直後の初期対応から、労働基準監督署への報告、そして最も重要な被災従業員へのケアに至るまでの具体的なフローと注意点を解説します。

労災事故発生!まず何をすべきか?(初期対応)

労災事故が発生した場合、何よりも被災した従業員の救護が最優先です。パニックにならず、以下の手順で冷静に対応してください。

  1. 被災者の救護と安全確保: まず、被災者の状態を確認し、必要であれば直ちに救急車を手配します(119番通報)。挟まれ事故などで救助が必要な場合は、二次災害が発生しないよう周囲の安全を確保した上で、慎重に救助活動を行います 。  
  2. 医療機関への搬送: 被災者を速やかに医療機関へ搬送します。可能な限り、労災保険指定医療機関を選ぶと、その後の手続きがスムーズに進みます 。労災保険指定医療機関であれば、原則として窓口での治療費支払いが不要です。 医療機関には、「労災(労働災害または通勤災害)によるものである」ことを明確に伝え、健康保険証は提示しないように被災者または付き添いの方に指示してください 。近くに指定医療機関がない場合は、一般の病院で治療を受け、後日、労災保険へ治療費を請求することになります。  
  3. 関係各所への連絡
    • 被災者の家族:速やかに連絡を取り、状況を説明します 。  
    • 警察:交通事故や重大な事故(死亡事故、爆発など)の場合は、警察にも通報が必要です(110番通報)。
    • 労働基準監督署:死亡災害や重篤な休業災害(休業4日以上が見込まれる場合など)が発生した場合は、所轄の労働基準監督署にも速やかに第一報を入れ、指示を仰ぎます 。  
  4. 事故状況の把握と記録: 事故の再発防止と後の手続きのために、事故の状況を正確に把握し、記録しておくことが重要です 。
    • 5W1H:いつ(日時)、どこで(場所)、誰が(被災者)、何をしていた時に、なぜ(原因・誘因)、どのように(経緯・結果)事故が発生したのかを詳細に記録します。
    • 目撃者の確保:事故を目撃した人がいれば、その人の氏名、連絡先、証言内容を記録します。
    • 写真・図面等:可能であれば、事故現場の状況を写真や図面で記録します。
  5. 現場保存: 特に重大な事故の場合、警察や労働基準監督署による現場検証が行われることがあります。原因究明のため、可能な限り事故現場を現状のまま保存するよう努めてください 。ただし、二次災害の危険がある場合や、救護活動に必要な場合はこの限りではありません。  

初期対応の的確さが、被災者の予後や企業の法的責任、さらには他の従業員の会社への信頼にも影響します。日頃から緊急時の対応フローを整備し、関係者に周知しておくことが望ましいでしょう。

労働基準監督署への報告と手続き

労災事故が発生した場合、企業には労働基準監督署への報告義務が生じます。また、被災した従業員が労災保険給付を受けるための手続きをサポートする必要があります。

労働者死傷病報告の提出

労働安全衛生法に基づき、労働者が労働災害により死亡または休業した場合、事業主は所轄の労働基準監督署長に「労働者死傷病報告」を提出しなければなりません 。  

  • 休業4日以上の場合:事故発生後、遅滞なく(一般的には1~2週間以内が目安とされています)、「労働者死傷病報告(様式第23号)」を提出します 。提出が1ヶ月以上遅れる場合は、遅延理由書の提出を求められることがあります。  
  • 休業3日以内の場合:四半期ごと(1~3月分を4月末日まで、4~6月分を7月末日まで、のように)に、その期間に発生した労働災害を取りまとめて「労働者死傷病報告(様式第24号)」を提出します 。    

これらの報告書は、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。

労災保険給付の請求手続きのサポート

労災保険の給付請求は、原則として被災した労働者本人またはその遺族が行います。しかし、企業(事業主)には、被災労働者が円滑に手続きを行えるよう助力する義務(労災保険法施行規則第23条1項)があり、請求書に必要な事業主の証明を行う義務(同規則第23条2項)があります 。 主な請求手続きは以下の通りです。

 

療養(補償)等給付:治療費に関する給付です。

  • 労災指定医療機関で治療を受けた場合:「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」(業務災害の場合)または「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」(通勤災害の場合)を、治療を受けた医療機関に提出します 。  
  • 労災指定医療機関以外で治療を受け、費用を立て替えた場合:「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号(1))」(業務災害の場合)または「療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5(1))」(通勤災害の場合)を、所轄の労働基準監督署に提出します。

休業(補償)等給付:仕事を休んだ際の給付です。

  • 「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」(業務災害の場合)または「休業給付支給請求書(様式第16号の6)」(通勤災害の場合)を、所轄の労働基準監督署に提出します。

これらの請求書にも事業主の証明欄があり、災害の発生状況や休業の事実などを証明する必要があります。

労働基準監督署の調査への対応

労災事故が発生すると、労働基準監督署による調査(災害時監督)が行われることがあります。特に重大な災害の場合や、報告内容に疑義がある場合などです。調査では、事故の原因、安全管理体制、労働時間管理、関連法規の遵守状況などが確認されます 。 企業としては、調査には誠実かつ協力的に対応する必要があります。事実関係を正確に伝え、求められた資料は速やかに提出しましょう。 調査の結果、法令違反や改善すべき点が指摘された場合は、「是正勧告書」や「指導票」が交付されることがあります。これらに対しては、指摘事項を真摯に受け止め、期限までに是正報告を行う必要があります 。 また、会社として労災の発生状況や原因について独自の調査を行い、労働基準監督署の見解と異なる意見がある場合は、「事業主の意見申出制度」を活用して、会社の主張や証拠を提出することも可能です 。  

これらの手続きや対応は専門的な知識を要する場合が多いため、不明な点や不安な点があれば、速やかに社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

被災した従業員への対応とコミュニケーション

労働災害が発生した場合、企業は法的な手続きを適切に行うだけでなく、被災した従業員に対して人間的な配慮と手厚いサポートを提供することが極めて重要です。従業員の心身の回復を助け、信頼関係を維持することは、企業の社会的責任であり、長期的な視点で見れば企業の利益にも繋がります。

精神的なケアと寄り添い

被災した従業員は、身体的な苦痛だけでなく、将来への不安や事故のトラウマなど、大きな精神的ストレスを抱えています 。企業担当者は、まず従業員の気持ちに寄り添い、話を真摯に聴く(傾聴する)姿勢が求められます 。一方的な指示や説明ではなく、従業員の不安や疑問を丁寧に受け止め、共感を示すことが大切です。必要に応じて、産業医やカウンセラーなどの専門家によるメンタルヘルスケアの機会を提供することも検討しましょう 。  

正確かつ丁寧な情報提供

労災保険の給付内容、治療の見通し、休業期間中の処遇、復職までのプロセスなどについて、正確な情報を分かりやすく提供します 。不明な点があれば正直に伝え、確認後に改めて説明するなど、誠実な対応を心がけます。従業員が自身の状況を正しく理解し、安心して療養に専念できるようサポートすることが重要です。  

休業中の継続的なコミュニケーション

休業中の従業員が孤立感を深めないよう、定期的に連絡を取り、状況を気遣うことが大切です。ただし、連絡の頻度や方法は従業員の状況や意向を尊重し、過度なプレッシャーとならないよう配慮が必要です。職場復帰に向けた情報交換や、職場の状況を伝えるなど、社会との繋がりを保つ支援も有効です。

職場復帰支援の実施

従業員の回復状況に合わせて、円滑な職場復帰を支援します。厚生労働省の指針に基づき、「職場復帰支援プログラム」を策定し、主治医や産業医、職場の上司など関係者と連携しながら、段階的な復帰計画(例:短時間勤務からの開始、業務内容の調整など)を検討・実施します 。復帰後も定期的な面談を行い、心身の状態や業務への適応状況を確認し、必要なフォローアップを継続します。  

不利益取扱いの禁止とハラスメント防止

労災を申請したことや、労災により休業したことを理由として、従業員に対して解雇、降格、配置転換などの不利益な取り扱いを行うことは法律で禁止されています。また、職場内で被災従業員に対するハラスメント(嫌がらせや中傷など)が発生しないよう、管理監督者への教育や啓発活動を行い、防止策を徹底する必要があります。

外国人労働者への特別な配慮

外国人労働者が被災した場合は、言語の壁を考慮したコミュニケーション支援が不可欠です。労災制度や手続きの説明、医療機関とのやり取りなどにおいて、母国語での説明資料の提供や通訳の手配など、理解を助けるための配慮を行います 。文化的な背景の違いにも留意し、安心して療養と手続きに臨めるようサポートします。  

被災した従業員への真摯な対応は、法的な義務を果たす以上に、従業員のエンゲージメントを高め、他の従業員からの信頼を得て、より良い職場環境を築くための基盤となります。

労災隠しは絶対ダメ!そのリスクとは

労働災害が発生した際に、会社がその事実を隠蔽しようとする行為、いわゆる「労災隠し」は、絶対に許されません。労災隠しは、労働安全衛生法に違反する犯罪行為であり、発覚した場合には企業に対して極めて深刻な結果をもたらします。

労災隠しの定義

労災隠しとは、主に以下の行為を指します 。  

  • 労働者死傷病報告を、故意に所轄の労働基準監督署長に提出しないこと。
  • 労働者死傷病報告に、虚偽の内容(例:事故の発生日時や状況を偽る、被災者を実際とは異なる人物にするなど)を記載して提出すること。
  • 被災した従業員に対して、労災保険を使わずに健康保険で治療を受けるよう指示したり、会社が治療費を負担するから労災申請をしないよう圧力をかけたりすること。

労災隠しがもたらすリスク

労災隠しは、一時的な問題回避を狙ったとしても、以下のような重大なリスクを企業にもたらします。

  1. 法的リスク(刑事罰・行政処分): 労働安全衛生法違反として、50万円以下の罰金が科される可能性があります 。悪質なケースや繰り返し行われる場合は、書類送検されたり、厚生労働省によって企業名が公表されたりすることもあります 。  
  2. 経済的リスク(費用徴収): 労災保険に未加入の場合と同様に、労災隠しが発覚し、その期間中に労災保険給付が行われた場合、事業主が故意または重大な過失により手続きを怠っていたと判断されると、保険給付に要した費用の全部または一部(40%または100%)が徴収される可能性があります 。これは、本来労災保険でカバーされるはずだった費用を、企業が追加で負担することになるため、大きな経済的打撃となり得ます。  
  3. 社会的信用の失墜: 企業名が公表されたり、労災隠しが報道されたりすると、企業の社会的信用は著しく低下します。「従業員の安全を軽視する企業」「法令を遵守しない企業」といった「ブラック企業」の烙印を押され、顧客や取引先からの信頼を失い、取引停止や受注機会の損失に繋がる可能性があります 。  
  4. 採用活動への悪影響と人材流出: 企業の評判が悪化すれば、優秀な人材の採用が困難になります。また、既存の従業員も会社への不信感を募らせ、モチベーションの低下や離職率の増加を招く可能性があります 。  
  5. 従業員との信頼関係の崩壊: 労災隠しは、被災した従業員だけでなく、他の従業員に対しても「会社は自分たちを守ってくれない」という強い不信感を与え、職場全体の士気低下や生産性の悪化を招きます。最悪の場合、被災従業員から損害賠償請求訴訟を提起されるなど、法的な紛争に発展する可能性も高まります。

労災隠しは、目先の小さな利益や体面を保つために行われることがあるかもしれませんが、その代償は計り知れません。企業は、労働災害が発生した際には、隠蔽することなく、誠実かつ迅速に法に則った対応を行うことが、結果として企業自身を守ることにも繋がるのです。

労災保険で受けられる給付の種類と請求手続き

労災保険制度では、業務災害や通勤災害によって被災した労働者やその遺族の生活を支えるために、様々な種類の保険給付が用意されています。それぞれの給付には目的や支給要件、請求手続きが定められています。ここでは、主な給付の種類とその内容、請求時のポイントについて解説します。

スクロールできます
給付の種類主な給付内容の概要請求のタイミング・主な必要書類(様式名)時効
療養(補償)等給付治療費、薬剤費、入院費、移送費など、療養に必要な費用の給付 治療中随時。様式第5号(業務災害)、様式第16号の3(通勤災害)など 費用支出日の翌日から2年(指定医療機関での現物給付は時効なし)
休業(補償)等給付療養のため働けず賃金を受けられない場合の所得補償(休業4日目から)休業中随時。様式第8号(業務災害)、様式第16号の6(通勤災害)など 賃金を受けない日の翌日から2年
障害(補償)等給付傷病治ゆ後に後遺障害が残った場合の年金または一時金 症状固定後。様式第10号(業務災害)、様式第16号の7(通勤災害)など 症状固定日の翌日から5年
遺族(補償)等給付労働者が死亡した場合の遺族への年金または一時金 死亡後。様式第12号(業務災害・年金)、様式第16号の8(通勤災害・年金)など 死亡日の翌日から5年
葬祭料等(葬祭給付)労働者が死亡し葬祭を行った者への費用給付 死亡後。様式第16号(業務災害)、様式第16号の10(通勤災害)など 死亡日の翌日から2年
傷病(補償)等年金療養開始後1年6ヶ月経過しても治らず一定の障害状態にある場合の年金 1年6ヶ月経過後、労働基準監督署長の職権で決定(届出は必要)(職権決定のため請求時効なし)
介護(補償)等給付重度の障害で介護が必要な場合の費用給付 介護を受けた月の翌月以降。様式第16号の2の2など 介護を受けた月の翌月1日から2年
二次健康診断等給付定期健康診断等で脳・心臓疾患のリスクが高いと診断された場合の追加検診・保健指導 一次健診結果受領後3ヶ月以内。様式第16号の10の2 一次健診受診日から3ヶ月以内

療養(補償)等給付:治療費に関する給付

業務中や通勤中に負傷したり病気にかかったりした場合、その治療に必要な費用が給付されます。これを療養(補償)等給付といいます 。具体的には、診察費、薬剤費、手術費、入院費、看護料、移送費(通院にかかる交通費など一定の条件を満たすもの)などが対象となります。  

この給付には、大きく分けて2つの方法があります。

療養の給付(現物給付)

労働者が労災病院または労災保険指定医療機関・薬局(以下、指定医療機関等)で治療や薬剤の支給を受ける場合、原則として窓口での費用負担なく、無料で必要な医療サービスを受けることができます 。これが「現物給付」と呼ばれるものです。この場合、被災労働者は指定医療機関等に「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」(業務災害の場合)または「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」(通勤災害の場合)を提出します 。  

療養の費用の支給(現金給付)

近くに指定医療機関等がなかったり、緊急その他やむを得ない理由で指定医療機関等以外の医療機関で治療を受けたりした場合、労働者は一旦治療費の全額を自己負担し、後日その費用を労災保険に請求することで、かかった費用の支給を受けることができます 。この場合、「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号(1)など)」または「療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5(1)など)」を所轄の労働基準監督署に提出します。  

時効については、療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年間で時効により消滅します。ただし、指定医療機関等で療養の給付(現物給付)を受ける場合には、費用の請求という形をとらないため、この時効は適用されません 。  

企業としては、従業員が被災した際に、速やかに最寄りの労災指定医療機関を案内し、適切な請求書様式を準備できるようサポートすることが求められます。

休業(補償)等給付:仕事を休んだ際の給付

業務災害または通勤災害による傷病の療養のために働くことができず、そのために賃金を受けられない日が続く場合、その間の所得を補償するために休業(補償)等給付が支給されます 。  

支給を受けるためには、以下の3つの要件を全て満たす必要があります 。

  • 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養中であること。
  • その療養のために労働することができない(働くことができない状態)こと。
  • 労働することができないために賃金を受けていないこと。

支給期間と待期期間

休業(補償)等給付は、上記の要件を満たした休業が4日目から支給対象となります 。休業した最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、この期間については労災保険からの休業(補償)等給付は行われません。 この待期期間中の扱いについては、災害の種類によって異なります。  

  • 業務災害の場合:事業主が労働基準法第76条に基づき、平均賃金の60%の休業補償を行う義務があります 。  
  • 通勤災害の場合:事業主にこの休業補償義務はありません 。  

支給額

休業1日につき、給付基礎日額の60%に相当する額が休業(補償)給付として支給されます。これに加えて、社会復帰促進等事業の一環として、給付基礎日額の20%に相当する額が休業特別支給金として支給されます。したがって、合計で給付基礎日額の80%が補償されることになります 。 「給付基礎日額」とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額で、災害発生日または診断によって疾病の発生が確定した日の直前3ヶ月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額です。  

請求書類

「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」(業務災害の場合)または「休業給付支給請求書(様式第16号の6)」(通勤災害の場合)を、所轄の労働基準監督署に提出します 。これらの請求書には、医師の証明や事業主の証明が必要となります。  

時効

休業(補償)等給付の請求権は、賃金を受けない日ごとに発生し、その翌日から2年間で時効により消滅します 。  

休業が長引く場合は、従業員の生活基盤を支える重要な給付となるため、企業は請求手続きを迅速にサポートする必要があります。

障害(補償)等給付:後遺障害が残った場合の給付

業務災害または通勤災害による傷病が治療の甲斐なく、これ以上治療を続けても効果が期待できない状態(「症状固定」または「治ゆ」といいます)と医師が判断し、かつ身体に一定の後遺障害が残った場合に、その障害の程度に応じて障害(補償)等給付が支給されます 。  

障害等級

後遺障害の程度は、労働者災害補償保険法施行規則に定められた障害等級表に基づき、第1級から第14級までの14段階に区分されます 。最も重いものが第1級、最も軽いものが第14級です。  

給付の形態と内容

支給される給付の形態は、認定された障害等級によって異なります。

障害等級第1級から第7級に該当する場合

  • 障害(補償)等年金:給付基礎日額の313日分(第1級)~131日分(第7級)が年金として支給されます。
  • 障害特別支給金(一時金):342万円(第1級)~159万円(第7級)が一時金として支給されます。
  • 障害特別年金:算定基礎日額の313日分(第1級)~131日分(第7級)が年金として支給されます 。  

障害等級第8級から第14級に該当する場合

  • 障害(補償)等一時金:給付基礎日額の503日分(第8級)~56日分(第14級)が一時金として支給されます。
  • 障害特別支給金(一時金):65万円(第8級)~8万円(第14級)が一時金として支給されます。
  • 障害特別一時金:算定基礎日額の503日分(第8級)~56日分(第14級)が一時金として支給されます 。

「算定基礎日額」とは、原則として災害発生日または診断によって疾病の発生が確定した日以前1年間に、その労働者が事業主から受けた特別給与(3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金で、賞与などが該当。ただし、臨時に支払われたものを除く)の総額を365で割った額です。

請求書類

「障害補償給付支給請求書(様式第10号)」(業務災害の場合)または「障害給付支給請求書(様式第16号の7)」(通勤災害の場合)に、医師の作成した「障害診断書」などを添付して、所轄の労働基準監督署に提出します 。  

時効

障害(補償)等給付の請求権は、傷病が症状固定した日の翌日から5年間で時効により消滅します 。  

後遺障害の等級認定は専門的な判断を伴うため、請求にあたっては主治医とよく相談し、正確な診断書を作成してもらうことが重要です。場合によっては、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けることも有効です。

遺族(補償)等給付・葬祭料等(葬祭給付):死亡した場合の給付

労働者が業務災害または通勤災害により不幸にも死亡した場合、その遺族の生活保障や葬祭にかかる費用を支援するために、遺族(補償)等給付および**葬祭料等(葬祭給付)**が支給されます 。  

遺族(補償)等給付

この給付には、「遺族(補償)等年金」と「遺族(補償)等一時金」の2種類があります。

  1. 遺族(補償)等年金: 労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうち、最も優先順位の高い遺族(受給資格者)に対して、年金として支給されます。受給資格者となるためには、年齢要件や障害状態の要件が定められている場合があります(例:妻以外の遺族は一定の高齢・年少または障害状態であること)。支給額は、遺族の数や給付基礎日額に応じて決定されます 。  
  2. 遺族(補償)等一時金: 労働者の死亡当時、遺族(補償)等年金を受ける資格のある遺族がいない場合、または年金の受給権者が全て失権し、それまでに支払われた年金総額が一定額に満たない場合などに、一定の範囲の遺族に対して一時金として支給されます 。  

葬祭料等(葬祭給付)

労働者が死亡し、その葬祭を行った者(通常は遺族ですが、会社が社葬として行った場合は会社も対象となり得ます)に対して、葬祭にかかる費用として支給されます 。 支給額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額です。ただし、この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分が支給されます 。  

請求書類

  • 遺族(補償)等年金:「遺族補償年金支給請求書(様式第12号)」(業務災害の場合)または「遺族年金支給請求書(様式第16号の8)」(通勤災害の場合)など 。  
  • 葬祭料等(葬祭給付):「葬祭料請求書(様式第16号)」(業務災害の場合)または「葬祭給付請求書(様式第16号の10)」(通勤災害の場合)など 。 これらの請求書には、死亡診断書や戸籍謄本など、死亡の事実や請求者との関係を証明する書類の添付が必要です。  

時効

  • 遺族(補償)等給付の請求権は、労働者が死亡した日の翌日から5年間で時効により消滅します 。  
  • 葬祭料等(葬祭給付)の請求権は、労働者が死亡した日の翌日から2年間で時効により消滅します 。    

労働者の死亡という重大な事態においては、遺族の精神的・経済的負担は計り知れません。企業としては、深い哀悼の意を示すとともに、これらの給付手続きについて丁寧に情報提供し、最大限のサポートを行うことが求められます。

傷病(補償)等年金:療養開始後1年6ヶ月経過しても治らない場合

業務災害または通勤災害による傷病の療養を開始してから1年6ヶ月を経過した日、またはその日以降において、その傷病が治ゆ(症状固定)しておらず、かつ、その傷病による障害の程度が法令で定める傷病等級(第1級~第3級)に該当する場合に、休業(補償)等給付に代わって傷病(補償)等年金が支給されます 。  

支給決定と手続き

傷病(補償)等年金の支給・不支給の決定は、被災労働者からの請求に基づくものではなく、所轄の労働基準監督署長の職権によって行われます 。 ただし、療養開始後1年6ヶ月を経過しても傷病が治ゆしていない労働者は、その日から1ヶ月以内に「傷病の状態等に関する届(様式第16号の2など)」を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります 。この届出内容などに基づき、労働基準監督署長が支給要件を満たしているか否かを判断します。  

休業(補償)等給付との関係

傷病(補償)等年金の支給が決定されると、それまで受給していた休業(補償)等給付は支給されなくなります

支給額

支給額は、認定された傷病等級に応じて定められています。

  • 傷病(補償)等年金:給付基礎日額の313日分(第1級)~245日分(第3級)が年金として支給されます。
  • 傷病特別支給金(一時金):114万円(第1級)~100万円(第3級)が一時金として支給されます。
  • 傷病特別年金:算定基礎日額の313日分(第1級)~245日分(第3級)が年金として支給されます 。

傷病(補償)等年金は、長期にわたり重い障害状態が続く被災労働者の所得保障を目的としています。企業の人事労務担当者としては、該当する可能性のある従業員がいる場合、1年6ヶ月の経過時期を把握し、必要な届出について情報提供を行うことが重要です。

介護(補償)等給付:介護が必要な場合

障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者のうち、その障害の程度が特に重く、現に介護を受けている場合に、その介護費用を補填するために介護(補償)等給付が支給されます 。  

支給対象となる障害の程度

原則として、障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の対象となる障害等級・傷病等級が第1級の者全員、または第2級の者で精神神経・胸腹部臓器の障害を有する者が対象となります 。  

支給要件

上記の障害等級に該当し、かつ以下の要件を満たす場合に支給されます 。  

  • 常時介護または随時介護を要する状態であること。
  • 現に介護を受けていること(親族による介護も含む)。
  • 病院または診療所に入院していないこと(入院中の介護費用は療養(補償)等給付で対応されるため)。
  • 介護老人保健施設、介護医療院、障害者支援施設(生活介護を受けている場合に限る)、特別養護老人ホームなどに入所していないこと。

支給額

介護の状況(常時介護か随時介護か)や、介護に支出した費用の有無・額などによって、月単位で定められた額が支給されます。

請求書類

「介護補償給付・複数事業労働者介護給付・介護給付支給請求書(様式第16号の2の2など)」に、介護に要した費用を証明する書類などを添付して、所轄の労働基準監督署に提出します 。  

時効

介護(補償)等給付の請求権は、介護を受けた月の翌月の1日から2年間で時効により消滅します 。  

重度の障害を負った被災労働者とその家族にとって、介護費用は大きな経済的負担となります。介護(補償)等給付は、こうした負担を軽減し、安定した療養生活を支えるための重要な制度です。

その他の給付(二次健康診断等給付など)

上記で解説した主要な給付以外にも、労災保険には労働者の健康確保や社会復帰を支援するための給付があります。代表的なものとして「二次健康診断等給付」と、幅広い支援を含む「社会復帰促進等事業」があります。

二次健康診断等給付

これは、脳・心臓疾患の発症を予防することを目的とした給付です 。 職場の定期健康診断(一次健康診断)の結果、血圧検査、血中脂質検査、血糖検査、腹囲またはBMIの測定といった全ての項目で異常の所見があると診断された労働者が対象です(ただし、脳・心臓疾患の症状を有していないこと、労災保険の特別加入者でないことなどの要件あり)。  

給付内容は以下の通りです。

  • 二次健康診断:脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査(空腹時血中脂質検査、負荷心電図検査または心エコー検査、頸部エコー検査など)を、1年度内に1回、無料で受けることができます 。  
  • 特定保健指導:二次健康診断の結果に基づき、医師または保健師から、脳・心臓疾患の発症予防のための栄養指導、運動指導、生活指導などを受けることができます 。

請求は、「二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)」を、健診給付病院等を経由して所轄の都道府県労働局長に提出します 。一次健康診断の受診日から3ヶ月以内に請求する必要があります 。  

これは、被災労働者の円滑な社会復帰を促進し、被災労働者やその遺族の援護を図るための事業です 。 主なものには以下のような支援があります。  

社会復帰促進等事業

  • アフターケア制度:症状固定後も後遺症状の悪化防止や付随する疾病の予防のために、定期的な診察や保健指導などを無料で受けられる制度です(対象傷病が定められています)。  
  • 義肢等補装具費の支給:障害が残った場合に、義肢や車椅子などの補装具の購入・修理費用が支給されます 。  
  • 外科後処置:症状固定後に、義肢装着のための断端部の再手術や顔面醜状の軽減のための再手術などを無料で受けられる場合があります 。  
  • 労災就学等援護費:被災労働者の子弟等が就学する際に、学費の一部が援護される制度です 。  
  • 特別支給金:各保険給付に上乗せして支給されるもので、福祉的な意味合いが強い給付です(例:休業特別支給金、障害特別支給金など)。

これらの給付や支援制度は、被災した労働者が安心して療養に専念し、円滑に社会生活や職場に復帰できるよう多角的にサポートするものです。企業の人事労務担当者としては、これらの制度の存在を把握し、該当する従業員に適切に情報提供することが望まれます。

よくある質問(Q&A)

労災保険に関しては、多くの経営者や人事労務担当者の方々から様々なご質問が寄せられます。ここでは、特に多くいただくご質問とその回答をまとめました。

Q. パートやアルバイトも労災保険の対象ですか?

A. はい、対象です。 労災保険は、正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員、日雇い労働者など、雇用形態や労働時間、勤務日数、国籍にかかわらず、労働基準法上の「労働者」であれば全て適用対象となります 。 「短時間だから」「試用期間中だから」といった理由で労災保険の対象外となることはありません。企業は、労働者を一人でも雇用した時点で、労災保険の加入手続きを行う義務があります。  

Q. 通勤災害とはどのようなものですか?

A. 通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害または死亡のことをいいます 。 ここでの「通勤」とは、以下の移動を、合理的な経路および方法で行うことを指し、業務の性質を有するものを除きます。  

  1. 住居と就業の場所との間の往復
  2. 本社と支社間など、就業の場所から他の就業の場所への移動
  3. 単身赴任者が赴任先住居と帰省先住居との間を移動する場合など、上記1.の往復に先行し、または後続する住居間の移動

ただし、通勤の途中で合理的な経路を逸脱したり(例:仕事と関係のない場所に立ち寄る)、通勤とは関係ない行為のために中断したりした場合(例:映画を見る)、原則としてその逸脱・中断の間およびその後の移動は「通勤」とは認められません。 しかし、日常生活上必要な行為(例:日用品の購入、病院での診療、選挙の投票など)をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、その逸脱・中断の間を除き、合理的な経路に戻った後の移動は再び「通勤」として扱われます 。例えば、帰宅途中にスーパーで夕食の買い物をすることは、一般的に日常生活上必要な行為と認められやすいです。  

Q. 業務委託の人は労災保険に入れますか?

A. 原則として、業務委託契約で働くフリーランスや個人事業主は、労災保険の一般の加入対象にはなりません。 なぜなら、労災保険は基本的に企業に雇用されて働く「労働者」を保護する制度であり、業務委託契約者は労働者には該当しないためです 。  

しかし、以下のケースでは労災保険の保護を受けられる可能性があります。

  1. 実質的に労働者と認められる場合:契約形式が業務委託であっても、仕事の進め方について会社から具体的な指揮命令を受けていたり、勤務時間や場所が管理されていたりするなど、**実態として「労働者」と同様の働き方(使用従属性が高い)**と判断される場合は、労災保険が適用されることがあります 。  
  2. 特別加入制度の利用:一定の要件を満たす一人親方や特定作業従事者などは、以前から労災保険に「特別加入」できる制度がありました。さらに、2024年11月1日からは、フリーランス(特定受託事業者)も、企業などから業務委託を受けて行う事業や、それと同様の事業を消費者から委託されて行う場合に、業種を問わず労災保険に特別加入できるよう対象が拡大されました 。この場合、保険料は自己負担となります。  

企業側としては、業務委託契約であっても、その実態が労働者性が高いと判断された場合、労災発生時に使用者としての責任を問われる可能性があるため、契約内容や業務の実態を慎重に確認する必要があります。

Q. 労災認定の基準は厳しいですか?

A. 労災認定の基準は、労働者災害補償保険法や関連する通達などに基づいて、客観的かつ公平に判断されます。一概に「厳しい」または「甘い」と言えるものではなく、個別の事案ごとに具体的な状況を詳細に調査した上で、基準に照らして認定・不認定が決定されます。

労災と認定されるためには、主に以下の2つの要件を満たす必要があります 。  

  1. 業務遂行性:労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態で災害が発生したこと。つまり、業務を行っている最中や、休憩時間中の事業場施設内での事故などが該当します。
  2. 業務起因性:業務に内在する危険が現実化したことによって災害が発生したこと。つまり、その傷病が業務が原因で発生したといえる医学的な因果関係があることです。

例えば、明らかな業務中の事故によるケガ(例:工場で機械に挟まれた、建設現場で足場から墜落した)などは、業務遂行性・業務起因性が比較的明確であるため、認定されやすい傾向にあります。 一方で、脳・心臓疾患(過労死ラインなど)や精神障害(パワハラなど)といったケースでは、業務と発症との因果関係の判断が複雑になるため、労働時間、業務内容、作業環境、心理的負荷の程度などが詳細に調査されます 。これらのケースでは、認定基準が具体的に示されており、それに該当するかどうかが慎重に判断されます。  

最終的な認定は労働基準監督署が行います。判断に迷う場合や、認定基準について詳しく知りたい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

Q. 会社が労災手続きをしてくれない場合はどうすれば?

A. 労働者自身で労災保険の給付請求手続きを行うことができます。 会社には、労働者が労災保険の給付を受けるために必要な証明(災害発生状況や賃金など)を行う義務や、請求手続きを助ける努力義務がありますが、会社が協力的でない、あるいは労災と認めてくれない場合でも、労働者の請求権がなくなるわけではありません 。  

具体的な対処法としては、以下の方法があります。

  1. 労働基準監督署に相談する:まず、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に相談しましょう 。労災の申請窓口であり、会社が手続きに協力してくれない場合の対応方法についてアドバイスを受けることができます。  
  2. 自分で請求手続きを行う:労災保険の請求書様式は厚生労働省のウェブサイトなどから入手できます。請求書には事業主の証明欄がありますが、会社が証明を拒否する場合は、その旨を労働基準監督署に申し出れば、証明がなくても請求書は受理されます 。  
  3. 専門家(社会保険労務士や弁護士)に相談する:手続きが複雑で分からない場合や、会社との間でトラブルになっている場合は、社会保険労務士や労働問題に詳しい弁護士に相談することも有効です 。専門家は、書類作成のサポートや、会社との交渉、労働基準監督署への対応などを代理で行うことができます。  

会社が労災申請を妨害したり、労災隠しを行ったりすることは違法行為であり、罰則の対象となります。労働者の方は、諦めずに適切な窓口に相談することが大切です。

まとめ

労災保険は、従業員が業務中や通勤中に被災した場合に、その従業員や遺族の生活を守るための、国が管掌する強制保険制度です。労働者を一人でも雇用する事業主は、業種や規模を問わず加入が義務付けられており、保険料は全額事業主が負担します。

本記事では、労災保険の基本的な目的や重要性、健康保険との違い、加入手続きの流れと対象者、保険料の計算方法とメリット制、そして万が一労災事故が発生した場合の具体的な対応フローと注意点、さらには労災保険から受けられる各種給付の内容と請求手続きについて網羅的に解説しました。また、パートやアルバイトの方も対象となること、通勤災害の考え方、業務委託契約者の扱いや労災認定の基準、会社が手続きに協力しない場合の対処法といった、多くの経営者や人事労務担当者が疑問に思う点についてもQ&A形式で触れました。

労災保険制度は非常に多岐にわたり、その手続きも複雑です。特に、事故発生時の対応や給付請求は、迅速かつ正確な対応が求められます。労災隠しは絶対にあってはならず、法的な罰則だけでなく、企業の社会的信用を大きく損なうリスクがあります。

労災保険の手続きや運用、万が一の事故対応でお困りの際は、専門家である社会保険労務士にご相談いただくことを強くお勧めします。社労士は、正確な手続きの代行はもちろん、企業のリスク管理、従業員の安心感の醸成、そしてより良い職場環境づくりをサポートします。

社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)では、全国対応・初回相談無料でご相談を承っております。人事労務に関するお悩みはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

監修者(社労士)

社会保険労務士(社労士事務所altruloop代表)
労務管理・人事制度設計・法改正対応をはじめ、実務と経営をつなぐ制度づくりを得意とする。戦略コンサルファームでは新規事業立ち上げや組織改革に従事し、大手〜スタートアップまで幅広い企業の支援実績あり。
現在は東京都渋谷区や八王子を拠点にしている社労士事務所altruloop(アルトゥルループ)代表として、全国対応で実務と経営の両視点から企業を支援中。

目次